Boston Dynamicsが4本足ロボの商用生産に先立ち新利用例をお披露目

昨年のTC SessionsのRoboticsイベントで、Boston Dynamicsは4本足ロボのSpotMiniを商品化する意向を発表した。それは秘密主義の同社にとって大きな一歩だった。世界で最も洗練されたロボットを四半世紀にわたって作り続けてきた後で、同社はついに商用化の世界に足を一歩踏み入れた。これで彼らの四足のロボットが、そのデバイスを必要とし、資金もある人たちの手に入るようになる。

今週私たちが開催したイベントに、CEOのマーク・レイバート(Marc Raibert)氏が、Boston Dynamicsがこの12カ月の間にどのような進歩を遂げたのかを語るために再び登場してくれた。それはSpotMiniに関わる話題と、より市場指向を意識したその多くの製作物に対する、同社のより大きな意向についての話題である。

同社にとって重要な買収を行ってから、Boston Dynamicsの姿勢は熱いものになっている。実際、Kinemaは同社の歴史の中で最初の大きな買収だった(疑いなくその親会社であるソフトバンクの潤沢な資金に助けられたものだが)。ベイエリアを拠点とするKinemaのイメージング技術は、Boston Dynamicsの改良型ホイール式ロボットハンドの重要な構成要素だ。新しいバージョンのシステムを得て、これまでの2本の腕が、複数の吸引カップを使ったグリップ装置に置き換えられた。

同社が最近発表した動画では、箱を棚からベルトコンベアに移動するために展開できるシステムの、効率性と速度が示されている。ステージ上でレイバート氏が指摘したように、このHandleと呼ばれるロボットは、Boston Dynamicsが作製してきたものの中で「特定目的ロボット」に最も近付いたものだ。すなわちある特定のタスクを実行するためにゼロから設計されたロボットということである。DARPAから資金提供を受けていた初期のプロジェクトを過ごしたあと、同社は新しい目標へと狙いを移したようである。それは主として世界で最も洗練されたロボットを作りたいという願望が原動力となっているようだ。

「私たちは、世界中で毎年約1兆立方フィート(約283億立方メートル)の箱が移動すると見積もっています」とレイバート氏は言う。「そしてそのほとんどは自動化されていません。そこに本当に大きなチャンスがあるのです。そしてもちろん、この私たちのロボットは素晴らしいものです。なぜならバランスをとるロボットとしてのDNAを持ち、ダイナミックに動き回り、長い距離に手を伸ばすことができるように、バランスウェイトを備えているからです。なので、ある意味では、私たちが何年もかけて開発してきたロボットと変わらないのです。また一方では、箱を認識することができて、綺麗に積み上げることができるようなタスクを行えるように、物を掴むという動作に焦点を当てています」。

同社は、その他の点でも歩みを進めるだろう。たとえばヒューマノイドのAtlasのようなロボットは、商用への応用がすぐに始まるとは言えないが、同社の仕事の重要な部分を占めることになるだろう。

だが、ショーにおける真のスターはSpotMiniだった。今回同社は、実際の量産が行われるバージョンのロボットをお披露目した 。一見したところでは、そのロボットは私たちがステージ上で見たバージョンと非常によく似ていた。

「信頼性を高め、外装の機能を高め、落下した場合に保護できるように、多くのコンポーネントを再設計しました」とレイバート氏は言う。「前面に2台、それぞれの側面に1台、背面に1台のカメラを搭載しています。このためすべての方向を見ることが可能です」。

私にはロボットを操縦する機会が与えられた。Boston Dynamics社外の人間でこうした機会を持つことができた者は少ない。SpotMiniは自律移動に必要な技術を、すべて備えているものの、特定の状況ではユーザー制御が可能であり、その方が望ましい場合もある(そのうちのいくつかを、すぐに説明する)。

このアニメーションGIFはオリジナルのものよりも若干スピードアップされている

コントローラーはOEMによるデザインで、中央に細長いタッチスクリーンを備えたXboxコントローラのように見える。ロボットはタッチスクリーンを使って直接制御することができるが、私はジョイスティックのペアを選んだ。SpotMiniを移動させることは、ドローンの操縦によく似ている。一方のジョイスティックでロボットを前後に動かし、もう一方のジョイスティックではロボットを左右に回転させる。

ドローンと同様に、慣れるのには多少時間が必要だ(特にロボットの方向に関しては)。ある方向がロボットにとっては常に前方を意味するが、操縦者にとってはかならずしもそうではない。画面上のボタンをタップすることで、ジョイスティックの機能が腕(または利用者の認識によっては「首」)の操作へと切り替わる。これは標準的ロボットアーム/グリップ装置のように動かすことができる。このアームはロボット本体が激しく移動している間は、邪魔ならないように固定しておくことができる。

一度コツを掴んでしまえば、とても単純だ。実際、ビデオゲームの経験がテトリスの頃でピークだった私の母も、イベントのバックステージにいて、Boston Dynamicsから喜んでコントローラーを受け取り、ほとんど問題なくロボットを操作していた。

Boston Dynamicsはこれまで以上にカーテンをめくって見せている。会話の途中で、レイバート氏はコンポーネントテストの舞台裏映像を披露した。それはロボットの様々な部位が実験室のベンチ上に広げられた様子が示された、必見のサイトだ。これは私たちが今までに見たことのないBoston Dynamicsの側面である。何体かが自律的にあたりを巡回している、多数のSpotMiniがいるテスト用囲いの映像も同様に披露された。

Boston Dynamicsは、未来がロボットにとってどのように見えるかについてのアイデアを、まだ他にも持っている。レイバート氏はSpotMiniをさまざまなテストシナリオを利用しているマサチューセッツ州警察の映像も紹介した。例えばロボットにドアを開けさせることができれば、人質事件やテロリスト事件の際に、人間の警官を危険から守ることができるかもしれない。

また別のユニットは、ストリートビュースタイルの360度カメラを装備して、東京の建設現場を自律的に巡回するようにプログラムされていた。すなわち建築の進捗をモニターすることが可能になる。「これを使うことで、建設会社は自社の現場の進捗状況を評価することができます」と彼は説明する。「おそらく、つまらない仕事のように思うかもしれません。しかし、こうした企業は何千もの現場を抱えているのです。そのため、彼らは進捗を知るために、週に2、3度は巡回を行わなければなりません。こうした用途にSpotMiniを使えることを期待しているのです。そのため、さまざまな段階のテストとシナリオの概念実証を行うために、10数社の企業が順番を待っている状態です」。

レイバート氏は、Spot Mini の7月の出荷は、今の所問題なく開始できる予定だと語った。価格についてはまだ発表できる段階ではないが、第一弾としておよそ100体が製造される計画である。

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(翻訳:sako)

2028年までに医療は、医師が主導し、患者が主役で、視覚技術を活用したものになる

視覚による評価はヘルスケアにとって重要である。たとえば医者が「あー」と言っているあなたの喉を覗き込んでいる場合でも、あるいは脳のMRI画像を見ている場合でも。X線が1895年に発明されて以来、医用イメージングは臨床医が体内を覗き込み評価することを可能にする、多くの形態に進化してきた。視覚センサー、コンピュータビジョン、および計算パワーに関わる最近の進歩は、(X線やMRIのような)従来のビジュアルテクノロジーに対する新しい革新の波をもたらしているし、ゲノミクスのような全く新しい医療領域を生み出している。

今後10年間で、ヘルスケアのワークフローは、収集された個人データとコンピュータビジョンと共に、大部分がデジタル化され、人工知能を使った精密ケアのための自動データ分析が利用されるようになる。ヘルスケア全体で使われるデジタルデータの多くは視覚的なものであり、それらを取り込んで分析する技術がビジュアルテクノロジーである。

これらのビジュアルテクノロジーは、診断から治療、継続的ケア、そして予防へとつながる患者の旅すべてに関係している。そこでは、画像、ビデオ、熱画像、X線、超音波、 MRI、CTスキャン、3Dなどの任意のビジュアルデータが、分析され、処理され、フィルタリングされて、そして管理される。コンピュータビジョンと人工知能が、その旅の中核である。

画像診断装置の小型化、病気の初期段階での検出を狙う次世代イメージング、遠隔医療という3つの強力なトレンドが、今後十年間で、ヘルスケア改善をビジュアルテクノロジーで改善する手法を生み出しつつある。

コンピュータビジョンとAIを伴ってハードウエアが小型化されることで、診断イメージングをモバイル化することができる

医療用イメージングは、イノベーションに対して腰が重い、既存の大企業たちに支配されている。ほとんどのイメージングデバイス(例:MRI装置)は、1980年代からそれほど変わっておらず、いまだに大きな制限を抱えている:

  • 複雑なワークフロー:操作の専門家を必要とし、互換性も限られている、大きくて高価な機械であること。

  • 患者に対する厳しい要求:身動きせずに横たわることや、息を止めること(小児科や高齢の患者などの場合に問題となる)。

  • 高価なソリューション:使えるのが大病院や画像処理機関に限られてしまう。

しかし、視覚センサーとAIアルゴリズムにおける技術革新は進んでいる。「現代の医療用イメージングはパラダイムシフトの真っ只中です。大型で慎重に調整された機械から、柔軟で自己修正可能で、複数のセンサーを備えたデバイスに変わりつつあるのです」と語るのはニューヨーク大学メディカルスクールの放射線学科のDaniel K. Sodickson博士である。

MRIの手袋型検出装置は、動く指のイメージをキャプチャすることができることが示された。©NYU Langone Health

ビジュアルデータの取得は、小型で使いやすいデバイスを利用して行われるようになり、イメージングを放射線科の施設の中から、手術室、薬局、そして居間へと移すことができる。

小型のセンサーとコンピュータビジョンに対応したイメージキャプチャは、次のような特性を持った超小型の機器として再デザインされることになる:

  • より簡単なイメージングプロセス:より速いワークフローとより低いコスト。

  • 専門知識要件の緩和:複雑さが軽減されることによって、イメージングを放射線科の施設から患者のいる場所へと移動させることができる。

  • 体内投入カメラによるライブイメージング:こうしたイノベーションには胃液を使った体内投入カメラへの電力供給、化学的検出のための細菌の利用、その他幅広い実現方法が考えられる。

ハーバード大学メディカルスクールMGH/Martinos Centerの、Matthew Rosen博士は、次のように述べている「人間の知覚学習のニューラルネットワークベースの実装を使用すると、低コストのイメージングハードウェアが可能となり、既存のテクノロジーの高速化および改善が可能になります」。

ボストンのバイオメディカルイメージングMartinos CenterセンターのMatthew Rosenとその同僚たちは、MRIを解放したいと考えている。(©Matthew Rosen)

次世代シーケンシング、表現型検査および分子イメージングは、症状が現れる前に病気を診断する

DNAのシーケンシングを行うゲノミクスは2015年以降、年間成長率200%で伸びている。これは光信号を使ってDNAを読み取る次世代シーケンシング(NGS:Next Generation Sequencing)によって推進されている。例えば私たちLDVのポートフォリオに含まれている企業であるGeniachipなどがそうしたことを行っている(同社はRocheに買収された)。こうしたテクニックは、ゲノミクスが実務家のための主流のツールになることを助けている。そして2028年までには、キャリアスクリーニングを日常的な患者ケアの一部として行うことができるようになることが期待されている。

血液、尿、または唾液を使って腫瘍のDNAまたはRNAを検査する、リキッドバイオプシーは、早期がんスクリーニングの主要な役割を果たす段階にさしかかろうとしている。例えばGRAIL社は、NGSとディープラーニングを使って、病変が特定される前に、循環している腫瘍DNAを検出するがん血液テストのために、10億ドルを調達した

遺伝子と環境の相互作用によって生み出された、観察可能な形質(表現型)の分析を行うフェノミクスも、早期の疾病検出に寄与している。表現型は生理的に表現されていて、ほとんどの場合、イメージングつかって検出ならびに分析をする必要がある。

次世代表現型検査(NGP:Next Generation Phenotyping)は、コンピュータービジョンとディープラーニングを利用して、生理的データを分析し、特定の表現型のパターンを理解し、それらのパターンを遺伝子と関連付ける。たとえば、FDNAのFace2Geneテクノロジーは、患者の顔の画像を使用して、90%以上の精度で300〜400の障害を識別することができる。(手、足、耳、目の画像またはビデオなどの)追加のデータにより、NGPはこれまでになく幅広い範囲の障害を早期に検出することができる。

分子イメージングは、DNAナノテクプローブを使用して、細胞内の化学物質を定量的に可視化する手法だ。このことによって病気の化学的特徴を測定することが可能になる。このアプローチは、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患の早期発見を可能にする。

従来型の診察室での診療を、遠隔診療が追い越す

2028年までには、実際の診療所に行くよりも、電話やコンピュータを介して、スクリーン上で医師を訪問するのが一般的になるだろう。

遠隔医療により、開業医たちに、よりアクセスしやすくなり、よりコミュニケーションしやすくなる。このことは、患者毎の全てデジタル化された訪問時の健康記録を生み出し、移動のコストや特定の医療専門家の地域格差を減らすことになるだろう。例は、シリアの戦争で負傷した190万人のために提供された遠隔医療サービスだ。

遠隔医療を救急車に統合することで、脳卒中患者は2倍の速さで治療を受けられるようになった。医師たちは、リアルタイムに彼らの同僚や専門家を呼び込むようになるだろう。

スクリーニング技術は遠隔医療に統合されるため、それは単に医者をビデオで呼び出すだけにとどまらない。リモートカメラを介して、バイタルを事前にスクリーニングすることによって、より効率的になり健康上のメリットを得られることも期待できる。

「遠隔医療におけるビジュアルテクノロジーの最大のチャンスは、特定のユースケースを解決する場合にあります。脈拍、血圧、あるいは目の問題を検出しているのかどうかにかかわらず、ビジュアルテクノロジーはデータ収集の鍵となります」と語るのはTeldoc healthのJeff Nadlerだ。

遠隔患者モニタリング(RPM)は、遠隔医療の成長および全体的なケアの個人化に対する主要な要素となるだろう。私たちがApple Watchで経験しているように、RPMデバイスは、日常の健康やライフスタイルの要素を考慮に入れた、医療上の決定を下すために使用される、リアルタイム患者データの主要な情報源になるだろう。こうした個人データは患者自身が収集し所有していて、医師に提供される。

ビジュアルテクノロジーは、次の10年にわたって、ヘルスケアの変革を推進する

ビジュアルテクノロジーはパーソナライズされたヘルスケアの未来に深い影響を与える。そして世界中の人びとの健康を改善することだろう。そこにはユニークな投資機会があることを示している。私たちLDV Capitalは、BCC Research、CBInsights、Frost & Sullivan、McKinsey、WiredそしてIEEE Spectrumなどに掲載された100以上の研究論文をレビューし、私たちの2018 LDV Capital Insightsレポートとしてまとめた。このレポートは、ヘルスケアを改善する力を発揮するセクターに光を当てているが、その判断は各セクター内のテクノロジの変革的な性質や、予測される成長およびビジネスチャンスに基づいて下されている。

診断、治療、そして継続的なケアや予防にまたがる視覚技術への、多くの投資機会が存在しており、それは世界中の人々をより健康にするのに役立つことだろう。

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(翻訳:sako)