中小企業庁によると、今後10年の間に、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定という。
中小企業庁長官の安藤久佳氏は2018年1月の年頭所感で、「現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある」と述べていた。
このように後継者不在による廃業が深刻化する中、中小企業の若手後継者の支援を目的とする一般社団法人、ベンチャー型事業承継が本日6月25日、発足した。
同団体は、官民さまざまな組織と連携し、家業の経営資源を活かして新たな事業を起こす若手後継者の挑戦を後押しするプラットフォームを構築することを目標にしているという。
発起人で代表理事を務める千年治商店の代表取締役、山野千枝氏は都内で開催された記者会見で「家業というフィールドで新しい挑戦をする全国各地の後継の方々を応援したい」と意気込んだ。
ベンチャー型事業承継とは「若手後継者が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をベースに、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など、新たな領域に挑戦することで、永続的な経営をめざし、社会に新たな価値を生み出すこと」だと山野氏は説明する。
同氏いわく、若い世代は家業を継ぐことを「なんとなく後ろめたい」「かっこ悪い」と感じていることが多いそうだ。そこで「中小企業の新規事業として片付けられていたことをあえてベンチャーと呼んでいく」ことで「起業家もかっこいいけど、後継社長もかっこいいと若い世代が思えるカルチャーをつくる」のが同団体のねらいだ。
「若手後継者の人たちの取り組みをベンチャーと呼んでいきましょうというような考え方。家業の有形・無形の経営資源に自身が持ち込むノウハウとか経験とかをかけ算し、新しいビジネスを起こしていく」(山野氏)
会見に出席した経済産業省 新規事業調整官の石井芳明氏は「日本の中小企業の技術力であったり、商流であったり、商人のこころ。そういったところからベンチャーが出てきてほしい」と語った。
ベンチャー型事業承継の主な事業内容は以下のとおりだ。
- 若手後継者対象の研修事業
- 若手後継者対象の新規事業開発支援
- 若手後継者対象の事業化サポート
- ベンチャー型事業承継事例の収集・蓄積・発信
- ベンチャー型事業承継政策への提言
初年度は、協賛企業を開拓するとともに、金融機関や自治体に向けて、若手後継者を対象としたベンチャー型事業承継支援サービスの導入を働きかけていくという。
また、アイデアソンやピッチイベントなどのイベント支援なども行っていくようだ。