天安門事件に関するネット上の情報を弾圧する中国政府の手口

毎年6月4日の天安門虐殺記念日が近づくと、中国政府は人々がインターネットで目にする情報の管理を強化し始める。今年は、学生や活動家やその他の中国共産党に抗議する人たちに対して政府が軍を動員し、武力で抗議行動を鎮圧した日から30年目となる。検閲の動きは強化され、その影響は中国国外のソーシャルネットワークのアカウントにまで及ぼうとしている。

当初から中国政府は、300人が死亡したとされる虐殺に関する情報の統制に努めてきたが、国際アムネスティやその他の国際的な監視団体は、死者数はずっと多く、数千の単位に達した恐れがあると主張している。

情報統制とは、当時抗議行動に参加した活動家たちがいまだにその余波に苦しみ続け、長期刑に服している人たちもいるなかで、あらゆる年代にわたり、事件に関する知識がほとんど伝わっていないことを意味する。近年は政府の検閲手段がさらに強力になり、音声と画像の認識技術や機械学習によって、関連記事のブロックや削除が簡単に一挙に行えるようになった。ByteDanceでコンテンツの検閲を行っている従業員は、ロイターにこう話している。「人工知能はメスで、人間は大鉈だと、よく話しています」

毎年政府が行っている情報弾圧のなかでも、今年もっとも注目すべきものは4月に始まった。そこでは、天安門抗議行動やチベットに関するデリケートな問題を中国語で述べた記事や個人的な意見だけでなく、あらゆる言語のウィキペディアが中国国内でブロックされた。

5月には、動画共有サイトBilibiliとAcFunのリアルタイムのコメント機能を停止し、60万人の会員を抱えるセレブのゴシップやニュースを扱う人気フォーラム豆瓣小組(Douban Goose Group)は、5月30日から6月29日までサービスを取り止めている。どちらのサービスも「システムのメンテナンス」が必要なためと主張している。

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記念日に備えて、Bilibiliはブレットスクリーン(リアルタイムコメント)を6月6日まで停止します。

インターネット上の会話も、すでに中国政府により厳しく管理されていて、どのウェブサイトでも、アカウント登録するユーザーの実名確認が要求される(たとえば、電話番号が政府発行のIDと一致するかなど)。豆瓣小組では、よく政治関連の話題がのぼるが、一層厳しい規制が加えられたようだ。BilibiliとAcFunのリアルタイムコメント(弾幕と呼ばれている)では禁止コンテンツのモニターが難しいが、政府は最近になって、そのコメントを検閲するための新しいガイドラインを発表した。彼らの統制力を維持する上で、検閲は今なお力を振るっている。

つい最近では、非常に広く普及しているメッセージとゲームとEコマースのプラットフォームWeChatが、ユーザーの顔写真、別名、What’s Upのステータスの変更を禁止した。そして先週末、ユーザーからVPNサービスの接続に関する苦情が寄せられるようになった。このサービスを使えば、以前は中国本土のファイヤーウォールを迂回して禁止サイトにアクセスできていた。

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システムメンテナンスのため、現在、顔写真、別名、What’s Upステータスの変更はできません。その他の機能は通常どおりです。ご不便をおかけしますことをお詫びします。
「♫またこの時期が来たのね♫」

天安門事件に関する情報弾圧の影響は、中国国外にも広がっている。中国の人権と法律を論評するアメリカの英字新聞China Changeの創設者で編集長のYaxue Cao(曹雅学)は、先週末、中国を批判する中国語のTwitterアカウントが数多く停止されているツイートしていた。これには、アメリカ在住者を始め、中国国外のアカウントも含まれている。

Twitterは、そのパブリック・ポリシー・アカウントで、停止されたアカウントは、ほとんどが「スパム、不正な言動、アクセス禁止回避」のためのものだと主張した。「中国に関する解釈に関連する」アカウントの停止について、Twitterのパブリック・ポリシー・アカウントは、予想に反してこう述べた。「これらのアカウントは中国当局から指摘された集団のものではありません。……これは私たちの所定の手続きの一環です。私たちの所定の手続きでは、ときとして誤判定が認められたり、間違いを冒すこともあります。申し訳ありません。現在、すべての間違いの修正に取り組んでいますが、違反者に対するルールの適用は引き続き厳格に行う所存です」

曹が指摘したいくつかのアカウントには、その後に回復を遂げた@Sasha_Gongと@wmeng8も含まれていたが、彼らはTwitterの説明が足りないことと、とりわけ、アカウント停止が非常に多くの反体制派中国人に及んでいること、不確かな容疑で会社にまで捜査が及んだことに不満を抱いている。

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「違反するとアカウント停止になる4つのルールがあるとTwitterは言う。そのどれに引っ掛かるのかを、自動的に表示できないものか。そうすれば、悪意ある大量通報が判別しやすくなる(たとえば、大量の通常のアカウントが、突然、スパムやポルノとして通報されるような)」
「Twitterは事故だと言うが、特定のユーザーの集団に集中しているように見えることへの説明がない。ボットのフォロワーやスパマーたちには反体制派中国人のツイートが邪魔なのか。説明がない限り陰謀に思えてしまう」

天安門事件に関連する検閲の歴史を振り返る

中国政府が天安門事件に関する情報弾圧を毎年行うようになったのは、2010年にFoursquareがブロックされたのが始まりだ。おそらく、追悼の目的でユーザーが天安門広場に集るの防ぐためだったのだろう。

また中国政府は、それまでなんとかアクセスできたTumblrへのアクセスに制限をかけた。2016年それは、中国国内でブロックされるソーシャルメディアのリストに加えられた。GreatFire.orgの過去のデータによると、Tumblrは、2014年と2015年の6月にはさらにアクセス困難になったが、2016年には年間を通して困難になったようだ。GreatFire.orgが実施したテストでは、それ以降、完全にブロックされていることがわかった(おそらく、中国政府がインターネット上のポルノを禁止したためだろう)。

中国国内での事業許可を欲しがる海外企業にとって、これは、他国のユーザーを怒らせる覚悟で中国政府の検閲に屈服することを意味する。今でも中国で事業が許されている数少ないアメリカのソーシャルメディアのひとつLinkedInは、2014年、それは中国政府に禁じているコンテンツを中国のユーザーが見られないようにするだけでなく、中国発信の禁止コンテンツを海外のユーザーが見られないようにする対策でもあると語った。この決断は、天安門事件の記念日に関連する記事がブロックされていることに気付いた会員から批判されていると、ガーディアンは伝えている

さらに最近になって、LinkedInは中国人活動家Zhou Fengsuo(周鋒鎖)のアカウント停止を取り消した。天安門広場の抗議行動に参加した学生リーダーの一人だった周が、1月、サウスチャイナ・モーニング・ポストに語ったところによると、LinkedInのアカウントよりも、WeChatなどの他のソーシャルメディア・プラットフォームでの活動の政府による監視が検閲につながったと彼は考えているようだ。周のLinkdInのプロファイルを復活させた後、LinkedInは「誤ってブロックした」と釈明した。

海外のユーザーにまで中国政府の検閲の影響が及んだその他の例として、2017年に発生した、記念日の間、ミニブログサービスWeiboが海外ユーザーからの画像と動画のアップロードを禁じた件がある。Bilibiliと豆瓣小組の今年のケースと同じく、Weiboも、システムのアップグレードに関連する処置だったと主張している。

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(翻訳:金井哲夫)