免疫システムの完全なマッピングを目指すImmunai、細胞療法と癌免疫療法に新しい道を拓く

この2年間、Immunai(イミュナイ)は、あらゆる患者の免疫システムをマッピングする技術の開発を密かに進めていた。

ハーバード大学とMITで学び博士号を取得した研究者Noam Solomon(ノーム・ソロモン)氏と、元Palantir(パランティア)の技術者Luis Voloch(ルイス・ボロシュ)が創業したImmunaiは、この2人の計算生物学とシステム工学の興味がきっかけだった。2人が、スタンフォード大学腫瘍免疫科教授のAnsuman Satpathy(アンスマン・サトパシー)氏と、パーカー癌免疫療法研究所でデータサイエンティストとして働いていたDanny Wells(ダニー・ウェルズ)氏と出会ったことから、起業につながる道筋が明らかになった。

「私たちは互いに、私たちにはこの仕事に導入すべきテクノロジーと機械学習のあらゆる知識があり、アンスとダニーには単一細胞生物学の知識があると考えていました」とソロモン氏は話す。

今、その存在を公にし、Viola VenturesやTLV Partners,を始めとする投資会社から2000万ドル(約21億ドル)の資金調達を行ったことを発表した。同社は今後、人材採用を強化し、すでに強固な基盤のある研究と開発活動をさらに拡張しようと考えている。

Immunaiによれば、同社はすでに、10件を超える医療機関との臨床パートナーシップを、そしていくつものバイオ医薬品メーカーとの商業的なパートナーシップを結んでいるという。またすでに「PD-1阻害の後の抗腫瘍T細胞の起源について審査済みの論文を公開した」とImmunaiは話している。

「私たちは複雑な工学的パイプラインを組み入れようとしています。数百人の患者と数千のサンプルに対応できる規模に拡大したいのです」とウェルズ氏。「現在、癌治療の世界では、間もなくチェックポイント阻害薬と呼ばれる新薬が発売されます。(私たちは)そうした分子の機能を理解し、新しい組み合わせと新しいターゲットを見つけ出そうとしています。そのためには、免疫システムを完全な粒度で見る必要があります」。

「それを可能にするのが、Immunaiのハードウェアとソフトウェアの組み合わせだ」とウェルズ氏は説明する。「これは単一細胞プロファイリングのための垂直統合プラットフォームです」と同氏。「さらに私たちは先へ進み、そこにどのような生物学があるかを見極め、それを新しい組み合わせデザインの中で解明して治験に役立てます」。

細胞療法と癌免疫療法は医療を変え、さまざまな病状に新しい治療法をもたらしたが、免疫システムが複雑なあまりに、こうした治療法の開発者たちは、その療法の免疫システムへの影響に関する見識をほとんど持っていない。患者はみな違うため、製品にバリエーションを持たせることで、患者の治療効果が大きく変わると同社は言う。

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immunaiには、個々の血液サンプルから1TBを超えるデータを生成し細胞のプロファイリングを行う単一細胞テクノロジーを利用することで、そうした治療法の開発方法を変革する可能性がある。同社の独自データベースと機械学習ツールは、取得したデータを異なる細胞タイプにマッピングして、分化した要素に基づいた免疫反応のプロファイルを生成する。最終的に、免疫プロファルのデータベースは生物指標の発見を助け、潜在的変化の監視を可能にする。

「私たちの使命は、免疫システムとニューラルネットワークをマッピングすることであり、免疫学の深い知識からもたらされる学習技術を伝達することです」とボロシュ氏は声明の中で述べている。「私たちは、その道に長けたすべての癌免疫療法と細胞療法の研究者を支援するツールとノウハウを作り出しました。これにより、その作用と回復のメカニズムが明らかになり、薬の開発と市場投入がスピードアップします」。

ソロモン氏によれば、製薬会社はすでにこの技術による変革の可能性に気付いているという。同社は今、Fortune 100のある企業と数100万ドル規模の契約交渉の終盤に入っているとのことだ。

同社の初期の研究戦略は、抗PD1分子が導入されたときに免疫系がどのように機能するかを示す内容だった。通常、PD-1の存在はT細胞の生産が抑えられることを意味する。Immunaiの研究は、その反応は腫瘍の中のT細胞で起きているのではないことを示した。ウェルズ氏によれば、腫瘍と闘おうと腫瘍に移動した新しいT細胞で起きているのだという。

「私たちが用いたこのアプローチ全体で、そのすべての兆候が示されています。私たちが正解と考える、こうした疾患の研究に最も強力な方法は、トップダウンで免疫システムを見ることだと確信しています」ボルシュ氏はインタビューの中で話していた。「異なるシナリオをすべて見ることです。上から見れば、他の方法では見ることのできないそのパターンが見えてきます」。

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(翻訳:金井哲夫)

癌などの新薬や治療法を研究開発するHummingbird Bioscienceが約6.4億円を調達

癌などの新しい治療法を開発しているHummingbird Bioscience(ハミングバード・バイオサイエンス)が、この前発表したシリーズBに加えて600万ドル(約6億4500万円)を調達し、このラウンドの総額が2500万ドル(約26億8800万円)になったことを発表した。

この拡張ラウンドはSK Holdingsがリードし、既存投資家であるHeritas CapitalとSEEDS Capitalらも参加した。後者は中小企業を支援する政府機関であるEnterprise Singaporeの投資部門だ。

Hummingbird Bioscienceのこれまでの調達総額はこれで6500万ドル(約69億9000万円)になる。同社によると、シリーズBラウンドの申し込みに投資家が殺到したため、ラウンドを拡張したという。今回の資金は、同社が開発中の治療薬をより迅速に臨床試験に適用し、初期段階の新薬候補の研究開発を進めるために使用される。

Heritas Capital Managementの常勤取締役でCEOのChik Wai Chiew(チク・ワイ・チウ氏)はHummingbirdへの投資について「シリーズAの拡張ラウンドのリードに次いでHummingbirdのチームへの支援を継続できることは、極めて喜ばしい。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで投資が鈍化していても、われわれが革新的なバイオテクノロジー企業の支援を忘れることはない。とくに患者が必要とする治療を開発しているHummingbirdのような企業が、弊社のプライオリティから去ることはない」と語る。

同社は今年初めに悪性腫瘍の治療に関連する2つの抗体のデータを発表し、今後の定期的な提出により今年後半にはフェーズ1の臨床試験を開始できると期待されている。

Hummingbird Bioscienceは、オフィスがシンガポールと米国のヒューストン、サウス・サンフランシスコにあり、Cancer Research United Kingdom(英国王立癌研究基金)およびバイオテクノロジー企業のAmgen(アムジェン)と戦略的業務提携を結んでいる。同社は以前、テキサス州の癌予防研究所から製品開発の助成金を支給された実績もある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa