Farmers Business Network(FBN)というスタートアップが新たに2000万ドルを調達し、農業に従事するプロ用のソーシャルネットワーク兼データ共有プラットフォームの拡大を目指している。
FBNの共同設立者兼製品担当ヴァイスプレジデントであるCharles Baronによれば、同社のプラットフォームを利用することで、農家の人たちは、地域集会や昔ながらのバーンレイジング(小屋の建設をサポートする近所の集まり)、その他の同業者の集まりにおいてオフラインで行われてきた、農業に関するノウハウの共有をオンライン上で行うことができる。
恐らくこのプラットフォームで最も重要なのが、業界用語で「インプット」と呼ばれる商品の価格情報共有・評価機能だ。インプットには、お金のかかる種子や肥料の他、元気な作物を育てるために土壌にまかれる化学品などが含まれている。
また、FBNのプラットフォームでは、天気や作物の発育、土壌の質や農地の水位を測定することができ、段々と使用例が増えているアグテック(農業テクノロジー)システムから生成されたデータをアップロード、保管、分析することができる。アグテックシステムには、ドローンや、衛生システム、モバイルアプリの他、地上にあるセンサーやカメラが含まれる。
農家や個人の農業コンサルタントは、インプットに対して実際に支払われた価格を知ることで、必要なものに余計なお金をかけることなく、さらには必要以上の量の購入・使用を防ぐことができる。
また、自分の作物に関するデータを分析し、他の人のデータと比較できるため、農家の人たちは市場で広まっている新たな手法や代替製品のうち、何が本当に機能するのかというのを判断することができる。
Baronによれば、農業界は製薬業界と同様に、ブランド名を冠した高価な製品が広く流通している一方、小さな「ノーブランド」の企業が製造する種子やその他のインプットも、高価な製品と同じくらいの効果を持っている。
しかし、種子や肥料を日頃から買っている農家には、近所の薬局のように、高い効能をもったジェネリック医薬品を使えば出費を抑えられるといったアドバイスしてくれる人がこれまでいなかったのだ。BaronはFBNのコミュニティがこの役割を担うことが出来ると言う。
食品や農業に特化したファンドのAcre Venture Partnersが、FBNのシリーズBラウンドを主導し、GV(元Google Ventures)、Kleiner Perkins、DBL Partnersがここに加わった。この新たなラウンドで、これまでのFBNの資金調達総額は4400万ドルに達した。
近年、ベンチャー投資家は農業テクノロジーの分野にとても興味を持っており、食物の生産性向上を目指し、ここ2年で食品や農業にフォーカスしたファンドがいくつも新設された。さらには、もっと大きなテック企業全般への投資を行うファンドのポートフォリオを見ても、アグテック企業の存在感が増してきている。
Campbell Soup Co.を唯一のリミテッド・パートナーに持つAcre VCでパートナーを務めるGareth Astenは、同VCがFBNに投資した理由についてこう語っている。
「農業界では、インプットの供給市場がある種の寡占状態にあります。そのため、農家の人たちが仕入の判断をするときや、サプライヤーとの交渉時に使えるような実際の価格データを提供することで、彼らの出費を抑え、利益を増やし、もっと効率的に作物を育てるためのサポートを行うことができます」
彼は、FBN Procurementと呼ばれる同社のサービスを高く評価している。このサービスでは、ユーザーが欲しい商品といくらなら購入したいかという情報を登録することができる。
その後、FBNが登録されたインプットの生産者のもとへ向かい、大量購入による割引やその他の大幅割引を利用して価格を固定し、商品を購入したユーザーは近くの倉庫にピックアップへ向かうか、自分の農場まで商品を発送してもらうことができる。
投資家は、FBNが調達した資金をスタッフの雇用や農家の間でのFBNの知名度向上、さらには同社のプラットフォームを違う品種の作物やインプットに展開させていくのに使うことを期待しているとAstenは語った。
[原文へ]
(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)