Microsoft AzureがFarmBeatsのプレビュー版を公開し農業テックに参入

Microsoft(マイクロソフト)がフロリダ州オーランドで開催中のイベント「Ignite」で、同社はこれまで主に研究目的だったプロジェクトのAzure FarmBeatsを、パブリックプレビューとしてAzure Marketplaceで米国時間11月4日から公開すると発表した。FarmBeatsは、IoTセンサー、データ分析、機械学習を組み合わせた同社のプロジェクトだ。

GROSSDERSCHAU, GERMANY – AUGUST 14: In this aerial view a combine harvests summer wheat at a cooperative farm on August 14, 2015 near Grossderschau, Germany. The German Farmers’ Association (Deutscher Bauernverband) is due to announce annual grain harvest results this week. Some farmers have reported a disappointing harvest due to the dry weather in recent months. (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

この日の発表でマイクロソフトは「FarmBeatsの目的は、農家が自分の農場のデータとデータドリブンの洞察によって理解を深め直感を強化するものだ」と説明した。FarmBeatsは、センサー、衛星、ドローン、気象観測などさまざまなソースからデータを集め、AIと機械学習によって農家にアクション可能なインテリジェンスを提供することを目指している。

さらにFarmBeatsは、ここで収集され、評価されるデータを利用するアプリを作る開発者のためのプラットフォーム的なものになることも狙っている。

マイクロソフトは開発プロセスに関し、次のように説明している。衛星画像は活用するが、それで農場のすべてのデータを捉えられるわけではない。現場に設置されたセンサーなどのデータが必要で、さまざまな種類のデータをまとめて分析する必要がある。また農場ではインターネットの接続環境が十分でないことも多いため、FarmBeatsはテレビの空いている周波数帯域を利用して接続するマイクロソフトの取り組みを初めて利用するチームになった。そしてもちろん、データの収集にはAzure IoT Edgeを活用する。

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(翻訳:Kaori Koyama)

小さな農家のための農産物マーケットプレイス運営のWeFarmが14億円を調達

FacebookやInkedInなどの巨大ネットワークは、ソーシャルメディアの世界で強大な引力を発揮している。膨大な数のオーディエンスによってそのプラットフォームは、広告や情報を求める人たちにとって、非常に多くの人たちにリーチできる重要な場所だ。しかし、そうした成長と並行して、狭い特定の分野に特化したプラットフォームやネットワークの役割も消えてはいない。

米国時間10月29日、あらゆるコミュニティーの農家に焦点を当てた、そんなネットワークが成長を促進させる投資ラウンドを獲得した。

小規模農家(つまり大手農業ビジュネスに管理されていない農家)のためのマーケットプレイスとネットワークサイトWeFarm(ウィファーム)は、シリーズAの投資ラウンドとして1300万ドル(約14億円)を獲得した。より多くのユーザー(つまり農家)を増やし、農家の要求に応えるサービスを充実させるためにこの資金は使われる。

今回の投資により、WeFarmが調達した資金の総額は2000万ドル(約21億8000万円)となった。このラウンドは、True Ventures(トゥルー・ベンチャーズ)主導のもと、AgFunder(アグファンダー)、June Fund(ジューンファンド)、前回の投資会社であるLocalGlobe(ローカルグローブ)、ADV、 Norrsken Foundation(ノースケン・ファンデーション)その他が出資している。

WeFarmには、現在、190万人の登録ユーザーがおり、マーケットプレイスの提供を開始したところだ。農家と、種子や肥料などの農業資材や農具を扱う業者とを結びつけるもので、最初の8カ月間の運営で100万ドル(約1億800万円)を売り上げた。そこにビジネスの場があるという証だ。同社は、この成長は実際「AmazonやeBayのアリーステージよりも早い」と話していた。

WeFarmは英国ロンドンに本社があるが、同国以外のヨーロッパにもユーザーがいる。創設者でCEOのKenny Ewan(ケニー・ユワン)氏がインタビューで話したところによると、発展途上国の経済圏でさらに多くの堅調な活動や成長が見られるという。そこでは小規模農家が大半を占めているものの、農業従事者は近代的なデジタルサービスの恩恵をほとんど受けられずにいる。

「私たちは、世界の小規模農家のエコシステムを構築しています」とユワン氏。彼によると、世界にはおよそ5億箇所の小規模農地があり、そこで10億あまりの人が働いているという。広さは通常1.5から2ヘクタールほどで、米、コーヒー、畜牛、野菜といった主要商品作物を生産している。「おそらくこれは、グローバルサプライチェーンの75〜80%を占める地球最大の産業です。しかし、まだ誰も彼らのためのものを作っていません。さまざまなレベルでそれは重要な意味を持ちます」

一方、WeFarmが提供するサービスは二重構造になっている。無料で参加できるネットワークは、まずは相談所として機能する。他の農家と同じコミュニティーに暮らしながら、孤立しているような人たちが、農業や小規模農地に関する問題について、互いに質問したり助言を得たりできる。Facebookというより、Stack Exchangeといった感じだ。

それが、WeFarmの2つめの乗り物、つまりマーケットプレイスを自然に成長させる。ユワン氏は、始めは地元の商品供給業者と手を組み(そして重要なこととして業者を審査し)、農家との間を取り持ち、農家が必要とする資材やサービスの広範なエコシステムを築いてきたと話していた。

長期的には、その目的は、小規模農家が資材の交換を行ったり、作物を販売したりできる場所の提供に広がっていく。

販売資材への橋渡しに加え、WeFarmはそれを支える電子商取引の管理も手伝っている。例えば、アフリカなどの地域では、モバイルウォレットが事実上の銀行口座とクレジットカードの代役を果たしているため、SMSで支払いができることがとても重要になるのだ。

「私たちのユーザーの90%にとって、私たちが唯一の利用可能なデジタルサービスになっています。そのため、彼らの信頼に完全に応えることが重要なのです」とユワンは言う。「これは、地球最大の産業の信頼のネットワークであり、私たちはそれを確実に機能させなければなりません」。

True Venturesなどの投資家にとって、これは長期戦になる。金銭的なリターンは道徳的な見返りほど明確ではないかも知れない。

「ケニーとWeFarmのスタッフが世界の農家を力づける姿に、大変に感銘を受けました。その未来に、私たちは大きな可能性を見ています」とTrue Venturesの共同創設者Jon Callaghan(ジョン・キャラハン)氏は声明の中で述べていた。「この会社は、単にインパクトドリブンなだけではありません。WeFarmマーケットプレイスの目覚ましい成長は、食品サプライチェーンを通じて、小規模農家と、あらゆる人に利益をもたらすために彼らが必要とする、より多くのものとを結びつけるという、興奮させられるような商業的好機を実証しています。これはビッグな、地球規模のビジネスです」。

それでも、非常に大きなロングテールであることを考えると、小規模農家コミュニティーの基盤を固め管理ができる企業なら、同じように非常に価値の高いビジネスを手にすることができるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

農業を根本から考え直すCooks Ventureが約13億円を調達

「あなたは、あなたが食べているものが食べている存在です」と、Blue Apron(ブルー・エイプロン)の元COOで、現Cooks Venture(クックス・ベンチャー)の共同創設者およびCEOのMatthew Wadiak(マシュー・ワディアク)氏は言う。

このほど1200万ドル(約12億8000万円)の投資を獲得したCooks Ventureは、現在の穀物の栽培、家畜の給餌、そして究極的には地球環境を保全する方法を考え直そうとしている。彼らの戦略は三段仕込みだ。

まずCooks Ventureは、小規模の農家と契約し、自社の知的資産を応用して環境再生力のある農法を実践する。それは同時に、自社のおよそ320ヘクタールの農場でも行う。そこでは、土壌を守り、地中に二酸化炭素隔離ができる作物の選定も行う。さらに、地中の二酸化炭素量、養分、その他の生物学的用要因を測定し、生物の多様性を高め、害虫の数を減らす。第一線の気候学者たちも、世界中の農場でこれを実践すれば気候変動は逆転すると信じていると、同社は話している。

しかし、製品としての環境再生型農法はCooks Ventureが目指すものの、ほんのひと切れでしかない。結局、Cooks Ventureは畑で何を作るのか?答はニワトリの餌だ。ただし、ずっと昔から使われてきた餌とはわけが違う。

Cooks Ventureのニワトリの餌は、同社のニワトリ専用に作られるものだ。それは、何世代にもわたって選別された、最高に健康な消化器官を持ち自由に外に出られる今では珍しいニワトリだ。簡単に言えば、10年以上かけて遺伝系列を隔離して作られた「エアルーム・チキン」(Heirloom chicken、先祖伝来のニワトリという意味)だ。このニワトリは暑さにも強い。同社がこれを国際展開しようという段階になったときに、異常に暑い地域でも育てられるということだ。

このニワトリは、さまざまな餌に対応できる。通常の養鶏場で使われている餌よりも、食物繊維やタンパク質が多いものが食べられるので、オメガ3脂肪酸の量が多く、味もいいとワディアク氏は言う。さらにCooks Ventureは事業規模を拡大し、処理工場の拡張にも成功したため、週に最大で70万羽のニワトリを出荷できるようになった。

同社の主要な収益モデルが鶏肉の販売であることは明白だ。現在、FreshDirect(フレッシュダイレクト)とGolden Gate Meat Company(ゴールデン・ゲート・ミート・カンパニー)と提携しており、その他多くの提携小売店も近々発表されることになっている。また同時に、同社のウェブサイトでも並行して販売する。

だが今回の投資金は、収益モデルの上流と下流の構築にも役立てられる。Cooks Ventureは農家と手を組み、環境再生型農法を実践するほかに、この環境再生型農法を利用して単位面積あたりの作物のカロリー量を高める、従って収益が増える方法も教えることにしている。それに伴う知的資産、つまりどの作物を育てるべきか、農場に残すべき樹木や池はどれか、どのように輪作するかといった知識が、彼らの貴重な製品となる。

下流では、Cooks Ventureは同社の遺伝系統の増産に興味のある世界中の養鶏農家や企業と手を組みたいと考えている。

これにより同社は環境再生型農法に特化した初の垂直統合型農業企業となる。

ワディアク氏によると同社の最大の挑戦は、人々に環境再生型農法技術を教え、昔ながらの非経済的で環境にも悪い農業システムから方向転換させることだという。

「米国の農業の97%は穀物であり、その作物のほとんどが家畜の餌になっています」とワディアク氏は言う。「この国の家畜給餌システムに対処して、そのシステムに関する政治的な虚偽を正すためにロビー活動を行わなければ、食糧システムを変革し環境再生農法を確立することは大変に困難になります」

さらに彼は、米国の農家は全有権者の2%であるのに対して、数十億ドルがロビー活動に使われ、トウモロコシと大豆の補助金拡大に賛成するよう国会議員に働きかけていると話していた。

今回の1200万ドル(約1億2871万円)は、AMERRA Capital Management(アメラ・キャピタル・マネージメント)の投資によるものだ。

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(翻訳:金井哲夫)

植物の生育に必要な栄養素を効率よく散布する研究結果

カーネギーメロン大学は植物の根に重要な栄養素を供給する新しい方法を発見した。植物を育てる土壌にあらかじめ必要な成分が含まれている必要はない。

この画期的研究によって、植物に肥料や農薬を散布する作業効率が著しく向上する。現在、作物に噴霧される薬剤は、その大部分(CMUのブログによると最大95%)が周囲の土壌に濃縮沈殿物として残留するか、地下水に溶け込む。いずれも長期的に蓄積されると負の連鎖反応を起こす原因となるばかりでなく、本来の目的からみても著しく効率が悪い。

今回新たに学術論文で発表された方法は、肥料と殺虫剤をナノ粒子(直径50 nm以下。人間の毛髪は約7万5000 nm)として植物の葉に噴霧することで効率を高め100%近く吸収させる。噴霧されたナノ粒子は植物の維管束を通って根系に送られる。

この方法を用いることで、農業従事者は植物への抗生物質投与の効率を大きく改善することが可能になり、作物収量に影響を及ぼす植物病に簡単かつ費用効率良く対処できる。植物が吸収する効率が高くなることによって、意図した効果を得るために必要な薬剤の量がが大きく減るため、栄養素や殺虫剤のコスト削減にもなる。

この研究は既存の農地を最大限に活用し、農地に損害を与える薬品の必要量を減らすことで、世界的な食料供給問題に大きな影響を与える可能性を秘めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

農業用ドローンのナイルワークスが16億円を調達、“空からの精密農業”推進へ

農業用ドローンを手がけるナイルワークスは3月14日、INCJ、住友化学、住友商事、クミアイ化学工業、未来創生ファンド、Drone Fundを引受先とする第三者割当増資により、総額で約16億円を調達したことを明らかにした。

2015年創業のナイルワークスは「空からの精密農業」をビジョンに掲げる日本発のドローンスタートアップ。2017年10月にも産業革新機構などから8億円を調達していて、累計の調達額は約24億円になる。

同社ではセンチメートル精度でドローンを完全自動飛行する技術を保有していて、この技術を取り入れた農業用ドローンの開発や生育診断サービスの事業化を進めている。

作物上空30~50cmの至近距離をドローンが飛ぶことで、薬剤の飛散量を大幅に抑えられるのが特徴。搭載したカメラから作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断し、散布する肥料・農薬の量を最適化する技術にも取り組む。

事前に圃場の形を測量することで、タブレットから開始ボタンを押せば経路に沿って離陸から散布、着陸までを自動で行うため、特別な操縦スキルも不要だ。

ナイルワークスによると、2018年夏には全国各地で75回におよぶ実証実験を実施。農作業の省力化を検証し、地域や水稲の品種ごとの生育データをもとに診断技術を磨いてきた。

並行してVAIOを委託先とした量産化体制を住友商事と共に構築し、量産化モデル第1弾である新型機「Nile-T19」の開発にも着手。2019年6月の販売開始に向けて準備を進めているという。

同社では今後も各出資企業・ファンド・組合と連携しながら「保有する技術を水稲以外の作物に展開し、日本のみならず海外にも進出することで、精密農業のリーダーになることを目指します」としている。

コンテナで野菜果物のハウス栽培をするAgricoolがさらに$28Mを調達し中東にも進出

フランスのAgricoolが、昨年に次ぎ今度は2800万ドルの資金調達を行った。同社は、都市部で果物や野菜をコンテナの中で育てることに取り組んでいて、最初の作物は苺(いちご)だ。

今日(米国時間12/2)の投資ラウンドには、Bpifrance, Danone Manifesto Ventures, Marbeuf Capital, Solomon Hykes, そして数名のエンジェルたちが参加した。daphni, XAnge, Henri Seydoux, Kima Venturesなど、これまでの投資家も参加した。

クレイジーに聞こえるかもしれないが、コンテナ栽培は従来の農業の方法よりも効率的だ。たとえば、コンテナなら温度や湿度、光のスペクトルなどをコントロールできる。Agricoolは、太陽光の代わりに大量のLEDを用いる。

その結果には、説得力がある。苺は年中栽培できるし、コンテナは閉じているから水やスペースを節約できる。輸送も簡単だ。

作物は完全に地元産で、遺伝子組み換えなし、農薬なしの苺(等々)だ。苺はすでにパリのMonoprixでも売っている。

Agricoolは2021年までにパリとドバイに計100基のコンテナを設置する予定だ。そのためには新たに200名を雇用する必要がある。苺だけでなく、作物の多様化も計画している。

ぼくはこれまでに、複数回Agricoolを取り上げている。今日までロードマップは変わっていないが、資金は増えた。過去に例がないからあれだけど、コンテナのネットワークを作るにはかなりの資本が要るようだ。でも将来性のある事業だし、排気ガスの抑制にも貢献する。

関連記事: Agricool raises $9.1 million to grow fruits and vegetables in containers(未訳)…コンテナの建設過程を示すスライドあり。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

甲虫の幼虫を高濃度タンパク源として収穫する体験で科学を学習するHive Explorer

Livin Farmsのオフィスの中は、体の向きを変えるのも難しい。でも香港の都心ではこれが普通で、スペースは常日変らず貴重だ。そこは、深圳のハードウェアアクセラレーターHAXが支えるこのスタートアップの、ささやかな拠点だ。デスクをいくつか置くと、もう残りのスペースはない。このスタートアップの最新のプロダクトHiveがドアの横にある。それは一見何の特徴もないトレイが、いくつか重なっているだけのものだ。

でも、ぼくがここに来たのはHive Explorerを見るためだ。その小さなトレイは、部屋の中央に置かれている。上部は開(あ)いている。ドアを開けて入ったときから、その小さな明るい色のプラスチック製品が目を引く。その中身が、奇妙なランダムなリズムでぴくぴく動いている。近づいてよく見ると、茶色く見えたのは実は白で、黒いのは生きている。ミールワームたちが小さなベッドの中で互いに上になったり下になったりしながらうごめいている。チームが置いたカラスムギの残りを、がつがつ食べている。

それらの上には、ネオンイエローのトレイの中に完全に成長した甲虫たちと、2ダースほどの蛹(さなぎ)がいる。成虫はたえず動きまわり、互いにぶつかり合い、ときにはライフサイクルの継続のためにそれ以上のこともする。蛹は横たわり、生きていないように見えるが、ときどきピクッと動いて、中に生命があることを思い出させる。

ExplorerでLivin Farmsはその地平を、STEM教育の世界へ広げようとしている。前のプロダクトはスケーラブルな持続可能性にフォーカスしていたが、この新しいKickstarterプロジェクトは若者や子どもに狙いを定めている。そしてバケツ一杯の甲虫には、学ぶことが山ほどある。たとえば、死だ。ファウンダーのKatharina Ungerは近くの瓶をつかみ、蓋をねじった。

瓶には、乾燥したミルワームがいっぱい詰まっている。彼女はその一つをつまみ、自分の口に放り込んだ。期待を込めて、ぼくの手にも渡した。ぼくも彼女の真似をした。カリッとしている。味がないことはないが、はっきりしない。たぶん、ちょっと塩気がある。でも最大の感触は、気味の悪さだ。下を見ると、今ぼくが食べているものの兄弟である小さな幼虫が、数インチ先で餌を食べ続けている。

The Mountain Goatsの歌詞を引用するなら、それは今や未来のタンパク源だ。Livin Farmsは、幼虫の無味無臭の粉末も作っている。そしてその、持続可能な高濃度タンパク質食品の、ある種の概念実証として、意外にもおいしいグラノーラを作っている。この、世界でもっとも人口密度の高い場所で、同社のミッションは家庭にも浸透している。


[彼女は少しおみやげにくれた。おなかをすかせている誰かのために。]

Explorerには、若者たちに未来の持続可能な農業を見せる意味もある。ただし食品メーカーは、昆虫を食べることに伴う消費者の嫌悪感を打破しなければならない。Explorerのユーザーである子どもたちは、過密を防ぐために幼虫の収穫を奨励される。幼虫は、唐揚げではなく乾煎り(からいり)して食べる。ボックスは、比較的臭気の少ない堆肥作り容器になる。虫たちへの給餌は、人間の食べ残しを投げ込むだけだ。小さな虫たちは、それを噛み砕いていく。下のトレイに、彼らの粉状の廃棄物がたまる。

虫たちの暖房のためのヒーターや、湿度を調節するためのファンもある。それらにより、虫たちが仕事をするための最適の環境が作られる。Livin FarmsはシステムのコントロールをSwiftのコードで公開して、プログラミングという要素も加えようとしている。

ExplorerがKickstarterに出たのは今週だ。初期の出資者はそのボックスを、113ドルで入手できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

精密農業スタートアップのTaranis、農業監視テクノロジーで2000万ドル調達

Taranisは、空中監視とディープラーニングを使って農作物の問題を見つけ出す農業技術(AgTech)のスタートアップだ。本日(米国時間11/6)同社は2000万ドルのシリーズBラウンドをViola Venturesのリードで完了した。既存投資家のNutrien(世界最大級の農薬メーカー)、Wilbur-Ellisのベンチャーキャピタル部門Cavallo Ventures、およびSumitomo Corporation Europeも参加した。

テルアビブ拠点のTaranisは、現在同社の空撮テクノロジーは、高速ドローンまたは有人飛行機に搭載されてアルゼンチン、ブラジル、ウクライナ、よび米国で使用されていると語った。このラウンドで調達した資金を使ってオーストラリアをはじめとする他の国々にも進出する計画だ。

この会社は2015年、Ofir Schlam、Asaf Horvitz、Eli Bukchin、Ayal Karmiの4人によって食料生産を増加するために設立された。Taranisのソフトウェアがターゲットにしているのは、トウモロコシ、綿花、大麦、大豆、サトウキビ、ジャガイモなどの大規模生産作物だ。害虫被害、栄養不足、病害などの問題原因を突き止め、農業従事者に(例えば)虫が作物を食べているところの詳細を写した高解像度の拡大画像を提供する。

Viola VenturesのパートナーZvika Orronはプレスリリースで、「デジタル農業産業を分析した結果、Taranisをこの分野で最初の投資先に選んだことを誇りに思っている。Taranisは農業デジタル化のリーダーになるために必要な要素をすべて兼ね備えている。広範囲な精密農業ソリューション、市場のスケールに対応し、市場進出するために必要な第一線業界パートナー、およびそれを実現させる情熱的なチームが揃っている」

従来の農作物監視は労働集約型であり、センサーを使って土壌品質や施肥量、害虫などの問題を追跡する場合であっても、必ずしも正確ではなかった。コンピュータービジョンとAI技術を使ってこのプロセス(「精密農業」と呼ばれる成長分野)を効率化しようとしている他のVC支援スタートアップには、これもテルアビブ拠点のProsperaArableCeres Imagingらがいる。

農業の巨人らも精密農業スタートアップを買いに動き始めている。たとえば、過去12ヶ月間に、DeereがBlue Riverの買収に合意し、ブラジルのスタートアップStriderがSyngentaに買われた

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Iron Oxが初の完全自動化農場の運用をまもなく開始

これまで2年半をかけて、Iron Oxは、屋内農場のための完全な農業ロボットの開発に取り組んできた。小さな規模で最初のシステム試験を行ったあと、同社は完全自動化された初の生産農場を開設し、すぐにでも農産物の販売を開始する予定だ。

現在、農場では、ロメインレタス、サラダ菜、ケールといった葉物野菜に加え、バジル、コリアンダー、チャイブも育てている。これらの作物の世話をしているのはAngusという重量約450キログラムのロボットで、野菜が植わっている水耕栽培用の大きなボックスを持ち上げて運搬できる。収穫は、Iron Ox製のロボットアームが行う。

Iron Oxの共同創設者でCEOのBrandon Alexanderが私に話したことによると、現在の施設で年間2万6000本の植物を生産できるという。これは、約40アールの屋外の畑での収穫に相当する。Iron Oxの施設は屋内であり、かなりの密度だ。

Alexanderと共同創設者のJon Binneyは、いくつものロボティクス企業を経て、屋内農場を作ろうと決意した。Alexanderの場合、Google Xに勤めていた期間もあったが、そこでは高度なテクノロジーを開発することがおもな目的であり、そのロボットの利用方法はあまり重視されていなかったという。「目新しいロボット製品をいくつも見てきましたが、それは避けたいと思いました」と彼は言う。スタッフを集めながら、倉庫の物流やドローンへの参入も考えたが、結局は農業に落ち着いた。Alexanderによると、事業を成功させるというだけでなく、社会的な利益を生み出すことをしたいと、みんなが思ったからです。

現在、アメリカでは、(Iron Oxが主要な作物として注目している)葉物野菜の大多数は、カリフォルニアとアリゾナで生産されている。とくに、その他の地域が寒冷になる冬には、その傾向が高まる。ということは、1月に東海岸で売られているロメインレタスは、3000キロメートル以上の旅をしてきたことになる。「それが、屋内に切り替えた理由です」とAlexanderは話す。「農場を非中央集権化するのです」

また、屋内の水耕栽培農場では、屋外の農場と比較して、年間30倍もの収穫が可能になる。しかもずっと狭いスペースを使ってだ。

Iron Oxが自動農場を運用できるようになるまでには、山ほどの努力と工学的な技術センスが必要だった。Alexanderによれば、最大の難関は、ロボットアームがステレオカメラで植物を観察して、いつ収穫するかを考えさせるところにあったという。その時期は一様ではない。しかも、自動運用させるためには、信頼性も高くなければならない。

大型ロボットのAngusは、約360キロもある農作物の栽培用パレットを持ち上げて、ロボットアームのところまで運ぶ。それを正しく行えるようになるまでにも、かなりの時間がかかった。あまり速く動かすと、床が水浸しになって掃除が大変になる。

植物のモニターシステム、成長、植物を見守るセンサー、水耕栽培システムのすべては、クラウドベースのサービスで管理されている。それがロボットに収穫の時期や必要な作業を伝えることになっている。ロボットたちは、それを受けて自律的に仕事をこなすのだ。

しかし、意外だったのは、完全な屋内農場ではLED照明のための電気代が大変な額になり、利益が出ないとわかったことだ。そこで、彼らは考え方を一歩進めて、昔ながらの温室に高効率のLED照明で光を補強する方法に賭けることにした。

そうなれば、街の真ん中に農場を作ること不可能になる。温室を上下に重ねることはできないからだ。だがAlexanderは、たとえ街から30キロ離れた場所に設置しなければならないとしても、何千キロも離れた場所からスーパーまで野菜を運ぶよりはましだと話している。

彼らは、必要なものは何かを知るために、農家とシェフの両方から時間をかけてよく話を聞いたとAlexanderは強調している。農家は、働き手が少ないことを不満に感じている。それは理解できる。農業における労働人口の減少は、農家にとって大きな問題になっている。とくにカリフォルニアのような地域では顕著だ。シェフにとって、もっとも重要なのは、当然ながら品質だ。しかも、予測が立ち、品質が一貫していることも大切になる。

現在のところ、最初の農場からの出荷を開始したあと、彼らはさらに農場を増やし、規模も大きくしてゆく計画だ。Iron Oxにはその資金がある。今年の初めに獲得した300万ドル(約3億4200万円)の投資ラウンドを含め、総額で500万ドル(約5億7000万円)以上を調達している。

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(翻訳:金井哲夫)

あなたが想像しているよりもずっと早く、野菜はロボットによって収穫されるようになる

近い将来、アメリカ中の食料品店の棚に並ぶ野菜はロボットによって収穫されたものになるだろう。

工場で使われるようになったオートメーション革命は、さらに米国の農業産業への道を開拓し、その最初の展開場所は現在米国内に点在し始めている屋内農場になるだろう。

このロボット革命の先頭に立つのが、Root AIのような企業だ。Root AIは初のロボット収穫と農場最適化技術を市場に登場させるために、230万ドルを調達したばかりである。

Root AIは、現在世界に存在する230万平方フィート(約6万4600坪)の屋内農場に焦点を当てており、屋内農作物を栽培する農家の数の増加に合わせて拡大することを望んでいる。Agrilystのような分析会社の推定によれば、屋内農場は2200万平方フィート(約61万8200坪:主に米国内)程度まで広がる可能性もある。

これはおおよそ505エーカー(約204.4ヘクタール)の広さに過ぎない。現在米国内で耕作が行われている9億エーカー(3億6400万ヘクタール)の土地にくらべれば本当に些細なものである。しかしそれらの室内農場は、従来の農場に比べて、生産量がはるかに高く、リソース使用量ははるかに少なくて済むという大きな利点を持っている。屋内栽培されるトマトや葉物のような作物の単位面積あたりの収穫量は、屋外農場の10倍以上に達する。

Root AIのエグゼクティブチームは、その収穫量をさらに高めることができると考えている。

36歳のJosh Lessingと28歳のRyan Knopfという、ロボット業界の2つの新星によって創業されたRootは、元々は2人が以前働いていたSoft Roboticsで行っていた仕事の延長線上にある。Soft Roboticsはロボット操作に対する新しい技術を開拓していた。

ハーバード大学教授のGeorge Whitesideによって行われていた研究から、スピンオフしたSoft Roboticsのチームは、正式なロボット開発の訓練を受けないまま、数年に渡りロボット開発を続けてきた技術者たちによって、主に構成されていた。Knopfは、ペンシルバニア大学で学んだロボット工学者であり、伝統的なロボット工学の背景をもつ限られた従業員たちの1人だった。

「私たちはSoftでコア技術を開発する最初の2人でした」とLessingは言う。「この技術は現在食品産業で多用されています。柔らかいグリッパーを採用したことで…デリケートなフードグリッパーを展開しやすくなりました。とても扱いやすい機械デザインのおかげで食品の品質を保ち易くなるのです。例えば物を掴むことができる、膨張式の指などです」。

Root AIの共同創業者のJosh LessingとRyan Knopf

同社が取り組んでいた方法は、人間の手の器用さを再現するという非常に厄介な問題に、他のロボット会社がアプローチしていたやり方とは、根本的に異なったものだった。「従来のロボット技術の観点からは、私たちはあらゆる間違いを犯していたために、従来のロボットができることを実行することができませんでした。最終的には私たちは、新しい部品を使って、適応性のあるグリップを作成することができました」とLessingは語る。

Soft Roboticsは革新的な仕事を続けているが、KnopfとLessingの2人は、彼らの知識がとても必要とされている分野にチャンスを見出した ―― それが農業だ。「農業は沢山の複雑な課題に直面していていますし、同時に私たちはもっともっと多くの食料を必要としています」とLessingは語る。「そして農業における近年の多くの課題は、梱包や加工施設ではなく、現場に存在しています。そこでRyanと私は、どのようにAIを生産者の役に立てることができるかについての、新しい取り組みを始めることにしたのです」。

Root AIの最初のプロダクトは、屋内農業施設で稼働するモバイルロボットだ。それはトマトを摘み上げ、作物を見てその健康状態を評価し、ロボットが作物(当初はトマト)を連続的にかつ人間によるものよりも効率的に栽培できるようにするために、剪定や熟成状況の観察と管理を行う。

Root AIのロボットには、カラー画像と3D深度情報の両方を収集するために、複数のカメラが搭載されていいる(ロボット自身のアームに搭載された1つは「道具」の視野として使われ、ロボットの側面には固定画角のカメラが1つ装備されている)。また同社は、関心のあるオブジェクトを検出し、バウンディングボックスでそれらにラベルを付けるための、カスタマイズされた畳み込みニューラルネットワークを開発した。果物の場所以外にも、果物の性質(熟成度、サイズ、品質等級など)を測定するために、Root AIは他の独自視覚処理技術を使用している。こうした処理の全てが、データセンターへの遠隔アクセスに頼ることなく、ロボットの上で行われる。処理はリアルタイムだ。

Rootの創業者たちが指摘するように、このロボットたちのようなツールは徐々に有用さが増してくるだろう。なぜなら米国の屋内そして屋外農業の両者が、徐々に労働力不足に陥っているからだ

その一方で、産業としての農業にのしかかる圧力は、ロボットによって支援される屋内農業を、徐々に生産のためのより現実的な選択肢としている。絶えることのない人口増加と気候変動による耕作地の減少は、単位面積あたり最大20倍の果物と野菜を収穫することが可能で、使用する水の量が最大90%少なくて済む屋内農場を、極めて魅力的なものにしている。

Howling Farms、Mucci Farms、Del Fresco Produce、そしてNaturefreshなどのサプライヤーたちは、すでに消費者のために多くの果物と野菜を生産している、とLessingは語る。「彼らは、より広い社会にとって意味のある方法で、農業生産を調整してきました。それは持続可能な手法であり、農場を都市部に配置することを可能にします。そしてはるかに単純な物流ネットワークを有しています」。

サプライチェーンの複雑さとコストを削減する能力は、Walmart やWhole Foodsなどの小売業者たちにとって有益だ。彼らはより新鮮で、長持ちする農産物を消費者に届けるために競い合っている、とLessingは語った。投資家たちも納得しているようだ。Root AIは、First Round CapitalAccompliceSchematic VenturesLiquid2 Ventures、そしてHalf Court Venturesといったファームからラウンドを通して230万ドルを調達することができた。

「農場にはとても多くの役割があり、私たちはそれらすべての分野を補完しようとしています」とLessing氏は語る。「今、私たちは異なる生産者たちと、多くの技術実験を行っています。例えば成熟度の計測やトマトを掴むグリッパーの能力などについてです。来年にはパイロット生産を開始します」。

地球温暖化が食糧生産への厳しさを強めていく中で、Lessingは彼のテクノロジーに対する需要が高まっているのを感じている。

「個人的には、どれくらいの食料を私たちは必要とするのか、そしてどこでそれを作れば良いのか、という懸念を持っています」とLessingは言う。「屋内農業は、どこでも食料を生産できるようにすることに注力しています。もし環境を制御できるならば、食料を生産する能力を手に入れることができます…人びとの基本的なニーズを満たすことは、私の人生で成し遂げることのできる最も影響あることの1つなのです」。

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(翻訳:sako)

インディーゲームの傑作Stardew Valleyが8月1日からマルチプレーヤーにも対応

人気の農業RPGインディーゲームStardew Valleyは、時代を超えた名作と言ってよいだろう(要素は農業だけではないが)。でもマルチプレーヤーができないと、ちょっとさびしい。農業も、魚釣りも、鉱山の探検も、友だちと一緒ならもっと楽しいだろう。〔日本語化はここにあるリンク先を参考に。日本語ホームページあり。…最近は輸入版でも最初から日本語対応してるらしい…〕

でも、もうすぐそれが実現する。1年近くの開発努力の結果、8月1日からこのゲームに協力型マルチプレーヤープレイが加わる。

最初のうち、マルチプレーヤーはPCとMacとLinuxのみだ。下のトレーラーを見るとNintendo Switch/PS4/Xbox Oneは“もうすぐ”とあるが、具体的なスケジュールはない。

マルチプレーヤーのStardew Valleyは一つの農場が最大で4人のプレーヤーをサポートし、同じお金と農地を共有する。ファンのwikiページによると、グループはゲームのいくつかの要素(利益率、アイテムの値段など)をカスタマイズできる。いろんな仕事は、一人より四人でやる方が楽だから、要素をカスタマイズして難易度を上げるとよいだろう。

Stardew Valleyは、たった一人の人間が作ったとは思えないほど細部が凝っている。版元は企業になっているが、アートも音楽もプログラミングも、すべてEric “ConcernedApe” Barone個人の作だ。今年の初めの時点でこのゲームは、350万本以上売れた、とされている〔Amazonやsteamなどで〕。GQに、Baroneの長い々々紹介/インタビュー記事がある。

上のトレーラーが出たあと、BaroneはTwitterですこし説明をしている:

  • すでにマルチプレーヤーのベータをやった人にとっては、いくつかの“最終的バグフィックス”以外に大きな変更はない。
  • コンソール(ゲーム専用機)バージョンは目下開発中だが、まだ明確なスケジュールはない。
  • マルチプレーヤーを画面分割や共有画面でやることはできない。各自が、自分のデバイスでプレイしなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

屋内農業をセンサーデータで助けるAgrilystが新たに$1.5Mを調達、中国進出もねらう

屋内農業の管理をセンサーのデータで補助するAgrilystが今日(米国時間2/7)、150万ドルの資金調達を発表した。投資家はiSelect Fund, Argonautic Ventures, Horizons Lab(Horizons Ventureのシードファンド), Onlan Capital Fundらの面々だ。既存の投資家Compoundとニューヨーク州のNew York State Innovation Capital Fundも、このラウンドにつき合った。Agrilystとってこれは、2016年の100万ドル以来の資金調達だ。

Agrilystの協同ファウンダーでCEOのAllison Kopfによると、2015年の本誌TechCrunch主催Disrupt San FranciscoのStartup Battlefieldで優勝した同社は、最近かなり好調だった。2017年には新しい顧客が100増えて、売上も顧客数も2016年以来500%増加した。同社のサービスは今では10か国で利用でき、そのツールは50種以上の野菜と800種のその他作物をサポートしている。

同社は、ローンチしたとき、大麻の屋内生産者のためのツールだとは絶対に見られたくない、と頑強に主張していたが、最近では大麻のサポートも加わり、また花卉や昆虫の屋内生産もサポートしている。

“今やコンピューターを使用するコストはほとんどだゼロだし、どんな作物でもその成長と健康と生態をモニタできるほどのリソースがある”、とHorizons LabのアドバイザーPhil Chenは語る。“Allisonと彼女のAgrilystのチームには、そのデータを解読して未来の食糧を確保する能力がある”。

チームに関しては、同社は最近新しいCTOとカスタマーサクセス担当VPを新たに迎えた。協同ファウンダーで最初のCTOだったJason Campは昨年、同社を去った。

Agrilystが計画している新たな資金の使途は、その成長と新市場開拓、そして製品開発だ。新たな投資家の多く(Horizons, Argonautic, Onlan)が巨大な中国市場に注目しているので、もちろん中国への進出も行われるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「競合はフィットネスジム」遊休農地を活用した貸し農園を運営するアグリメディアが2.5億円を調達

サポート付き貸し農園「シェア畑」をはじめ農業関連のサービスを複数手がけているアグリメディア。同社は10月20日、グロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とする第三者割当増資により総額2.5億円を調達したことを明らかにした。また今回の増資にともなって、グロービスの今野穣氏が社外取締役に就任する予定だという。

アグリメディアは前回2016年12月にSMBCベンチャーキャピタル、ちばぎんキャピタル、事業会社から1億円を調達。それ以前にも2015年9月から2016年4月にかけて事業会社から資本業務提携を通じて1億3700万円を、2013年1月に三菱UFJキャピタルなどから4300万円を調達している。

首都圏中心に70ヶ所の農園を開園、利用者数は1.5万人超え

アグリメディアでは「都市と農業をつなぐ」をコンセプトに、主力事業として「農業体験」「農場人材」「農業流通」の3つを運営している。

  • 農業体験事業 : サポート付き市民農園「シェア畑」、収穫体験付きBBQ「ベジQ」など
  • 農業人材事業 : 農業特化の求人情報・人材紹介サービス「あぐりナビ
  • 農業流通事業 : 道の駅や直売所などを活用した流通プラットフォーム

創業期から行っているのが農業体験事業で、中でもシェア畑がアグリメディアにとって核となっている。シェア畑は使われずに放置されている遊休農地と、農業を体験したい人をマッチングするサービス。

このサービスがユニークなのは単に畑をレンタルするのではなく、農具やナレッジといった作物の栽培に必要なアイテムがセットになっていること。まず野菜の種や苗、肥料、農具、資材が畑に備えられているので自分で準備する必要がない。加えて経験豊富な菜園アドバイザーが週に4回以上畑へ出勤していて、具体的なアドバイスをもらえる。

アグリメディア代表取締役の諸藤貴志氏に話を聞くと、サービス設計時に「ユーザーがサービスを使う際に障壁となりうるものを、徹底して取り除く」ことを意識したそうだ。

「実は都市部でも農業をやってみたいという人は多い。自治体や市民農園が畑を提供しているケースは従来からあったが『畑を貸すから後は全部自分でやってね』ではハードルが高い。そこで手ぶらで行けて、趣味やレジャー感覚で農業を体験できるというアプローチに可能性を感じた」(諸藤氏)

シェア畑は2012年のリリースで現在扱っている畑・農園は約70ヶ所、利用者数も1.5万人を超えた。利用者の数自体も増えているが、そのニーズや用途も広がってきているという。

「近年では法人の利用も増えてきた。福利厚生や会員とのコミュニケーションの場を作る目的で一般企業が活用しているほか、幼稚園や老人ホームでも使われている。中でも最近多いのが飲食店。自社農園として畑をレンタルし、ベビーリーフなど育てた野菜を店舗で提供するという形だ。自社で直接農家とやりとりをするのは敷居が高いということもあり、シェア畑を活用いただいている」(諸藤氏)

個人利用者も夫婦やファミリーからシニア層まで幅広いため、中上級者向けの農園などニーズに応じたサービスの提供も始めている。

中上級者向けの「 シェア畑Masters 」

今回諸藤氏の話を聞いていて興味深かったのが、フィットネスジムをベンチマークにしているという話だ。菜園アドバイザーがついて野菜作りを継続的にサポートしていく仕組みや、サービス設計などは特に参考にしている。立地や条件によっても異なるがシェア畑の料金は月額8000円から9000円が多く、実際にフィットネスと比較しているユーザーも少なくないという。

「ユーザーからは『シェア畑の場合は2人で月額9000円だからいいんだよね』という声もある。空いた時間にジムで体を動かすか、畑で農作業をやりながら体を動かすか。趣味として農業をやるというライフスタイルをさらに広げていきたい」(諸藤氏)

農業プラットフォームの構築や地方活性事業を本格化

アグリメディア代表取締役の諸藤貴志氏

アグリメディアは2011年に住友不動産出身の諸藤氏が創業したスタートアップ。前職時代に貸し会議室の新規事業を手がけた経験や、起業家である兄の影響もあって起業を志した(諸藤氏の兄はエス・エム・エス創業者の諸藤周平氏)。

変化が大きい業界や課題が大きい業界で事業機会を探った結果、農業領域で起業することを決意。実家が専業農家である友人とともに事業を始めた。当時から農業の収益を上げていくためには都市部の人を巻き込む必要性を感じていたそうで、目をつけたのが趣味やレジャーとして農業を体験するというアプローチだ。

最初に立ち上げたのは農業体験イベントプラットフォームの「ノウジョウシェア」。そしてノウジョウシェアを運営する中で遊休農地が増えていることを実感し、農業体験と結びつける形でサービス化したのがシェア畑だ。2017年4月には農業分野に特化した人材事業を運営するアグリ・コミュニティを子会社化するなど、近年は農業体験だけでなく人材や流通事業にも力を入れている。

アグリメディアがこれから力を入れていくのは、ITを活用した農業プラットフォームの構築と地域活性事業だ。

農業プラットフォームについては、シェア畑を運営する中で蓄積されてきたデータを活用した栽培ナレッジをツールとして生産者に提供していく。加えて地域の道の駅や直売所と都市住人をつなぐ流通プラットフォームを準備している。

「道の駅や直売所では余った野菜が廃棄されたり、農家が自分たちで消費したりすることも多い。POSデータを活用しながらこの直売所と野菜を買いたい人を直接繋ぐプラットフォームを作る。個別の農家とユーザーをつなぐサービスはあったが、それでは物流コストや手間の問題など難しい部分もある。道の駅や直売所は日本全国の農産物流通額の16%を担い、規模は約1兆円。この領域にはまだ成長余地がある」(諸藤氏)

またアグリメディアには自治体から遊休農地の活用や事業サポート、農業人材の呼び込みなどの問い合わせが集まっているという。この地域活性事業も手がけながら「農業の収益性改善に繋がるサービスを複数扱うプラットフォーマー」を目指していく。

蜂のインターネット(Internet of Bees)で蜂のコロニーの健康をモニタする

今や周知の事実として、全世界の蜂の生息数は、何かを警報するかのように、急速に減りつつある。しかもわれわれ世間の一般人と違って養蜂家は、彼らの巣箱をつねに注意深く監視しなければならない。でも、何千という巣箱を抱える大規模養蜂家にとっては、巣箱のモニタリングは容易でない仕事だ。そこでカナダの研究者が開発したモニタリングシステムは、蜂たちの羽音を聴いて健康状態などをチェックする。

サイモンフレーザー大学の大学院生Oldooz Pooyanfarが作ったデータ収集デバイスは、今後の改良により、今多くの蜂たちを見舞っている謎のような苦境、蜂のコロニーの崩壊という異状の原因究明に役立つ、と期待されている。

そのデバイスは、マイクロフォンと温度センサーと湿度センサーを使用し、最終的には加速度計も含める予定だ。それを巣箱に取り付けると、コロニーの動態がまるでドローンで遠隔データを収集したときのように、手に取るように分かる。

“このモニタリングシステムでは、蜂たちが今‘何を言っているのか’というデータを、リアルタイムで集めることができる。彼らの、食糧調達の状況や、群飛の様子、女王蜂の存在もしくは不在なども分かる”、Pooyanfarはニュースリリースでこう述べている。

今後デバイスの台数が増えて、大量のデータがリアルタイムで集まるようになれば、ニューラルネットワークを訓練して問題を突き止められるようになるだろう。Pooyanfarが今執筆している学位論文は、研究開発のこの部分を扱っている。

現状では一般市販の部品の寄せ集めなので、必要以上に大きいし、費用も高い。しかし専用のセンサーパッケージを大量に特注できるようになれば、かなり安上がりになるだろう。彼女は今、地元の養蜂家たちと協働してハードウェアとソフトウェアを開発している。養蜂家たちも、かなりの関心を示しているそうだ。

Pooyanfarのこの研究開発は、Mitacs Accelerate事業が資金を提供している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AIとコンピュータービジョンを使って農地の点検と分析を行うProsperaがシリーズBで$15Mを調達…農学の広範な学際化を目指す

テルアビブのProsperaは、コンピュータービジョンと人工知能を利用して農地の様子をチェックする。同社はこのほど、Qualcomm Venturesが率いるシリーズBのラウンドで1500万ドルを調達した。ほかにCisco Investments, ICV, 以前の投資家Bessemer Venture Partnersらがこのラウンドに参加した。これで同社の調達総額は2200万ドルになる(シリーズAは2016年7月に本誌が取り上げた)。

新たな資金は、グローバル市場への参加の拡大と、農家と接する現場担当者の増員に充てられる。農家が収入を上げるためには、“インドアからアウトドアへの移行が必要だ。アメリカの土地の40%は農地だから”、と協同ファウンダーでCEOのDaniel Koppelは語る。

シリーズAを獲得してから同社は、ヨーロッパ、メキシコ、アメリカなどに新しい顧客を開拓してきた。顧客の中には、流通大手のWalmart, Tesco, Sainbury’s, Aldiなどに産品を納めている農家もいる。

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Koppelによると、同社の技術も、害虫や病害の自動検出から、“農業生産のあらゆる側面のチェック”へと進化してきた。それには、作物栽培学, 耕種学, 農地管理学などの専門的農業科学の分野が含まれ、また生産性を上げるための労働管理も無視できない分野だ。

今ではDJIAgribotixなどのドローン企業がアグテック分野に進出しているが、Prosperaの場合も、投資家のQualcommCiscoが、ドローンの利用を同社に導入しようとしている。

Koppelは、それらドローン屋さんたちをコンペティターとはみなさず、むしろ将来のパートナーと考えている。“ドローンは私たちの分析のための、価値ある新しいデータを提供してくれるだろう。データが一層充実すれば、われわれが顧客に提供できる価値も大きくなる”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

農場は工場ではない

【編集部注】著者のGunnar LovelaceはThrive Marketの創業者である。

今日の食糧のほとんどは工業化農業(industrial agriculture)によって生産されている。それが問題だ。

工業化された農業は、本質的に農場を工場へと転換する。ここで例えば遺伝子組み換え農作物(トウモロコシ、大豆、小麦)や家畜(牛、鶏、豚肉)などを機械的生産手段で作るためには、化学肥料、農薬、大量の灌漑用水、そして石油が必要とされる。

こうしたこと全てが、見えない危険なコストを孕む、石油と農薬に大きく依存した、持続可能性がなく時代遅れのシステムへとつながる。工業化農業は私たちの国土の表土を急速に損ないつつある。専門家たちは、私たちがより持続可能な農作手段に移行しなければ、収穫量が6割以下になるだろうと警告している。

また、農地に対して農薬を継続的に使用することで、土壌、水系、そして私たちが呼吸する空気が汚染されていく。最近の研究によれば、93%のアメリカ人がグリホサートに対する陽性反応を示しているが、この物質は最も利用量の多い除草剤であり、WHOによって発癌の可能性ありとして分類されているものだ。

しかし、これがいつまでもそうあらねばならないというわけではない。技術に裏打ちされた有機農法への移行によって、私たちの表土は守られ、合成物質に対する依存は減らされ、今日排出されているCO2の全量を補足することさえ可能なのだ。

「私たちが食べる方法が、世界がどのように使われるかに対して大きな影響を与えます」

Wendell Berry

ここに基本に立ち返り、そしてより良くして行くために役立つ3つの提案がある。

有機農法

工業化農業の主な推進要因は、1エーカーあたりより多くの食糧を栽培することによって農場をより生産的にすることだ。これを実現するために、農業従事者たちは化学合成品と機械化に頼るだけでなく、失敗する確率が少なく、多量の農薬に耐えることができる遺伝子組み換え(GM)種子を使用する。

一般に有機農法は、化学合成品やGM種子の助けを借りないため、工業化された農家と同等の収穫高を挙げることはできないものと誤解されている。これは事実ではない。近年明らかになった長期的な研究によれば、様々な作物に関して、工業的農法と有機的農法の間には収穫量の差がないことがわかっただけでなく。平均的には、有機農法を用いた作物は従来の作物に比べて2倍の収益をもたらしていることもわかったのだ。

さらに、遺伝子組換え作物は、非常に高レベルの有毒除草剤、特にモンサントの除草剤Roundupの有効成分であるグリホサートに耐えるようにデザインされている。過去20年間に約118万トン以上のグリホサートが米国内の作物に散布されている。GM作物(米国で栽培された大豆の94%ならびにトウモロコシの89%)は高レベルのグリホサートに耐えることができるため、植物はこの有毒な化学物質を吸収し、食糧、水系、空気へと拡散し、最終的には私たちの体に入ることになる。

現代的な有機農法への転換は、農家により多くの利益をもたらすだけでなく、遺伝子組み換えに無縁で栄養的にも優れた作物を生み出す。これは私たちの環境に対して大いなる恩恵を与えるものだ。

Farmers Business Networkは、農業専門家たちのための、専門的なソーシャル・ネットワーク兼データ共有プラットフォームだ。

効率的なエネルギーと水の利用

有機農法と21世紀の技術を組み合わせることで得られる、大きな利点がある。例えば太陽電池で駆動される無線タグを使用するような革新的な灌漑技術は、極めて高い精度で作物に水を供給することが可能で、農場に影響を与えずに劇的な節水を実現することができる。私たちはThrive Market Collectionプロダクトのために有機トマトを調達するにあたり、同種の技術を効率の観点から活用して、年間約1040万リットルの水と400万キロワットの電力を節約しているパートナーを発見した。

カリフォルニアには、水を使わずに植物に栄養を与える「乾地農法(dry farming)」技術を使っている農家もいる。健全な土壌中に含まれる水と栄養を用いて作物を維持しているのだ。

持続可能な農法の実践に焦点を当て、水の効率を高めるための、より革新的な技術の利用への移行によって、持続可能な農場は将来の水不足に生き残ることができるだけではなく、反映することができるようになる。

農場に設置されたArable Pulsepodは、地表から作物に関するデータを収集する。

土壌管理

私たちの農業システムの工業化には気候の要素があり、それが私たちの表土を破壊している。専門家たちは、私たちが化学肥料や農薬に頼って1つの作物を集中生産する、破壊的な工業化農業の習慣から、より持続可能な農法へと移行しなければ、収穫量が6割以下に減少するだろうと予測している。

そここそが、現代の有機農法が入り込むべき場所だ。有機農法について考える人の多くは、通常はその行為自身の美徳について意識し、より風味豊かで、一般的にはより倫理的に生産されていると考えている。これは事実だが、有機農法は健康な土壌作りを促進するため、環境にも良い。

土壌が健康で、農薬や化学肥料が使われていない場合、栄養循環、水のろ過、保水などの一連の重要な機能を発揮することができる。栄養循環は、有機農産物が従来の農産物よりもはるかに美味しくなる主たる理由だ、栄養素が詰まっているからだ。さらに、健康な土壌は、化学肥料を含む土壌よりも多くの水分を保持することができる。土壌有機物が1%ずつ増加すると、1エーカー(約0.4ヘクタール)当たり2万ガロン(約7万6000リットル)の水がより多く土壌に保持される。

健康な土壌には空中から二酸化炭素を取り込む力もある。Rodale研究所の発表によれば、もし私たちが、明日世界の農場を有機農法に移行すれば、今日排出されている全ての二酸化炭素を吸収することができるということだ。

食物を消費するあなたは、現在の農業システムのアクティブなプレイヤーだ。そして私たちの農業の未来への鍵を握っているのだ。工業化農法から生み出された持続可能ではないプロダクトを購入する代わりに、有機農法のプロダクトを購入するようにすることで、私たちは持続可能な農業基盤により多くの資源を注ぎ込むことができる。そのことは、入手しやすさを向上させ価格を引き下げるだけでなく、私たち全員のための持続可能な未来を生み出すことができるのだ。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: TYLER OLSON/SHUTTERSTOCK

これからはスーパーで買いたい野菜を収穫するようになるかもしれない――Infarmの垂直農業システム

何千マイルも離れた農場で大量生産され、ポリ袋に入れられたハーブの切れっ端の代わりに、小さなバジル農園がおさまった照明付きのコンテナが置いてあるスーパーを思い浮かべてみてほしい。

さまざまなセンサーが作物を観察し、水や肥料はオンラインシステムで管理されている。同心円上に植えられたバジルは、成長度合いに沿って真ん中から外側に向かって広がり、1番外側のものはお客さんが収穫できる状態にある。

このような未来は、もはや想像の世界ではなくなった。SF作家William Gibsonの言葉を言い換えれば、「未来の農場はすでにここにある。ただ行き渡っていないだけだ」ということだ。

3、4年前にこのアイディアを発表した頃は、正気ではないと思われていました

— Infarm共同ファウンダー Erez Galonska

ベルリンに拠点を置き、40人超の社員を抱えるInfarmは、レタスなどの野菜やハーブ、さらにはフルーツまで育てられるような”屋内垂直農業”システムを開発している。コンセプト自体はそこまで新しいものではないかもしれない。日本では限られたスペースを使って多大な需要に応えるため、垂直農業が早くから発達してきた。しかし、他のスタートアップとInfarmの違いは、モジュラー型のアプローチと市場戦略にある。

これはどういうことかというと、同社はひとつひとつは小さくとも組み合わせることで無限大に広げられる農場を開発しており、設置場所も人里離れた倉庫ではなく、食料品店やレストラン、ショッピングモール、学校など消費者が作物と間近に触れ合え、収穫までできるような場所が想定されている。

「3、4年前にこのアイディアを発表した頃は、正気ではないと思われていました」と共同ファウンダーのErez Galonskaは話す。「Infarmは世界で初めてスーパーマーケットに垂直農場を設置しました。昨年のことで、ヨーロッパ最大のホールセラーであるMetro Groupに私たちのシステムを導入したのですが、今では他のスーパーマーケットからも同じことをしたいという要望をもらっています」

それぞれの農場ユニットで個別のエコシステムが成り立っており、作物が育つのに理想的な環境をつくりあげています

— Infarm共同ファウンダー Osnat Michaeli

最近ではドイツ最大のスーパーマーケットチェーンEDEKAともパートナーシップを結んだInfarm。彼らのシステムに対する需要には消費者行動の変化が関係しており、「消費者はより新鮮で、より持続可能な商品を求めています」と共同ファウンダーのOsnat Michaeliは語った(3人いる共同ファウンダーのもう一人はErezの兄弟のGuy Galonska)。食品業界全体としても、サプライチェーンの非効率な部分を解消し、ゴミを減らすのに役立つようなテクノロジーが求められていると彼女は言う。

「私たちの食生活の影響で、一年中栽培できる作物への需要が生まれました。しかし、もちろん中にはある季節にしか育たないものや、地球の裏側でしかとれないものもあります。長期間の輸送に耐えられるような野菜は、新鮮さや栄養に欠けるばかりか、農薬や除草剤に覆われていることも多々あります」

それとは対照的に、Infarmのシステムでは化学農薬が使われておらず、賞味期限の長さや大量生産ができるかといったことよりも、味や色、栄養価を優先して作物を育てることができる。屋内に設置できることから季節性も関係なく、生産地と消費者の間にある距離も完全になくなる。これ以上に新鮮な作物はないだろう。

「私たちの農場の裏では、強力なハードウェアとソフトウェアから構成されたプラットフォームが各作業を正確に行っています」とMichaeliは説明する。「それぞれの農場ユニットで個別のエコシステムが成り立っており、作物が育つのに理想的な環境をつくりあげています。さらにInfarmでは、作物の味や色、栄養価を最大化するために、光のスペクトルや温度、酸性度、肥料をそれぞれの作物ごとに調整したレシピも開発しており、プロバンスのルッコラやメキシカンタラゴン、モロッカンミントまで栽培できます」

Infarmの垂直農業システムは、作物を「毎日、半永久的に収穫」できるように開発されてきた。ひまわりの花びらからヒントを得て、作物が植えられるトレーは苗の大きさや成長度合いによって中心から外周へ移動するようになっているほか、肥料の補充はカートリッジを取り替えるだけでよく、水やりも自動化されている。

さらに、それぞれの農場内に並べられたセンサーがデータを収集・記録するため、設置場所から離れた場所にいるInfarmの植物の専門家やテクノロジーチームは、遠隔で作物の状況を観察し、リアルタイムで設定を最適化したり、温度変化などの異常事態に対応したりできる。

「スマートなシステムのおかげで、いつ、どの作物を収穫すればいいのかがわかる上、実際の収穫はお客さんの手で行われます」とGalonskaは語る。「さらに機械学習技術によって、将来起こりそうな問題についても知ることができます」

新しいハーブや野菜を取り扱うときは、作物のタイプによって、専門家とエンジニアが、肥料や湿度、温度、光の強さやスペクトルなどから構成されるレシピ(もしくはアルゴリズム)を開発しており、個々のシステムのレシピは栽培されている作物によって変わってくる。

IoT、ビッグデータ、クラウドアナリティクスという組合せを考えると、Infarmのプロダクトは「FaaS:Farming-as-a-Service(サービスとしての農業)」のようだと言える。さらに、スペースの限りモジュラー型の農場を広げられるというプロダクトの性質は、ボタンひとつで容量を増やせるクラウドサービスにも少し似ている。

上記のような特徴を備えたInfarmのビジネスは、作物の種類という意味でも、収穫量という意味でもスケール化が可能だ。スーパーマーケットであれば、お客さんが近くで作物を見られるように数種類だけ店内で栽培し、店の奥に在庫をストックしておくということもできるし、大手のオンラインショップであれば、数百種類の作物を何千ユニットも同時に育てることもできる。

このビジネスチャンスに投資家が気づかないわけがない。

最近Infarmは、ベルリンのCherry Venturesがリードインベスターを務めたラウンドで400万ユーロを調達した。このラウンドには、他にも社会投資家のQuadiaやロンドンのLocalGlobe、Atlantic Food Labs、デザイン会社のIdeo、Demand Analytics、エンジェル投資家などが参加していた。

Cherry VenturesのファウンディングパートナーであるChristian Meermannは、他の垂直農業ビジネスと比べる中で、Infarmが開発したシステムの分散型の性質が特に目を引いたと話す。つまりInfarmは、大規模な農業施設を自ら準備することなく各地に農場を置き、クラウド技術を使って一箇所から全てを観察・管理できるネットワークを構築しようとしているのだと彼は言う。

さらにMeermannは、Infarmの機械学習テクノロジーも評価している。機械学習テクノロジーによって、それぞれの作物にピッタリのレシピを作れるため、収穫物の味が大幅に向上するだけでなく、普段見ることがないような作物も育てることができるのだ。

「Infarmを設立して間もない頃は、周りの人から”理想主義的な夢想家”だと思われていました。私たちが全員独学で必要な知識を身に付けていたため、多くの人は新しい農業ソリューションを開発するだけの専門性が私たちにはないと思っていたことも関係しているのでしょう」とMichaeliは付け加える。

「(今の)課題は、私たちに合ったパートナーを見つけることです。今のところはスーパーマーケットやオンラインショップ、ホールセラー、ホテルなど、Infarmの商品の品質や種類、そして固定価格を魅力に感じてくれそうな食品関連業界に注力しています。私たちのプロダクトを使えば、都市部の人たちに作物を育てる喜びを再び感じてもらうことができます」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

電気の要らない冷蔵庫Evaptainersは世界の貧しい農家や家族を助ける

今日の世界では、約14億人の人びとが、電気を使えない。OECDのデータによるとそれは主に、東南アジアや中国、インド、アフリカのサブサハラ地域の人たちだ。

それらの地域に対する通信の整備代替エネルギーの供給努力は行われているが、スタートアップのEvaptainersは、電気を使わず、水を利用して食品や飲料をかなり低い温度で保存することのできる、一種の冷蔵庫を作った。

Evaptainersの協同ファウンダーSpencer Taylor, Quang Truong, Jeremy Fryer-Biggsの三名が作った冷却装置は、アナログ時代に発明された“ジーアポット(zeer pot)”(二重ポット)冷蔵庫の現代版だ。その動作原理は、人間が汗をかくことに似ている。

Evaptainersの協同ファウンダー: Spencer Taylor, Quang Truong, Jeremy Fryer-Biggs。

Taylorが言うには、“汗をかくと、水の分子が相転移を起こして水蒸気になる(蒸発する)とき、体の熱を奪う。そのため、涼しく感じる。このマシンでは、タンクの中の水が浸透膜に接して蒸発する”。

同社のEV-8型冷蔵庫は、一日に1/3リットルの水と、湿度65%以下の暑い日を必要とする。ミルクなら60リットルを、外気温より約35度(華氏)低い温度で保存できる。

このデバイスと使うときは、まず上部の注ぎ口から水を入れる。水は飲用でなくてもよい。下図のように折りたためるので、これがもっとも必要とされる田舎などに、運びやすい。

同社のミッションは、貧困等で食べ物が得られにくい地域における食品の損傷腐敗の防止だが、公益事業の営利企業でもある。社員は北米に5名、北アフリカに2名いる。これまで、補助金や助成金等で50万ドル近い資金を調達している。

EvaptainersのEV-8型冷蔵庫は、折りたためる、電気ではなく水を使う。

Truongによると、この会社の創業を着想したのは、Tufts Fletcher School of Law and DiplomacyとMITで学んだコースと、食糧援助NGOで失敗したことが契機だ。

ファウンダーは曰く、“いろんな農業援助プロジェクトで、何百万ドルも投じて冷蔵倉庫を建築しようとしているが、政治家や役人の汚職(資金の横領)などで何も建たないことも多い。それにそもそも、安定的な電力供給のないところではどうするのか、という問題の方が大きい。いちばん簡単な答は、電気を必要としない何かを作る/することだ”。

同社のメインの関心は、食糧や電気の安定供給のないところに住む人びとを助けることだが、Evaptainers冷蔵庫は今後、アウトドアスポーツやキャンプ用品としてのバージョンも、開発を検討したい、という。

“途上国市場の、支払い能力のない、貧しい消費者や食糧生産者の手にこの技術を渡すためには、アメリカの消費者から得られる高い利益率が助けになる、…そんなビジネスモデルを考えたい”、とTaylorは語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

農薬や化学肥料の濫用を防ぐCeresのハイパースペクトル農地画像分析技術が$5Mの資金を獲得

カリフォルニア州オークランドのCeres Imagingが、Romulus Capital率いるシリーズAの投資ラウンドで500万ドルを調達した。同社は、カメラとセンサーとソフトウェアを使って、農家の農地に作物のストレスを見つけ、そこにタイミング良く除草剤や殺虫殺菌剤、灌水などを投じられるようにする。

Ceresは、最近多い、ドローンの農業利用に着目したスタートアップのひとつだ。しかしCEOでファウンダーのAshwin Madgavkarによると、専業農家の農地面積は数千エーカーもあり広すぎるので、ドローンでは仕事にならない、とすぐに悟ったそうだ。

そこでMadgavkarたちは、セスナのような通常の航空機に搭載する独自のセンサーとカメラを開発した。それを毎日、広大な農地の上空に飛ばすのだ。

同社はさらに、撮影した画像の中に作物のある農地だけを特定できる画像分析ソフトウェアを作った。それにより、裸の土地や影などは分析対象から外す。“農地の画像から読み取れる特殊な“署名”を、そこで起きている事象に翻訳する”、とCEOは語る。同社はカリフォルニア大学デービス校の研究者たちやデータの助けを借りて、分析技術を完成させた。

Romulus CapitalのファウンダーKrishna K. Guptaによると、Ceresがほかのアグテック企業より優れているのは、ハイパースペクトルな〔==可視光以外も含む〕画像分析によって、地上で作物や土壌を実際に調べたときと変わらない洞察を農家に提供できることだ。競合他社の多くは、NDVI(normalized difference vegetation index)に頼って作況の分析をしている。それは一定面積における作物の葉の測度だ。しかし、“Ceresは農家の作況や灌水、土壌栄養などに関してもっと細かい粒度の情報を提供できる”、とKrishnaは語る。

Ceresはすでに、世界最大のナッツとぶどうの栽培農家上位10軒(10社)のうち6社と契約していて、ほとんどの仕事をカリフォルニアとオーストラリアで行っている。同社が画像分析を提供しているアーモンドの樹園面積は、全世界のアーモンド作付面積の10%あまりに相当する。

今回のシリーズAの資金は、社員増と、営業マーケティングの拡大、そして画像分析の対象をコーンや大豆など、中西部のそのほかの商品作物にも広げることだ、とCEOは述べている。

競合他社はTerrAvionIntelinairなどだが、PrecisionHawkのようにドローンを使っているところもある。

シリーズAの前には、ウォーターテックのアクセラレータImagineH2Oや、Laurene Powell JobsのEmerson Collectiveが支援しているNPO Elemental Exceleratorなどから、100万ドルの非希釈的助成資金を(non-dilutive grant funding)獲得している。

規制はスタートアップの邪魔になることもあるが、Madgavkarによると、Ceresの場合は需要増に貢献している。“農家に対する規制はますます厳しくなって、以前のように化学物質や肥料などを大量に使えなくなっている”、と彼は語る。農地の航空写真を見て、作物がストレスを経験している箇所や、窒素やカリウムが欠乏している農地を素早く特定する同社の技術は、農薬や化学肥料の無差別的な濫用を防いでいる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コーヒー豆の等級分けロボットとブロックチェーンを使って生産農家に公正な支払いをするBext360

コーヒーは、石油に次いで世界で二番目に大きい貿易商品だ。Fairtrade Foundationの推計では、およそ1億2500万の人びとがコーヒーの栽培で生計を立てている。その多くが小農または農業労働者で、世界銀行の調査では家族が1日2ドル未満で生活している。そこで、デンバーのBext Holdings Inc.は、これらの農家が豆の公正な価格に見合う代金を容易にかつ迅速に得られるようにしたい、と考えた。

同社は、見たところ高級な秤(はかり)に見えるモバイルのロボットを作った。バイヤーはこのロボットを農家の農地で使ってコーヒー豆の品質を分析し、計量する。ロボットは一回分(30〜40ポンドの袋に詰める)の豆をサイズで選り分けて、良品の比率を計算する。そして優・良・可などのマークをつける。もちろんそのマークは、バイヤーと農家の両方に見える。そして彼らは、Bext360のモバイルアプリを使って公正価格を交渉する。

同社のアプリとクラウド上のソフトウェアは、Stellar.orgのブロックチェーン技術を使って、豆の生産者生産地、バイヤーと支払い金額、などを記録する。CEOのDaniel Jonesによると、コーヒーを飲む人も、カップ一杯ごとに、コーヒーの産地や、農家が公正な代金をもらったかどうかを、分かるべきだ、という。

“そうすれば、消費者はこれまでになく啓蒙される。そしてコーヒー業界の企業は、彼ら消費者の高いスタンダードを満たそうとする”、と彼は語る。“でも今日一般的には、フェアトレードを推進する人たちにとって、いろんな材料やデータを調べる仕事がたいへんすぎる。調べる方法も、原始的だ。だから精度も低い。そして産地の農民たちは、依然として搾取されている”。CEOの目標は、コーヒーのサプライチェーンに完全な透明性をもたらし、またカカオなどそのほかの産品にもそれを拡張することだ。

アグリテックを手掛ける前のJonesは、コンゴ民主共和国から金属をアメリカへ輸出する企業を創業した。その仕事を通じて、すべてのサプライチェーンの要件とトレーサビリティーを定めたDodd-Frank Act(ドッド-フランク法)の存在を知った。彼はまた国防情報局(Defense Intelligence Agency)でも働き、トップシークレットなネットワーク上で音声とビデオとデータを送信する通信システムを作った。というわけでJonesは、西側の顧客の利益のために途上国で事業をするやり方を、よく知っている。そして彼は、官僚主義との付き合いを恐れていない。

Bext360はローンチ時に、SKS Venture Partnersから120万ドルのシード資金を獲得している。SKSは主にフィンテックに投資している家族経営のVCだ。Bext360に投資したMark Spencerは曰く、“スマートフォンを利用して支払いを農家に直接行う。不当な中間搾取をする仲買がいない。この点に注目して投資をした”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))