アメリカの農家の3分の1が活用するFarmLogsは農地のビッグデータを収集する

ビッグデータがディスラプトする分野として一番に「アメリカの農地」を挙げる人は少ないかもしれないが、農家は既に最新のテクノロジーを駆使して作物のモニタリングを行っている。

FarmLogsのファウンダーでCEOのJesse Vollmarは、TechCrunchのJon Shieberに、彼らのプロダクトは農家が蓄熱、雨量、土壌の構成といった項目をトラックしたり、確認したりすることを助けていると話す。アメリカの農家の3分の1が彼らのプロダクトを活用しているそうだ。

「FarmLogsは、データサイエンスが農地に革新をもたらす次の波だと考えています。現在、農家は農地を増やさずに食料の生産を増加させるという困難な課題を突きつけられています。農地をこれまでに以上に効率化しなければなりません」とVollmarはサンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptのステージで聴衆に語った。

農家は、これまでのローテクの運営を負担することができなくなり、農業は急速に大量のデータに頼るようになってきている。しかし、アグテックの主要な問題の一つはシリコンバレーが農業を身近に感じることができず、農家のニーズを汲み取ることが難しいことが挙げられる。Vollmarは他の人より農家のニーズが分かるのだろう。彼は、法人向けソフトウェアを開発の仕事をする前は、5代に渡って続く農家で育った。

火曜日のステージでVollmarは新しい端末を紹介した。この端末で農家はFarmLogsにデータを供給するのが更に簡単になる。コンバイン機に直接つなげることができ、データ通信で収集したデータをアップロードする。同社は、サブスクリプションモデルを採用し、端末を年間750ドルで農家に提供する。

全ての農地は同じではなく、一つの農地に合うソリューションが他の農地で効果を発揮するとは限らない。Farmlogsの魅力は、農家が「農地の各要素を計測」できる点だとし、農家の個別のニーズに見合う最適なソリューションを常に追求しているという。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

温室栽培農家のための農業のGoogle Analytics(総合データ分析)を目指すAgrilyst

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今日(米国時間9/21)TechCrunch Disrupt SF Battlefieldに登場したAgrilystは、温室に備え付けたセンサやそのほかのデータを利用して、温室栽培農家の農業を効率化しようとする。

AgrilystのCEOで協同ファウンダのAllison Kopfによると、ニューヨークの都市農家BrightFarmsで働いているときに、このサービスを着想した。この農家にはVCも投資していた。物理学を専攻した彼女は最初、農業の仕事をするつもりはなかったが、“改良の余地が大きく急成長産業である”ところから農業に惹かれた。

担当した仕事にはデータの取り扱いも含まれていたが、彼女が不満を感じたのは、定量的データが乏しいことと、複数のツールから集めたさまざまなデータを総合的に分析するツールがないことだった。

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Kopfは、のちに同社のCTOになるJason CampとともにAgrilystを創り、今年の初めごろに、ニューヨーク市の省エネ環境保全振興アクセラレータNYC Acreに加わった。

屋外農家と違って温室栽培農家は、作物に当たる光の量や空気中の二酸化炭素の量など、作物の成長過程の環境を細かくコントロールできる。なお、二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスであるだけでなく、光合成を促進するための素材として温室農家自身が利用している。またビルの中など屋内で行われている温室栽培の多くは、水耕栽培システムを使って土を使わない農業をするため、コントロールする要素がさらに多い。

今では多くの温室に、CO2、光量、湿度などを計るセンサがあり(それにもちろん地温、気温)、農家がチェックするデータの量はかなり多いが、測定のためのハードウェアは進化が遅れている。Kopfによると、農家は毎日大量のデータにアクセスしているが、ハードウェアは少数の古い企業に支配されていて、彼らはイノベーションに関心がない。たとえばセンサはすべて物理的に配線されているので、システムの拡張がきわめて困難だ。

また、収量の測定は多くの場合手作業で行われている。値をノートに手書きで書く。そのため、センサからのデータと統合して分析されることはない。センサデータの変化と収量データをリアルタイムで相関してみることができないから、問題の早期発見もできない。問題は、それが実際に起きてからしか分からない。

Agrilystのプラットホームは、何よりもまずデータの統合化を目指す。ハードウェアの種類などにはこだわらないし、APIのない古いシステムでも、データをExcelにエクスポートできるならそれを利用する。Agrilystのメインのユーザインタフェイスであるダッシュボードが、それら統合したデータを総合的に分析した結果を表示し、収穫のスケジュールを示唆する。将来的には、収量予想も提供したい。

温室栽培農家は、CO2のレベルのほかに、作物に当たる光の量も比較的容易にコントロールできる。これまでのシステムは一定の時間に照明をonにし、offにするだけだが、Kopfは電力の安い時間帯に作物に光を当てるシステムを考えている。“植物はエネルギーをいつ得るかを気にしない”、とKopfは言う。夜中の電気代が安ければ、主に夜中に電気による光を当てればよい。

同社は今、6軒の温室栽培農家の協力を得てベータテストを行っている。本番展開時の料金は、月額1エーカーあたり1000ドルを予定している。

同社の長期的な構想としては、温室用のセンサのハードウェアシステムも、同社のサービス向けに最適化されたカスタム製品を提供していきたい。

Kopfによると、このシステムのマリファナ栽培への応用について、尋ねられることが多い。マリファナ栽培は基本的に同社の想定顧客ではないが、今後はひとつのユースケースとしてありえるかもしれない、と彼女は言う。しかし当面同社は、コロラド州の屋内マリファナ農家ではなく、東海岸のレタスやトマトを中心作物とする大規模温室栽培農家を対象にしていく。

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第一回のドローンカンファレンスInterDroneに見るドローン未来学とそのための課題

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小型のドローンが急速に進歩している。最初はやや高度なリモコン玩具にすぎず、‘ドローン’という呼び名にも批判があった。ドローンと言えば、少なくともある程度の自律性があって、たとえばテロリストの暗殺に使われたりする無人機を指すからだ(一般市民も巻き添えにするが)。しかし今では、技術が名前に追いつきつつある。ドローンはますます自律的になり、そのため、近未来のスタートアップのための多様なビジネス機会が開かれつつある。

先週(9/6-12)は、今年で第一回となるInterDroneカンファレンスがラスベガスで行われ、そのキーノートで3D RoboticsのCEO Chris Andersonが、今やドローンは“パイロットのいない航空機”から“プロペラのあるスマートフォン”に変わりつつある、と述べた。

そのときのインタビューでAndersonは、3DR社は今、自律飛行の研究開発に重点投資をしており、AIと機械学習のエキスパートたちを雇用して技術の改良を進めている、と語った。

初期のドローンの性能は、人間操縦者の技能に大きく依存した。今のドローンは一部の基本的な機能は自律的に行うが、障害物の回避などの能力はまだお粗末だ。GPSで目的地に向かうことはできるが、その航路の途中に壁があってもまっすぐ飛び続ける。木や壁を避(よ)ける機能は比較的容易に実装できるが、たとえば送電線のようなものを認識させるのは難しい。いずれにしても今のドローンの大きな技術的障害が、障害物の回避なのだ。

ドローンが本当に“プロペラのあるスマートフォン”になったら、それは物のインターネット(IoT)の一部になり、それだけでなく、インターネットに接続されたほかのもの(ドローンや航空機が多いだろう)と対話できる。これにスマートな(電脳の)障害物回避が加われば、ドローンの自律性がより本格的になり、さらに新しい用途が開ける。

そしてドローンの自律性が増せば、人間はその複雑な操作に悩まなくなり、ドローンが集めてくるデータに集中できるようになる。

InterDroneに集まったAndersonなどの業界人の多くが、ドローン産業の現状をWebの初期になぞらえている。ということは、これからはドローンという新しい技術と、さまざまな既存の技術との組み合わせを考えるべきなのだ。インターネットとWebの登場によって、その後、小売業も不動産業もレストランも、行政すらも、あらゆる業態がディスラプトされてきたように。それはたとえば、Web + レストラン = OpenTable、といった式で書き表せるだろう。

誰もが思いつくユースケースもある。精密農業や、測量、それにAmazonのおかげで荷物の配達も。最近では、ドローンが撮影している映像をリアルタイムで仮想カンファレンス(ビデオによるカンファレンス)にストリーミングする、という企業も現れている。

このような簡単な応用例はまだまだたくさんあるが、あまり人が考えつかないようなものにも、おもしろいアイデアがいろいろある。

ドローンをめぐる規制はまだ流動的だから、ドローンでできることとできないことの境界も曖昧だ。でもベンチャーキャピタリストたちは、YuneecへのIntelの投資やさまざまなドローン指向ファンドにも見られるように、早くも走りだしている。ファンドの多くはハードウェアへの投資をねらっているが、しかし今日では、ドローン関連のソフトウェア開発も大量に行われている。そしてそれらのすべてが、将来FAAと問題を起こさぬように、適正に調製されるべきだ。AirwareSkywardのような企業ユーザ向けドローンソフトウェアのメーカーは、とくにそれを願っている。

というか、今日の主導的な趨勢としては、多くの企業が明日のドローン+(drone+, ドローンプラス)の時代に備えてインフラの整備に励んでいる。

ドローンを飛ばせることだけでなく、ドローンが集めてくるデータの分析も重要だ。それは典型的なビッグデータ分析の課題だが、今後はドローン固有のビッグデータソリューションがいろいろ登場するだろう。たとえば農家には、ドローンが送ってくる映像を毎朝分析する能力がないから、農家にそのためのわかりやすいダッシュボードを提供するソフトウェア企業が必要とされる。それは、潅水の適期適量を知るといった精密農業のニーズだけでなく、害鳥や害獣を追い払うといった、ドローンの古典的な活躍分野もありえる。

自分の身の回りの環境を完全に認識できる、真の自律的ドローンが登場し、同時にセンサとデータ分析の技術がさらに進歩し、良質な規制が完備したら、ドローンのポテンシャルが完全に開花するだろう。

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食料フロンティア:アグテックが世界を救う

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編集部記:Dror BermanとSamantha Waiは、Crunch Networkのコントリビューターである。Dror Bermanは Innovation Endeavorsのファウンダーでマネージングパートナーである。Samantha Waiは、Innovation EndeavorsのInnovation Labs Teamに務めている。

投資家である私たちの仕事は将来を夢見るビジョナリーを見つけ出し、パートナーとして彼らの夢を現実の物とする手助けをすることだ。

農業に関しては、テクノロジーの進化を持ってすれば小型の収穫ロボット、各都市での高層ビル型の農場の建設、センサーを設置した農地をドローンで管理することができるのではないかと想像を巡らせてきた。

このような農業の将来を想像することはとても楽しいことだが、私たちは現実味のある農業の将来像を求めている。そこで、農業の本当の課題を理解するために問題を深堀りし、課題をチャンスへと変える10の方法を考えた。

コストの増加

経済的な面から見ると、農業は次第に高額なものになっている。農地への投入物(種、肥料や農薬を含め)はアイオワ州のトウモロコシ生産にかかる合計コストの38%を占めている。また、苺の生産コストの30%以上は人件費だ。除草剤耐性、種の価格変動と農地での労働力となる人材コストの増加により状況は悪化している。

経済的なコストは警戒すべき割合で上昇し続けているが、環境コストは更に急激に上昇している。水質汚染、藻の繁殖、バクテリアの耐性は、長期に渡って環境の健全性に影響を与えるだろう。農業が関係する温室効果ガスの排出は1990年から17%も上昇し、その主な原因は家畜の肥料の管理システムと土壌管理の方法にある。

農業はこのようなコストを維持することはできない。私たちは次のことを行っていくべきだろう。

  • 農業における家畜や農作物の生産過程での環境への負荷(フットプリント)を減らすこと
  • データを活用して生産サイクルをより良く管理すること(植え付け、農薬などの投入方法、収穫など)
  • 植え付け、農薬などの投入方法、収穫のプロセスを自動化し、既存のリソースをより効果的に活用すること

コストの上昇の問題に対応する、特にタイムリーなテクノロジーの進化がいくつかある。主にセンサーの低価格化、コンピューターの処理能力の向上、そして機械学習の技術の進化だ。より多くのデータを取得したり、盤石な分析を行ったり、施策を正確に実践できる能力が高まったりすることは全て、投入物の削減や生産サイクルの効率的な管理、そしてコストのかかるプロセスの自動化につながる。

Blue River Technologyの先進的な技術は素晴らしい例だ。同社はコンピュータービジョンと機械学習を活用して「全ての植物を大切にする」未来を描いている。Blue RiverのLettuce Botは目を見張るハードウェアだ。このロボットの機械的なエンジニアリングはありふれたものではない。ロボットを農地の中に入れ、大型のトラクターで引っ張るのだ。そうすると、ロボットはリアルタイムに一つづつの作物を撮影し、データ処理を行うことで、それぞれの作物の特徴を捉えることができる。そしてアルゴリズムを活用して、その作物のどの部分を残し、どの部分が不必要で刈り取るべきかを判断する。

更にZeaのプロダクトは高い情報処理力を持ち、農作物の表現型検査を可能とする。コンピュータービジョンを利用することで、Zeaは画像から作物の数量を産出したり、作物の間隔を計測したり、農作物の高さの分布を調べたり、重要な物理的特徴を計測したりすることができる。私たち考える中でこれが最も精巧な機械学習の技術だ。

Photo: Blue River Technology

データのコンピューター処理と収集技術が発展することにより、農地はシリコンバレーのテクノロジー企業と同じように効率的に運用することができるようになる。正確なデータドリブンの意思決定と自動化が可能となるのだ。

CropX は3つのシンプルな低価格の土壌センサーでデータを収集し、アルゴリズム処理のためにクラウドで分析を行い、実用的な灌漑用の地図を作成する。この地図で農家は水が土地のどこを流れているかを把握することができる。たった3つのシンプルなセンサーが集積したデータから、このような正確な地図が作れるのは画期的なことだ。CropXのシステムは灌漑システムと連携し、農家にエンドツーエンドのソリューションを提供する。

Photo: CropX

Blue RiverとCropXは、正確な農業データの収集と管理で市場のチャンスに挑んでいる、数あるスタートアップの内の二社だ。他にはGranular、OnFarm、TerrAvionなどがあり、IoTやリモートセンサーを駆使して農業をより効率的で効果的なものにしようとしている。

生産量を保証できない

気候変動が現実に起きていることに議論の余地はない。農地の産出量の確実性は弱まるばかりで、作物は雑草や病気の影響も受けやすくなり、気候を予測することも難しくなってきている。これは、アメリカにおける農作物の多様化の問題を更に深刻なものとするだろう。アメリカの食料生産の70%以上である1000億ドルをトウモロコシと大豆だけで占めている。

さらに、米国農務省のNational Agriculture Statistics(全米農業統計)によるとアメリカにおける全農業生産の44%がセントルイスから半径500マイル内(およそ804km)に集中しているという。また、市場に卸せる形質の作物を育てるためのコストが高いという理由で、多くの種類の作物が育てられていない。(この業界は、承認される作物を育てるまで、 研究開発コストに1億3600万ドルをかけている。)「多様化」は簡単なことではないが、必要なことだ。

確実性に関するリスクヘッジを行うために私たちがすべきことは以下の通りだ。

  • 広い範囲に適応することを念頭に、作物の生産量と密接に関わる土壌の健康状態と配分を理解する方法を見つけること
  • どの作物をどのように育てるかという判断を最適化するために、種のパフォーマンスが明確に分かるようにすること
  • 市場に浸透する、新しい種子、形質の作物、統括的なソリューションを提供するための安価で時間のかからない研究開発方法を探すこと
  • 毎年無駄になる13億トンの食料を削減する方法や再利用する方法を検討すること

既存の農業における生産量の確実性を高めるためには、遺伝子と土壌が起点となる。ゲノム配列の特定コストは下がり、多くの可能性が開かれた。それにより種子の交配や植物の形質の発見、そして土壌の理解につながるだろう。

遺伝子組み替え細菌もこの確実性の問題と課題を解決するための基盤となるテクノロジーの一つだ。 Zymergen は微生物科学とコンピューター処理と自動化テクノロジーを組み合わせている。

彼らのテクノロジーは新種の微生物菌株を開発するプロセスの各工程を正確に計測し、データから学んでいる。そこから、これまでにないスケールや時間で微生物菌株を生産するプロセスを構築している。同社は微生物菌株を開発するプロセスの向上のためにデータを分析し、プロセスの各手順の自動化も行っている。今後、更に微生物菌株の生産コストが低減することが期待できる。

土壌と混ぜあわせた低価格な遺伝子組み換え細菌を実現することで、土壌の健全性と配分を劇的に改善できる可能性が見えてくる。

photography by Albert Law : www.porkbellystudio.com

バイオテクノロジーを応用する画期的なスタートアップにはForrest Innovations(RNAiテクノロジーを利用)や Sample6(合成生物学を基盤とするテクノロジーを利用)などがある。

需要の変化

供給側の課題と共に、需要側も変化している。オーガニック市場は2014年に11.3%成長し、今後も成長することが予想される。遺伝子組み換え作物に関する議論は、食料生産に対するコンシューマーの関心を惹き付けた。風向きが変わってきている。安全性、トレーサビリティ、そして環境への影響に関する法規制はより厳しくなっている。(例えば、最近アイオワ州の郡政委員会に対する訴訟があった。)

コンシューマーの関心の変化と法規制の強化は、私たちに次のことを行うよう促している。

  • 生産システムに負荷をかけない方法で健康志向のコンシューマー向けの食料の選択肢を増やすこと
  • 雑草、病、有害生物を防ぐための化学品の量を減らす方法を検討すること(利用方法を最適化する、あるいはオーガニックな方法を開発する)
  • 生産チェーンの全工程において食品の安全性とトレーサビリティを確保できる経済的な方法を提供すること

計算生物学、細胞組織の組み換え、自動化といったテクノロジーは、需要トレンドの変化に対応するのに大きな役割を担うだろう。Modern Meadowを例に取ると、彼らは、「バイオファブリケーション」と呼ばれる細胞組織の組み換え技術を活用して、動物性組織に代わるものを製作している(主に皮革)。

動物性の生体組織を取り、ペトリ皿で皮革を培養することができるようになった。細胞を30日ほどかけて培養する。奇妙に感じるだろうが、バイオファブリケーションで肉を作るということはもはや不可能ではないということだ。コンシューマーが環境に意識を向け、化学薬品に気を配るほど、これまでの肉の生産方法とは別の選択肢を見つけることが重要になるだろう。

Photo: Shutterstock/Alex_Traksel

動物性のタンパク質を代替しようとするスタートアップが複数誕生している。彼らは計算生物学や構成的生物学の領域のテクノロジーを駆使している。Impossible Foods、Clara Foods、Muufriがその一例だ。

更に食品の安全性とトレーサビリティの分野でも新しいテクノロジーが生まれている。血清型や病原体のファージ型の分類や細胞と核酸の分類といった動きがある(ゲノムの解読技術を応用している)。このような興味深い生物学の研究は、農業の分野にも応用できるようになるだろう。

そこから先は?

このような課題を検証すると、悲観的になる人もいるだろう。一方で、私たちはできることの多さにインスピレーションを受けている。他の問題を解決するために生まれたテクノロジーを再検討し、農業に応用することができるだろう。

テクノロジーが答えだ。ユビキトスなコンピューター技術の進化で、低価格のセンサーが誕生し、リアルタイムに農地から詳細なデータを取得することができるようになった。クラウドコンピューティングと機械学習により、大量のデータを用いて、その場で賢い意思決定を行い、収穫量を向上させ、コストを下げることができる。

そして遺伝子学の発展で、これまで使用していなかった種子を改善することで、既存の肥料や化学品による環境への影響を低減するような農業に適した農作物の生産につながるだろう。

センサー、データ、コンピューター処理、遺伝子学の発展は私たちを次の食料のフロンティアへと導く。米国農務省のTom Vilsackが言ったように「私たちは過去1万年で必要としていたより多くのイノベーションを次の30年で必要」としているのだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

屋内水耕栽培(植物の光合成)用に最適化された省エネLEDライトのTranscend…Y Combinatorから巣立つ

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今日(米国時間7/8)ベータでローンチしたTranscend Lightingは、Y Combinatorが育成対象として受け入れるにはあまりに異色の企業だが、屋内農業のための省エネLEDライトを作ろうとしている。

ファウンダのBrian Bennettは独学の光学技術者で、彼がTranscendの最初のプロトタイプを発明したのは、ニューヨーク州北部にある彼の家族農場で父に、農業用のLEDライトを作ってみろ、とそそのかされたことが、きっかけだ。

ライトの設計が完成したとき彼は、コロンビア大学のビジネスプランコンペに応募して、そのささやかな賞金で開発を継続できることになった。そしてその後、Y Combinatorの2015春季のクラスに‘入学’した。

Bennetは語る、“今の農家は主に、道路の照明に使われているのと同じ、高圧のナトリウムランプを使っている。作物はまあまあ育つけど、消費電力がものすごく大きい”。

Trancendの電球は通常のLEDライトと違って青色LEDしか使わない。そして同社が開発した波長変換システムにより、蛍光物質を利用して、もっともエネルギー効率の良い光子である青の光子をほかの色の光子に変える。

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“蛍光物質は昔からあるけど、うちで使っているのは、植物の光合成のためにとくに調製された蛍光物質だ。これまでの蛍光物質は、人間用の照明器具が目的だから、ひたすら明るさだけを求めて調整されてきた”、とBennetは語る。

農家がTranscendのライトを使うと、ナトリウム灯のころに比べて、消費電力を最大70%ぐらい節約できる。

なお、今合衆国で屋内で水耕栽培されている作物は、マリファナだけではない。Bennettによると、初期の顧客の半分はマリファナ栽培業者だが、あとは主にイーストコーストのレタスやトマト、ペッパーなどの農家だ。

今は各地で干ばつがひどくなっているので、屋外の農業の10%の水しか必要としない屋内水耕栽培に関心を向ける農家が増えている。

また屋内なら、農家が温度や湿度、CO2のレベル、光量など、環境を完全にコントロールでき、しかも周年栽培が可能だ。

Bennetはこう言う、“屋内栽培は数百万ドル相当のビジネスだと言われるし、最近はテクノロジの利用でその経済的な魅力も上がっている。たとえばうちのライトを使えば、エネルギーの消費量を相当抑えることができるから、農家の利幅も大きくなる”。

Transcendの農業用照明器具(上図)は一基999ドルだが、それはだいたい、一年分のエネルギー節約量に相当するそうだ。1年で元が取れる、ということ。

同社にはすでに農業法人などからの注文もあり、この夏の終わりごろには第二の照明器具製品を、Indiegogoに出すそうだ。

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農地を地形や土壌タイプで複数のゾーンに分け、それらの最適潅水量を求めるCropXが$9Mを調達

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未曾有の干ばつに襲われているカリフォルニアで、アグリテックのスタートアップCropXが、潅水を最適化して水の使用量を必要最小限に抑えるシステムを開発した。

それは土中に埋めた三つのセンサと、それらからの信号をワイヤレスで受信してクラウドに送るモバイルアプリの組み合わせで、ファウンダのIsaac Bentwichはこれを“土壌のインターネット”と呼ぶ。これらのセンサが、農地各部の水の必要量を正確に求めるのだ。

“今の農業には、大きな手抜きが一つある。それは、どの農家も、潅水を均一に行っていることだ”、とBentwichは言う。“もっとも進んだ農業技術でさえ、全農地を均質と見なしている”。

Bentwichによると実際には、1平方マイルぐらいの範囲内でも土壌の質は各所で大きく異なっている。そこでCropXは、詳細な実査ではなく、大学や政府機関などが一般に公開している土壌データや地形データを利用して、農地を複数の潅水ゾーンに分割する。

CropXが農家に三つのセンサを手渡すと、モバイルアプリがそれらを農地のどこに配置すべきかを示す。センサの電池寿命は最大で4年ぐらい、それらが土壌データをクラウドへ送り、するとアプリが、各潅水ゾーンで最大収量をあげうる水の量を計算する。

今CropXは、ミズーリ、コロラド、カンサスの3州で合計5000エーカーの農地の潅水に利用されている。同社は、このほど得られたシリーズAの資金900万ドル(Finistere Ventures、Innovation Endeavors、GreenSoil Investmentsなど)で、全国拡大に踏み切る予定だ。

Bentwichによると、CropXを使うようになった農家は、最大で25%もの省エネと省水量を報告している。適正潅水には、過潅水を防ぐだけでなく、化学物質の流出による環境被害を防ぐ効果もある。

米農務省によると、収量増加技術の市場の規模は2兆5000億ドルと言われている。しかし、潅水の最適化は今現在、90%以上の農家が行っていない。

Bentwichは次のように述べる:

過去150年間の三大農業革命というと、輪作(あるいは農業の個人経営化)、機械化、緑の革命(高収量化技術)だが、いずれにおいても水は無限にあると想定されている。単位収量を上げるために、つねに水が使われてきた。そして、今や水は文字通り枯渇してしまった。だから、特定の農作物の収量をほんの数パーセント上げるだけでも、その技術は10億ドル企業の機会になるのだ。

2050年の世界の人口を扶養するために今の70%増の農業生産量が必要と言われているが、そのためにはCropXのような技術の振興がますます必要だろう。

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農家の給水施設の水漏れをチェックするPowWowが$3Mを調達

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水漏れなどを検出して農家の適正な水利用を助けるPowWowが、300万ドルを調達した。

PowWowは航空写真や水利用の記録などを調べて、問題を見つけたら農家にテキストメッセージを送る。問題は、どこかに水漏れがあることに関連していることが多い。

アグリテックのスタートアップがVCの関心を惹くことはそんなに多くはないが、カリフォルニアではこのところ干ばつがひどくなっているので、VCたちにとってもアグリテックの魅力が増しているのかもしれない。同社の二つ目のプロジェクトは、農家の灌水計画の最適化を助け、また土壌成分を分析して過剰な施肥などによるコストの増大を防ぐサービスだ。

CEOのOlivier Jerphagnonによると、それは、“最初のよりもずっと大きなプロジェクトになるね”、ということだ。“農業スタートアップへの投資案件が少ないのは、カリフォルニアでも合衆国全体でも、今後20年間の農業に対する懸念があるからだ”。

今回の調達資金の中には政府の補助金も含まれていて、また資金の一部はカリフォルニア大学サンタバーバラ校やデイヴィス校に行く。エンジェル投資家たちが70万ドルを出資しているが、PowWowにとっては、本格的にスケールしていくためにはまだ足りない、という。

“今回の補助事業で、うちが20の農家ではなく、2万の農家にも十分サービスを提供できることを、証明しなければならない”、と彼は言う。“VCたちがアグリテックへの投資を渋るのは、スケール(規模拡大)が難しい業態だからだ。うちの場合もまだ、スケール能力は証明されていない。来年結果が出たら、またVCたちに売り込みたいね”、だと。

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アグリカルチャーテクに注目が集まる中、農地管理スタートアップVitalFieldsが120万ドルを資金調達

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2013年にMonsantoがClimate Corporationを買収 したのを皮切りに、アグリカルチャーテクノロジー(アグテク)の分野に注目が集まっている。それも投資家だけではないようだ。

本日、エストニアに拠点を置く農地管理スタートアップのVitalFieldsは、堅実な120万ドルのシリーズAラウンドの資金調達に成功した。今回のラウンドには、納税者に支援されたEstonian Devlopment Fundの投資部門であるSmartCapや、名前は伏せられているが、シリコンバレーに拠点を多く大手VCが参加している。VitalFieldsは現在、ポーランド、ウクライナ、ドイツとエストニアで事業を展開していて、今回の調達した資金は、プロダクト開発とヨーロッパでの活動を広げるために使用される予定だ。

2011年のGarage48のハッカソンから誕生した彼らは、Startup Wise Guysのアクセラレータプログラムも卒業している。当初、TechCrunchではVitalFieldsを農業の早期警報システムと説明していたが、彼らのプロダクトはその時から大幅に増強されている。

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現在クラウドベースのソフトウェアと連動するモバイルアプリを提供し、農家は農作物の病や成長フェーズをモデリングしたり、天候パターンのトラックや、その他の農地に関連する活動の管理ができる。例えば、農地計画や在庫管理、財務諸表の作成などだ。

言い換えればVitalFieldsは、既存の伝統的で煩雑な紙ベースで行われていた作業を代替する典型的なSaaSプレイヤーだ。彼らは古くて、そもそも仕事を片付けるために製作されていないような高額なソフトウェアやツールを置き換えるために登場した。

「最近、VitalFieldsのアプリをローンチしました。重機の操縦者や農地で働く人の農業に関するペーパーワークを終わらせたいと考えています」とVitalFieldsのCEOで共同ファウンダーであるMartin Randは話した。「農作業の効率は、天候、資産管理、農作物の計画と作業のマネジメントなど様々なことに影響されます。私たちは、農作業に重要な要素を見つけられたと思います。VitalFieldsは国境を超えてスケールした、数少ない農地管理のためのソリューションです」。

VitalFieldsのシリーズAラウンドは、アグテクの分野への大量の投資活動が行われている時と重なっている。今月の初め、Farmers Business Networkは、Google Ventruesがラウンドを牽引し、1500万ドルを調達した。YCの卒業企業FarmLogsは昨年のシリーズAで400万ドルを調達している。また、Farmers Edgeもアグテク企業で、Kleiner Perkinsが牽引したラウンドで、1000万ドル以上を調達したと噂されている。

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農家自身による情報ネットワークFarmers Business Networkが$15MをGoogle Venturesなどから調達

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[筆者: Christine Magee]
2050年には100億に達すると予想されている世界の人口を支えるためには、それまでの35年間に全世界の農業生産量を倍増する必要がある。Farmers Business Network(FBN)にとってソリューションは、ビッグデータをベースとするグローバルな農家間ネットワークだ。それを築くために同社は新たに、1500万ドルの資金を調達した。

Google Venturesがそのラウンドをリードし、これまでの投資家Kleiner Perkins Caufield & Byersとインパクト投資企業DBLが賛助した。FBNのこれまでのベンチャー資金調達総額は2800万ドル弱になる。

農家は種子や肥料などに年間数十億ドルを投じているが、今のところ彼らには、使うべき種子、栽培量、肥料や栄養分の地域によって異なる最適配分などについて知るための信頼できる情報源がない。

FBNの協同ファウンダCharles Baronはこう言う: “これまで農家は、大学が高度に制御された環境で行う実験からのデータや、種子企業からの情報に依存して種子や苗を選んでいた”。

しかしそれらの情報源は、営農の現実を正確に反映していない。

“種子企業にアドバイスを求めることは、Exxonにおすすめの車を聞くことに似ている。Exxonなら必ず、ガス食いのオフロードカーをすすめるだろう”、とBaronはジョークを言った。

昨年11月にローンチしたFBNは、17の州の計700万エーカーの農地からデータを集めたが、その後データ量は1ヶ月に30%のペースで増加している。同ネットワークは今では、16種類の作物の500種類の種子のパフォーマンスを評価できる。

しかし、大量のデータを集めることが、農業のイノベーションではない。現代の農業機械は技術的には非常に高度であり、播種の方法から土壌成分の変化まで、あらゆることを記録できる。

FBN Dashboard

FBNは、全国の農家から集めたデータを正規化し、その分析結果を見られるダッシュボードを提供している。そこでは、地域の気象や土壌データなど、外部情報も利用される。FBNのネットワークに参加している農家からの、それらの報告に基づいて農家は、高収量を望める作物とその生産方法について、情報に裏打ちされた意思決定ができる。

しかし、実は、農家も情報の過剰に悩まされている。

“最新式のトラクターの運転台に坐ると、目の前に6つのスクリーンがある。そのそれぞれが、異なるフォーマットでソフトウェアからのデータを表示している”、とBaronは言う。そこでFBNは、35種類の農業用ソフトウェアからのデータを、統合しようとしている。

insideatractor

“大農場が使っている精密な農業機械では、ソフトウェアがその農場のデータを分析するから、昨年の灌水や肥料の問題点を把握して修正できる”、FBNの取締役会に入ったGoogle VenturesのAndy Wheelerがそう言う。

“しかし複数の農家や農場のデータを分析したり比較したりできないから、あまり有効なデータ利用はできない。複数の農家がデータを共有してインサイトを得るようになれば、どんな土壌にはどの種子が合うか、どんなやり方が収量を上げるかなど、意思決定に役立つ有効な情報が得られるようになる”、とWheelerは述べる。

情報の得られ方や利用の仕方で、農家の費用や収入に大きな違いが生ずる。FBNに参加している農家が1年に購入する種子は数千ドルにも相当するが、その種子の5-10%ぐらいが地域や土壌などの条件に合ってないことが事前に分かれば、種子の価額だけでなく、その後の諸費用も含め、相当額の経費を節約できる。

“今、農作物の価格は安いし、しかも農業のための機械、燃料、肥料、種子等々の費用はものすごく高い。農家の利幅はカミソリの刃のように薄いから、まとまった利益を得ることはほとんど不可能だ”、とBaronは言う。

しかし利益はともかくとして、エーカー当たりの費用効率を上げ、収量を最大化できれば、世界的な食糧危機の到来を遅らせることはできるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

15歳の少年たちが作ったFollowPlantsは植物がソーシャルメディアにアップデートをポストする

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植物がツイートできるとしたら、彼らはどんな話をするんだろう? そう、Disrupt NYのハッカソンに登場したFollowPlantsのチームなら、それを知っているだろう。

といっても、植物が考えや感覚をシェアするわけではない(それはありえないだろう)。FollowPlantsを使うためには、まずセンサ(複数)を植物の近くにインストールする。そしてそのセンサからのデータが、自動的にツイートに翻訳されるのだ。“いいお天気だね!”、とか、“水が欲しいよ!”、とか。

チームのメンバーAkiva LipshitzとIlan Katzは、植物からのそんなツイートの記録は、たとえば、スーパーなどの野菜売り場で野菜の品質にうるさい消費者の買う気をそそるのに役立つ、と提案する。ツイートを見れば、それがどんな野菜かよく分かる、というのだ。それに、農家から消費者への親しいコミュニケーションにもなる。

また今後FollowPlantsは、植物以外のプロダクツからのアップデートをポストするためにも使える。そういうアップデートは、NexmoのAPIを使えばできるそうだ。

彼らのデモは、Webをインタフェイスとして使った。植物を位置情報でブラウズ(閲覧)し、気に入ったらそれを買うこともできる。センサはKatzらがArduinosを使って自作したやつだが、会場のインターネット接続に問題があったため、その画像は見せられなかった。また、ほかの二人のメンバーはハードウェア音痴だった。

ともかく、この作品が印象に残るのは、ニュージャージー州Teaneckから来たLipshitz とKatzが二人とも15歳だったせいもある。Lipshitzは、1年前からプログラミングを始めた。彼は将来会社を作りたいという夢を持っていて、今回はKatzに、ハッカソンに一緒に行ってくれ、と頼んだ。

15歳の子どもがニューヨークへ行って徹夜でプログラミングをする、と聞いた親はなんと言ったか? 親たちはしぶしぶOKしたらしいが、この記事を読んだら考えが変わるかも。

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グリーンテクノロジの新しい女王はアグテック(AgTech)だ

[筆者:Rob Leclerc, Melissa Tilney ]

編集者注記: Rob LeclercとMelissa Tilneyはそれぞれ、農業とアグテック(AgTech)を対象とする投資のマーケットプレースAgFunderの、CEOとコミュニケーション担当のトップだ。

2013年の後期にMonsantoがClimate Corporationを約10億ドルで買収するまでは、農業におけるテクノロジとイノベーションに関心を向ける投資家はほとんどいなかった。わずか1年で状況は大きく変わった。翌2014年は農業テクノロジのNetscape的瞬間と呼ばれ、この部門が急に大ブレークした。昨年に関する公式非公式のさまざまなデータによると、農業全域にわたるテクノロジ関連(アグテック, AgTech)の投資事案は264件あり、それらが合計で23億600万ドルあまりの資金を受け取った。この額は、フィンテック(fintech, 金融関連テクノロジ)の21億ドルや、それまでのグリーンテックの女王であるクリーンテック(cleantech, 環境非汚染/浄化テクノロジ)の20億ドルよりも大きい。

なぜ急に?

CleanTech Groupのデータによると、アグテックへの投資は2013年まで比較的フラットだった。それまで農業技術のイノベーションといえば、バイオテクノロジーと種子の遺伝子工学に限られていた。どちらも、投資とイノベーションは農業部門と密接に結びついている選手たちに限定されていた。種子の遺伝子工学(seed genetics)と収量増大技術(crop inputs)以外のアグテックは、クリーンテックと結びついているものが多かった。

そして、2013年に変化が起きた。その年、 アグテックへの投資は75%伸び、119案件8億6000万ドルにのぼった。いくつかのデータから類推すると2014年は、前年比成長率が170%(3倍弱)となり、投資の活況は2015年にも続いている。

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2013年の相転移を起こした原動力は、三つのトレンドの相乗効果だ:

  1. マクロ経済の大きな変化により農業の需給バランスが崩れたこと
  2. 消費者の嗜好性が変わったこと
  3. 各種の新しいハードウェア技術の合流によりコンピュータの利用がデスクトップから解放され多変量ビッグデータの収集*が自動化されたこと〔*: 農地などからの〕

状況の激変

1920年代の農業の機械化と、1940-1960年代の緑の革命がもたらした新しい利益は、すでに使い尽くされてしまった。最近の10年間で主要作物の収量は、世界的な人口増と経済成長と、もろもろのグローバル化によって需要圧力が増しているにもかかわらず、減少傾向にある。

人口は各年7760万人ずつ増加しており、2050年には100億に達すると予想される。それと同時に、ミドルクラスは2030年までに倍増すると予想されている。収入が増えると食費支出が増え(エンゲルの法則)、動物性蛋白質をより多く食べる(1ポンドの牛肉に8ポンドの穀物を要する)。経済的に豊かな人びとが増え、食糧と燃料と繊維(衣料)の需要が増えると、専門家の予測では今後35年以内に農業生産、とくに穀物の生産量を今の倍にする必要がある

1990年代半ばからの中国の経済成長により、農業は需要が供給を上回るようになり、1999年以来、農業の成長率はテクノロジ以外の全産業中最高である。投資家や起業家たちもやっと、農業に注目するようになった。

農業部門の成長を支えている長期的なトレンドに加え、今では一般大衆が食糧の生産と流通や、農業が環境に与える影響について、よく知っているようになった。

農業は現在、排出される温室効果ガスの30%を作り出しているが、それは1990年以降75%増加している。そのため、農業には大きな改革が必要とされ、また多くの情報に接している消費者たちは、化学物質の使用量の少ない地元産の、持続可能な食べ物を求めている。農業のサプライチェーンは、そういう生産物を提供できるよう、進化する必要がある。このことは新世代のスタートアップのための機会を作り出し、彼らは大型農家にとっては小さすぎる新しい市場に、農業進出の足がかりを見つけている。

さらにまた、ハードウェアとソフトウェアの進歩も、この市場に対する機会を作り出している。安価で多様な構成の可能なモバイルデバイスと、それを支える電池や無線通信の技術が、テクノロジをオフィスのデスクトップから解放した。それと同時に、低価格で高度なハードウェアセンサが登場して、大きなデータ集合の集収を自動化している。

テクノロジのこのようなシフトと、ドローンやAI、衛星化地図、ロボット、物のインターネット(IoT)といったエキサイティングな技術により、今や農業が、多くのテクノロジにとって肥沃な市場になりつつある。中には、消費者や企業向けにはありえなかった応用技術が、農業に対してならある、というものもあるだろう。そういうテクノロジに着目している投資家たちは、確信ある投資の意思決定をできるために、農業についてもっとよく知る必要がある。

成長の潜在力

農業はヴァリューチェーンがとても長いので、その市場は垂直というよりむしろ水平だという説もある。ざっと数えただけでも農業には16種の業種分類(下位区分)があり、それらの中には‘バイオテクノロジー’や‘食品のeコマース’、‘各種電脳器具’などもある。そしてその16の中には、全アドテック市場の5%以上のシェアを持つ業種分類が10ある(下図)。それらのどの分野にも大きな成長の余地があり、たとえば今年すでに、5000万ドルを調達したドローンメーカーの3D Roboticsや9500万ドルを獲得した小型衛星企業Planet Labsはどちらも、初期の重要な市場機会として農業を挙げている。

フードテック企業のSoylentは評価額1億ドルで2000万ドルを調達し、植物の性質を変えるArcadia BioSciencesは最近、8600万ドルのIPOを申請した。そして、まだ起業したばかりのFlowHiveが、まるで起死回生とばかりに、「蜂蜜自動採集巣箱」のためにIndiegogoで680万ドルあまりを集め、クラウドファンディングのトップテンに入った。


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資本は、アグテックというお店の前の道路に行列を作っている。2015Q1には、Finistere VenturesとMaumee Venturesがともに、アグテックファンドを立ち上げた。また、アグに注力しているPaine & Partnersは8億9300万ドルのプライベート・エクイティ・ファンドを発表し、その一部はアグテックへの投資に行く。投資家は、大麻にも注目している。Snoop Doggは2500万ドルのファンドを発表し、Founders FundはPrivateer Holdingsに7500万ドルを投資した。後者(PH)は、マリファナのYelpと呼ばれるLeafyに投資している。

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今年はイグジットもあった。精密栽培のFarmers EdgeはKleiner PerkinsからシリーズBの資金を調達した直後に、GranDuke Geomaticsの買収を発表した。Farmers EdgeはClimate Corporationのやり方に倣ったようで、後者は2014年にSolum、YieldPop、640 Labsなどを買収している。高成長をねらっているVCの投資は、古参のアグ大手にとってプレッシャーになるだろう。古参の連中は買収に関しては保守的で、起業家精神やイノベーションのための強力な環境を育てていない。

大胆不敵な大志大望

この前のクリーンテックのときもそうだったが、アグテック企業もその多くが大穴狙いのでっかい目標を掲げている。投資家がそれにひっかかるのは、彼らもまた、つねに、大きな市場ポテンシャルのある大きな問題のソリューションを探しているからだ。

農業は水資源の70%を消費しているが、水利権法が初めてできた19世紀初頭から今日まで、水資源の持続可能な管理に関して、農家に対するインセンティブはほとんどない。最近は複数年にわたる大規模な干ばつがあったため、いくつかのアグテック企業が水をもっと持続可能的に使うためのソリューションを開発している。ホワイトハウスの気候対策事業のパートナーに指名されたSWIIMは、H2OのためのAirbnbを開発している。そのハードウェア+ソフトウェアのソリューションは、農家自身が自分の農地の水分を測定し、水の利用を最適化し、余剰水を行政や企業に貸し出せるようにする。

一方、植物性マヨネーズのHampton Creekは、エッグレスエッグ(卵なし卵)製品の標準処方を作ろうとしている。純植物性の美味な‘卵’が完成したらそれは、1200億ドルの卵産業にディスラプティブ〔disrupt==創造的破壊〕な効果を及ぼす。もちろん投資家も、そう考える。同社はシリコンバレーの大物たち: Khosla Ventures、Founders Fund、Li-Kai ShingのHorizons Ventures、Jerry Yang(Yahooファウンダ)、Marc Benioff(Salesforce)、Eduardo Saverin(Facebook)らから9000万ドルを調達した。

さらに極端なニューヨークのModern Meadowは、3Dプリントで肉と皮革を作っている。3Dプリントした肉が市場に出回り消費者が信用するのはまだ先の話だが、Modern Meadowがまずねらうのは540億ドルの皮革市場に、本物の細胞から培養した牛皮を抱(かか)えて参入することだ。それは、動物を殺して取る皮革と違って、有害な化学的処理を必要としない。

リターンはまだ実証途上

新世代のアグテックは大規模な流動性イベント(liquidity event, 株式→現金化イベント)をあまり経験していない。むしろ、向こう数年間は投資家にとっても試行の期間だ。アグテック企業の場合は一般的に、戦略的買収が流動性に向かうメインの路線だが、しかし既存企業の多くが無関心だ。John DeereやSyngentaなどが沈黙している間、Monsantoだけが競争者不在で駆け出した。2011年にMonsantoはBeelogicsとDivergenceを買収し、2012年には〔精密栽培の〕Precision Plantingを2億1000万ドルで買収、2013年にはサンフランシスコにMonsanto Venturesを設立して、Agradis、GrassRoots、Rosetta Green(3500万ドル)、そしてClimate Corp.(9億300万ドル)を買収した。前述したように、Monsantoの資金にアクセスできるようになったClimate Corpは自分自身が買収魔になり、Farmers Edgeなどシリコンバレーのスタートアップと競い始めている。

アグのサブセクタ(構成業種)のうち、食品eコマースやバイオエナジーなどは、サイズ的にIPOが見えるところまで来ているが、そのほかの業種はまだまだ小物揃いだ。でもそれは、今後の5年間で変わるだろう。農業には、大きな公開企業を生み出してきた歴史がある。今はまだ幼児期のアグテックも、それと同じだろう。

画像はAgFunderの2014年アグテック投資報告書(年報)より。アグテックの投資案件データはここにある

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農地の土壌水分を自動測定して灌水量を適正化するTule

前世紀までの技術的進歩により、農家の仕事は以前に比べてずいぶん楽になった。でも、農地に対する水の管理は、まだ手作業によるところが大きい。大農場では多くの人を雇って車で圃場を巡回させ、作物の健康状態や土の湿り具合をチェックしている。

Y Combinatorが支援するTule(“トゥーリー”と発音する)は、その過程を、広い土地の上の植物の水分量を感知するデバイスを使って、より簡単な作業にしてくれる。そのデバイスは、植物から空気中に放出される水分の蒸散量ないし‘蒸発散量’(evapotranspiration)を測定する。そしてセンサが集めた蒸散量のデータは、同社のサイトのサーバへ送られる。

水管理は農家にとってますます重要になりつつある。農務省のデータによると、合衆国の水資源の大半が農作物向けであり、その90%以上は西部諸州で消費されている。

カリフォルニア州のようなところでは、水の管理がとくに重要だ。アーモンドやアボカド、いちご、ぶどうなどの作物は土壌中の水分の管理に細心の注意が必要だが、今州は干ばつに見舞われている。

そのため、わずか一滴の水でも農家とその農地にとっては重要だ。土壌中の水分は、多すぎても少なすぎても何千エーカーもの農地の作物に悪影響を与え、食糧の不足や価格の上昇を招くだけでなく、農家の所得に壊滅的な打撃を与える。

農家が広い圃場をチェックするために、今ではドローンという最新のツールがある。しかし、環境学の学位を持つTuleの協同ファウンダTom Shaplandによると、ドローンでは、農家の人が目で見て分かること以上のことは分からない。

“ドローンは作物の画像を農家の人に見せるが、それはすでに目で見て分かっていることであり、土壌中の状態までは分からない”、とShaplandは言う。

Edynのような土壌湿度センサでは、土壌のごく一部や、特定の植物に関してしか分からない。

Shaplandは、彼がカリフォルニア大学デイヴィス校でPhDを取得したときの研究を、実際に農業に生かしたい、と考えた。彼と協同ファウンダのJeff LaBargeは、Tuleを作って、Shaplandの言うことの方が作物の健康を維持するための灌水の方法として、正しくて実装可能なソリューションであることを、実証しようとした。

Tuleの技術の原理は19世紀からあるが、実装が高価につくため、実用化はされなかった。その、センサというものがない時代のシステムは一基が50万ドルもするもので、一世紀以上にわたり、大学の研究室の外に出ることはなかった。

Tuleのセンサは30分以下で据え付けられ、一度に最大10エーカーの農地を測定でき、センサ一台の費用は1500ドルだ。

農家の人が作物の状態をモバイルでチェックできるアプリも、もうすぐリリースできる。今はPCなどからTuleのWebサイトにログインして、作物の状態をリアルタイムでチェックする。画面にはその農家の作物のデータや、向こう一週間の天気予報が出る。それを見て、その週の灌水の量を調節する。

LaBargeとShaplandは、将来的には水分の測定だけでなく、必要な作物への必要な量の灌水を自動的に行うシステムを作りたい、あるいは、誰かがきっと作るだろう、と考えている。彼らの関心対象は、もっぱら、水だ。

このようなセンサは、未来の世界の食糧生産にも貢献するだろう。35年後(21世紀半ば)の世界の人口は90億と予想されている。国連の食糧農業機構(FAO)の予想では、そのときまでに食糧の生産量を60%増やす必要がある。Shaplandによると、彼のセンサによって農家が正しい灌水をするようになれば、世界の食糧生産量は少なくとも30%はアップする。

Tuleはこの技術を大学からライセンスされた、という形になっているので、‘大学のお墨付き’が農家に対するセールストークでものを言うかもしれない、とShaplandは考えている。一方LaBargeは、地元のトマト名人からのお墨付きの方が有効、と言う。“彼らが良いと言えば、その地域の農家全員が採用するからね”、と彼は言う。

Tuleは最近、Khosla VenturesとBloomberg Betaからシード資金を獲得している。額は公開されていないが、100万ドル以上、という説がある。

同社のセンサ装置は現在、同社のWebサイトで予約販売している。

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ニューヨークの都心ブルックリンで農産物の産直を展開するFarmigoに地域農家も好感

 

ニューヨークのどまんなかで、農産物の地産地消でスタートアップしているFarmigoは、サンフランシスコ出身だ。ぼくみたいに。

今でもチームはウェストコーストにいるし、イスラエルのテルアビブにもいる。2年前にファウンダでCEOのBenzi Ronenと同社の本社は、合衆国を横断してニューヨークのブルックリン(Brooklyn)に来た。このシリーズBuilt in Brooklynの中でも、変わり種だ。

Ronenによると、“Brooklynは地域産の自然食品が360度全方向から集まるすばらしいハブだ。地元産の農産物もね。オンラインとオフラインの企業の協力体制も、ここは理想的だ。食べ物スタートアップとメディアスタートアップとのコミュニケーションも良い”。

Farmigoがローンチしたのは実は2011年のTechCrunch’s Disrupt SFだった。そのときの彼らのプロダクトは、コミュニティ支援型農業(community supported agriculture, CSA)のためのソフトウェアで、地元消費者と地元農家をオンラインでつなぎ、配達はたいへんなので消費者がコミュニティの配布センターに来て、品物をもらう。センターは学校でも、どこかのオフィスでも家でも、どこでもよい。

Ronenは曰く、同社は食品の生産者たちを結びつけることによって、従来的な“食品チェーンを崩壊させたい”。ただしマーケットプレースの構築は、容易ではない。“参加意欲のある農家が十分にいるか。そして、そうやって産直的に食料を買いたい消費者が十分にいるか。この二つが最大の難題だ”。

“現時点では、農家はうちに集まってくる。従来的な食品チェーンでは末端小売価格の20%しか農家の手に渡らないのに対し、うちでは60%wp渡しているからだ”、と彼は言う。

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農業経営支援のFarmLogsが早くもシリーズB、$10Mを獲得

ほぼ1年前にFarmLogs 400万ドルのシリーズAの獲得を発表した。そして今日同社は、農業のデジタル化を推進するための新たな資金として、シリーズBで1000万ドルを獲得したことを発表した。

この新たな投資は既存の投資家であるDrive CapitalとHuron River Ventures、およびHyde Park Venture Partnersによって行われた。SV Angelと、Y Combinatorの社長Sam Altmanもこのラウンドに参加し、これでFarmLogsの総資金額は1500万ドルになった。

YCの2012年の冬季クラスを卒業してローンチしたミシガン州在籍の同社は、その後すさまじく成長し、2014年の前半でマーケットシェアが創業当時の3倍に増大した。新たな資金は今後のさらなる技術開発と、人員増に充てられる。〔この場合のマーケットシェアとは、(ユーザ農家の収量/全農家の収量)✕100%。〕

同社はシリコンバレーで創業され、その後ミシガン州Ann Arborへ移った。今年の初めにCEOで協同ファウンダのJesse Vollmarは本誌に、輪作計画の最適化と一層の合理化を行うシステムと、さまざまな営農データの自動収集に力を入れたい、と言っていた。

たとえばFarmLogsは、現代的な農業機械からのデータを費用の安いBluetoothで収集し分析している。これらのデータに基づいてFarmLogsは作物農家を、利益予測や経費記録、営農スケジュールの効率化などの面で支援している。

Vollmarは声明文の中で、“今後とも優秀な技術者、データサイエンティスト、デザイナーたちを増やしていきたい。弊社が持ち得た活力と、世界中の農家のために大きな価値を築ける弊社の能力には、われながら感嘆している。新たな資金により、より使いやすいソフトウェアを作り、すべての農家に最良の科学と技術を遅滞なくご提供して参りたい”、と述べている。

ヘタな駄洒落: もちろん、これから収穫量が増えるのはユーザの農家だけでなく、FarmLogs自身もだ。

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企業集団Farm2050は農業スタートアップを資金と技術面で援助していく…Google会長Eric Schmidtも発起人

2050年には世界の人口が100億になり、その命を支えるためには食糧を今より70%増産する必要がある。しかし食糧増産技術に取り組んでいるスタートアップたちは、生産や試験のための十分な資金を欠き、苦労しているところが多い。そこでGoogleの会長Eric SchmidtのInnovation EndeavorsFlextronicsのLab IXは今日(米国時間11/20)、AgTech(農業技術)スタートアップを資金や技術面で支援する集団Farm2050を立ち上げた。

Farm2050のそのほかの構成員は、GoogleとDuPont、Agco、UTCのSensitech、そして3D Roboticsだ。FlextronicsのLab IXを率いるLior Susanによると、“農業をやることは今でもかっこ良くないと思われている。VCたちが色めき立つようなIPOもなければ買収もない”。そんな状況の中でFarm2050は、AgTechのエコシステムを育てていきたいのだ。

Farm2050は今、グローバルな食糧危機を解決するアイデアを抱えたスタートアップたちを、支援対象企業として募集している。

Innovation Endeavorsの専務取締役Dror Bermanによると、“起業家が挑戦すべき問題はたくさんあるが、その中の10%ぐらいに90%の起業家の関心が集中している”。農業は、その10%に入っていない。本当に重要な課題に起業家たちの関心が分散すれば、テクノロジ企業の数は今の100倍〜1000倍ぐらいにはなるはずなのだ。

農業には今すでに大きな市場があり、その規模は全世界で1200億ドルと言われる。しかしほかの産業に比べると農業は、その技術的進歩を加速するための支援構造を欠いている。でも、ここに突破口が開かれれば、本当に人間を救うことができる。

Bermanは語る: “100年前にはHaber-Bosch processが化学肥料の生産を可能にした。50年前にはコールドチェーン技術(長距離冷蔵輸送・貯蔵技術)により新鮮な農産物の長距離輸送が可能になった。そして今日では、ロボット工学と機械学習が農業を変えつつある”。

Farm2050は、食糧増産技術のアイデアなら何でも歓迎する。具体的には、中心となるのはロボット工学とデータサイエンスの、農業技術全般もしくは特定農産物への応用だ。

この集団が投資家の集団ではなく企業集団なのは、単にアイデアに金を出す、というのではなくて、AgTechのイノベーションに対する技術的支援がすぐさま可能になるからだ。Bermanによると、企業は自分たちの技術が役に立つと思ったら、即席でインキュベータを立ち上げたりスタートアップに投資することがよくある。Farm2050はそのようなリソースを育成して、新進企業を支援していく。この集団にはたとえば、サプライチェーンのエキスパートやセンサ技術の経験豊富な専門家がいる。

今では、個々の企業に直接投資するのではなく、社会的な課題への投資を介してスタートアップを育てるという、ソーシャルなベンチャー資本、Social Venture Capital(SVC)が萌芽している。Farm2050もその投資的な側面は、まさにSVCだ。Susanはこう言う: “われわれの子どもも孫も、この地球で生きていく。スタートアップに投資している連中が、そのことに貢献できないのなら、それは大醜態だ”。

最新のSF映画Interstellarには、地球規模での食糧不足の惨状がリアルに描かれている。読者の中に、AgTechをやろうかなぁと迷っている起業家がいたら、決心を固めるためにその映画と、今日のFarm2050の発表がきっとお役に立つだろう。確かに今の世界には、ソーシャルゲームや写真アプリ作ることよりもずっと重要な課題があるのだ。〔余計な訳注: SF映画なんか見るより、世界の最貧飢餓地帯を旅した方がよいね。〕

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ニューヨークの都心ブルックリンで無農薬野菜を作るGotham Greens、その農地は”屋上”

本誌の連載ビデオ記事Built in Brooklynで前回は、Gowanus地区にオープンしたWhole Foodsを取り上げた。スーパーの開店なんてこの連載の趣旨に合わない、と思われた方もおられるかもしれないが、実は、都市農業のスタートアップGotham Greensがここにいるのだ。

この企業は、お店の屋上に作った温室で無農薬の農産物を作り、Whole Foodsで売っている。というか、Gotham Greensの屋上温室農場はニューヨークに3つあり、ほかの都市にも作る予定だ。また、売っているお店はWhole Foodsだけではない

でも、なぜ。屋上で? 協同ファウンダでCEOのViraj Puriは、“今では持続可能な農業という大きなトレンドがあり、うちはその一翼だ”、と言っている。

“都市には農地が少ないし、土地の肥えた場所もあまりない。でも、屋上という未利用の広大なスペースがある”、と彼は語る。“その広大なスペースをそのままほっておくよりも、何かを栽培して高品質な製品を地域のお客さんに提供した方がいいよね”。

同社の役員には、もう一人の協同ファウンダEric Haleyのほかにchief agricultural officer(CAO, 農業担当最高責任者)Jennifer Nelkin Frymarkがいる。ビデオでは同社の歴史や農法が語られ、温室の内部を詳しく見せてくれる。

ビデオ中の静止画像はGotham Greens/Mark Weinberg/Ari Burling提供。

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農家のデータ管理のすべてを面倒見るFarmLogsが半年でシェアを三倍増

ミシガン州のFarmLogsが今日(米国時間9/5)、この若き企業の社歴における重要な節目を発表した。創業2年の同社は成長著しく、今や顧客は50の州のどの州にもいて、110億ドル相当あまりの収穫を同社のサービスが管理している。この数字は、6か月前に比べて3倍増だ。FarmLogsの推計では、全米の農家の15%が同社のサービスを利用している。

シリコンバレーでスタートした同社はその後ミシガン州Ann Arborに移った。今年の初めにCEOで協同ファウンダのJesse Vollmarは、同社の中心的目標として、最適な輪作作物の決定をインテリジェントに行えるシステムと、活動データ収集の自動化を挙げた。

声明文の中でVollmarは、“このたび、弊社の顧客が合衆国のすべての洲に存在することになり、弊社が全国の農家の信頼を勝ち得たことを誇りに思う。この重要なマイルストーンに達し得たことは、弊社のプロダクトが合衆国の農業に重要でポジティブな影響を与えうることを意味している。弊社のこれまでの成長のペースは、FarmLogsで仕事をしている人たちのすばらしい資質の表れであり、つねに農家のためを最優先するプロダクトを弊社が作っていることの証拠でもある”、と述べている。

FarmLogsの農業に対するデータ駆動型のアプローチは、モバイルWebを利用して農家の作付け計画を迅速に助け、利益を予想し、経費を記録し、効率的な営農スケジュールを導く。しかもそのソフトウェアは、GPSを利用して各農家の所在地の天候の履歴を調べることができる。ユーザである農家は、そのソフトウェアのモバイルアプリからメモを記録したり、データを入力したりする。それは、農業という最古の産業における、ラジカルな革命だ。

Vollmarは曰く、“FarmLogsを利用すると農家は、自分の農地に何が起きているかをとても容易に知ることができる。降雨、肥効、作物の健康状態、土壌条件、農業機械の状態、などなどがWebやモバイルの分かりやすいインタフェイスへ送られる。大学等における農業研究の最新の成果をつねに取り入れて、合衆国のすべての農家にもっとも進んだ情報を提供している”。

FarmLogsはY Combinatorの2012年の冬学期を卒業し、2014年初めにはシリーズAで400万ドルを調達した。それにより正社員を8名から18名に増員して、成長を加速した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))