インスタ投稿からユーザー属性を分析するAIQが11億円を資金調達

InstagramなどのSNS投稿を分析するプロファイリングAIを開発し、サービスを提供するAIQ(アイキュー)は3月9日、シリーズBラウンドで総額約11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。2019年7月に発表した総額約2億円の資金調達に続くもので、創業からの累計調達額は約13億円となる。

インスタ投稿からユーザー属性が見えるプロファイリングAI

AIQが開発するプロファイリングAIは、画像解析エンジンとSNSに特化した自然言語処理エンジンを組み合わせることで、SNSに投稿された写真や動画、テキストなどの情報から、投稿者の性別・年代・地域・趣味嗜好などの属性を、高い精度で分析できるというものだ。

このプロファイリングAIを活用し、AIQでは以前の記事でも紹介したInstagramアカウント運用ツール「AILINK(アイリンク)」のほか、2019年8月にはInstagramへの投稿ごとに効果測定ができ、ハッシュタグ提案などの機能も持つ「AISIGHT(アイサイト)」をローンチしている。

AILINKの上位プロダクトとも言えるAISIGHTは、Instagram版のプロファイル分析サービスで、ハッシュタグレコメンドと流入効果の可視化が主な機能だ。時系列のフォロワー増減がひと目で分かるほか、男女比や属性などを分析した上でのアカウント運用・育成が可能となっている。

特にAIQが注力するのが、2019年12月に追加されたハッシュタグレコメンド機能。この機能では、従来のInstagramアカウントでは捉えづらいユーザーの年代や属性を、AIが投稿などの行動から推論。フォロワーの動向に合わせてハッシュタグ傾向をレポートし、投稿ごとにおすすめのハッシュタグを提案してくれる。

「投稿したいハッシュタグから共起ワードをリストアップするだけなら、他社サービスにも同様の機能はあるが、アカウント特性から関連性を見てレコメンドをする点が、AISIGHTの特徴」とAIQは説明する。

操作は、投稿したいハッシュタグをAISIGHTの画面に入力するだけ。入力してしばらく待っていると、Instagramでハッシュタグ検索をした際の「人気投稿」9枚に掲載される確率、掲載時間、インプレッション数をリアルタイムで予測し、アカウントの特性に合った関連ハッシュタグが、ランキング形式で提案される。この際、アカウント特性に沿わず、掲載確率を下げるようなワードには警告も表示される。

AISIGHTは投稿ごとの効果測定、分析も行う。フォロワーだけでなく、フォロー外ユーザーのエンゲージメントも可視化されるので、新規ユーザー獲得時の投稿と、既存ユーザーを満足させる投稿を使い分ける、といった利用も可能だ。

またAIQでは2019年9月、Instagram/Twitter上のUGC(User Generated Contents)分析に、投稿者の属性情報を掛け合わせて可視化するマーケティングサービス「SOCIAL PROFILING(ソーシャルプロファイリング)」の提供も開始している。

コンサルティング領域のサービスとして提供されているSOCIAL PROFILINGは、画像×自然言語分析により、UGCのハッシュタグやテキスト情報だけでなく、「期間限定商品のパッケージ写真が、ユーザーにどう取り上げられているかを見る」といったコンテンツ抽出が可能となっている。

さらに、プロファイリングAIを活用することで、「ライフステージが色濃く出るUGC分析が可能」とAIQでは述べている。例えば20代女性をターゲットにしたある製品では、UGC分析により「小さな子どもを持つお母さん」がユーザーに多く見られたことから、プロモーション手法を変えたケースもあるという。

また「インターネットでのアンケート調査だけでは毎年結果に変化がなく、気付きが得られない」としてSOCIAL PROFILINGを利用した、ある宝飾品ブランドの例では、UGC抽出・分析により「プロポーズ用途には、指輪ではなくネックレスが買い求められている」というリアルな状況が分かったという。「婚約指輪はプロポーズにOKがもらえて、サイズが分かってから2人で一緒に買いに行くもの」という実情が分かり、このブランドでは分析結果を店頭での接客などに生かすことにしたそうだ。

SOCIAL PROFILINGにより抽出されたUGCは、コンテンツデータそのものが提供されるパターンのほか、プロファイリングデータやレポーティングまで実施して提出されるパターンも選択できる。ポイント制度を運営する企業など、データを保有する企業と連携して、分析実施などを進める予定もあるという。

博報堂G傘下のスパイスボックスと資本業務提携 、新規事業開発も

今回の資金調達では、博報堂グループ傘下のスパイスボックスをリード投資家として、SMBCベンチャーキャピタル、and factory、みずほキャピタル、北海道ベンチャーキャピタル、東京大学松尾豊研究室発のVCであるDeep30と、個人投資家らなどが引受先に加わっている。また商工組合中央金庫とコミットメント型タームローンによる金銭消費貸借契約を締結し、事業規模の拡大に応じて資金供給を受ける。

スパイスボックスはもともと、代理店としてAIQのプロダクトを取り扱っており、事業の親和性が高いことから、今回、資本業務提携を行うことになったという。AIQが持つAI技術、データ資産と博報堂グループ傘下のスパイスボックスが有するノウハウを融合し、新規プロダクトを共同で開発していく。

またDeep30の資本参加により、今後AIQでは、松尾豊教授からAI分野で助言を得て、技術レベルの向上、新規事業・プロダクト開発に生かしたい考えだ。

調達資金についてAIQでは、既存プロダクト強化のための人材への投資、採用強化と、スパイスボックスとの協業も含めた新規事業開発に投資していくとしている。

SNS分析・運用サービスを提供するAIスタートアップのAIQが2億円調達

AI技術を活用したSNS分析・運用サービス「AILINK(アイリンク)」などを提供するAIQ(アイキュー)は7月12日、総額約2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はand factoryほか複数の投資家と金融機関。AIQにとっては外部からの初の資金調達となる。

社会実装を重視してAIをSNS運用サービスに展開

AIQの設立は2017年7月。創業からちょうど2年になる人工知能スタートアップだ。AIQ代表取締役社長CEOの高松睦氏は前職で、大手通信キャリアを相手に先端技術を使ったソフトウェアの提案・開発を行っていた。そこでディープラーニングに出会い、「ディープラーニングを使い、自分たちのサービスとして提供できれば」と考えたことが起業のきっかけだった。

AIQ代表取締役社長CEO 高松睦氏

「先端技術を扱ってはいるが、ビジネスサイドから人工知能を手がけているのが我々の特徴。研究を深掘りしていくというよりは、社会実装することを重視している」(高松氏)

AIQでは、画像解析エンジンとSNSに特化した自然言語処理エンジンを独自に開発。2つを組み合わせることによって、SNSに投稿された写真や動画、テキストなどの情報から、投稿者の性別・年代・地域・趣味嗜好などの属性を、高い精度でプロファイリングできるという。

また、これらのエンジンを使ったサービスも展開している。その代表的なものがインスタグラムアカウントの分析・運用サービスAILINKだ。企業のインスタグラムアカウントと親和性の高いユーザーを抽出でき、相性のよいアカウントには自動でフォローや「いいね!」などのアクションを実施。フォロワー増やマーケティングに役立てることができる。2018年9月には、顧客からの要望が高かったTwitter対応版もリリースした。

AILINKはフォロワー増を目的として導入されることが多いそうだが、「ユーザー分析をした上で自動運用を行うので、効果が高い」と高松氏は話している。「マスマーケティングが頭打ちになる中で、コアなファンとのつながりを持つことができ、ケアすることも可能。購入単価増に結び付けることもできる」(高松氏)

AILINKサービス紹介サイトより

インスタグラムの自動運用ツールには、競合も数多い。どういった点で優位性があるのか高松氏に尋ねると、「独自のSNS分析に適したAIエンジンを持つことと、データを保有している点だ」との答えが返ってきた。「ハッシュタグのみでなく投稿全体を分析し、ランダムなゴーストアカウントではなく興味がありそうな人をフォローするので、フォローバックがきちんと得られて、タイムラインで情報を届けることができる」ということだそうだ。

高松氏はSNSをAI開発とサービス展開のフィールドとして選択した理由について、こう述べている。「スタートアップとして人工知能を手がけるためには、学習のためのビッグデータがなければならない。SNSは豊富に学習データがあり、着手しやすかった」(高松氏)

フォロワーのさらなる活用のために新プロダクトを準備

今回の調達資金は、現サービスの開発、販売のための人材強化に充てるというAIQ。また、8月に新サービスの立ち上げも予定しているという。

「AILINKでフォロワーは蓄積できたとして、その後のアクションに顧客は悩みを抱えている。新サービスでは、フォロワー分析に焦点を当てる。例えばスイーツに関するアカウントなら、和菓子なのかアイスクリームなのかケーキなのか、アカウントのつながりを分析する。ネットワーク分析の結果を利用して、フォロワーをインフルエンサーとしてマーケティングに生かしたり、商品開発に協力してもらったりといった、次のステップを考えるための『究極のファンベースマーケティングのためのプラットフォーム』を用意したい」(高松氏)

また、本ラウンドのリード投資家であるand factoryとは、資本業務提携も実施。and factoryが展開するユースホステル事業「&AND HOSTEL」などのIoTデータや提供するアプリで蓄積するユーザー行動のビッグデータなどを活用した、データとAIによる新プロダクトの研究開発を今後両社で検討していくという。