ファイナンスプラットフォーム提供の「エメラダ」がシードラウンドで2億円を調達

ファイナンスプラットフォームの提供を計画しているFintechスタートアップ「エメラダ」がシードラウンドで2億円の資金調達を実施したことをTechCrunch Japanへの取材で明らかにした。この投資ラウンドをリードしたのはD4V(Design for Ventures)で、大手金融機関、金融業界関係者など個人投資家なども含まれるという。

2017年中にエクイティーとデットで2つのサービスを目指す

エメラダは2017年中にエクイティーとデットで2つのサービスのローンチを目指している。

1つはエクイティー(株式)によるファイナンスプラットフォーム。スタートアップ企業と個人投資家を結び、1件あたり数千万円の資金調達のマッチングを行うもの。もう1つのサービスは機関投資家を対象にしたP2Pによるデットファイナンス(借入)のプラットフォーム。いずれのサービスも2017年中のサービスインに向けて準備中だという。

TechCrunch読者なら「日本版AngelList」と言えば分かりやすいかもしれない。ただ、多数の個人投資家に生株を渡してしまうと株主にしても投資を受ける企業にしても、株主総会の対応などが頻繁に生じるため現実的な仕組みとして回らない。この辺りのスキームは現在の金融商品取引法および会社法の枠内でできる方策を当局と議論中という。シードより少し後のステージのスタートアップの資金調達を扱い、1口あたりの投資額は50万円となる可能性が高いという。取扱対象となるスタートアップ企業は、IPOやM&Aなど明確にエグジットを意識している企業で、「ある程度セレクティブなものになるだろう」(エメラダ澤村帝我CEO)という。スタートアップの資金調達需要のどの辺りを取り込むのかという質問に対しては、「シリコンバレーでAngelListFundersClubが活用されているように、大きな調達ラウンドにジョインするだけではなく、ブリッジファイナンスをまかなうなどシリーズAクランチの回避を仕組みでサポートしたい」としている。こうした調達プラットフォームがもし普及すれば、ハンズオンVCを補完するプラットフォームとして機能していくことになるだろう。

もう1つのデットによるP2Pファイナンスは、従来からあるソーシャルレンディングとは異なるものになると澤村氏は言う。「金融機関出身の人間としては本丸はそこではない思っています。機関投資家が貸出しているところを早く簡単にできるようにするのが狙いです。(ソーシャルレンディングのような借り手の)匿名性よりも、むしろ見える化したい。リスク・リターンの情報開示をしっかりやって機関投資家を相手にビジネスにしていく」(エメラダ澤村CEO)。

大切なのは「プロのお金」が還流すること

「P2P」とか「プラットフォーム」という言葉を聞くと、個人を含む多くのプレイヤーが参加可能なものを想起する人もいるだろう。ぼくは「民主化」というキーワードを思い浮かべた。ただ、エメラダは民主化ということに力点を置いていないそうだ。実際、先行する英米のサービスには、Funding CircleLendingClubなど色々あるが、澤村氏によれば、これらのプラットフォームでも機関投資家からの資金が大半というところが増えているのが現状だそうだ。また、個人をプラットフォームに載せようと考えると「ユーザー獲得単価(CPA)が高くなる」、「一定規模になるとスケールが難しい」、「コンプライアンス・リスクがある」(個人を対象にする以上は機関投資家相手以上にシッカリした情報開示が必要)などといったこと難しさもある。

「長い目でみれば個人がお金を動かす時代が来るかもしれません。ただ、アメリカですら(資金調達プラットフォームが)機関投資家へシフトしていることを考えると楽観的に考えても日本では、これは20年はかかる話。それよりも、事業者に対して最適な形で資金還流がなされることが大切。経済にとっては流れるべきところに適切な方法で流れていないのが課題なので、大事なのはプロのお金。われわれは融資先の発掘、選別、リスク評価の機能を充実させて既存の金融機関を支援します。審査モデルとシステム構築の方向性については、金融機関の融資企画や審査部門で経験が長い専門家などと協議をしながら決めています」(エメラダ澤村CEO)。

低金利時代に多くの営業員を抱えて収益を圧迫される金融機関に対して、テクノロジーを活用した案件発掘や審査の機能をオンラインで提供し、そこに対して投資家として既存金融機関にも入ってもらう、というのが狙いだそうだ。

エメラダの潜在利用ユーザーの企業に対しては、事業の中身も含めて資金に関する悩みや課題を解決するという意味で、これまで銀行、税理士・会計士、証券会社とバラバラに行く必要がる現状に対して、ワンストップとなるような「ファイナンスのアマゾン」を長期的には目指したい、と澤村CEOは話している。

澤村CEOは慶應義塾大学出身で、エメラダ創業前は野村證券、ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門で企業買収や資金調達の助言業務に携わっていたそうだ。現在エメラダのマネジメントチームは同じくゴールドマン・サックス出身のメンバーのほかに、ソニーでPS VRの開発をしていたエンジニアなどが参画している。