「価格.com」モデルを東南アジアでタイムマシン経営する日本のスタートアップ

海外でヒットしたビジネスモデルをいち早く日本に持ち込む「タイムマシン経営」。ネットバブルと呼ばれた時代には、ヤフーをはじめ多くの企業が米国の成功モデルを輸入して成功したが、近年ではネット業界の国境や時差がなくなってきたせいか、かつてのようにその言葉を聞かなくなった(関連記事:もはや、日本でタイムマシン経営を成立させるのは無理か)。ならばと、価格比較サイト「価格.com」のモデルをインドネシアで展開しようとしているのが、Pricebookという日本のスタートアップだ。

Pricebookは、東南アジアでのネットビジネス経験がある2人が9月に設立したスタートアップ。国内でシード・アーリー投資を手がけるインキュベイトファンドが出資している。

Pricebookによれば、インドネシアはEC市場の伸びが著しく、B2C向け市場規模は2012年で約1040億円、2015年には約3560億円に拡大する見込みだという。同社は、「インドネシアにはEC領域に大きな可能性がある一方で、有力な価格比較サイトが台頭していない」と分析。インドネシアを含む東南アジアで価格.comと同様のポジションを取れると判断し、まずはインドネシアで12月3日にサービスをローンチした。

当初は、携帯電話やパソコンなどの家電を取り扱い、製品のレーティングやレビュー、検索、掲示板、レコメンド機能を搭載。販売店と価格の組み合わせをリスト化し、それぞれの販売店の評価とあわせて掲載する。いくつかあるという既存サービスとの差別化ポイントとしては、「最低価格比較」および「口コミ」の2点を打ち出していく。

Pricebookの辻友徳社長によれば、インドネシアの価格比較サイトは、製品の価格が間違っていることが多々あるのだという。そこで同社は、店舗のECサイトに負荷をかけない範囲内の頻度で価格をクロールしたり、セール情報ページはクロール頻度を上げるなどの施策を実施。誤った製品に基づいた価格については、人力作業で精度を向上させる。東南アジアの高い携帯電話普及率に合わせ、レスポンシブデザインやモバイルアプリの開発にも取り組む。

短期的な目標としては、競争源泉となる製品や価格データ、口コミを蓄積するとともに、SEOを重視してアクセスを集める。2014年中には、店舗から製品や価格のデータを自発的に提供してもらい、最新の価格情報をプッシュ型で配信する仕組みを構築する。「買い手・売り手ともに未成熟な市場なので当面は売上を追求しない」(辻氏)が、将来的には扱う商品のカテゴリーや展開国を増やし、2年をかけて単月黒字化を目指すとしている。