緊急通報対応を効率アップさせるクラウドベース開発のRapidDeployが約32億円調達

2020年のパンデミック禍での暮らしは現実世界であり、ときに悲惨なもので、効率的かつ万全の緊急対応サービスを利用できる状態にあることがいかに重要かを証明した。緊急対応サービスは必要とされればリモートで人々をサポートできる。そして遠隔からサポートできないときは、医療的な措置などを必要とする状況においてスタッフがすばやく派遣されるようにしている。このプロセスをサポートするクラウドベースのツールを構築している企業が米国時間4月29日、引き続き成長するための資金調達ラウンドを発表した。

911センター(日本の119番、110番通報センター)向けにクラウドベースのサービスとしてコンピューターを活用した出動テクノロジーを提供しているRapidDeploy(ラピッドデプロイ)は2900万ドル(約32億円)のシリーズBラウンドをクローズした。この資金は事業の拡大と顧客に提供しているSaaSツールの拡張の継続にあてる。RapidDeployの考えでは、最も効率的な方法で緊急対応を展開するのにクラウドは必要不可欠だ。

「911通報対応は初期においてはトランシーバーで行われていました。そして今、クラウドが信号の結節点になりました」とRapidDeployの共同創業者でCEOのSteve Raucher(スティーブ・ローチャー)氏はインタビューで述べた。

オースティン拠点のRapidDeployは911センターにデータと分析を提供している。助けを求めている人との重要なつながりであり、そうした通報を最寄りの消防救急や警察とつなげている。現在同社のプロダクトのRadiusPlus、Eclipse Analytic、Nimbus CADを使っている顧客は約700を数える。

この数字は米国の911センター(計7000)の約10%にあたり、人口の35%をカバーしている(都市部や人口の多いエリアにはより多くのセンターがある)。同社のプロダクトが利用されている州はアリゾナ、カリフォルニア、カンザスなどだ。また同社の元々の創業の地、南アフリカでも展開している。

今回の資金は、金融および戦略的投資家という興味深い組み合わせからのものだ。Morpheus Venturesがリードし、GreatPoint Ventures、Ericsson Ventures、Samsung Next Ventures、Tao Capital Partners、Tau Venturesなどが参加した。PitchBookのデータによると、直近のラウンドの前にRapidDeployは約3000万ドル(約33億円)を調達していたようだ。評価額は公開されていない。

EricssonとSamsungは、通信産業の主要プレイヤーとして、何が次世代の通信テクノロジーとなるのか、必要不可欠なサービス向けにどのように使われるのか、という点で利害関係がある(実際、かつての、そして現在の911通信の主要リーダーの1社はMotorolaで、EricssonとSamsungの競合相手となるかもしれない)。AT&TもまたRapidDeployのGTM戦略(物流と販売)パートナーで、同社はデータをシステムに送るのにApple、Google、Microsoft、OnStarを統合している。

緊急通報対応テクノロジーの事業は細分化されたマーケットだ。それらを「パパママ」事業だとローチャー氏は表現した。緊急対応サービスの80%が常時対応スタッフ4人以下という規模で(米国の町の大半が、あなたが思うような巨大な大都市よりもかなり小さいという事実の証だ)、多くの場合こうした町は昔ながらの古い設備で対応している。

しかし米国では過去数年、Jediプロジェクトや次世代の公共セーフティネットワークのFirstNetのようなイノベーションが盾となって状況は変わってきた。RapidDeployのテクノロジーは、人々の正確な位置の特定とサポート改善を支えるために携帯電話テクノロジーのイノベーションを利用してきたCarbyneRapidSOSのような企業と同じものだ。

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RapidDeployのテックはRadiusPlusマッピングプラットフォームをベースとしていて、これはスマートフォンや車両、ホームセキュリティシステム、その他のコネクテッドデバイスからのデータを使っている。データストリームにその情報を流し、911センターが位置だけでなく、通報した人の状態に関する潜在的な他の要素を判断するのをサポートできる。一方、Eclipse Analyticサービスはセンターが状況に優先順位をつけたり、どのように対応すべきか洞察を提供したりと、アシスタントのように機能する。そしてNimbus CADは出動して対応をコントロールすべき人を見つけ出すのを手伝う。

長期的には、新しいデータソース、そして通報者とセンター、緊急ケアプロバイダーの間の新しい通信方法をもたらすためにクラウドアーキテクチャを活用する、というのがプランだ。

「メッセージのスイッチというより、トリアージサービスです。ご覧の通り、プラットフォームは顧客のニーズとともに進化します。戦術的なマッピングは究極的にニーズをカバーするのに十分ではありません。当社は通信サービスの統合について考えています」とローチャー氏は述べた。実際、それはこうしたサービスの多くが向かおうとしている方向であり、消費者にとって良いことづくめだ。

「緊急サービスの未来はデータにあります。これまでよりも速く、対応が細やかな911センターを作ります」とMorpheus Venturesの創業パートナー、Mark Dyne(マーク・ダイン)氏は声明で述べた。「RapidDeployが構築したプラットフォームは、次世代911サービスを全米の過疎地や都市部のコミュニティで実際に使えるようにすることができると確信していて、スティーブやスティーブのチームと未来に投資することを楽しみにしています」。今回のラウンドの一環としてダイン氏はRapidDeployの取締役会に加わった。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:RapidDeploy資金調達SaaS緊急通報

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi