本稿の著者はMichaela Villaroman(ミカエラ・ビジャロマン)氏とAlisee de Tonnac(アリゼ・ドゥ・トナック)氏。ビジャロマン氏は、Seedstarsのメディアリレーションコーディネーター。トナック氏は、テクノロジーと起業家精神を通じて新興市場の人々の生活にインパクトを与えることを使命とするスイスのグループSeedstarsの共同創設者であり共同CEO。Seedstarsグループは、90カ国以上で活動、、新興市場で最大の起業家コンテストなどを行っている。
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我々は投資ポートフォリオにおけるジェンダーの多様性の状況を考察しているが、これは女性が起業分野で過小評価されているためである。いくつかの数字を示しながら、なぜあなたの取引に多様性が欠けているのかを詳しく述べていきたい。
女性起業家と資金調達
国際金融公社が2013年に実施した調査によると、女性が所有する企業の資金調達において、2600億ドル(約28兆2100億円)から3200億ドル(約34兆7200億円)のニーズが満たされていない状態であるという。テック系スタートアップ350社の女性を対象にした調査では、この傾向がさらに強かった。女性回答者の72%が、起業時に金融資本を獲得するのが難しく、80%近くが個人的な資金調達に頼らざるを得なかったと答えている。さらに、VCの全資金のうち、女性創業者が獲得するのは3%にも満たない。
男性による資金調達のしやすさと女性のそれとの間には明らかな違いがある。データによると、男性は女性の4倍もエンジェル投資家やVCからのエクイティ・ファイナンスを利用している(14.4%対3.6%)。男性が複数の資金源を簡単に利用できることから、平均で女性創業者の約2倍の資金で会社を設立するのもうなずける。
女性が所有する企業の資金調達では、2600億ドルから3200億ドルというニーズが満たされていないのが現状である
なぜ女性が率いるスタートアップの資金調達が難しいのだろうか?
女性が資本獲得に苦戦している事実は、ファンド運用会社における多様性を見ることで説明できるだろう。ファンドマネジャーの多様性の欠如は、結果としてポートフォリオに関して資金調達の不平等をもたらす。Women in VCのデータによると、米国において、女性が率いるVC企業の割合はわずか5.6%であり、VCパートナーのうち女性が占める割合はわずか4.9%に過ぎない。
「女性や有色系の人々がベンチャーキャピタルの投資戦略を推進できるようにすることは、最も迅速かつ効果的なコース修正である」とWomen in VCのレポートは伝えている。「ベンチャー投資家は、より広い社会規範に影響を与える並外れた力を持っている。彼らはどの創業者が資金を調達し、どの企業が成功のチャンスを得て、どの製品を市場に出すかを決める。これらのことは我々の文化に決定的な影響を与える」。
投資家たちはまず、自らの多様性の問題に取り組まなければならない。女性主導のスタートアップを積極的に調達し、投資しようとする取り組みの強化に向けて、潜在的な偏見を自覚するとともに、発展的な行動を起こしていく必要がある。
多様性のある取引が重要な理由
女性主導のベンチャーを増やして投資ポートフォリオを多様化することは、女性のリーダーシップを信頼することを意味する。企業業績に関する2012年の調査では、ドイツの上場企業のうち150社以上で、取締役会に30%以上の女性が名を連ねていた時期に優れた業績を上げていたことが示された。
さらに興味深いことに、別の調査では、女性の取締役は男性よりも優れていると論じている。研究結果によると、女性は複数の競合する利益に対処し、創造的に問題を解決し、合意を築くことにより効果的であることが明らかになった。対照的に、男性取締役はしばしば規則、規制、伝統に基づいて決定を行うという。
紛れもなく、有能な女性リーダーによって経営されている企業は、収益性の高いROIを提供する準備ができていると言えるだろう。フルブライト研究員で、ペパーダイン大学でマーケティングを教えるRoy Adler(ロイ・アドラー)教授が19年間にわたって実施した研究によると、女性を上級職に昇進させた実績が最も高い企業と、収益性の高い企業との間に相関関係があることが明らかになった。この相関関係は、それぞれの業界のフォーチュン500企業の中央値よりも18~69%上回っている。
これらの数字は、女性の登用が経済的利益となって返ってくることを期待できることを示しているが、ジェンダーの多様性への投資がもたらすより大きな影響と重要性は、その後の全体的な経済成長と繁栄にある。女性起業家のチャンスを高めることで、地域や世界の市場が恩恵を受けるドミノ効果を生み出すことができるのだ。
マッキンゼーは、ジェンダーの完全な平等が達成されれば、世界の国内総生産(GDP)は2025年までに世界全体で最大28兆ドル(約3040兆円)増加する可能性があると予測している。実際、女性に投資しないことによるマイナス面は極めて大きいことが判明している。国連の調査によると、中国や米国を含むアジア太平洋地域では、女性の経済参加が十分に行われていないため、GDPが少なくとも年間420億ドル(約4兆5600億円)減少しているという。
Seedstarsはスイスの投資持ち株会社で、新興市場の高成長テクノロジー企業への投資に注力しており、特に発展途上国において女性起業家がチャンスを与えられることでもたらされる恩恵についてより詳細な見解を提供している。
これらの数字は、ジェンダーの平等が十分に実現できていないが、その価値は非常に高いものであることを明確に示している。Melanne Verveer(メランヌ・ヴェルヴェール)氏とKim K. Azzarelli(キム・K・アザレッリ)氏の著書「Fast Forward」の中で、専門家たちがジェンダーの多様性について論じている。
「富の創造を破壊する最大の要因は家父長制です」とPax World FundsのCEO、Joseph Keefe(ジョセフ・キーフ)氏は語っている。「『身を乗り出す』べきなのは女性たちだけではありません。より良い利益を求める株主は、より多くの女性を雇用し、昇進の機会を与えている企業に力を注ぐべきです」。
バーナード大学のDebora Spar(デボラ・スパー)学長は「この国のあらゆる分野で、女性が権力の座に就く機会は非常に少なくなっています」と指摘する。「私たちはいわゆる『16%ゲットー』に陥っています。航空宇宙工学、ハリウッド映画、高等教育、フォーチュン500の主要ポジション、いずれにおいても女性の割合は最高でも16%程度にとどまっています。これは罪なことで、すばらしい人材を無駄にしていることになります」。
ジェンダーの平等を前進させる
インパクトを生み出すには、女性を十分に取り込むための積極的な対策が必要である。Seedstarsは2018年から、投資先探し、能力開発プログラム、投資活動など、グループ変革の理論で強調されている中核的な活動の中でジェンダーの平等に積極的に取り組んできた。
これまでSeedstarsは600以上の女性主導企業を支援し、女性が共同設立した14の企業に投資してきた。さらにSeedstarsは、メンター、審査員、デリバリー専門家の養成に関してもジェンダーの平等に力を入れている。最近の統計によると、Seedstarsプログラムの全参加者の約30%が女性で、過去数年間で増加(2018年の数字は地域によるが、20%前後となっている)したことを誇りに思っており、今後数年間でその数字をさらに引き上げることを目標としている。
我々自身のイニシアティブと、ジェンダーの多様性を促進する役割を果たす投資家の努力を組み合わせることによって、世界は、未だ完全には受け入れられていない、最も強力な集団の1つとして証明されている層への投資から、恩恵を受けることができるだろう。
あらゆる課題を解決するための第一歩は、問題を認識することにある。意識の向上と対策によって、女性起業家の未来を明るくする重要な発展がもたらされるに違いない。
カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラム、女性、投資、Seedstars
画像クレジット:SEAN+GLADWELL / Getty Images
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(文:Michaela Villaroman、Alisee de Tonnac、翻訳:Dragonfly)