ボストン・ダイナミクスの次期商用ロボットは退屈な倉庫仕事をこなす「Stretch」

Handleの後継機種のStretchは物流に活躍の場を見出す

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が、長い年月をかけてロボットの研究会社から、ハードウェアを製品化して販売する会社へと変遷してきた様子は、とても興味深いものだった。その過程では、結局世界のほとんどのロボットは、ありふれた仕事に使われることになるという、現実的な教訓を教える厳しいレッスンもあった

関連記事:MSCHFがSpotにリモコン式ペイントボール銃搭載、ボストン・ダイナミクスは嫌な顔

もちろん同社は、自社の技術の結晶がオールディーズに合わせて踊ってみせる、楽しいバイラルビデオを世間に向けて発信し続けるだろう。しかし、実際にロボットを販売するという話になると、そのターゲットは、人間がやりたがらない退屈で汚くて危険な(dull, dirty, dangerous、3D)仕事であるということは変わらない。あるいは、以前から私が言っているように、ロボットは、明らかにクールではないタスクを実行するための、クールなテクノロジーであることが多いのだ。

同社のSpot(スポット)は検査ロボットとして成功を収めている。この4脚ロボットは、油田や原子力発電所など、多くの人ができれば滞在時間を制限したいと考える場所に配備されている。3D仕事のうち、危険(dangerous)な部分はこれで片づいたが、同社の2台目の商用ロボットは、退屈(dull)な部分を狙っていると言ってもいいだろう。

画像クレジット:Boston Dynamics

運送・物流がいかに巨大な産業であるかについては、たくさんの統計を引用するまでもないだろう。また、多くの注文がオンラインに移行しているために、規模は拡大する一方なのだ。Locus(ローカス)、Fetch(フェッチ)、Berkshire Grey(バークシャー・グレイ)などの多くのロボット企業が、この種の自動化に事業全体を振り向けていることには理由があるのだ。LocusのCEOが最近語ったように、誰もがAmazon(アマゾン)とその強大なロボット軍団に対抗するための技術を探し求めている。

(現在はプロトタイプの)Stretch(ストレッチ)は、同社が4年あまり前にYouTubeの動画で紹介したロボットHandle(ハンドル)の商用化を目指したものだ。この車輪つきロボットは、動画で紹介された最初期型は滑走しながらバランスを保ち、さまざまな障害物を乗り越えることができる、非常に汎用性の高いロボットだった。またそのときは、100ポンド(約45kg)の木箱を拾うこともできた。当時はこれが将来の進化の基礎になるとは、ほとんど想像することはできなかった。

実際、Handleの箱持ち上げの歴史はもっと古く、同社のヒューマノイドロボットAtlas(アトラス)を使ったビデオにまでさかのぼることができる。Boston Dynamics のプロダクト・エンジニアリング担当副社長であるKevin Blankespoor(ケビン・ブランクスポーア)氏は、TechCrunchに対して「私たちはそこで、Atlasが箱を移動する様子を紹介しましたが、それには倉庫関係の方々からの大きな関心が寄せられたのです」と語った。「実際、Atlasに働いて欲しいという声が挙がりました。その声を受けて私たちは、倉庫での作業をこなすことのできる、もっとシンプルなロボットを設計できると考え、そこからHandleが生まれました。実際にその時点で、Atlasプロジェクトから分離したのです」。

ブランクスプール氏によれば、Handleは「車輪と脚を組み合わせたい」という同社の長年の願望から生まれたもので、倉庫内で物を移動させるためのロボットを設計するという初期の実験のための基礎になったという。

画像クレジット:Boston Dynamics

「私たちはHandleを倉庫に置いて、お客様と実験を始めました。そこでHandleはいくつかの異なるタスクをこなしました。1つ目はパレットからの荷下ろしで、これはかなり良い結果を出せました。2つ目の応用は、トラックからの荷下ろしでした。ここでHandleは仕事をこなすことはできましたが、それはかなり遅いものでした。狭い空間で、たくさんの操作をしなければならず、動作が遅すぎたのです」。

2019年に公開された「Handle Robot Reimagined for Logistics」と題された動画では、上部に取り付けられた大きなアームに、複数の吸盤で構成されたグリッパーを装備した、車輪型ロボットが紹介されている。その動画では、2台のロボットが連携して、1つのパレットから別のパレットに箱を移動させている。しかし、Stretchの画像を見ると、Boston Dynamicsが商業的実用化に向けて、ロボットをどれだけ劇的に見直したかがわかる。

真っ先に目につくのは、Handleの2つの大きな車輪がなくなったことだ。車輪があった場所には、大きくて黒い台がある。「移動の基盤となるのは、その底部です」とブランクスポーア氏はいう。「パレットの大きさに合わせて設計されているので、倉庫内でパレット置ける場所ならどこでも操作を行うことができます」。

本体にはまだ車輪が付いているものの、ほぼ目立たなくなっている。2つだった車輪は4つになり、底部の内側に隠されている。どの方向にも動けるので、移動範囲が広く、このサイズのロボットとしては比較的コンパクトな旋回が可能だ。また、アームの横には「パーセプションマスト」(知覚柱)があり、自律的な移動やピッキングを行うために、ロボットの目として効率的に機能している。

画像クレジット:Boston Dynamics

このロボットは、現在約100名のスタッフが働くBoston Dynamicsの倉庫部門で設計されたものだ。その中には、2019年にKinema Systems(キネマ・システムズ)の買収の一環として同社が雇用した従業員も含まれているが、Kinama Systemsの3D視覚技術が取り込まれて、Stretchのピッキング性能を向上させている。

関連記事:Boston Dynamicsが3D画像認識技術を擁する企業を買収、ロボット商用化にも注力へ

初期の応用例としては、トラックからの荷降ろしやオーダービルディング(商品を1つのパレットに効率的にまとめること)などがある。将来的には、トラックへの積み込みなどの応用も考えられているが、現在はまだ初期段階だ。システムの特性は、Berkshire-Greyのようなゼロから自動化を組み上げる企業のものよりも、よりプラグアンドプレイに近いものだ。また、他の倉庫システムとも互換性を持つことができるようにしている最中だ。

Boston Dynamicsは、この夏に最初のユニットを製造し、2022年にはStretchを販売する予定だ。価格についてはまだ公表されていないものの、ブランクスポーア氏は「普通工場で見かける、床にボルトで固定された従来のロボットシステムと、同等のものになるでしょう」と語っている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics倉庫物流

画像クレジット:Boston Dynamics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。