「ディープテック」に投資するシードVCのAngular Venturesが約45億円のファンドを組成

DFJ EspritのパートナーだったGil Dibner(ギル・ディブナー)氏が立ち上げた「ディープテック」を投資対象とするベンチャキャピタル(VC)であるAngular Venturesは、デビューとなる4100万ドル(約45億円)のファンドレイジング完了を発表した。

ヨーロッパとイスラエルのスタートアップをターゲットにするAngular Venturesはほぼ2年間、いわゆる「ステルスモード」で事業を進め、投資先は12社までに拡大した。同社の投資規模は通常25万ドルから150万ドル(約2700万円から1億6000万円)、ステージはスタートアップの最初の資金調達からシリーズAまでだ。年に5〜7回の新規投資を目指している。

Angularの投資先には、「サービスインテリジェンス」のスタートアップであるAquant.io、職場不正行為プラットフォームVault、ナノテクノロジーセキュリティテクノロジープロバイダーのDust Identity(Kleiner Perkinsも投資)、食品サプライチェーン最適化のTrellisなどがある。

ディブナー氏はAngular Venturesの唯一のGP。同氏は以前AngelListでエンジェルシンジケート(エンジェル投資家とスタートアップをつなぐ資金調達プラットフォーム)を運営していたが、ベンチャービジネスに関する経歴はそれ以前に遡ってかなり長い。

シンジケートを率いる前、ディブナー氏はロンドンに拠点を置くDFJ EspritというVCのパートナーだったが、2015年3月に辞めた。それ以前はロンドンのIndex Venturesのプリンシパルであり、さらに前はいずれもテルアビブのVCであるGemini Israel VenturesとGenesis Partnersに在籍していた。

ディブナー氏は、ヨーロッパとイスラエルにおけるシードVCを再定義したかったと言う。セクター重視のベンチャーキャピタルを作り、地理的な境界を意識せずヨーロッパとイスラエルの両方に投資して、さらに米国でプレゼンスを確立してグローバルに展開する投資先のスタートアップを支援する。

この構想に独自性を見出すかどうかは人によるが、いずれにせよ、ディブナー氏が素晴らしい投資実績を持っていることは間違いない。

これまでの経歴で、ディブナー氏は40社に投資したという。その内28社が米国のVCから資金調達したか、米国企業に売却された。同氏はこれまでの投資のうち8件でイグジットに成功しており、2件(JFrogとSiSense)は「ユニコーン」、すなわちバリュエーションが10億ドル(約1090億円)以上に達した。

ディブナー氏は、そうした実績にかかわらず、このファンドを組成するのに足掛け4年かかったと述べた。

「コンセプトから資金集め完了までに4年近くかかった。最終的には大幅な応募超過になったが、ここに至るまでにかなり断られた」と同氏はTechCrunchに語った。「ファンドの資金集めと企業の資金調達には多くの違いがあるが、今回の経験で、資金調達に苦しみ耐えるスタートアップの創業者に非常に共感を覚えた。アイデアが野心的になればなるほど、資金集めも困難になる」

AngularのLPはすべて民間企業だ。ヨーロッパの多くのファンドとは異なり、納税者のカネは入っていない。GPはディブナー氏のみ。案件のソーシング、デューデリジェンス、投資先企業の支援にはアドバイザーを使っている。

アドバイザーの顔ぶれは以下の通り。JFrogの創業者であるFred Simon(フレッド・サイモン)氏。SiSenseの創業者であり、Angularの投資先であるFireboltのEldad Farkash(エルダッド・ファーカッシュ)氏。BBDOのニューメディア担当EVPだったGuy Poreh(ガイ・ポレー)氏。同氏は、Wixの米国市場での立ち上げを主導し、Playgroundを創業した。Google検索とYouTube検索のプロダクト責任者のJerry Dischler(ジェリー・ディッシャー)氏。Sozo Venturesを設立し、カウフマンフェロープログラムの議長を務めるPhil Wickham(フィル・ウィッカム)氏などだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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