「目指すのは人間版のGoogle」AIヘッドハントのScoutyがLAPRASに社名変更、個人ページの本人公開も開始

AIヘッドハンティングサービス「Scouty」を展開するScoutyは4月10日、2つの新展開を明らかにした。

1つ目が社名とサービス名の変更。本日付で社名をLAPRAS(ラプラス)へ、サービス名を「LAPRAS SCOUT」へと変更することを発表している。そして2つ目がクライアント企業のみに提供していた採用候補者のプロフィールページを、本人に対しても公開することだ。

以前から代表取締役の島田寛基氏は「本人へのプロフィールページの開示」や「HR領域以外へのサービス拡張」について話していたが、今回の取り組みも今後を見据えたもの。オープンデータを基に生成するデータベースを進化させて、ゆくゆくは人材領域以外でも「ミスマッチの解消」を目指していくという。

エンジニアが自身のスコアや市場価値を確認できる形に進化

TechCrunchでも過去に何度か紹介してきたLAPRAS SCOUT(旧Scouty)は、オープンデータを解析することでエンジニアと企業の最適なマッチングを目指すサービスだ。

インターネット上に公開されているエンジニアのSNSやブログなどの情報をシステムが収集。「技術力、ビジネス力、影響力」という3つのスコアを算出するほか、個人のスキルや志向性、活動内容などを含めた個人のプロフィールページをAIが自動生成する。

このデータベースを使って企業は自社と相性の良い人材を探し、スカウトを送ることが可能だ。転職市場に出て来ていない“転職潜在層”にもアプローチできる点が企業にとってのメリット。また、質の高いレコメンドを通じて、エンジニアには本人も知らない“天職”のような環境と出会える場所を目指してきた。

これまでは基本的に企業のみがエンジニアのプロフィールページを閲覧できる仕様だったけれど、本日よりエンジニア本人が自分のプロフィールを閲覧できるようになる。

個人向けのインターフェースは社名と同じく「LAPRAS」というサービスで、GitHubやTwitterのアカウントを通じてログインできる仕組み。もし自身のページが作成されていなければ新たに生成される。

本日時点で公開されている機能はシンプルで、大きくは「自分の情報を閲覧できる」「自らの意思でアカウントを連携できる」「転職意思・ステータスを表明できる」「(間違った情報の)修正リクエストを送れる」といったところだ。

技術力・ビジネス力・影響力3つのスコアについては具体的な詳細も見れるようになっているので、全く転職を考えていなくても自分の現在地を確かめるツールとして使うことができるだろう。

「エンジニアにヒアリングをしたところ、自分の市場価値を知りたいというニーズが出てきた。必ずしも転職を考えている人ばかりではないので、もう少し長い視点で使えるようにしたいというのは以前から考えていたこと。市場価値を確かめたり、自分の技術力を育てる用途で使い始めて、その過程でキャリアを広げられるような新しい選択肢にも出会えるようにする」(島田氏)

ユーザー視点でLAPRAS SCOUTを見た場合、自らアカウント登録する前にプロフィール情報が入力されていて、場合によってはすでに企業が自分に対して興味を持っている状態からスタートする。これが既存の転職サービスとの大きな違いであり、今後もこの特徴を軸に機能を追加していく計画だ。

「たとえば『あなたは今〇〇社のタレントプールに登録されています』『〇〇社の担当者に興味を持たれています』といった情報を本人に提供することもやっていきたい。(ユーザーも興味を持った場合は)ユーザー側からリアクションできるような機能も検討している」(島田氏)

他にも名刺がわりにLAPRASのURLを共有できる仕組みも検討中とのこと。もちろんスカウトやプロフィールページの公開を望まないユーザーは今まで通りオプトアウトの申請ができるほか、今後はスカウトのみをオフにできる機能も考えていくということだった。

また現時点ではエンジニアを対象としているが、別職種のユーザーが使えるように開発を進めているという。

本人以上に、本人のことを知っている存在を目指す

Scoutyという名前が示す通り、これまで同社ではスカウト領域(HR領域)に特化してサービスを展開してきた。このタイミングで社名をLAPRASへと変更したのは、蓄積してきたデータベースや培ってきた技術を基に、今後新たな領域にもサービスを拡張していく意思を示すためでもある。

LAPRASという社名は物理学分野の概念である「ラプラスの悪魔」に由来するそう。これは「ある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつそれらのデータを解析できるだけの能力があれば、世の中に不確実なことは何もなくなり、未来も予測でき、 偶然は必然に変わる」という考え方だ。

島田氏によると、同社が目指しているのは人に関する様々なデータを集めて“本人以上に本人のことを知っている存在”とのこと。そのデータから本人にとって天職となるような選択肢を探してくれるのがLAPRAS SCOUTであり、今後は「LAPRAS 〇〇」という形で他の領域に対応したサービスにも取り組む。

あくまで一例だが、広告やマーケティングツール分野などでのサービス展開もありえるようだ。

「人に関するあらゆるデータを集め、個々人にパーソナライズした情報を提供し、様々な領域でミスマッチを解消していきたい。たとえばScoutyを通じて取り組んできた人材領域に関しても、これまで人生の中で天職に出会えるかどうかは偶然の要素が強かった。LAPRASでは個人のデータとAI技術を用いて、その偶然性を必然に変えていくチャレンジに取り組む」(島田氏)

基本的には今までと同じようにインターネット上のオープンデータをベースにしつつも、将来的には各ユーザーが入力するクローズドデータとの融合など、あらゆる角度から情報を集めてマッチング精度を高めていく方針だという。

島田氏は「目指しているのは人に関するGoogleのようなイメージに近い」と表現していたけれど、これからLAPRASが人のデータベースとしてどのように機能していくのか、それに対してユーザーがどのような反応を示していくのか。今後の同社の展開にも注目だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

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