アクセシビリティに取り組む7つのスタートアップをマイクロソフトがサポート

マイクロソフトは「AI for Accessibility」プログラムの対象となる7つのスタートアップを選出した。選出された団体は、求職活動やてんかんの発作の予測などを手がけ、障がいのある人々が技術とインターネットのエコノミーを活用できるようにすることを目指す。

選出された7団体は、Azure AIの専門レベルのリソースとサポートにアクセスでき、データ収集と処理にかかる費用を支援されることに加え、マイクロソフトのAI、プロジェクト管理、アクセシビリティの専門家に相談することもできる。

プログラムの対象となる団体はオンラインで募集され、マイクロソフトのアクセシビリティとマーケットのエキスパートチームが応募団体の影響力、データポリシー、実現可能性などを審査した。このプログラムは2018年に始まり、マイクロソフトは5年間で2500万ドル(約27億円)を投じる。対象となった団体は年に数回、進捗状況の評価を受ける。毎年、5月の第3木曜日(今年は5月16日)はGlobal Accessibility Awareness Dayだ。この機会にアクセシビリティについて考えてみよう。

今回選出された団体のひとつ、Our Abilityは、生まれつき四肢が欠損しているJohn Robinson氏が設立した。同氏は職に就き、働き続けることの深刻な難しさに常に直面してきた。障がいがあって職に就けない人の割合は、障がいのない人の2倍だ。障がいによってはフルタイムの仕事にはほぼ就けない。

プロジェクト管理の素質やコーディングのスキルを有している人にとってはチャンスはある。しかしそれでも、職を見つけるのは難しい。Robinson氏は企業と障がいのある求職者を結びつけるサイトの運営に取り組んでいる。

Robinson氏はTechCrunchに寄せたメールの中で次のように書いている。「雇用する価値を高めている障がい者を企業が理解し活用できるようにすること、それが私たちの目標です。雇用した障がい者の離職率は低く、士気と生産性を向上させることは実証済みです。インクルーシブな企業文化への取り組みが社内で始まるからです。企業がこうした取り組みを加速させることは、これまではなかなかできませんでした。求職ツールの多くが障がい者を考慮した設計ではなかったからです」。

Our AbilityのJohn Robinson氏

マイクロソフトは、障がいのある応募者からチャットボットで必要なデータを集めるというRobinson氏のアイデアを高く評価した。「今さらチャットボット?」と言う前に考えてみてほしい。フォームやウェブサイトを容易に操作できる人にとってチャットボットは時代遅れかもしれないが、それが難しい人もいるということを。チャットベースのインターフェイスはシンプルでアクセスしやすく、基本的なテキスト入力以外はユーザーに要求されることはほとんどない。

同じく対象団体となったPisonには有益なテクノロジーがある。運動機能に障がいがある人にとっては、マウスやトラックパッドの操作が難しい場合がある。同社の設立者のDexter Ang氏は、母親がALSの影響でこうした状態になるという経験をした。

Ang氏のソリューションは、病気の影響で制限を受けている動きを筋電図アームバンドで検出し(アームバンドのMyoをご存じの方もいるかもしれない)、マウスの動きに変換するというものだ。起業してからの数年間、開発とALS患者によるテストを実施している。テストに参加しているALS患者はわずか数分でこの技術を使えるようになるという。

Voiceittは発話に困難がある人にフォーカスした音声認識エンジンだ。障がいや脳卒中の後遺症などがあると、友だちや家族が話し言葉を聞き取るのが難しくなる。このような比較的難しい音声認識は、これまで開発されてこなかった。

Googleも最近「Project Euphonia」で同様の問題に取り組んでいる。同社はほかにもアクセシビリティに取り組んでおり、先週のGoogle I/Oの発表で注目された。

ほかの選出団体も紹介しよう(紹介文はマイクロソフトによる)。

  • シドニー大学(オーストラリア):7500万人いるといわれるてんかん患者の発作を予測して管理し、より自立した生活を目指すための、ウェアラブルのセンサー搭載警告システムの研究
  • バーミンガム市立大学(英国):運動に制限のある人が音声コマンドと目の動きでデジタルプラットフォームを操作するシステムの開発
  • Massachusetts Eye and Ear(米国、ボストン):視覚障がい者にとってより使いやすい位置情報とナビゲーションのサービスを提供するモバイルアプリの研究
  • カリフォルニア大学バークレー校(米国、バークレー):周囲の状況を字幕と音声の説明で視覚障がい者に伝えるモバイルアプリの作成

ところで一番上の写真は、iTherapyのInnerVoiceというアプリのものだ。InnerVoiceはコミュニケーションが難しい子どもが撮影した写真をAIで解析して説明をつけるアプリだ。これは、最新のテクノロジーを最適な場所で活用することによって、多くの人を少し助けるのではなく、少しの人を大いに助ける好例といえる。

マイクロソフトはここ数年アクセシビリティをしっかりサポートし、望ましいことにさらに力を入れてきているようだ。同社のプレジデントのBrad Smith氏は昨年のブログで多くのことを語り、強くコミットしていると思われる。

画像:iTherapy

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(翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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