オンライン学習塾アオイゼミを展開する葵は、KDDI Open Innovation Fund、マイナビ、電通デジタル・ホールディングス、日本政策金融公庫らから総額2.8億円を調達したことを本日発表した。今回の資金調達についてアオイゼミのCEOである石井貴基氏に話を聞いた。
石井氏はアオイゼミを創業する前、リクルートで働いた後、ソニー生命保険で営業をしていたと話す。石井氏はファイナンシャルプランナーとして低所得層から高所得層の家庭における経済面のアドバイスをする中で、衣食住に関してはそれぞれの所得に応じた選択肢があるものの学習塾に関しては高額なものしか存在しないことに疑問を感じたという。既存の平均的な学習塾にかかる費用は年間30万円ほどで、家計への負担が非常に大きい。そこでオンライン上に学習塾を再現し、低価格で学習塾のサービスを提供しようと考えたのが創業のきっかけだと話す。
アオイゼミは2012年6月にサービスの提供を開始し、5教科の中学講座、中学3年生向け難関公立校対策のためのSACLASS、そして2015年4月には高校講座を開講した。アオイゼミの生徒は各講座の決まった時間割に従ってリアルタイムで講座を受講する。ライブ授業は無料で視聴することができるが、有料プランに加入すると過去の動画の視聴や教材のダウンロード、また先生に個別に質問する機能などを利用することができる。
アオイゼミの授業動画は中高合わせて5000本以上になるという。生徒数は18万人に上り、全国各地から利用があるという。これまでアオイゼミはプロモーションを行っておらず「生徒同士のTwitterやLineの勉強グループから口コミで広がっています」と石井氏は言う。
教育系サービスの問題点として継続率が低いということが議論されているが、石井氏によるとアオイゼミの継続率は録画コンテンツを配信する教育系サービスの2倍になるという。その理由について石井氏は、時間割があることで勉強を習慣付けできること、そして同じ授業を受けている他の生徒の反応を動画横のコメント欄で確認できることが勉強のモチベーションを保つことにつながっていると説明する。動画のコメント欄ではスタンプを使用できるようにするなど、10代の目線に合わせたサービス設計を心がけているそうだ。石井氏は「コンテンツを配信するだけでは足りず、人の手を加え、コミュニケーションを充実させることが重要です」と話す。
また、生徒をオフィスに招待し、いつもは画面越しに見ている先生と直接話す機会を設け、生徒と教師の距離を近づける取り組みも行っているそうだ。「授業が楽しい」という生徒の声や先生宛のファンレターがオフィスに届くのが嬉しいと石井氏は話す。
インターネットを介して中高生向けに教育コンテンツを提供する競合サービスには、リクルートの「受験サプリ」や大手家庭教師事業を展開するトライグループの「Try IT」などがある。受験サプリの会員数は30万人で、Try ITは2015年7月に事業を開始したばかりで会員数はまだ公表していない。アオイゼミは、オンライン学習サービスに最適なオリジナルの教材と講座の配信システムを構築することで差別化を図るという。現在アオイゼミは20名ほどのフルタイムのスタッフを抱えていて、その半数が教師や教材開発の担当者で半数がシステムの開発者だという。外部講師も20名ほどいるそうだ。今回の資金調達では、生徒数の増加にも対応できるライブ配信システムの強化や新規の講座の開講、そして教材を増強を行う予定だと石井氏は話す。また、今回出資に参加しているKDDIの「auスマートパス」との連携を行い、マイナビとは進学情報ポータルサイト「マイナビ進学」との連携を図る予定だという。