コピペ系単純作業はロボで代替――クラウド型RPAのBizteXが4000万円調達

クラウド型のRPAサービスを開発するBizteXは7月20日、シードラウンドでジェネシア・ベンチャーズから総額4000万円を調達したと発表した。

7月5日に「BizteX cobit(以下、cobit)」のクローズドβテストを開始したBizteXは、今回調達した資金をBizDev系人材の採用と顧客獲得に用いるとしている。

BizteX代表の嶋田光敏氏

産業用ロボットが工場をオートメーション化したように、日頃の業務に存在するルーティーン・ワークをソフトウェア・ロボットに覚えさせ、人間の代わりに働いてもらおうというのがRPA(Robotic Process Automation)のコンセプトだ。

最近では、〇〇の自動化や効率化と聞くと、“API連携”という言葉を思い浮かべる読者も多いことだろう。APIによる自動化では、連携によって他サービスから取得したデータをシステムが自動的に処理することにより、複数のサービスを跨いだ自動化を実現する。一方のRPAでは、クリックやコピペなど、人間がキーボードとマウスを使って行う動作の流れをロボットに覚えさせて自動化する。

例えば、Googleでトヨタの株価を毎日チェックして、エクセルに入力するというルーティン・ワークを自動化したいとする。その場合は、

  1. Googleの検索窓に「トヨタ 株価」と入力
  2. 検索結果にある株価(テキスト)をコピー
  3. それをエクセルにペースト

という一連の動作をロボットに覚えさせ、毎日繰り返し、それを行なうようにセットする。イメージ的には、キーボードの前にロボットがいて、そのロボットが直接マウスやキーボードをカチャカチャと操作してくれる感じだ。

クラウド型RPA

日本のRPAサービスとして、RPA Technologiesの「BizRobo!」やNTTデータの「WinActor」などが挙げられるが、BizteXが提供するcobitの最大の特徴はクラウド型のサービスであるということだ。

クラウド型のcobitは、同種のオンプレミス型RPAサービスとくらべて導入が容易で、初期費用もかからない。BizteXはcobitの正式リリース後に月額10〜30万円程度の従量課金制を採用する予定だが、この料金水準も他社が提供するオンプレミス型サービスよりも低いという。

7月5日から開始したクローズドβテストに参加した企業数は非公開だが、BizteX代表の嶋田光敏氏は「大手の人材系や金融系企業など、複数の業種や業務でトライアル導入含めて話が進んでいる」と話す。

また、cobitは非技術職の人でもロボットが簡単につくれるように工夫されている。cobitはそのインターフェイス内にWebブラウザを内蔵。ロボットを設計するためには、そのブラウザ上で実際の動作をデモンストレーションしながら、“〇〇と入力する。ここにあるボタンを押す”というような動作ステップをクリックして追加していくだけでいい。

僕は実際にサービスのデモ動画を見せてもらったが、それを見る限り、ロボットの設計自体はさほど難しいものではなさそうだった。コーディングに精通していない人でも十分操作できる難易度だ。

ただ、クラウドだからこその難点もある。その1つがセキュリティの問題だ。例えば、あるWebサイトにロボットがログインする場合、それに必要なIDやパスワード(または、それが書かれたエクセルファイルなど)がCobitのサーバーにアップロードされることになる。そこに不安を感じるユーザー企業は少なくないだろう。

それについて嶋田氏は、「クラウドサービスが普及するなか、セキュリティに関する懸念の声は(クローズドβ版に参加を決めた)ユーザー企業からは聞こえなかった」とコメントしている。

しかし、2017年6月にスマートキャンプが発表した「SaaS業界レポート 2016-2017」によれば、クラウドサービスを利用しない理由として回答者の38.8%が「セキュリティに不安がある」と答えていることも事実だ。

RPA分野のクラウド化は進むか?

日本語版のWikipediaに「RPA」という項目ができたのは2016年4月のこと。この比較的新しい分野では、オンプレミス型とクラウド型のどちらに軍配が上がるのだろうか。

先ほど、クラウド型のセキュリティに関する懸念については述べた。しかし、ルーティーン・ワークの大半がセキュリティに関してセンシティブな作業というわけではない。それに、大きな価値を生み出すわけではないルーティーン・ワークを、“手軽に、そして安く自動化したい”というニーズをもつ企業は多いだろう。

また、前述したスマートキャンプのSaaSレポートにもあるように、クラウド化が進む度合いは業務がもつ性格ごとに大きく異なる。汎用的な業務であればあるほど、そこにクラウドサービスが導入されることが多いのだ。これらの要素を踏まえれば、ルーティーン・ワークを自動化するRPAでもクラウド化がすすむ可能性は非常に高いと僕は思う。

嶋田氏によれば、BizteXはβテストを通して教師データを集めたあと、“Aという作業ができなければ、代わりにBを行う”というような条件分岐を、ロボットが自動で推測する機能などを実装する予定だ。

cobitの正式リリースは2017年8月末頃を予定している。

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TechCrunch Japan

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