サプライチェーンを分断の危機などから守るAltanaが約7.3億円調達

サプライチェーンは、かつてはApple(アップル)がデザインしたかのような資本主義の魔法のエレメントだった。それはそれで機能していた。ときどき野菜売り場でサルモネラ菌が大発生することはあっても、私たちはファストファッションの洋服やデジタルガジェットや医療用品がどうやって店の棚や家まで運ばれてくるのか、深く考えることなく日常の消費生活を送ることができる。

もちろん、この数年間でたくさんの変化があった。グローバル化に反対する声が政治を動かし、米国や英国などの政府は自由貿易協定の再交渉に向かった。貿易体制の崩壊により国内生産の気運が高まった。その一方で、新型コロナウイルスのパンデミックによってサプライチェーンは膨大なストレスを抱え、いつしか完全に断ち切れてしまったものもある。

つまり、サプライチェーンの管理者は、誰も考えたがらない重要な役割から、誰もが常に気にかける重要な役割へと突如として変化したのだ。

そうした管理専門家たちは、Oracle(オラクル)やSAPなどの企業が運営する巨大なプラットフォームを利用できても、サプライチェーンの分断が危惧される場所を特定しようとすれば、もっと多くの情報が必要になる。このサプライチェーンのリンクは、もしかしたら見た目よりも脆いのではないか?サプライチェーンに含まれるこれらの工場は、児童労働や環境基準違反の警告リストに載っていないか?もし政府が貿易政策を変更したら、港に積まれた製品のコンテナを眺めていなければならなくなるのか?

ニューヨークに本社を置くAltana(オルタナ)は、サプライチェーン管理者のための、データと機械学習で現代資本主義の複雑性に対応するインテリジェンスレイヤーになることを目指している。米国時間11月25日、同社は、ロンドンを拠点とするAmadeus Capital Partnersに所属するうAnne Glover(アン・グローバー)氏が主導する700万ドル(約7億3000万円)のシード投資資金の調達を発表した。

このスタートアップは、CEOのEvan Smith(エバン・スミス)氏、CTOのPeter Swartz(ピーター・シュワルツ)氏、COOのRaphael Tehranian(ラファエル・テラニアン)氏の3人によって創設された。全員が2006年に誕生したグローバルサプライチェーンのプラットフォームであるPanjiva(パンジーバ)でともに働いていた経験を持つ。このプラットフォームは10年前にBattery Venturesから資金援助されていたが、2018年の初めにS&P Globalに売却された(PR Newswire記事)。Panjivaの目標は、「グラフ」化したサプライチェーンの情報を管理者に提供することにあった。

そうした直接的な経験が、Altanaにビジョンを与えている。多くの点でPanjivaのビジョンと重なるのだが、最新のテクノロジーとデータ科学によって改良されているようだ。Altanaもまた、管理者に情報と強い回復力を与える、サプライチェーンのナレッジグラフの構築を目指している。

違いはデータの扱い方にある。「私たちがデータ販売の仕事をしていたとき、バリューチェーンの部分でいつも行き詰まっていました」とスミス氏。「顧客は、データに触れることを許してくれません。私たちのデータ管理を信頼していないからです。その他の独自データを扱う企業も、データの管理や転送を任せてはくれせん」。

そこで、あらゆるデータの中央リポジトリになることは考えず、すべてのデータソースの「下流で仕事をする」ことで、企業独自のデータと、彼らがアクセスできるあらゆるデータソースを使って、企業自身が独自にサプライチェーングラフを作れるようにした。

同社が売り込む先は、CFO(最高財務責任者)の管轄になっていることが多い調達部門だ。現在、Altanaの顧客の大半は、政府系クライアントが占めている。たとえば国境警備局だ。そこは「船が到着したときに藁の山から針を探し出すのが仕事です。安全な荷物の中から違法なものを抽出して、法に適った貿易を促進しなければなりません」とスミス氏は話す。

同社の会長はAlan Bersin(アラン・バーシン)氏。米税関および国境警備局の元長官であり、現在は、トランプ政権の対米外国投資委員会でも貿易問題に取り組んできた有名法律事務所Covington & Burling(コビントン・アンド・バーリング)の政策顧問を務めている。

Altanaでは単発の調査やシミュレーションも請け負うが、主要製品の目標は、事業に影響を与えかねない変化を見抜ける実質的な視界をサプライチェーン管理者にもたらし、リアルタイムの警戒態勢を整えることだ。たとえば年間労働監査や環境監査を待って問題点を見つけ出すのではなく、従来よりもずっと早く問題解決ができるよう予測能力を企業に提供したいとAltanaは考えている。

今回の投資にはAmadeus、Schematic Ventures、AlleyCorp、Working Capitalの他に、The Supply Chain Investment Fundも参加している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Altanaサプライチェーン

画像クレジット:Suriyapong Thongsawang / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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