スマホ1つで作れるEC向けARサービスのカシカ、見る側は専用アプリ不要

AR(拡張現実)技術は10年以上前に登場したが、近年は大手スマホベンダーが特に力を入れ始めている。このような中、AR市場の拡大を見据え、商機をつかもうとしているのが、2017年5月に創業したカシカだ。

カシカはEC向けに商材をAR(拡張現実)化するサービス「カタチスペース」などを展開するスタートアップで、2021年7月から法人向けにカタチスペースの定額制プランを始めている。

そもそもARとは何か。カシカの奥健太郎代表は「カメラ映像にCGデータを重ねて表示する技術です。カメラの画面越しに見える風景に、実際には存在しないCGデータを重ねて表示することで、目の前にはない物体が見られるようになります」と説明した。

これまでにも何度かARブームはあった。直近では2016年に「ポケモンGO」、2019年には「ドラゴンクエストウォーク」などが世間を騒がせた。しかし、一般にはまだ浸透しているとは言えない状況だという。「問題点の1つは、ARを体験するには専用アプリが必要なことです。ARを見るためにアプリをインストールしなくてはいけないというハードルがありました」と奥氏は話す。

ただ、AR技術は日々進化している。近年ではアプリをインストールしなくてもARを見ることができる「ウェブAR」が登場し、海外ではアプリ開発なども進んでいる。ARについては、特にApple(アップル)が推進しているという。

アップルは2020年に、高精度のARカメラ機能LiDARセンサーをiPhone 12 Proに搭載している。2021年6月に行われたAppleのイベントでは、iPhone、iPadで撮影するだけで3Dデータを作ることができるmacOS機能「Object Capture」を発表。これにより、小売り向けに商品の3Dモデルが作れるようになるという。なお、Googleにおいても、スマホ版Googleマップの道案内機能でAR対応を進めるなど、AR推進の波は大きくなっているのだ。

「国内ではARを取り入れた展開が遅れていると言えるかもしれませんが、将来的にはAR撮影できるカメラを標準搭載したスマホが当たり前になると考えています」と奥氏は話した。

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専用アプリ不要で、手軽にARを見ることができる

各プランの3Dスキャン・AR化は、カシカが開発した無料の「カタチスペース」(iOS版のみ)アプリで撮影・アップロードするだけ。また、SNSやECサイトへの共有用QRコードやURLの生成もできる。

奥氏はカタチスペースアプリについて「iPhone X以上に対応しており、iPhone・iPadの顔認証でロック解除機能が付いているインカメラや、背面に2つ以上レンズが付いている機種でARの撮影ができます」と説明した。なお、アプリによる撮影でAR化できるのは物体の片面だけだが、背面も含めた360度を3Dデータ化する場合は専門チームによる3Dスキャン「カタチスキャン」(別途追加費用)などで対応する。

ECサイト訪問者はスマホからサイト上のQRコードなどを読み込むだけで、AR化した商品イメージを確認できる。専用アプリをインストールする必要はなく、ブラウザから、iPhone、androidからARを見ることができるのだ。

また、コロナ禍でいわゆる「巣ごもり需要」が高まったことで、ECサイトは活況となっており、ARを活用できる機会は増えている。しかし、課題もある。

ECサイトで買い物をする時、サイト上の商品写真や動画、サイズ表記、色見本などの概要情報だけでは、商品を具体的にイメージすることは難しい。「ECサイトの返品率はリアルのおよそ2倍で、20%が業界標準となります。最も多いのはアパレルで29%、次いで家電が16%となっています。業者側にかかるコストは検品返品にともなう人件費も加わり、大きな負担になります」と奥氏は述べた。

EC事業者側はカタチスペースアプリによって手軽にARを作成可能で、サイト訪問者は専用アプリ不要でARを見ることができるため、画面越しでは伝えづらい大きさや質感、形状を簡単に伝えられるようにした。「プロ」プランでAR表示中の画面から商品決済ページへ直接進むこともできるという。自宅から商品確認や設置シミュレーション、購入までのフローをスムーズに実現し、商品到着後にイメージとの齟齬(そご)をなくす手助けをする狙いだ。

また、EC事業者側はコスト面でもメリットがあるという。「商品の3Dモデル製作費用やAR表示するための専用アプリ・ECサイト開発費用など、見積もりで100万円以上かかることも少なくありません。我々はすでにAR化するアプリを開発しています。3Dモデルを作るという作業ではなく、スキャンするだけであり、AR表示するところまでシステム化して一貫して提供できます。高品質のARを利用したい場合に、月額の費用に加え、専門チームの3Dスキャンによる費用が追加されるだけなので、EC事業者側は予算組みをしやすいと考えています」と奥氏は説明した。

奥氏は「2021年内にカタチスペースを30社に導入し、売上を1000万円、2024年までに500社に導入し、5億円の売上を目指します」と意気込む。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AR / 拡張現実カシカ日本eコマース

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TechCrunch Japan

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