テック業界でのダイバーシティの向上には妥協点を見出すアプローチが必要

著者紹介:

Michelle Ferguson(ミッチェル・ファーガソン)氏はDream Corps(ドリームコープス)の国民共同体関係担当ディレクター。

Kasheef Wyzard(カシーフ・ウィザード)氏は、Dream Corps TECHの全国プログラミングイニシアチブ担当ディレクター。 

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パンデミックが再び米国を襲っている。昨年の状況から判断すれば、今回も全国的に大きな被害をもたらすだろう。とりわけ、有色人種コミュニティが受ける被害は今回も甚大なものになるだろう。

有色人種の感染者と死者は白人を上回り、有色人種が運営するビジネスとその従業員が受ける経済的打撃も白人経営企業に比べて大きなものになるだろう。

しかし、良いニュースもある。妥協点と具体的な解決策を見出そうとする動きもここへきて加速している。つまり、現在の泥沼的状況から脱する道筋が見えてきたのだ。

現状を見てみよう。パンデミックが長引くほど、現在の傾向に拍車がかかるだろう。新型コロナウイルス感染症が拡大する前から、オートメーションと先進のコンピューター技術は我々の働き方を変え、暮らしを弱体化させていた。2030年までには、テクノロジーとオートメーションは現存する何十万という仕事を絶滅の危機に追い込むだろう。

有色人種たちの場合、状況はもっと厳しい。オートメーションの対象となる職種では有色人種の割合が高いため、McKinsey(マッケンジー)の調査によると、アフリカ系アメリカ人の23.1%、ヒスパニック系アメリカ人の25.1%が、今後10年で自分たちの仕事が消滅したり大転換を遂げたりするのを目の当たりにすることになるという。パンデミックの前から見通しは暗かったのだ。

こうした変化によって、新しいハイテク系の仕事が生み出されるのだろうか。上記の有色人種たちは未来の経済環境で再教育を受け、新しいツールを習得して、仕事を見つけることができるのだろうか。

実際には、それはかなり難しい。2019年の時点で、オンラインのコーディングブートキャンプ(短期集中プログラマー養成サービス)の平均受講料は1人あたり14623ドル(約151万7501円)と高額だ。ローンや分割払い、所得分配契約(卒業後に一定期間受講料が給与から天引きされる)を利用したとしても、今の仕事が消えてしまう多くの人たちにとって手の届かない額だ。

パンデミックによって状況はさらに悪化している。低所得世帯の約80%が3か月暮らせるだけの貯蓄がなく、米国人の3分の1が今月の支払いにも窮することになるだろう。

良いニュースもなくはない。資金が豊富で高い利益を出している米国の大手企業は多様性のある人材を雇用し維持するのに苦戦している。良いニュースとは、そうした大手企業がそのことを自覚しているという点だ。彼らは、レプリゼンテーションの低い(過小評価された)コミュティに隠れている天才的な人材なくしては競争に勝ち残れないこと、そしてそうした人材の確保が現時点ではうまくいっていないことを認識している。

多くの企業がIT部門の1人の人材の採用活動に平均2万ドル(約207万円)を費やす用意があるが、多様性のあるコミュニティからIT部門の人材を雇用するにはその3倍の費用がかかる。そして採用後も、定着率という大きな問題が待ち受けている。2016年以来、大手テック企業における黒人およびラテン系社員の定着率は7%から5%に低下している。大手テック企業では多様性のある人材の入退社が日常茶飯事となっている。

言い換えると、多くの有能でクリエイティブな人材がハイテク職を求めており、その一方で、革新的な大手企業の多くがそうした人材を雇用し維持することに躍起になっているということだ。

このように相思相愛の状態から妥協点を見出すことができる。その1つのモデルが、今月開催されたドリームコープスのTECH Town Hallだ。TECH Town Hallでは、レプリゼンテーションの低いコミュニティ出身の活動家や教育者が業界のリーダーたちとパネルディスカッションを行う。彼らは互いに、単に質問や意見をぶつけ合うのではなく、双方が直面している問題と双方が協力する方法について話すために集まる。

たとえば、業界と教育界のリーダーが、奨学金とトレーニングプログラムに資金を出して、その後の仕事を保証することもできる。また、このパンデミックで子どもたちが学習の機会を奪われている最中、活動家とCEOたちは世界的なブロードバンドアクセス環境を推進して次世代のプログラマーに成功のチャンスを与えることができる。

企業はレプリゼンテーションの低いコミュニティに眠ったままの人材を採用することで、バイアスのあるアルゴリズムを排除し、多様性のあるグローバルな世界で競争を繰り広げ、パンデミック後に経済が変化する中、人々の暮らしを改善できる。

こうした妥協点を見出すアプローチを進めるには、成功のためにお互いが必要であることを双方が認識する必要がある。このアプローチは、そのほかの難題についても、必要な解決策を生む出すためのモデルになり得る。パンデミックの第二波が襲ってきていると同時に、妥協点を見出すことも緊急の課題となっている。どのように対応するかは我々次第だ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラム

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(文:Michelle Ferguson、Kasheef Wyzard 翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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