ドローン・ジャパンは、米をはじめ田畑で農作物を生産する農家を支援するサービス「DJアグリサービス」を発表した(プレスリリース)。ドローンを活用して田畑の精密なリモートセンシングを実施、データ解析して生育状況を精緻に把握できるようにし、農家を支援する。ドローンによる精密かつ大量のデータ収集と、学術的なバックグラウンドを持つデータ解析により、例えば田畑に投入する肥料や農薬を減らしつつ生産性を高めることを狙っている。
価格は栽培期間ごとに1ヘクタールあたり4500円から(初期投資なし、ドローンの運用からデータ化解析まで含む)。2017年4月よりサービスを開始する。
同社のサービスを構成する要素は多岐にわたる。発表会ではドローンの専門家、農業分野のデータ解析の専門家、生産農家らが登場し、情報量が非常に多い内容となった。同社のサービスの重要な点を要約すると次のようになる。
- 米MicaSense社のマルチスペクトルセンサーを搭載したドローンによるリモートセンシングサービスを実施する
- ドローンの自律航行のためのソフトウェアArduPilotを開発するジャパン・ドローンズ社(Randy Mackay代表、今回の発表主体ドローン・ジャパンとは別企業)と協力する。例えばレーザーで測距するLiDARを搭載したドローンにより、高度が位置により変わる棚田に追従して高度を一定に保ちつつ飛行できるようにする。
- ドローンのオペレータの集団「DJキャラバン隊」を組織し、データ収集にあたる。
- ドローン運用管理では日立システムズのドローン運用統合管理サービスを活用する。
- データ解析では、東京大学農学生命科学研究科の監修による「DJメソッド田畑数値比較システム」を開発、活用する。
- 1〜2年後をメドに、水田の水温のデータを収集するため、水面を航行するドローンAigamo Droneを投入予定。
パックご飯「ドローン米」を商品化
同社は農家支援のサービスを提供するだけでなく、生産した米の流通、特に海外輸出に目を向けている。その第一弾として、パックご飯「ドローン米」を商品化し、2017年3月より海外に販売する。すでに3件の農家が同社のDJアグリサービスの開発に協力しており、その水田からは2016年産の米が収穫されている。このドローンで栽培した米を使ったパックご飯が「ドローン米」だ。
「日本には海外の米が入ってこない代わり、海外に米をほとんど輸出していない。米をそのまま輸出すると関税が非常に高いが、加工品は別だ。パックご飯なら炊きたての風味が保たれる」(ドローン・ジャパン代表取締役社長の勝俣喜一朗氏)。
「日本のお米は年間800万トン作られているが、海外輸出は4000トン。しかし世界市場は2500万トンある。市場シェアでは0.04%。これを100倍にはできるんじゃないか」と勝俣氏は話す。
同社の第1号投資家が、エンジェル投資家の千葉功太郎氏である。千葉氏は自らもドローンを「よく飛ばしている」といい、今回はドローン市場の中核にある農業分野に目を付けた形だ。千葉氏は「世界で見ると、小麦やトウモロコシの栽培にドローンを活用する事例はあるが、米に特化してセンシングしたところが新しい。農家が抱える問題を解決し、中国を含むアジアに展開していける」と期待を話した。ちなみに、先日千葉氏がシードラウンド資金調達に参加したインフォステラ(関連記事)は、人工衛星によるリモートセンシング需要をにらんだ人工衛星の市場を想定した企業の一社という位置づけとなる。