パナソニックやコマツもシリコンバレーに注目、Draper Nexus2号ファンド組成で出資社数が増加

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シリコンバレーと東京に拠点を持ち、日米双方でスタートアップ投資と支援を行うVCのDraper Nexus Ventureが今日、2号目となる約125億円の「Draper Nexus 2号ファンド」の一次組成を終えて運用を開始したことを明らかにした。2011年4月に運用を開始した1号ファンドの約50億円の2倍を超える規模となっている。

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すでにTechCrunch Japanでは、この2号ファンドからの国内投資案件について5月15日付けで3つお伝えしている。勤怠管理や経費精算をクラウドで実現するチームスピリットへの4億円、統計分析ツールのサイカへの2億円、マーケデータ分析SaaSのフロムスクラッチへの3億円だ。2号ファンドは日本のITベンチャーに1/3、米国ITに1/3、産業技術ベンチャーに対して1/3の割合で投資していく予定という。2号ファンドの1号投資案件はアメリカのスタートアップで、KPCBやKhosla VentureらトップティアのVCとの共同投資で5500万ドル(約66億円)のラウンドを実施。位相分析と機械学習によるビッグデータ分析のAyasdiに出資している。

2号ファンド出資者の顔ぶれを見ると、コマツ、NEC、パナソニック、富士通、日立ソリューションズ、ブラザー工業、富士フイルム、クラレ、京セラコミュニケーションシステムなど日本の大企業が名を連ねている。2号ファンド出資者の募集は2015年末まで行う。目を引くのはパナソニック、コマツ、京セラコミュニケーションシステム、富士フィルム、IHI、富士通といった企業が新たに加わっていることで、TechCrunch Japanの取材に対してDraper Nexusのマネージングディレクター倉林陽氏は、これは1号ファンドの実績を評価されてのことだと話した。

1号ファンドでは既に日米で合計6社のエグジットがある。国内ではソフトウェアテスト事業のShiftがマザーズに上場したほか、アメリカで4件のM&A、そして先日4月にアドテクのKauliをVOYAGE GROUPが買収している。倉林氏によれば、2011年組成のファンドの中ではグローバルで見ても、今のところトップ25%に入る運用成績となっているそうだ。

日本の出資企業はリターンよりも、オープンイノベーションに期待を寄せている。米スタートアップ企業とのアライアンスや、事業の国際展開の足がかりをつかむといったことだ。倉林氏を始めとするDraper Nexusの日本人パートナーは長年日米のエンタープライズIT分野で投資や事業開発をしてきたメンバーで構成されており、エネルギー産業やロボティクスといったものも含め、コンシューマーよりもエンタープライズ事業にフォーカスしている特徴があり、その辺りで日本企業とシナジーを出しやすいということがあるのだという。

例えば、2号ファンドに出資した建設や鉱山重機のコマツ。

コマツからシリコバレー(サンマテオ)のDraper Nexusオフィスで1人が1カ月滞在し、そこでDraper Nexusが投資対象領域として調査、面談していた産業用ドローンの「SkyCatch」とコマツを引きあわせて事業開発を実施。2015年1月にはコマツが推進する建設現場のIT化、「Smart Construction」にSkyCatchのDroneを導入するという発表に繋がったという。この発表は内外関係者の目を引いた。

SkyCatchに対してDraper Nexusは投資していたわけではない。そういう意味では紹介して繋いだだけだが、このSkyCatchとコマツの提携の動きを見た別の産業用Droneの「CyPhy」という東海岸MIT発のスタートアップからDraper Nexusへ声がかかり、CyPhyへの投資へと繋がったという。CyPhyは自動掃除機ルンバを生んだiRobotの共同創業者であるヘレン・グレイナー氏が2008年に創業した企業で、産業用Droneを作っている。特徴は地上から有線で電源供給しているため飛行姿勢と映像の安定性に優れていること。消防や警察、軍事など「現場」を上から見る用途で利用が始まっている。CyPhyはスター的創業者がいて有力VCからの投資が集まる、いわゆる「ピカピカ」のスタートアップ企業だ。誰もが投資したがるスタートアップ企業にDraper NexusがVCとして乗れた背景には、アメリカ側から見れば、SkyCatchがうまく日本進出してコマツと手を組んだように見えたからなのだ、と倉林氏はいう。Draper Nexusは日米を双方向にブリッジするVCだから、うまいサイクルが回りはじめて実績が出ているということだろう。米企業製品の国内販売権での提携なども入れると、これまで30件ほど出資日本企業と米スタートアップ企業との連携を実現しているのだそうだ。

ちょうど1カ月ほど前に「日本郵政、高齢者サービスでApple、IBMと提携―iPadとAI利用で見守りやヘルスケアなど提供へ」というニュースをTechCrunchでお伝えした。これを見て、こういうことが起こるのだとしたら日本のイット業界のエス・アイなんて吹っ飛ぶじゃないかとぼくは思った。SIのボーダーレス化は本格化しつつあって、これはUI/UX、あるいはソフトウェア全般が得意なシリコンバレー企業に大型案件を持っていかれている構図を象徴しているのではないか。

今回Draper Nexusの2号ファンドに国内大手企業が乗ってきたことを、「ようやくベンチャーとの連携に本気になったという面もあるのではないか」と倉林氏は見ていて、「最終的にはシステムを必要とする事業会社や、その先のエンドユーザーが喜ぶかどうかです」と話す。日本のSIerにもシリコンバレー動向は、もう無視できないし、よい技術であれば取り入れて行くということなんだろうと思う。Draper Nexusは「シリコンバレーを活用した大手事業会社のオープンイノベーションの実現」を標榜している。

さて、日本のスタートアップ関係の読者にしてみれば、日本のスタートアップ企業のアメリカ側への展開は? というのも気になるだろう。この点に関して倉林氏は、日本から北米市場進出は簡単ではないとしつつも実現したいテーマであり、グローバルに15拠点あるVCネットワークを使って世界展開を支援していくという。Draper Nexusの名前になっている著名投資家のティム・ドレイパーが作るDFJ Global Networkは、各地のファンドと連携するグローバルなネットワークで、欧米をはじめ、韓国や中国にもパートナーとなるVCがある。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。