デジタル格差の解消に必要なのは、全員にインターネット接続を提供することだけではなく、接続によって全員が確実に機会を得られるようにすることだ。インターネット接続によって、起業家は自分の思いつきを革新へと変え、革新を収入へと変えることが可能になった。
スマート機器で動くモバイルアプリは、様々な形で起業家にとって理想的な機会である一方、すでにネットにつながっている人々にとっても、新たな障壁を浮かび上がらせる。
アプリ経済は、おそらく最も手軽なEコマースの入口だ ― 一たびアプリが完成すれば、デベロッパーはアプリストアにアップロードするだけでよい。全世界への販売、ストレージ、発見、流通、配送、および支払いまで必要に応じて代行してくれる。アプリの販売は従来のオンライン販売と比べても簡単だ。ウェブサイトの開発、支払い機構、配信、さらには物理的商品の販売には配送も必要ない。
最初のモバイルアプリストアをAppleが導入したわずか7年前だが、今やアプリは多くの人々にとって、スマートフォン、タブレットをはじめとする様々なスマート機器でインターネットを利用する主要な方法となった。こうした人気が数十億ドル規模のアプリ経済を生み出し、世界中に仕事と収入をもたらした。しかし、その機会は誰にでも与えられているわけではない。
先進国では、ユーザーは複数のプラットフォームから、100万種類以上のアプリを選ぶことが可能で、これまでに1000億回以上ダウンロードされている。アプリ開発者は10億人を越えるユーザーの市場を利用して、有料ダウンロード、アプリ内購入、および広告によって数十億ドルの収入を得ることができる。
対照的に、アフリカのサハラ砂漠以南の地域では、ユーザーやデベロッパーが先進国並みにアプリを買売できるのは、わずか一国 ― ナイジェリア ― だけだ。
サハラ以南のアフリカにおけるGoogle Playの利用可能状況を例に、アプリ格差を説明したのが下の図だ。22の国で、ユーザーは無料および有料アプリをダウンロードすることができるが、デベロッパーは無料アプリしか作ることができない。別の5ヵ国では、アプリを使ったり、利用できるようにすることに関してさらに強い制約がある。残る23の国では、デベロッパーに選択肢はなくユーザーが無料アプリをダウンロードできるかどうかも定かでない。
このアプリ格差は、途上国における海外支払い(双方向)の一般的問題に起因するものであり、アプリストアがユーザーやデベロッパーに支払い手段を提供する能力や意志を制限している。支払いの問題は起業家にとって重要な、他の革新的オンラインサービスの利用にも制約を課している。一般的EコマースにおいてはPayPal、新たなイノべーションのためのクラウドファンディングではKickstarter等だ。
国際支払い手段が欠如している理由は複雑かつ不透明であり、各国間に一貫性もなく、対処が必要である。政府、金融機関、民間部門を含む複数の利害関係者が一体となって、デベロッパーがアプリを作り、ユーザーがそれをダウンロードできるように市場を拡大する必要がある。
総合的にみて、そこには著しい機会損失が起きている。一つは、多くの人々が毎日使うべきアプリを全員が利用できないこと。もう一つは、デベロッパーが生活費を稼ぐための市場も利用できないことだ。われわれはアクセスに関するデジタル格差をなくすことに集中する中で、このアプリ格差も解消して、誰もがアプリ経済の恩恵を受ける機会を得られるようにすることが重要である。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)