世界中で人気を博しているショートムービーアプリTikTokの一部またはすべての事業を米国を拠点とする企業に売却することを強行しようとしていることで、中国のテックユニコーンであるByteDance(バイトダンス)の周辺が騒がしい。米国時間9月11日、中国政府がこの取引に反対する可能性があるとの報道を受け、売却話の先行きが不透明になりつつある。ロイターの報道によると、中国政府はTikTok事業を米国企業に売却するのではなく、米国事業を閉鎖することを望んでいる可能性があるという。
TikTokの売却の可能性は、通常のビジネス取引ではない。ドナルド・トランプ米大統領の執行権限で対外経済政策を指示しているため、この取引は米国政府によって要求されているものだ。トランプ大統領は、自身のビジネスセンスを生かして、最終的な売却価格の一部を政府が受け取れるように要求している。この考え方が合法かどうかは不明である。
米国と中国が経済的にも政治的にも覇権を巡って世界中で争う中、今回の取引は両国の間で企業が入り乱れていることが浮き彫りになっている。ByteDanceは、マイクロソフト、Wallmart(ウォルマート)、実現度の差はあるががOracle(オラクル)などの企業と一緒にこの争いに巻き込まれている。トランプ政権は取引成立のタイムラインを9月中旬に設定しているが、月日が経つにつれ、そのタイムラインに間に合うかどうか暗雲が立ちこめてきた。
ちなみにTikTokの事業売却は、インドが他の数十本の中国ベースのアプリを禁止したあとの話で、中国の影響力を抑制する措置を講じているのは米国だけではない。この取引は、中国の規制の変化からも圧力を受けている。中国の独裁的な指導者が輸出ルールを変更して、TikTokの取引を制限したり、売却を中止したりする内容が含まれる可能性がある。
ByteDanceにとって、この状況は悪夢のようなものだろう。主導権を握るマイクロソフトにとっては、この取引は気の進まないもので、完全に納得できるものではないかもしれない。一方トランプ政権にとっては、パワープレーの試みである。そして、権威主義化が進む中国政府にとっては、この取引は服従のように感じるかもしれない。このため、もし取引がなんとかまとまったとしても、それは予想外というよりも驚きの結果になるだろう。
画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images
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(翻訳:TechCrunch Japan)