Apple、WWDCの発表はソフトのみ
カンファレンスの数日前、会場に「8」と書かれたバナーが発見されたことからも予想された通り、WWDCではiOS 8が発表された。同時に発表されたMac OS Yosemiteとの連携が強化され、ますます「Appleデバイス」を複数持つことのメリットが強調される。一部で期待されたiPhone 6等、ハードウェア関連の製品発表はなかった。しかし、デベロッパーカンファンスの名に恥じず、開発に関連する新機能新ツールは目白押しだ。キーボードAPIが解放され、Swypeなどのキーボードソフトが使えるようになると予想されているが、日本ユーザーにとっては待望の「Apple標準以外の日本語入力方式」が使えることへの期待がふくらむ。医療・健康のためのプラットフォーム、HealthKit、スマートホームのためのプラットフォーム、HomeKitも発表された。
そして、純粋に「開発者のための」新発表が、新プログラミング言語のSwiftだ。とっつきにくいと言われるObjective-Cの短所を補いつつ、ライブラリー、ランタイム等は同じものを引き継ぐためスムーズな移行ができる。言語仕様はiBookとして〈登録デベロッパー以外にも〉公開されたため、iPhoneアプリ開発未経験者からの感想も見かけるが、概ね評判がよい。早速人気ゲームFlappy Birdのクローンを9時間で作ったという人まで現れた。
プログラミング言語といっても、「汎用」ではなく、ライブラリやランタイムを前提とした、iOS/Mac OSアプリ開発「専用」言語であるが、専用であっても十分な需要が見込めるわけだから作る方も張り合いがあるだろう。そして、その新プログラミング言語が実は、4年前に1人プロジェクトとして始まったことを、開発ツール責任者が個人ブログに書いている。iOS全体で今や何人のエンジニアがいるのか想像もつかないが、おそらく全員が使うことになるSwiftを作り始めたのが「ひとり」というのは興味深い。言語とはそういうものなのかもしれないが。
様々な意味で、今年のWWDCは「デベロッパーカンファレンス」らしい催物だった。
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Googleがメール暗号化に本腰
メールの暗号化技術は古くから多くの方法が存在しているが、一般ユーザーにとっては敷居が高い。何しろ、送る側だけでなく受け手も同じしくみを用意しなくてはならない。Googleが現在テストしているのは、簡単に使えるメール暗号化用Chromeプラグインで、Gmaiだけでなく、ウェブベースのメール全般で利用できるという。暗号化技術は標準のOpenPGPが用いられている。具体的な利用イメージは明らかにされておらず、どの程度簡単になるかもわからないが、Googleが本気でメールの暗号化に乗り出し、それもGmail専用ではない点が注目される。
Googleは、Gmailでメール本文そのものを(広告表示のために)スキャンしていることが再三批判の的になっているが、暗号化されたメールは読むことができない。つまり、暗号化はビジネスの種を自ら減らすことになるのかもしれない。
余談になるが、Googleのメール暗号化プラグインのコード中に、NSAをおちょくるイースターエッグが入っているそうだ。
ケーキ作りに失敗しないiPad連動キッチンスケール
シリコンバレー発のIT情報に混じって、TechCrunchは面白ガジェット(=おもちゃ?)も数多く紹介している。ガジェット部長のJohn Biggsは、今やTechCrunchスタッフの最古参だ。
今回、失敗しないパン/ケーキ作りを支える賢い秤(はかり)Drop、80ドルで予約受付中を紹介するのは、若手ながらこれもガジェット大好きのJordan Crook記者。
Dropという名前のこのキッチンスケールは、BluetoothでiPadにつながり、画面と音声でレシピを案内してくれる。ボウルをDropの上に載せて、粉や砂糖などの材料をボウルに入れていくと適量を教えてくれる。レシピの倍量や1.5倍量などを作りたい時も正しい量を教えてくれる。いや、正確には「量は教えてくれない」けれども、適量になったことを教えてくれるらしい。
iPadでレシピを見ながら料理をする、というのはかなり普及したやり方だろうが、秤と連動させると、いろいろ新しい発見がありそうで楽しみだ。「正確に」と言いながら、計量もせずボウルに投げ込むのだから、「大ざっぱな正確さ」なのかもしれないが、記事中の動画を見ると、なかなか楽しそうだ。
こちらは、デスクに置けるファイルサーバー。機能的には単なるLAN接続ハードディスクと言ってよいのだが、何といってもカタチがおしゃれ。ファイルサーバーをテーブルに置く必要はないが、物置きや棚の奥に置かなければいけないわけでもないだろう。おっと、このSherylboxは、Raspberry Piを内蔵してサーバー機能を実現するなど、中身にも見るべき点がある。
あなたのセルフィーがNSAに狙われている
NSAのスパイ行為にまつわるニュースは、内部告発者エドワード・スノーデンから小出しにされる漏洩情報のおかげで、今や記事にならない日はない。先週は、Facebook等のソーシャルネットワークにタグ付けされてアップされた自撮り写真が、NSAに顔写真として利用されるという話が出た。パソコンはもちろんスマートフォン上でも使える「顔認識」をNSAが利用していても驚かないが、無数の写真の中から特定人物を見つけるのは容易ではない。ところが、「タグ付け」のおかげでそれが簡単になるというわけだ。
念のために書いておくと、FacebookやTwitterなどが写真やタグ情報をNSAに提供しているという事実はない。しかし様々な方法によってNSAが情報を「傍受」しているという情報は、スノーデンから漏れてきている。ちなみにもう一つ重要なことだが、NSA(CIAの下部組織)といえども、自由にユーザーのデータを盗み見してよいわけではない。少なくとも表向きに認められているのは、「外国人とのやりとり」である。
Facebookは数年前から、写っている顔を認識して候補となる人物を「推奨」する機能を提供しているが、ヨーロッパではアイルランドのデータ保護局の要請に応じて同機能を中止している。また、Facebook自身の研究による「群集の中から特定人物を識別する認識精度」は平均97.25%で、人間による認識精度97.5%と変わらない。
忘れられる権利、その後
3週間前の「まとめ」で、Google検索に対する「忘れられる権利」問題を取り上げたが、Googleは早々に、ヨーロッパ人の検索結果削除リクエストのために入力フォームページを立ちあげた。フォームが公開された初日(5月30日)には1万2000件の申請が殺倒したそうだが、「リクエストの適法性はGoogleの判断に委ねられている」。「忘れられる権利」の行使については、当然反論も多く、WikipediaのJimmy Walesは、「これでは今後ほとんどの新聞記事が検索にかからなくなる」と指摘した。
今週のビックリ
Asusはついに頭がおかしくなったか–奇怪すぎるデュアルブートハイブリッド機Transformer V、とは何ともひどいタイトルだが、読むと納得できるかもしれない。「デュアルブート」も「タブレットとノートの融合」もありそうな話だが、「スマートフォンと合体」まで来るとさすがに一歩引かざるを得ない、と私は思うが、果たして世間はどう見るか。
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