企業投資の獲得争いが激化する中、支出管理のRampが約31億円調達

企業の支出管理スタートアップであるRampが新しいラウンドでさらに3000万ドル(約31億円)を調達したと米国時間12月17日に発表した。TechCrunchは2020年初めにRampのプロダクト立ち上げ(未訳記事)を取り上げ、その時点までに同社が約2300万ドル(約24億円)を調達したことも詳しく述べた。

直近では2020年8月のラウンドで資金を調達した。6月に調達を開始したようだ。新しい資金は、Rampが2019年8月のシードラウンドで800万ドル(約8億3000万円)相当を調達して以来2回目のラウンド、または2020年2月に1500万ドル(約16億円)を調達後最初のラウンドで調達したことになる。D1とCoatueが新規投資家としてこの新しい投資に加わった。既存の投資家も参加した。

RampのCEOを務めるEric Glyman(エリック・グリマン)氏は、新しいエクイティはシリーズ A3といったところだといい、新しい価格が付いたにもかかわらず、前のラウンドの資料を効果的に再利用したと述べた。ベンチャー企業の歴史に関する純粋主義者なら、同社の新しい資金調達はシリーズB(シード以降2番目のバリュエーション更新ラウンド)であったか、同社のシードラウンドが2000年代ではAに相当することを踏まえシリーズCであったというだろう。

とにかく、Rampは資金を必要としていたわけではない。グリマン氏によると、同社が最後に小切手を受け取ったとき、銀行にはまだシードラウンドの資金が残っていた。これは、2020年8月の時点で同社の現金が4500万ドル(約47億円)を超えていたことを意味する。

グリマン氏は必要がないのになぜ資金を調達したのかと聞かれ、新しい投資家は「まったく信じられないほどの」投資実績を持っていた、とTechCrunchに語った。そして同氏は、ラウンドで魅力的な価格がついたため希薄化を抑えることができたと付け加えた。同氏はまた、新しい資金を持つことでRampが自信を持ってより積極的に採用に向かえると述べた。

今回のラウンドはある程度興味深いが、さらに興味をそそるのはRampが競う分野だ。そこで、ソフトウェアの力について、そして同社と競合他社が展開するコードに関して料金を請求できる可能性が出てくる時期について議論したい。

ソフトウェア

Rampは、企業の支出管理という市場のシェアをめぐり競争している。ベンチャーキャピタルの支援を受ける多くのプレーヤーがしのぎを削る領域だ。プレーヤーの密度が競争を生み出した。競争は、クレジットカードとチャージカードが企業によって利用されるために必要な基本ルールを書き直した。テーブルの賭け金は、このニッチな領域でこれまで以上に高くなっている。

なぜか。消費者や企業にクレジットカードやデビットカードを発行すること自体は大部分がコモディティ化してしまったため、決済を介し企業支出の一部を狙うスタートアップは自社の既存プロダクトを中心により強力なソフトウェアを開発しようとしている。派手なカードで新しい顧客を引き付けることができないなら、支出そのものを対象にデジタルツールを多く開発し、企業が現金の流出を管理・制限するのを支援してはどうか、ということだ。

このトレンドの例は無数にある。たとえばBrexは現金管理ソリューションと経費管理ツールを開発した。Ramp自体は2020年、独自の経費管理ソフトウェアを世に出した(未訳記事)。Divvyは他のカード関連ソフトウェアツールとともに同じようなサービスを提供している。

ベンチャーキャピタリストらはRampに5500万ドル(約57億円)を、Brexに我々の計算では負債を除き4億ドル(約420億円)強を、Divvyには2億5000万ドル(約260億円)以上を注ぎ込んだ。法人カードに関してより強力なソフトウェアを開発するゲームは注目に値する。この分野の主要なプレイヤーにベンチャーが賭ける金額の規模が非常に大きいからだ。

Rampは資金調達のニュースの中、新しいコードを書き進め上述の点を裏付けた。同社は最近、ベンダー管理ツールを加えた。また現在、同社のカードで支払わなかった経費に関して従業員が精算できるように、経費精算機能を追加した。

3社のうちどれが最高のソフトウェアを持っているのか。いずれの会社もそれぞれ「自分たちがそうだ」と思っていると我々は考えている。

Rampとその競合他社がカード関連のプロダクトを中心にソフトウェアを開発しようと努力した結果、顧客数は急速に成長した。Divvyは今週、自社の指標に関してTechCrunchに、2020年には顧客数が120%増加し、プラットフォームにおける経費の合計は2020年に100%増加したと語った。Brexは成長に関する指標の開示を断った。

Rampは自社のニュースの1つとして成長率を発表した。創業後最初の18カ月でプラットフォームにおける経費が1億ドル(約103億円)に達したこと(GAAPの時間軸ではないことは認める)、同社が企業のためにサポートした総経費の4分の1は過去30日間に記録されたことなどだ。

スタートアップが調達可能な資金が潤沢にあるのと同じように、スタートアップが成長するための市場も豊富にあるようだ。

最後に質問。企業の支出管理スタートアップがスイッチを切り替え、一連のソフトウェアへの課金を開始するのはいつか。現在、3社は主に決済から収益を稼いでおり、自社のカードがサポートする小さな取引を集めている。これは拡張性が高く、新規顧客による登録のハードルを低く抑える。結局のところ、無料の金融ツールを望まない人などいるだろうか。

だがいつかはソフトウェアの料金を請求することになる。SaaSに基づく収益の評価は高すぎて、もはやついて行けない。だがどこかの時点で。おそらくその日に「企業の支出」というロゴで顧客を引き寄せる時代が終わり、この分野のソフトウェアの成熟が始まる。その時点で新しい競合他社が次々に芽を出し、このサイクルが繰り返されることになると予想する。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ramp資金調達

画像クレジット:William Whitehurst / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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