(編集部)この記事はMenlo Venturesのパートナー、Steve Sloaneの寄稿だ。
2018年のクリスマス商戦は大盛況でオンライン売上は1260億ドル近く と過去最高を記録した。しかしeコマースがが拡大し続ける中、人手不足は労働力の供給を上回った。これにより倉庫作業のオートメーションの必要性が以前に増して強くなっている。
Amazonがeコマースに占める優位性と事業規模を考えれば、同社が人間の労働をロボットで補完し始めた最初の企業の1つであることは当然だろう。2012年にKivaを買収して以後、さまざまなロボットがAmazonの施設で多様な作業を実行している。しかしロボットは人間の作業を完全に不必要とするレベルには達していない。
現在、テクノロジーの進歩と低コストの部品供給のおかげで、ロボットは企業のスケールを問わず利用しやすいものとなっている。これが共同作業ロボットまたは「コボット」の登場に道を開いた。
コボットは、高度なセンサー技術と接続性、AI、Lidar/レーダー、GPSなどの利用により正確性、柔軟性が増している。またハードウェアだけでなく機械学習を利用したフトウェアは幅広いタスクへの適応を容易にする。コボットはスタンドアローンのロボットよりより汎用性が高い。実際、多様なセンサーを装備したロボットはその場で学習して新たな課題に適応できるため現実のユースケースも拡大している。
もちろん今すぐに共同作業ロボットへの本格的移行が始まると期待するわけにはいかない。コボットはまだまだ初期段階にある。 ビック4(KUKA、ABB、FANUC、安川電機)がほぼ独占する世界の産業用ロボット市場は$2017年には150億ドル以上の規模があったが、そのうちコボットは2億8700万ドルしか占めていなかった。しかし、倉庫のデジタル化は巨大な市場であり、スタートアップの企業価値創造に絶好のチャンスを与える。
この点では過去に起きたソフトウェアからSaaSへの移行を想起するのが役立つ。伝統的な売り切りのビジネスモデルはクラウドベースのサービス・サブスクリプションに取って代わった。これによりプロバイダーに確実な収入が定期的にもたらされるようになった。現在ロボット市場はインテグレーター企業が主導する売り切りモデルで、製品サイクルは長期にわたる。これに対し、将来のロボット産業の主流は 業種ごとのGTM(Go-To-Market)戦略と信頼性の高いソフトウェア・マネージメント・プラットフォームを組み合わせることにより、初期のSaaSプロバイダと比較できるような顧客忠実度の高いビジネスとなっていくはずだ。
これに加えて、コボット・テクノロジーは人間の労働を補完して明確に効率を高めつつ、低コストであるため導入の障壁を低くする効果も持つ。これはコンピューティングのクラウド化によって企業がインフラへの多額の先行投資をせずに最高のパフォーマンスを入手できるようになったのと同じ原理だ。
われわれはロジスティクス、食品、セキュリティーなど従来ロボットの導入が進んでいなかった業界にもコボットが浸透するものと考えている。これらの分野に全面的なソリューションを提供できるならユーザーにとってきわめて魅力的であり、歓迎されるはずだ。たとえば、上の写真で示した6 River Systemsのコボット、Chuckはクラウドネットワークから情報を得て目的の棚に移動し、倉庫作業を大幅に効率化する。人とロボットの関係をダイナミックに捉え直すには作業員と共同で倉庫作業を行うChuckはよいサンプルだろう。
セキュリティーの分野では、Cobalt Roboticsが自動走行ロボットによって人間がオフィスをリモートで監視することを可能にし、人件費の削減とセキュリティー強化の実現を図っている。
モノをつまみ上げることに特化したRightHand Robotics、上の写真で紹介した倉庫作業効率化のinVia Robotics、また商品の宅配に利用が開始されたミニ6輪ロボット、 Starshipも特定の環境で人間の労働に取って代わる準備を進めている。
この分野のイノベーションは急速であり、数年のうちにさまざまな部門で効率化と成長をもたらすだろう。マサチューセッツ工科大学、カーネギーメロン大学、ジョージア工科大学などの著名な大学におけるロボティクス研究プログラムはトップクラスの人材プールとなっている。こうした人々が起業家に転じ、適切なタイミングで大胆にチャンスをつかむならロボット業界全体を発展させることができる。
Menlo Venturesにおける私の同僚パートナー、Matt Murphyは「ロボティクスはいよいよ黄金時代に入りつつある。ロボティクスは産業のメインストリームに入ってさまざまな分野の効率を高めるだけでなく、場合によっては不可能を可能にするだろう」と述べている。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)