国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、この10年間の市街地・郊外・地下街の携帯電話基地局などからの電波強度を調査し、その変動傾向を明らかにした。約10年前と比較したところ、同一地域における電波曝露レベルは上昇傾向にあるが、国が定めた電波防護指針よりも十分に低いレベルであることがわかった。
日本では、携帯電話や無線LANなどの電波は、電波防護指針に基づいて人体に悪影響がない範囲で利用されているが、目に見えない電波への健康不安は残る。そこでNICTでは、2019年度に生活環境における電波曝露レベルの大規模な想定を開始した。市街地・郊外・地下街の500以上の地点で定点測定しているほか、携帯型測定器や測定器搭載自動車などを使った広域測定も組み合わせている。電波曝露レベルの情報を広く共有することが狙いだ。
NICTは、500箇所以上に接地した測定装置「電界プローブ」からのデータを統計処理し、地域の差異や過去の測定結果から変動などを解析した。地域別では、市街地が郊外よりも電波曝露レベルが高く(4倍程度)、この傾向は約10年間変わっていない。地下街は、郊外よりもやや高い結果となった。また市街地と郊外では、10年前と比べて電波曝露レベルは約3倍に上昇しており、地下街においては約100倍も上昇していた。これは、10年前は未整備だった地下街での携帯電話サービスが改善されたためだとNICTでは考えている。
全体に上昇しているとはいえ、電波防護指針からは、中央値で1万分の1以下と十分に低いレベルであった。またこのレベルは、海外の最近の測定結果と比較しても15分の1と低かった。
この調査結果は5Gサービスが始まる前のものであるため、これから5Gが本格的に普及するようになったときに電波曝露レベルがどう変化するかを知るための参照データになるという。今後は、少なくとも2040年までは測定を継続し、結果を公表するとしている。