英国の地方裁判所はWikiLeaks(ウィキリークス)の創設者、Julian Assange(ジュリアン・アサンジ)被告の米国への引き渡しを却下した。
ウェストミンスター治安裁判所で現地時間1月4日朝に行われたヒアリングでVanessa Baraitser(ヴァネッサ・バライスター)判事は、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、またアサンジ被告の不安定な精神状態に影響をおよぼすことが考えられるという観点から米国の刑務所システムへの引き渡しは過酷だとして、米国への引き渡しを却下した。
ハッキング陰謀、そして議論を巻き起こしているスパイ活動法に反する数多くの罪を行ったとしてアサンジ被告を自国での裁判にかけることを模索してきた米国は控訴すると述べた。
アサンジ被告の裁判は、報道の自由・表現の自由 vs 国家権力の重要なテストとしてみなされてきた。
Breaking: UK judge rules against extradition of Assange to US #AssangeCase
— WikiLeaks (@wikileaks) January 4, 2021
判決でバライスター判事はアサンジ被告の引き渡しに対する数多くの弁護論を退けたが、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、自殺を阻止するために導入されうる回避策に対する知性を被告が持ち合わせているという臨床証言に同意した。
「アサンジ氏が自殺を図るかもしれないというリスクは、裏付けがあるものだと確信しています」とバライスター判事は132ページにわたる判決に書いており、そこでは2020年のヒアリングにあった引き渡しについての多くの精神科医の証言についても触れている。
「かなり高いしきい値を要する引き渡しを阻むものとして、抑圧があることを認めます。また、条約上の義務に影響をおよぼすことにかなりの公益があることも認めます。留意すべき重要な要因です。しかしながら、アサンジ氏の自閉スペクトラム症には「1つのことを思い込む」傾向があり、こうした厳しい条件のもとでアサンジ氏の精神状態の悪化が自殺を招くかもしれないことを認めます」。
また「アサンジ氏の精神状態にとって、米国への引き渡しは過酷なものになり得ます」とも書いている。
判決はアサンジ氏の即日釈放を命じているが、この記事執筆時点で同氏は拘留されていて、保釈聴聞会次第となる。
米国は14日以内に控訴できる。
身柄引き渡しを免れようと2012年から2019年にかけてロンドンにあるエクアドル大使館に籠城したアサンジ被告は、同大使館が外交上の保護を中止した2020年に逮捕された。
アサンジ被告は保釈の条件に違反したとして英国の裁判所で有罪となり、禁錮50週がいい渡されていた。
米国は、それとは別の罪状でアサンジ被告の引き渡しを要求するとすぐさま述べた。これらの罪状は、元米軍インテリジェンスアナリストで内部告発者のChelsea Manning(チェルシー・マニング)氏がWikiLeaksにリークした機密情報をアサンジ被告がいかに入手して公開したかにともなうものだ。
【更新】米司法省の広報担当はTechCrunchに次のような声明を出し、控訴する方針を明らかにした。「英裁判所の判決に我々は極めて落胆している一方で、米国が提起した法律上の論点で勝利したことには満足しています。特に政治的な動機、政治的犯罪、公正な裁判、言論の自由についてのアサンジ氏のすべての主張を裁判所は退けました。我々は引き続きアサンジ氏の米国への引き渡しを模索します」。
カテゴリー:セキュリティ
タグ:ジュリアン・アサンジ、裁判、イギリス、アメリカ
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(翻訳:Mizoguchi)