視覚障がい者にとってのAIとアクセシビリティの未来を探るイベント「Sight Tech Global」が2021年も開催

黒い背景の上に、目の虹彩を描いたコンピュータグラフィックス。大きい文字で2021年のSight Tech Global が12月1日と2日に開催されると書かれている

2020年12月に第1回のSight Tech Globalが開催されてから間もなく、AppleとMicrosoftがスマートフォンの注目すべき新機能を発表した。ユーザーがスマートフォンのカメラを向けて「周囲の説明」をリクエストすると、即座にクラウドベースのコンピュータビジョンAIが周囲を判断し機械音声で情報を読み上げる。見える人にとっては「部屋に椅子が3つとテーブルが1つある」ことがわかっても大したことではないと思うかもしれないが、視覚障がい者にとってはこの新しい機能はアクセシビリティのテクノロジーに関して画期的だった。手頃な価格で、持ち運ぶことができ、ほぼ汎用と言えるデバイスが、あらゆる人の「目」の代わりになる可能性があるのだ。

2021年12月1日と2日に開催される第2回のSight Tech Globalイベントでは、周囲を説明するようなテクノロジーもプログラムに含まれるだろう。このイベントへの参加は無料で、スポンサーの支援を受け、バーチャルで全世界を対象に開催される。世界トップクラスの技術者、研究者、支援者、起業家が多数集い、AIを中心とする急速なテクノロジーの進化が視覚障がい者のアクセシビリティをいかに変えていくか(良い方にも難しい方にも)を論じる。

無料の事前登録がすでに始まっている。

Sight Tech Globalの根底にあるのは難しい問題だ。高度に進化したAIベースのテクノロジーは、視覚障がい者がすぐに使える魅力的で手頃な価格の製品になるのだろうか。例を挙げると、5万ドル(約550万円)の箱型のデスクトップデバイス「Kurzweil reading machine」(カーツワイルの読み上げマシン)から、スマートフォンでテキストを「読める」無料アプリを視覚障がい者が普通に使うようになるまでにおよそ40年かかった。この分野に携わる人なら誰もがいうように、テクノロジーを視覚障がい者にとって日常的に役立つ手頃の価格のツールにすることが、40年前と比べて簡単になったわけではない。

2020年のSight Tech Globalには、MicrosoftのSaqib Shaikh(サーキブ・シャイフ)氏、AmazonのJosh Miele(ジョシュ・ミーレ)氏、AppleのChris Fleizach(クリス・フライザック)氏、OrcamのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)氏、人権問題を専門とする弁護士のHaben Girma(ハーベン・ギルマ)氏、作家で大学教授のSara Hendren(サラ・ヘンドレン)氏、研究者で大学教授のDanna Gurari(ダナ・グラリ)氏など、アクセシビリティ関連テクノロジーのさまざまなジャンルから最高の講演者が多数集まった。さらに、Perkins Access、Salesforce、APH、Humanwareなどが開催した分科会も多数の参加者を集めた。

2020年12月のイベントは無料でバーチャルで極めてアクセシブルであったため、70カ国から4000人以上が参加した。全セッション(ビデオと字幕)を2020年のアジェンダから、またはYouTubeで現在も視聴できる。参加者アンケートでは、プログラムが5点満点で4.7点、アクセシビリティは5点満点で4.6点の評価を得た。

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登録すると、ボランティアチームからアジェンダの最新情報をお伝えする他、参加者数限定の分科会に申し込むチャンスもある。ぜひ今すぐご登録いただきたい

プログラムのアイデアをお持ちの方、特にテクノロジー系プロダクトに関わっている起業家、投資家、研究者のみなさんからのご連絡をお待ちしている。プログラム委員会のメンバーはBenetech / TechMattersのJim Fruchterman(ジム・フルヒターマン)氏、Verizon MediaのLarry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ)氏、Facebookの Matt King(マット・キング)氏、カリフォルニア大学サンタクルーズ校教授のRoberto Manduchi(ロベルト・マンドゥチ)氏、Be My EyesのWill Butler(ウィル・バトラー)氏だ。連絡先は、Info@sighttechglobal.com

スポンサーも募集している。2021年のスポンサーとしてすでにGoogle、TechCrunch、Verizon Mediaが決まり、他にも2020年のスポンサーのほとんどが今回も支援する意向で、たいへんうれしく思っている。個人の方からの寄付もぜひお願いしたい。詳しくはこちらをご覧になるか、sponsor@sighttechglobal.comまでお問い合わせいただきたい。

サンフランシスコのベイエリアで75年にわたって人々を支援している 501(c)(3)団体(非営利公益法人)のVista Center for the Blind and Visually Impairedが、Sight Tech Globalを設立した。VistaのエグゼクティブディレクターであるKarae Lisle(カレー・ライル)氏がこのイベントの実行委員長だ。イベントに対する寄付とスポンサーシップはすべてVistaの収益となる。2020年にはSight Tech Globalの収益の92%がVista Centerに対する支援となり、多くの視覚障がい者がベイエリアでより良い生活をするための活動に使われている。

12月にSight Tech Globalでお会いしましょう!

カテゴリー:イベント情報
タグ:アクセシビリティSight Tech Global

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(文:Ned Desmond、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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