透析患者の予後を改善する新技術を擁するVenoStent

Timothy Bouré(ティモシー・ブーレ)氏と共同創業者のGeoffrey Lucks(ジェフリー・ラックス)氏はいずれも、最初にアクセラレーターに参加するためダラスに引っ越したとき、破産寸前だった。ダラスに来る前に、彼らは透析患者の予後改善を目指すVenoStent(ビノステント)を創業した。

同社によれば、透析(準備)手術の失敗は末期腎疾患患者の約55〜65%に起こっている。こうした患者のケアに関してMedicare(メディケア)とMedicaid(メディケイド)制度にかかるコストは年間約20億ドル(約2100億円)に上る可能性がある。2人は自分たちなら解決策を考え出せると信じていた。

ヴァンダービルト大学でVenoStentのビジネスの中核をなす技術を何年も開発した後、2人はナッシュビルからサウステキサスに引っ越してビジネスを成功させた。

ブーレ氏は2012年に博士論文の一部としてVenoStentの中核技術に取り組み始めた。ビジネススクールの大学院生だったラックス氏は材料科学者に紹介され、VenoStentが医学界に巨大なインパクトを与える間際まで来ていると確信した。5年後、2人はダラスにいて、Houston Medicine(ヒューストンメディシン)で血管外科の責任者に会い、会社を始めた。

2018年の小規模なシードラウンドにより会社は存続し、同年末近くに成功した動物試験により前進に必要な勢いを得た。最近、Y Combinatorコホートを卒業し、ついに同社は黄金期を迎える準備を整えた。

その間、一連の助成金やKidney XPrizeの受賞が事業継続を支えてきた。

成功は苦難の末に勝ち取ったものだ。ブーレ氏はヒューストンのJ-Labs(ジェイラボ)でほぼ3日間徹夜し、ポリマーの合成とスリーブステントの印刷に取り組んだ。J-LabsはJohnson and Johnson(ジョンソンエンドジョンソン)傘下の医療技術およびイノベーションアクセラレーターの会社だ。J-Labsは末期腎疾患患者が受ける、危険で失敗しがちな手術に代わるものを作ろうとしていた。

ブーレ氏の重要な発見は、透析(準備)手術からの回復に必要な細胞の成長を促す新しいタイプのポリマーに関連している。

ブーレ氏は2012年、自身の仕事のベースとなるポリマーに出会った。その後、2014年にNational Science Foundation(米国立科学財団)のコアプログラムを実施し、血管を覆うことについて考え始めた。 血管外科医との一連の議論を通じて、同氏は問題が末期腎疾患患者にとって特に深刻であると認識した。

VenoStentはすでに給付金、少額の資本注入、保健福祉省および米国腎臓学会からのKidneyX Prizeの受賞(VenoStentは6社の受賞者の1社)により240万ドル(約2億5000万円)を調達している。

「この賞は透析をめぐる状況を改善しようとする政府の継続的な取り組みの一部だ」とブーレ氏は述べた。「透析患者は世界で最もコストがかかるグループの1つ。基本的に、政府は患者の生活改善のための技術の探索に対して非常に積極的だ」。

現在、同社は動物実験の次の段階に向けて進んでおり、2021年には米国外で最初の治験を実施する予定だ。

同社はまず腎不全に取り組んでいるが、ブーレ氏が開発した素材は他の状況にも応用できる。「大腸の材料になる可能性もある」とブーレは言う。「どんな特性にも合わせることができる。また、特定の応用に合わせて修正することもできる」

画像クレジット:VenoStent under a license.

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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