再生医療とリハビリロボットのスペース・バイオ・ラボラトリーズ(SBL)は8月18日、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、エネルギア・コミュニケーションズと、びんごIPO倶楽部の複数の会員。またSBLは同時に、広島県の令和3年度(2021年度)「健康・医療関連産業創出支援事業費補助金」と尾道市の「尾道市実証実験サポート事業」に採択されたことも発表した。
SBLは、中枢神経系疾患の完治を目指した再生医療システムの構築に取り組んでおり、地上で模擬的に微小重力環境を再現する「重力制御装置 Gravite」(グラビテ)とこれを使った幹細胞培養技術の開発、細胞移植後のリハビリ用ロボット「歩行補助装置RE-Gait」(リゲイト)の開発などを行っている。
今後SBLは、「社内体制強化、既存技術の向上、新規の市場に向けての展開、歩行データの利活用」を目指し、今回調達した資金で「RE-Gaitの営業強化と付随サービスの拡充」を行うとしている。
Graviteは、直行する2軸を使って試料を360度回転させ、「重力ベクトルを時間軸で積分する」ことで宇宙ステーションと同じ1/1000Gの微小重力環境を作り出すというもの。また、2Gや3Gの過重力環境も作り出せる「世界唯一の装置」とのこと。宇宙で宇宙飛行士の筋がやせたり骨がもろくなったりする現象に着目したSBLは、広島大学と共同で、この装置を使った幹細胞培養技術の研究開発を行ってきた。現在は「やまぐち産業促進イノベーション推進補助金」を受けて、臨床用装置の開発を行っている。Graviteは、NASAやケネディー宇宙センター、米ロスアラモス国立研究所などにも導入されているという。
RE-Gaitは、正常歩行をプログラム化した歩行支援ロボット。歩行時の地面をける動作(足首の関節の底屈)と、つま先を上げる動作(背屈)を補助するというもの。「脳卒中後の片麻痺患者に正常な歩行を再学習してもらう」ことを目的に、広島大学大学院医学系研究科の弓削類教授と、早稲田大学大学院情生産システム研究科の田中英一郎教授と共同で開発された。これまでは難しかった足首のリハビリが可能になるという。
健康・医療関連産業創出支援事業費補助金において、SBLは、「ウェブカメラなどの動画のみから、人体の骨格情報を推定し、その姿勢を評価・指導する新しいシステム」の開発を行うことにしている。同社はすでに、映像から人間の骨格情報を推定する「ディープラーニング技術を医学的知見で改良することで、臨床現場に適合した新しい姿勢評価手法の要素技術」を開発している。
これから開発する新しい技術は、この骨格情報推定技術に、SBLの歩行に関する開発経験と、広島大学医学部の臨床的知見を組み合わせて、姿勢や歩行機能を客観的定量的に自動算出するもの。スマートフォンで撮影するだけで歩行の評価が行えるこのシステムを、今回引受先となったエネルギア・コミュニケーションズと連携して商品化を進めるとのことだ。
尾道市実証実験サポート事業では、「『100歳まで歩ける!』をサポートする環境とシステム構築」として、スマートフォンで歩行の評価が可能な新システムによる「歩行の見える化」と、RE-Gaitによる「歩行能力の改善」を提案、実証実験を行うことにしている。高齢者の健康増進、脳卒中後の早期社会復帰をサポートし、このシステムを全国に普及させるという。
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