今年は、すべての目がNvidiaに注がれたかのようだった。ゲーム、データセンターへの関心の高まり、AIアプリケーションへの適用の可能性などの、すべての面で膨大な需要を抱えて、株価が爆発的に上昇したためだ。
しかし、Nvidiaの株価とそのチャートは、AIが技術の世界に広がり続けた2017年の特に目を引くトピックだったかもしれないが、AIの世界では、より深い影響があるかもしれない更に微妙なことが起きている。
今年は、AIの上に構築される将来のデバイスに、パワーを与える独自のハードウェアに取り組む多くのスタートアップたちが、膨大な資金を調達した。これらのスタートアップの中には大規模な展開には程遠い(それどころか製品を出荷さえしていない)ものもあるが、資金調達には困っていないようだ。
画像や音声認識といった処理を構成する2つの主要な要素 ―― 推論と機械学習の最適化を求めて、スタートアップたちは、基本的な方法を見つけようと競い合っている。それらの機能をより速く、より電力効率が高く、次世代の人工知能組込デバイスのためにより適切に実行できるようにするためだ。私たちがCPUで習熟してきた、従来の計算アーキテクチャーの代わりに、いまやGPUが、AI処理が必要とする矢継ぎ早の計算処理を任せるための、頼れるシリコン部品の1つになったのだ。そして、そうしたスタートアップたちは、それをさらに改善できると考えている。
スタートアップたちについて話す前に、何が現在起きているかの感覚をつかむために、まず前述のNvidiaチャートを簡単に見てみよう。今年末の変動にも関わらず、全体としてNvidiaの株価は、2018年に向けて80%近くの上昇を見せている。
このことから当然、全てのスタートアップたちは、AI市場におけるNvidiaの死角を見出そうと必死だ。投資家たちもまた、それに注目している。
まず私たちが耳にしたのは、Cerebras SystemsがBenchmark Capitalから資金を調達したという、昨年12月のニュースだった。その当時は、AIチップ業界はまだ今ほど明確にはなっていなかったように見える、しかしそれから1年が経ち、NvidiaがGPUマーケットを支配していることが、この分野の発展を示す明確な指標となった。Forbesは今年8月に、同社の評価額が9億ドル近くに達したと報じた 。明らかに、ここで何かが起きたのだ。
Graphcoreも今年は動きを見せた。Atomicoが主導した、7月の3000万ドルの資金調達が終わったばかりであるにも関わらず、この11月にはSequoia Capitalが主導する、新たな5000万ドルの資金調達を発表したのだ。Graphcoreはまだ、Cerebras Systemsと同様に、Nvidiaのようなすばらしい製品をまだ市場に投入していない。一般的に、ハードウェアのスタートアップは、ソフトウェア上に構築を行うスタートアップよりも、多くの課題に直面するにもかかわらず、このスタートアップは年間で8000万ドルを調達することができたのだ。
中国のAIスタートアップにも投資の突風が吹いた。Alibabaは、Cambricon Technology という名のスタートアップに、10億ドルと伝えられる資金を投入した。Intel CapitalはHorizon Roboticsのために1億ドルのラウンドを主導した。そしてThinkForceと呼ばれるスタートアップが、今月始めに6800万ドルを調達した。
Groqについては言うまでもないだろう。これは元Googleのエンジニアたちによるスタートアップで、Social+Capitalから約1000万ドルを調達した。上に挙げたスタートアップたちに比べれば狭い範囲を対象にしているようである。さらに別のチップメーカーであるMythicも、930万ドルの資金調達を行った。
ということで、いまや1つ2つではなく、7つのスタートアップが似たようなエリアを狙っているのだが、その多くは数千万ドルの資金を調達し、少なくとも1つの評価額は9億ドルに迫ろうとしている。重ねて言うが、これらはみなハードウェアスタートアップ、しかもさらに多額の資金調達を必要とするであろう次世代のハードウェアスタートアップたちなのだ。しかし、これは無視することのできない領域だ。
スタートアップだけでなく、世界の大手企業たちも独自のシステムを構築しようとしている。Googleは今年の5月に、推論と機械学習に特化した次世代TPUを発表した。Appleは次世代iPhone向けに、独自のGPUを設計した。 両社は、ハードウェアをそれぞれの特定の用途、例えばGoogle CloudアプリケーションやSiriなどに合わせてチューニングする方向へ向かっている。またIntelは10月に、Nervana Nueral Network Processorを2017年末迄に出荷すると発表した。Intelは昨年の8月に、Nervanaを3億5000万ドルで買収していた のだ。
これらのすべては、スタートアップ企業や大企業たちによる大規模な動きを表している。それぞれの会社が独自の解釈によるGPUを追い求めているのだ。しかしCudaと呼ばれる独自のプラットフォームへ、開発者たちをロックインしようとする動きを始めたNvidiaを、その地位から追い落とすのはさらに難しい仕事になりそうだ。そして新規のハードウェアをリリースし、開発者たちを誘い込もうと考えるスタートアップたちにとっては、それにも増してさらに難しい仕事になるだろう。
シリコンバレーの投資家たちと話をしてみると、それでもいくつかの懐疑的な見方に出会う。例えば、Amazonのサーバーの中にある古いカードに搭載されたチップで、自分たちの機械学習の目的には十分なのに、どうして企業がより速いチップを買わなければならないのだろうか?しかし、まだこのエリアには膨大な資金が流れている。それらは、Uberに大きな賭けをしたのと同じ企業たち(そこにはかなりの乱れがあるが)とWhatsAppから流れて来ているのだ。
Nvidiaは、依然としてこの分野では明確なリーダーであり、自動運転車のようなデバイスがますます重要になるにつれて、その支配力は続いて行くように見える。しかし、2018年に入れば、これらのスタートアップたちが、実際にNvidiaを追い落とすことができるかどうかについての、よりはっきりとした見通しを得ることができるようになっていくだろう。そこにはIoTナンチャラに組み込むことのできる、より速く、より低消費電力のチップを作ることで、より効率的な推論を行い、デバイスたちの約束を真に果たせる魅力的なチャンスがある。そしてまた、モデルを訓練する際に(例えば、車に対してリスはどのように見えるかといったことを教えるなど)、非常に大きな負荷がかかりそうな場合にも、サーバーたちをより高速に、より高エネルギー効率のよいものにするチャンスがあるのだ。
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(翻訳:sako)