AppleがWorkflowの買収を完了した。このツールは複数のアプリとアプリ内の機能を一連のコマンドへと組み合わせて、タスクを自動化してくれるものだ。私たちはここしばらく、この案件を追っていたが、いま(記事の公開は米国時間3月22日午後20時ころ)やっと確認がとれたところだ。こう書いている間にも、契約書の上のインクが乾きつつあるところだろう。
取引の金銭的な詳細は入手できていないが(入手できた際には更新する)。私の知る限りでは、これは開発チームにとってはその努力がしっかりと報われた日であり、投資家たちにとってはささやかな収益となったということだ。私たちは、Workflowが公表されていないシードラウンドで、Lowercase、Eniac、そしてGeneral Catalystから数百万ドル規模の調達をしたと聞き及んでいる。
このアプリは、元iPhoneのジェイルブレイカーAri Weinsteinの加わった、小さなチームで開発された。私はiPod Linuxの時代から彼の動向をフォローしており、数年前には彼の作ったとても便利なDeskConnectアプリを取り上げたこともある。
Workflowは既に数年の間市場に存在していて、私たちはそれを更新を含めて取り上げて来た。それはIFTTTと幾分似通っていて、ユーザーはたくさんのアクションを束ねて、複雑なタスクを1タップで行うことができるようになる。過去数年の間に、かなりの数のユーザーとダウンロードを獲得していたアプリだ。
Workflowアプリは、その開発チームである Weinstein、Conrad Kramer 、野中彩花、そしてNick Freyと共に獲得される。Appleにとってはやや珍しい動きであり、アプリは今後もAppStore上で公開が続き、今日(米国時間3月22日)以降は無料となる。
その発表の中でWeinsteinは、「私たちはAppleの一員になることに、わくわくしています」と述べている。「私たちは、最初にWWDCに学生スタートアップとして参加したときから、Workflowを開発し発表して、AppStore上で驚くような成功を見るまで、ずっとAppleと密に作業を進めて来ました。Appleで私たちの仕事を次のレベルに引き上げて、世界中の人たちに使ってもらえるプロダクトに貢献できることがとても楽しみです」。
Workflowの買収で獲得されるのは才能だけではない、純粋な人材買収(acquihire)ではないのだ。Workflowそのものが、iOSエコシステムの中で需要をどのように見出し、プラットフォームに対する尊重を賢く注意深く行いながら、上手く取り込んでいく際の手法を示す貴重な例であるので、私は今回のAppleの動きは理にかなっていると思うし、それを目にできたことを嬉しく思っている。単純にそれはとてもスマートで、本当に良くデザインされており、きちんと動作する。
Workflowは2015年にApple Design Awardを受賞した。そのときにはAppleのアクセシビリティエンジニアであるDean Hudsonが、そのアクセシビリティを扱う方法について高まる興奮と共に紹介した。「最初にこのアプリに出会った時、私は本当に驚きました。これは、とんでもない代物です!」。
Appleは契約について認め、Workflowについて以下のように語った。
「Workflowアプリは、iOSアクセシビリティ機能の素晴らしい利用方法が認められて、2015年のApple Design Awardに選ばれました。特に明快なラベルを付けられたアイテムを使ったVoiceOverの素晴らしい実装、考え抜かれたヒント、ドラッグ/ドロップの際のアナウンスが、盲目あるいは弱視の人たちに、アプリを素早く利用可能なものにしています」。
Workflowのアクセシビリティ機能は、特に複雑なマクロを構築するツールとしてアプリだと考えると、とても印象的だ。おそらく「いやこれはヘビーユーザーのためのものなので、100%アクセシブルなものにする必要はないと思います」と言ってしまうことは遥かに簡単だっただろうと思う。しかし彼らはそう言わず、その苦労に見合う数々の賞を受賞した(そしてエグジットも手にした)。
Workflowによるアプリとの既存の統合は、広範囲なものであり、アップデートは続けられる。Workflowのマニアの1人であるFederico Viticciによるこの投稿から、このアプリの極めて突出した機能を見て取ることができるだろう。
スーパーナードの読者たちにとっては、これは伝説のSal Saghoianの最近の辞職後の、良いニュースの1つだろう(Sal SaghoianはAppleのオートメーションの皇帝だった。彼の担当していたポジションはもう存在しない)。一部の人びとは、この辞職によって、Appleはもはやオートメーションカテゴリーへの興味を失ってしまったのだと解釈していたのだ。
Workflowの特製ソースがユーザーたちに、個々のアプリの中に「深くリンクされた」特定の機能へのアクセスを許し、それらのアクションをシームレスで目には見えないコマンド列へとまとめ上げる。もしこれが馴染み深く聞こえるなら、あなたの胸には、おそらくこの先時間が経つにつれて充実が期待される、Siri APIのことが心をよぎっているかもしれない。
すこし考えてみれば、WorkflowがSiriと密接に統合されるだろうということは容易に想像できる、チームが今や、これまで公開されてきたSiriの断片よりも頑強な、AppleのプライベートAPIへのアクセスを得たことで、さらにシームレスな呼び出しとアクションの組み立てが可能になるだろう。
iPadエコシステムに対する、「パワーユーザー」向けの付加価値の提供にも大きなチャンスがあるだろう。Appleがこれまで、人びとにiPhone、iPad、そしてApple Watchエコシステムを、多数の軽めから中難度のタスクに利用できるものとして認知させようとしてきた努力が、これによって大きく下支えされることになる。
AppleWatch向けWorkflowは、とりわけ賢く素晴らしいマッチングだ。私はずっとApple Watchのインタラクションモデルとして「1.5秒以内、さもなくばアウト」を提唱してきた。Workflowの「入口」は、シングルタップで呼び出され、裏で行われる複雑なコマンドやインタラクションを「隠す」自動化アクションだ。これはApple Watchにとって理想的なものだ。
Workflowの買収は、成功が少々分かりにくくなったサービスの時代における、とても明快なアプリ成功例の1つだ。小さく賢いチーム(かつてWWDC学生奨学金も受け取った)が、iOS上でとても有益なツールを作り上げ、より良いやり方を実現できなかったApple自身がそれを捉えて買収した。この先どのようなことが起きるのか興味深く見守ろう。
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(翻訳:Sako)