CHIPS Allianceがオープンソースチップエコシステムを次の段階へと進めるため新事務局長を迎える

20年ほど前から、ソフトウェア開発の世界にはオープンソースの台頭による完全な革命が訪れた。私企業的所有権や著作権のあるプロプライエタリ(独占的)なツールやライブラリの多くが、GitHubなどのサイトで共有されるオープンソースのライブラリやエディターなどに道を譲り、それにより新しいタイプのソフトウェア技術者が爆発的に増加した。彼らは、世界最先端のソフトウェアから学ぶと同時に、自らも貢献した。

しかしシリコンの世界では、そのようなオープンなかたちは未だに夢物語だ。チップの設計と製造に関わる開発工程とツールは、現在でもほとんど完全にプロプライエタリであり、最近は新しいいアーキテクチャのRISC-Vや、OpenRANのような新しい仕様が登場しているが、業界全体としては依然、オープンなイノベーションに対して殻を閉ざしている。

そんな中で、2019年3月にCHIPS Allianceが、ハードウェアであるシリコンの世界でエコシステムをオープンにし、オープンソースによる開発を推進するために発足した。この団体はLinux Foundationがメンバーとしてホストし、オープン化によってイノベーションをさらに刺激していくという、Linuxなどと同様の精神を共有している。

CHIPS Allianceは米国時間2月8日、Rob Mains(ロブ・メイン)氏を事務局長に迎えたことを発表した。QualcommやOracle、Sun Microsystems、IBMなどシリコン畑の企業で数十年間キャリアを重ねたメイン氏は2021年1月、ゼネラルマネジャーとして同団体に参加した。

メイン氏はこれまでの体験を、業界の現状を理解するための基盤と考えているが、同時にまた、シリコンの世界は変わらなければならないとも主張している。「シリコン企業の考え方が、以前と大きく違っています。CHIPS Allianceは、いろんな企業や会員が変化に貢献できるプラットフォームになることができます。イノベーションの次の段階に、私たちを橋渡しできるでしょう」とメイン氏はいう。

CHIPS Allianceの新事務局長ロブ・メイン氏(画像クレジット:CHIPS Alliance)

現在の会員は計20数社、校の企業と大学で、その中にはIntelやGoogle、AlibabaそしてRISC-Vの中心企業であるSiFiveなどがいる。

RISC-V Foundationなどのオープンソース団体と比べると、メイン氏の目に映るCHIPS Allianceはもっと全体的にオープンなエコシステムを作ろうと努めている。バスのプロトコルやチップレット間のインタフェイスなど「スタンダードや実例の周知や普及に努めるべき多様な分野がここにはある」と氏は語る。CHIPS Allianceは、Western Digitalが開発したOpenXtendプロトコルをホストしているが、それはプロセッサーのキャッシュとメモリコントローラー間の整合的なインタフェイスを提供する。またIntelで開発された、複数の半導体ダイを接続するためのスタンダードであるAdvanced Interface Bus(AIB)もサポートしている。

メイン氏は過去に、自動化電子設計(electronic design automation、EDA)のツールで経験を積んでいる。それは、チップの設計者がそのモデルを物理的なシリコン上のトランジスタに翻訳する工程を助ける。彼はEDAの世界にもオープンソースのツールを拡張していく真の機会があると見ている。さらに同団体は、GoogleとSkywaterによる最近の実験に見られるような、オープンなPDK(process design kit、工程設計キット)の、今後のインフラストラクチャ探求にも関心がある。

メイン氏は、コミュニティであることとハードウェアにおけるオープンソースの方法論の振興努力をしていくことによって、この修道院のように閉じた業界を開いて、今後起きるイノベーションの幅と努力を広げていける、と期待している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:CHIPS Alliance

画像クレジット:Matejmo/Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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