新しいタイプのセンサーが、視覚障害者が目の前にあるものを「見る」力になる。 Enactive Torchと呼ばれるそのデバイスは、赤外線信号を発してユーザーに近くの物体を認識させる。腕にはめた小さなブザーが、ドア枠や壁にぶつかりそうになった人に警告を与える。杖の強化版だと思えばよい。
シンシナティ大学のLuis Favela、Tom Froese、Adam Spiersの3名が作った。目標はちょっとしたハイテクを視覚障害者の経験に役立てることだ。白い杖は何百年にわたって使われているが、よりコンパクトなTorchなら、足場の悪い地帯や狭いショッピングモールでも楽に歩き回れる。現在デバイスは少々大きめだが、制作チームは実験を進めてもう少し小さくできることを期待している。感知する範囲は、10 cmから90 cmの間だ。
「研究を進めるうちに、視覚障害のある人達、特に子供たちが、感情的な傷を負っていることがわかった」とFavelaは言う。「小学校に通う子供は、 友達の輪に入りたいものだ。あの大きな白い杖を持っているとそれは難しい。」
Favelaは、実験のために27人の生徒に目隠しをさせて知らない場所へ連れて行った。彼らはこのデバイスを使って足元にあるものを感知しながら、ドアを通過し、壁にぶつかることなく容易に移動することができた。結果のデータは、ワシントンDCで行われたAPA会議で発表した。
「被験者の下した判断を、視覚、杖、Enactive Torchそれぞれを使った場合で比較したところ、有意な差は見られなかった。つまり、彼らは同じ判断をした」とFavelaは言った。「3種類の方式は、機能的に同等だった。人は、視覚を用いても触覚を用いてもほぼ同じ程度の行動を起こすことができる。これには大変驚かされた。」
写真提供:Colleen Kelley(シンシナティ大学)
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)