HubSpotがポッドキャスターを支援する新プログラムを発表

最近は買い手の注意を引くことが難しくなってきた。かつてはいくつか広告に費用を払い、ブログ記事をアップすればそれでよかったのだが、これらの経路が効果的でなくなるにつれ、SaaS企業は意図するオーディエンスに到達するために、より洗練された種類のメディア制作に目を向けるようになっている。

HubSpot(ハブスポット)は先週、クリエイターに資金とプラットフォームを提供し、制作されたポッドキャストをHubSpotのウェブサイト上で配信するというプログラムを発表した。クリエーターにより幅広い聴取者にリーチする方法を提供しつつ、より多様なコンテンツへのアクセスを持つ利点を活かしたいと、同社は考えている。

「飽和状態のポッドキャスト市場で突破口を開くことは、特にゼロから始めるクリエイターにとっては非常に難しくなります」と、HubSpotのマーケティング担当SVPであるKieran Flanagan(キーラン・フラナガン)氏は、このニュースを発表した記事の中で述べている。「このHubSpot Creators(ハブスポット・クリエイターズ)プログラムを通じて、私たちはコンテンツ分野のリーダーとしての当社の立場を活用し、何百万もの組織の成長を支援するという当社のミッションを共有する新進クリエイターの知名度を向上させることができます」。

クリエイターは、同社のプラットフォームを利用してより広いリーチが期待できることに加え、聴取者の増加に応じて毎月支払われる金額が増額される仕組みになっている。HubSpotは、シード、シリーズA、B、Cというベンチャー投資の概念に準えた4つの成長段階を設定した。また、このシステムを通じて、クリエイターはエディターやプロデューサーといった人的リソースへのアクセスも得ることができる。

CRM Essentials(CRMエッセンシャル)の創設者で主席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、このアプローチは実に賢明なやり方であると確信している。

「クリエイターを受け入れ、彼らがストーリーを語るための手助けをすることで、HubSpotはコンテンツのエコシステムを拡張できるだけでなく、より広いクリエイターのエコシステムの一部となることもできます。このアプローチにより、HubSpotは個人やコミュニティと重要な関係を築くことができ、自社のコンテンツ戦略を他のフォーマットやチャネルに展開することにつながります」と、リアリー氏はTechCrunchに語った。

HubSpotは、2006年にインバウンドマーケティングのプラットフォームとして誕生し、ブログを使って企業の製品やサービスに対する関心を高める働きをしてきた。コンテンツマーケティングの考え方は進化しているものの、フラナガン氏はLinkedIn(リンクトイン)に掲載した新プログラム発表の投稿の中で、当初のインバウンドマーケティングの考え方は依然として共鳴を呼び、製品主導による成長の進行とともに重要性が増してきていると書いている。

もう1つの大きな要素は、これらのコンテンツの周りに、ブランドにとって重要な人々、つまりコミュニティが形成されるということだ。コミュニティは、直接的に(これらの人々の何割かが顧客になる)、あるいは間接的に(少なくともより広い世界でコンテンツを共有してくれる)、関心をさらに高める方法を生み出すと、フラナガン氏は述べている。

同社は「Content is Profit」や「(Un)Sexy」といった名称の8つのポッドキャストからこのプログラムを開始する。これらのポッドキャストのテーマは、セールスおよびマーケティングプラットフォームとしてのHubSpotのミッションに何らかの形で関連しており、HubSpotが自社の製品やサービスへの関心を高めると期待するコンテンツを提供していく。

このようなプログラムを起ち上げているのは、HubSpotだけではないことも注目に値するだろう。LinkedInはクリエイター向けに似たようなアプローチを提供している。MailChimp(メールチンプ)も同様だ。しかし、これらのプラットフォームに便乗することは、クリエイターにとって聴取者を獲得するための最良の方法なのだろうか? トレードオフとなるものは何だろうか?

ある情報筋からTechCrunchに提供された非公開のクリエイター規約書によると、HubSpotはクリエイターに対し、どれだけダウンロードされたかという数字に関係なく、毎週ポッドキャストを作成するために最低月1000ドル(約12万円)を支払うとされている。これは新人ポッドキャスターにとって好条件だと思われる。独立系の番組がそれだけの収入を得られるようになるまでには、時間がかかることが多いからだ。この最下段の「シード」層に属するポッドキャスターには、1回限りのマーケティング投資として5000ドル(約60万円)も与えられる。

しかし、ポッドキャスターは、この手早い資金投入を利用するために、いくつかの権利を放棄しなければならない。HubSpotのパブリック・クリエイター・プログラム契約によると、このプログラムに参加することによって、クリエイターは番組に対する永久的なライセンス(番組の改変や派生物の作成を含む)をHubSpotに付与することになる。また、番組ホストがその義務を果たせていないとHubSpotが判断した場合、HubSpotはホストを交代させる権利も有している。

クリエイターが番組の所有者であることは変わらないものの、HubSpotの永久ライセンスは、この資金援助に付随する条件があることを明確に示している。

「HubSpotはクリエイターの権利を尊重し、クリエイターとHubSpotの間で公平なバランスが維持されると確信しています」と、HubSpotの広報担当者はTechCrunchに語った。「HubSpotは、このプログラムから良好な状態で離脱したクリエイターに対して、独占権の放棄も検討していく予定です」。

LinkedInも最近、同様のポッドキャストネットワークを起ち上げたが、そのクリエイター契約に関する詳細な情報を公表することは拒否した。LinkedInの担当者はTechCrunch に、ポッドキャストパートナーは「彼らのコンテンツに対する完全な所有権を保持する」と述べたが、ライセンス契約については詳しく語ろうとしなかった。

ますます多くのSaaS企業が独自のポッドキャストネットワークを起ち上げる中、ポッドキャスターは、クリエイティブコントロール(創作物のクリエイティブ面における最終決定権)の価値と、これらのプログラムが提供する資金を天秤にかけた難しい決断を迫られることになりそうだ。

画像クレジット:Anastasiia Krivenok / Getty Images

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(文:Ron Miller, Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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