ニューヨーク証券取引所(NYSE)は米国時間11月26日午前、直接上場(Direct listings)での資金調達を可能とする提案申請を米証券取引委員会(SEC)に提出した。
直接上場は、従業員や投資家が保有する既存株式を市場に直接売却することにより、企業が株式を公開する方法であり、新株を発行する従来の方法とは異なる。直接上場が支持を集めるようになったのはSpotifyが2018年にイグジットしてから。従業員の持ち株の流動性が上場後すぐに確保され、銀行(日本では証券会社)による売り出し株式への優先的なアクセスがなく、市場メカニズムによる価格決定が可能なためだ。Spotifyのように直接上場を選択する企業は、ロードショー(IPO前に会社説明のため機関投資家を回ること)を割愛できるため、ウォールストリートに払う法外な手数料の一部を回避できる。だが、これまで直接上場では資金調達はできなかった。
NYSEの新しい提案はそれを変えようとするものだ。具体的には、上場企業マニュアルの第1章を修正する予定。第1章は新規公開または直接上場を目指す企業に求めるNYSEの上場要件を規定する。修正がSECに承認された場合(NYSEはSECの規制監督対象)、NYSEへの上場を目指す企業は直接上場時に資金を調達することができる。
申請によると、提案された変更により「1934年証券取引所法に基づき普通株式を過去に登録したことがない会社は、有価証券届出書が発効すると同時に、取引所に普通株式を上場することができる。会社は有価証券届出書に基づき、取引所における取引初日のオープニングオークションで株式を売り出す(プライマリー直接上場)。この提案により、会社は売出株主直接上場(資金調達を伴わない従来の直接上場)に加え、またはその代わりに、プライマリー直接上場を実施することができる」。
提案されたハイブリッドモデルはシリコンバレーのテクノロジースタートアップの関心を集めることが予想される。SpotifyとSlackの直接上場を受けて、今や多くのスタートアップが公開市場への新ルートに詳しい。2社のイグジットに後押しされ、テクノロジー業界のリーダーらは、直接上場が公開市場への最新かつ最大の道だと喧伝している。特にベンチャーキャピタリストのBill Gurley(ビル・ガーリー)氏は、企業にこの方法を検討するよう勧めている。2020年に公開する意向を表明したAirbnbは、従来のIPOではなく直接上場を検討中とみられる。
銀行がIPOで適切な株価を設定できないことに不満を表明したガーリー氏は最近「直接上場:IPOに代わるシンプルで優れた方法」と題し、直接上場をテーマに終日のカンファレンスを開催した。このイベントには、Sequoia CapitalのMichael Moritz(マイケル・モリッツ)氏やSpotifyの最高財務責任者Barry McCarthy(バリー・マッカーシー)氏など、テクノロジー業界のエリートメンバーが参加した。
「ほとんどの人は銀行からの反発を恐れて発言しない」とガーリー氏は今年上旬、直接上場を公に擁護すると決めたことついてCNBCに語った。「自分のキャリアの中で、今が批判に耐える時だ」。
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(翻訳:Mizoguchi)