PayPalが激戦地インドでの決済事業から撤退へ

米国の決済サービス大手PayPal(ペイパル)は、世界第2位のインターネット市場であるインドでの事業を開始してから4年足らずで、同国での国内業務を終了すると発表した。

「2021年4月1日からは、インド企業の国際的な販売を可能にすることに専念し、インド国内の製品から焦点を移していきます。これは、4月1日よりインド国内での決済サービスの提供を終了することを意味します」と同社の広報担当者は述べている。

PayPalは長い声明の中で同社のインドでの優先事項がシフトしたと述べたが、業務を縮小する理由は詳しく説明していない。最近のニュースでは、同社はインドで36万以上の加盟店と契約したものの、インド市場に浸透するには苦戦していると報じられていた。

インドの報道機関The Morning Contextは2020年12月に、PayPalがインドでの現地決済事業を見限ったようだと報じていたが、同社は当時この主張を否定していた。

同社の広報担当者はTechCrunchにこう語った。「優先事項のシフトにともない、一部のPayPal従業員は新しいチームに配属されました。当社は常に、可能な限り従業員への影響を最小限に抑えることを重視しています。全体的に、当社がインドで雇用している従業員は増加しており、減少してはいません。我々は現在、インド各地のオフィスで多数スタッフを募集しています」。

それにしても、この動きは意外だといえる。同社は2020年の時点で、インドのUPI(Unified Payment Interface、統一支払いインターフェース)を利用した決済サービスを構築していると述べており、インドへの投資の増加を示唆していた。

PayPalはまた、長年にわたり、チケットサービスのBookMyShowやMakeMyTrip、フードデリバリープラットフォームSwiggyなどの多岐にわたるインドの人気ビジネスと提携し、より迅速なチェックアウト体験を提供してきた。本稿執筆時点では、インドのPayPalのウェブサイトは、そうした参照をすべて削除してあるようだ。

インドは近年、モバイル決済企業にとっては世界最大の激戦地の1つとして浮上してきた。
Paytm、PhonePe、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、そしてFacebook(フェイスブック)を含む多額の資金に支えられた企業の数々が、 2023年には1兆ドル(約105兆円)の価値があるだろうと推定されるインド市場でのシェアを増やそうと競合している。これらの企業のいくつかは、加盟店向けの様々な決済サービスも提供している。

2020年、インドの加盟店向けに14億ドル(約1475億円)相当の国際売上を処理したとする同社は、「インドの企業が世界で3億5000万人近くいるPayPalユーザーにリーチし、国際的に売上を伸ばすお手伝いをし、インド経済の成長回帰を支援するための製品開発」に今後も投資していく、とつけ加えた。

PayPalは10年以上前からインドでクロスボーダー決済サポートを提供している。インドに進出してからは、インドの消費者がオンライン加盟店で買い物をする際、現地通貨で支払うことを可能にしていた。

この記事は、PayPalから提供された追加の詳細を元に更新された。

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPalインド

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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