SiriusXM、音楽配信PandoraやポッドキャストStitcherなどにまたがって視聴者を識別・追跡する新手法「AudioID」を導入

トラッキングクッキーの使用は徐々に減っておりApple(アップル)のアンチトラッキング・プライバシーのアップデートは、モバイルアプリの広告収入に影響を与えている。しかし、これらの変化は、アドテック業界がその解決策でより創造的になるよう促しているだけだ。その最新例が、Pandora(パンドラ)の親会社SiriusXM(シリウスXM)によるものだ。同社は1月31日の週に「AudioID」という、アプリ間で視聴者を識別して追跡するための新しい方法を導入した。

この新しいIDソリューションは、Pandoraが2018年に1億4500万ドル(約166億円)で買収したデジタルオーディオアドテック企業AdsWizz(アズウィズ)からのものだ。この買収でPandoraは、ダイナミック広告挿入、キャンペーン監視ツール、ポッドキャスト文字起こし技術、さらには広告中にユーザーが電話を振って行動を起こす「Shake Me」といった奇妙な機能など、アドテック製品へのアクセスを手に入れた。そして今、AdsWizzはAudioIDに搭載することで新たな形で技術を活用している。

AudioIDの仕組みはというと、自社の衛星ラジオ音楽サービスや、ストリーミングアプリのPandora、2020年に3億2500万ドル(約372億円)で買収したポッドキャストアプリのStitcherなど、SiriusXMの事業全体のユーザー情報のデータセットを照合する。

データセットの中から重なり合うシグナルを探す、と同社は説明している。例えば、顧客がPandoraとStitcherの両方に同じ電子メールアドレスで登録した場合、SiriusXMはそれらのアカウントを1つの「AudioID」にまとめることができる。消費者は、こうしたマッチングが裏で行われていることを知ることはなく、アプリから追加情報の提供や同意を求められることもない。オプトアウトもない。それは、AudioIDが従来の識別子を代替するものであり、過去の識別子にはユーザーの個人情報を含んでいたり、リンクしていたりした可能性があるからだ。一方、SiriusXMは、AudioIDはユニークだが「匿名化」されていると説明する。

しかし、AudioIDは、電子メールや電話番号だけでなく、あらゆる信号を照合して、作成を知らせることができる。この技術はデバイスID、IPアドレス、その他のユーザープロファイルデータを横断的に検索し、ストリーミングアプリにまたがる識別子を作成することができる。つまり、モバイルアプリ、ブラウザ、車両、家庭内のスマートデバイスで音楽やポッドキャストを再生していても、ユーザーの視聴行動を追跡することが可能だ。

言い換えると、広告主がユーザーをターゲットに、より関連性の高い広告を提供し続けることができる方法をSiriusXMは考え出したが、リスナーの個人情報や身元を難解にし、代わりにリスナーが聴くコンテンツに焦点を当てようとする方法だ。

まずはこのソリューションはファーストパーティの広告ターゲティング、測定、リーチ、予測、フリークエンシーキャッピング(広告表示回数の上限設定)といったユースケースをサポートする、とSiriusXMは話す。

AdsWizzのSVPで広告製品・技術・運営責任者のChris Record(クリス・レコード)氏は「文化的にも技術的にも、アイデンティティの新しい時代を迎えようとしています。紙に書かれた人物、あるいは使わなくなったクッキーによってではなく、興味と情熱で特徴づけます」と述べた。「AudioIDは、消費者第一でプライバシーに配慮したインフラであり、視聴者に最高の体験を提供し、マーケティング担当者にこれまでにないデータ駆動型の機能へのアクセスを提供します」。

もちろん、消費者がこの種のソリューションの位置づけを評価するかどうかはまだわからない。特に、モバイルアプリで「追跡禁止」のポップアップをタップしてから、高度にターゲット化された広告を受信した後ではなおさらだ。もちろん、マーケティング担当者側の前提は、消費者は自分の興味に関連性が高い場合、パーソナライズされた広告を歓迎する、というものだ。消費者は自分の個人情報が広告主の記録に浮遊することを望んでいないことが問題だとマーケティング担当者は考えている。しかし、間違いなく、トラッキングをオプトアウトする消費者は、それと引き換えに自分が出会う広告の精度が落ちる可能性があることを理解している。だが、彼らはとにかくそのボタンをタップする。むしろ、消費者がオプトアウトするのは、プライベートな個人情報を守りたいからだけでなく、高度にパーソナライズされた広告があまりにも不気味になったからだろう。AudioIDソリューションは、消費者が現代のアドテックに抱いている不満を解決していないようだ。特に、より良いターゲティングのためにユーザーの「興味と情熱」を収集・集計しているのであればそうだ。

SiriusXMは、このソリューションが提携するパブリッシャーやマーケターにとってオプトインであることを指摘している。言い換えると、AudioIDを使う必要はない。2022年後半には、このファーストパーティターゲティングを、米国内のAdsWizzのオフプラットフォームマーケッターや広告主にも拡大する予定だという。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。