UberやAirbnbのレビューはどこまで信用して良いものなのか?

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編集部記: Aimee Millwoodは、Yotpo blogでEコマースマーケティング、グロース、エンゲージメントを担当している。

レビューは私達の生活の全てに影響を与えている。それは、そのブランドを信頼するかどうか、何を購入するか、何を食べるか、更にはどうやって旅行するかなど様々な分野に及んでいる。オンラインでのレビューは、1980年から2000年代生まれのミレニアル世代の私にとって、何かを決めるための重要な要素となっている。Yelpが誕生した頃、私はティーンネイジャーにもなっていなかった。それから10年が経過し、レビューはオンラインでのコンシューマーの立ち位置を大きく変えた。レストランでの食事客、タクシーの搭乗客、自宅のゲストさえレビューを行うようになったことで、将来はどのように変わるのだろうか?

シェアリングエコノミーで「信頼」は通貨となった

Uberが搭乗客に対して無断でレビューを行っていたというニュースから、相互評価のレビューシステムに注目が集まった。もちろん、このようなシステムを採用しているのはUberだけでなく、LyftやAirbnbでもプラットフォームの信頼を構築するのに用いられてきた。

相互評価とシェアリングエコノミーは、 互いに手を取り発展してきた。他人と何かをシェアするには信頼関係が必要不可欠だ。そしてオンラインにおける「信頼」とはその人の過去の取った態度や行動のレビューに基づく。シェアリングエコノミーでの「信頼」は通貨ほど重要なものであり、レビューはそれを得るために必要なものとなった。

相互評価には利点がある。サービスの透明性を保ち、人々は誠実になり、評価はシステム全体の改善にもつながる。Lyftの搭乗客は、車に乗る前にドライバーが信用に値する人物であるかを知る権利があるし、同様にドライバーも搭乗客がタクシーの呼び出しをキャンセルした過去がないかを知る権利がある。Airbnbのゲストだったら、旅先の家が自身のニーズに合っているかを知る必要があるし、ホスト側もゲストが家を汚したような過去がないかを知る必要がある。

Uberのニュースが出た時、搭乗客の多くはレビューされていることを知らなかった。その事実と共にレビューの基準が開示されていないことにも腹を立てた。主観的なレビューは危険であるし、事態を悪化させるだろう。決められた基準もないのに、どのように評価すると言うのだろうか?何がA判定に値するか分からずに学校が生徒に成績を付けるようなものだ。5つ星が何を意味しているか分からないのでは、評価はできない。

「5つ星」が平均だと思われるようになってしまったら、星の価値は崩壊していると言える。

シェアリングエコノミーでは信頼を得るために相互評価が必要かもしれないが、だからといって全てのビジネスにおいてそれが適切だとは限らない。eBayのレビューを思い出してほしい。彼らは2008年まで相互評価を取り入れていた。しかし、eBayはこのレビューシステムに大きな問題点をみつけた。商品に対して料金を支払っているカスタマーは、自身がレビューされることに疑問を感じたのだ。

「お客様は神様です」の文句と通じる所があるかもしれない。eBayの場合は、顧客は20ドルを支払って商品を受取る。商品の対価として料金を支払う取引を行っている。このようなビジネスでは購入者と販売者との線引が明確だ。しかし、シェアリングエコノミーでは、この線引が曖昧になる。シェアリングエコノミーでは、ドライバーはUberのサービスに対価を支払っているし、搭乗客はタクシーに対価を支払っているので、全員がレビューの対象となるのだ。

相互評価が持つリスク

Boston University の研究者は、相互評価が全体の評価に与える影響に注目した。彼らは、相互評価のシステムの無いTripAdvisorとそのシステムを採用するAirbnbのどちらにも掲載されている物件を比較検討した。この研究では、Airbnbに掲載されている物件の方がTripAdvisorに掲載されている同じ物件よりも評価が14%高いことが分かった。

これは、星での評価では僅かな開きだったとしても、業界全体で見ると大変な開きであることが分かる。例えば、ホテルを探している人が5つ星より3つ星の物件を選ぶ確率は3倍低い 。Eコマースでは、3つ星の商品より4つ星の商品は 11.6倍の注文を受ける

何がこの開きを生んでいるのだろうか?社会的な圧力が働いていることが考えられる。オープンな相互評価システムの場合、相手から良いレビューが欲しいがために相手に対して良いレビューを書くことが考えられる。また、自分を良く見せたいために良いレビューを書くことだってあるだろう。例えばAirbnbのゲストだったら、宿泊した部屋の冷房が壊れていたり、冷蔵庫が綺麗でなかったとしても、自分に対して悪いレビューを受けたくないがために5つ星のレビューを書くことも大いに有り得る。

Airbnbはこの問題に気づき、どちらのレビューも提出されてから、あるいは滞在が終わってから14日後以降にしかレビューを公開しないようにシステムを変更した。しかし、この施策ではもう一つの要素を低減させることは難しい。人は良く見られたいという思いがある。社会的な場では、匿名でない限り、人は他人の悪いことを言いたがらない。誰も、あの人はいつも批判していて、クレームを際限なく言う人だと思われたくないのだ。

誰もがみんな5つ星ではない

Uberで3つ星未満のドライバーを見ることはない。だからといって、Uberには3つ星ドライバーがいないということではない。多くの人は平均的なドライバーのはずだ。「5つ星」が平均だと思われるようになってしまったら、星の価値は崩壊していると言える。

完璧な5星のレビューにサービスの問題点を探すのは、一見矛盾しているように感じるが、完璧なフィードバックの中からでも貴重な意見を掬い取ることができる証拠である。

ビジネスやサービスを提供している側は、評価は彼らが提供するものを正確に反映していることを忘れ、評価を上げることだけに執着してしまっている。ここでの最大の問題は、Airbnb、Uber、Lyftのようなサービスにおけるレビューは必ずしも信用できるものではないということだ。「5つ星」が主観でしかなく、サービスを提供する側は良い評価がないと仕事が得られず、顧客も良い評価がないとサービスを受けらないのなら、企業も顧客も評価を高めるのに躍起になるだろう。

ネガティブなレビューに対する偏見

相互評価のシステムが上手く機能するには、確立しなければならないことが3つある。1つ目は、全員が評価の明快な基準を認識すること。2つ目は、Airbnbの教訓に学び、レビューが反撃のために利用されないこと。それには、ネガティブなレビューを投稿したい場合は、匿名でも良いようにするといった施策が必要だ。そして忘れてはいけないのは、ネガティブなレビューに対する偏見をなくすということだ。

ネガティブなレビューに対する恐怖が最大の問題なのだ。ネガティブなレビューは良い効果をもたらすこともあり、悪いこととは限らない。各ブランドは星だけの評価にとらわれないでほしい。 Nordstromは、素晴らしい取り組みを行った。5つ星のレビューだけを分析して、隠されたユーザーの思いを読み取り、事業の改善に役立てることができたのだ。完璧な5つ星のレビューにサービスの問題点を探すのは、一見矛盾しているように感じるが、完璧なフィードバックの中からでも貴重な意見を掬い取ることができる証拠である。

レビューを長期に渡って機能させるには、星での評価から進まなくてはならない。明確な基準を設定し、社会的圧力を受けずに誰もが公平だと感じるシステムを構築する必要があるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook

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TechCrunch Japan

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