Waymoが自動運転車の次世代技術をJaguar I-Paceで試験中

2年半ほど前Waymo(ウェイモ)のエンジニアらは、前世代を改良し、そして自動運転の乗用車からセミトラックまでさまざまな車両に対応する能力のあるハードウェアセンサーの開発に着手した。

そしていまWaymoは、手始めに全電動のJaguar I-Pace車両でこれまでの取り組みの成果を披露している。

Waymoは次世代のハードウェアシステムをJaguar I-Paceに搭載し、機械学習モデルを訓練するためのデータ収集に活用している。今後は運転席にセーフティードライバーが乗り込んだ自動走行モードでのJaguar I-Paceテストを開始する。マイルストーンを達成したら、大きなトレーラートラックに着手する。公道でのI-Pace試験は今後も継続され、ゆくゆくはWaymoの社員が配車を依頼して乗車できるようになる。最終目標はI-Paceを現在フェニックスエリアで展開されているWaymo Oneサービスに組み入れて展開することだ。

これはWaymoの第5世代ハードウェアだ。研究と開発に10年以上かけられ、前世代のものよりも高性能なはずだ。Waymoによると、実際そうだという。

もちろん、自動運転車両を商業展開するビジネスのために、最も有能でしっかりとしたハードウェアを製造することは、たとえ多額のコストがかかったとしてもそれは問題ではない。新たなハードウェアのコストは前世代の半分で、デザインと製造過程のシンプル化によりコスト抑制を達成している。

次世代ハードウェアはラボではなくライン製造される。ただし、Waymoはどこで製造するかは明らかにしていない。これらハードウェア一式のインテグレーションはデトロイトにあるWaymoの施設で行われる。

こうした改良には資金が必要だ。開発、テスト、有効化、そしてゆくゆくは対応した自動運転車両の商業展開にかなりの資金が注がれる。絶えず現金を必要とするために、AVスタートアップの数社は撤退した。

Alphabet(アルファベット)傘下の企業として、Waymoは他社とは少し異なった、そして居心地のいいポジションにいる。だからといって資金調達をしなくていいわけではなく、Waymoは22億5000万ドル(約2370億円)を調達した。同社は先週、Silver Lake、Canada Pension Plan Investment Board(カナダ年金制度投資委員会)、Mubadala Investment Companyがリードする投資ラウンドを発表した。これはWaymoにとって初の外部からの資金調達で、Magna、Andreessen HorowitzAutoNation、そして親会社のAlphabetも参加している。

次世代テックの中身

一連のハードウェアはカメラ29台を含む新しいビジョンシステムを有する。これにより視野をオーバーラップさせて道路のあらゆる方角の視野を確保し、500メートル先の停止サインもとらえることができる。

Waymoはまた、より自動運転車に適するよう、レーダーのアーキテクチャや信号出力、シグナル処理能力のデザインにも変更を加えた。

Lidar(light detection and ranging radar、光による検知と測距)はWaymoのハードウェアの重要な部分だ。同社は能力の改善とコスト抑制のためにLidarの開発に時間、人、資金とかなりのリソースを注入した。Lidarは自動運転の根幹をなすものであり、2017年に同社は前Google(グーグル)エンジニアのAnthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドフスキー)氏によって企業秘密が盗まれ、Uberがその秘密を使用したとして、Uberを相手取って訴訟を起こした。

Lidarは第5世代システムと変わらない。基本的には周囲の3D図を提供するデジタル画像化のフォームであり、それが主な機能だ。しかし重要な変更も加えられた。

Waymoは、周囲360度の視野を確保するために中距離Lidarと長距離Lidarを1つのルーフトップユニットに結合させた。同社はまた、新たに周囲の長さを計測するセンサーを開発した。これは車両の4カ所に設置する。これらの短距離Lidarは画像解像度と精度を高めるためのもので、近接物体感知と回避が必要になったときスピードを緩めるのに最も有用だ。

こうした短距離Lidarのアップグレードは、Waymoの自動運転車両を向上させるという野心以上のものとなっている。同社は2019年3月に短距離センサー(Laser Bear Honeycombというものだ)を自動運転車両以外の産業向けに販売する計画を発表した。

当時、Waymoは最初にロボティクス、セキュリティ、農業テクノロジーに照準を当てると言っていた。こうした販売はWaymoが自動運転テクノロジーをより早く展開し、また大量生産することでセンサーをリーズナブル価格にするのに寄与する、と同社のLidarチームの責任者Simon Verghese(サイモン・ベルギーズ)氏は昨年にMediumで書いている

WaymoはすでにLaser Bearユニット販売で売上を上げていると話したが、具体的な販売台数や販売先は明らかにしなかった。

画像クレジット: Waymo

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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