XPRIZEがカリフォルニアの火災問題に対するハイテクソリューションを募集中

カリフォルニア州では今年も山火事の季節が数週間後に迫っている。しかも今年は今まで以上に悪化することが予想されているのだ。そこで、火災が手に負えない状態になる前に発見することを支援しようとする新しい計画が立ち上がった。XPRIZEが山火事を迅速に発見し消火する技術に関する、公開コンペティションを開催するのだ。

ギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事とXPRIZE創設者のピーター・ディアマンディス(Peter Diamandis)氏が、金曜日にサンディエゴで開催されたNear Future Summitで発表したこのコンペティションは、世界中のあらゆる企業や発明家に開かれたものとなる。

「コンペティションは企業同士の1対1対決形式になります。そしてもし火災を繰り返し検知し消火することができる企業があったらなら、それが全ての農場や様々な場所に配備できる技術となるでしょう」とディアマンディス氏はステージ上で説明した。「人びと自身が危険に晒されてきた、旧来の消火活動形態を再発明しましょう」。

作家のジャック・ケルアック氏がデソレーション・ピークで住んでいたような、遠隔地の(そして衰退しつつある)火災監視所の代わりに、今回募集される野外消防士は、IoTデバイスや人工衛星によって、たとえ小さな煙や熱源も見逃さないものになるのかもしれない、おそらく狙った場所に精密にバケツの水をかけることができるドローンと組み合わせることになるのだろう。

XPRIZEコンペティションは重要な問題への新しいアプローチのために、外部投資を引き付けるように設計されており、その目標は誰にとっても解決するために何年もかかるような野心的なものである。これまでのところ、非営利団体であるXPRIZEは、数ある分野の中でも特に、宇宙飛行、医療、汚染除去に関する成果を成功裏のうちに支援してきた今回の消火プランは現在プログラム全体を支援するスポンサーを募集している最中で、既に計画を進めるための最初の50万ドルの支援を、Heritage Provider NetworkのCEOであるディック・マーキン(Dick Merkin)氏から調達済である。

このコンペティションが取り組んでいる問題は、ますます深刻なものになってきている。気候変動自然に燃える生態系へ接近してきた都市部の広がり、そして原野の火事を制限するための過度に成功した歴史的アプローチは、すべてここ数十年の、より大きくより被害の深刻な大火災の発生に寄与してきた。

現在カリフォルニアは、湿度の多い冬を経て、焚付にもってこいの新しい植物が生い茂っている。ちょうどそれらは乾燥しかけたところで、次の雷雨や、機械の火花、煙草の吸殻、もしくは故意の放火犯が登場すれば燃え上がる準備は整っているのだ。

もちろん、コンペティションの受賞者が大きな問題の全てを解決できるわけではないが、検知と素早い火災の抑制は、少なくとも人間が他のエリアに気を配る時間を稼ぎ、同時に州の大部分が灰燼に帰すことを防ぐ。

「2015年以降だけでも、私たちはカリフォルニアの有史以来最悪の10件に挙げられる破壊的山火事を経験してきました」とニューサム知事は強調した。「過去24か月を振り返れば、そのようなニュースの見出しが溢れています…私たちは1万6600件の山火事で、139人の命を失いました。この州で失われた建造物は3万2000軒以上です。これらの被害のコストの算出はいまだに終わっていません。現在パラダイス(カリフォルニア州の山麓の町の名前)にあるゴミの除去費用だけでも…30億ドル近くに近付いているのです」。

一方、州内の他場所と同様に、消防インフラストラクチャは前世紀の半ばの状態から大きく変わっていない。

Gavin Newsom at the near future summit

「つまり、私たちはいまだに昔の監視手段を森の中に持ち出そうとしているのです」とニューサム知事は続けた。「カリフォルニア州にはまだアナログの911システムがあります(米国の911は日本の110と119を合わせたような緊急電話番号)。そして234箇所のCal Fire森林ステーションが設置されています。それらの半数以上が築50年以上であり、あるものは老朽化したり、崩壊しています。人びとを事前にそれらに配置しておくこともできません。こうした対応がどれほど時代遅れなのかを言い表すのはとても難しいことです、第一対応者たちは目覚ましい仕事を成し遂げますし、世界中から寄せられる相互援助の素晴らしさはどこにも負けることはありません。しかし、私たちは単に事が起きてしまった後ばかりに、そのヒロイズムを祝うべきではないのです。事が起きてしまう前でこそ、ヒロイズムと創意工夫を祝うべきなのです」。

ディアマンディス氏は、コンペティションの勝者が提供するかもしれないアイデアをさらにいくつか提供した。

「この500エーカー(約2平方キロメートル)の森林地帯の中では、キャンプファイアの10倍の大きさの炎が上がっていてはいけないということは判断できる筈です…。もし何かが、衛星やドローンから赤外線によって検知されて、それが先の基準よりも大きいものだと判断されたら、すぐに消火するのです。それも自律的に。XPRIZEのコンセプトは火災検知と消火です。火災が広がる前に発見して消火することができるでしょうか?実際の消火はどのように行われるのでしょう。ドローンそれとも放水砲?一体誰がわかるでしょう?そうしたものが私たちの望みですし、皆さんと協力して進めたいことなのです。ここには十分なテスト施設が存在しています」。

彼とニューサム知事はまた、問題の経済的な観点と物理的な近さにも焦点を当てた。裕福でテクノロジーに焦点を当てたNear Future Summitへの参加者の中には、(私の知る限り)山火事の危険に晒されているイーストベイヒルズ(バークレーからディアブロ山付近を指す)に住んでいる人たちもいる ―― そのことは今回のコンペティションに対する資金調達の追い風になるだろう。

「野生都会境界(WUI:wildland-urban interface。未開地と都会の間の中間地)に住む人たちは保険でカバーされなくなって来ています」とニューサム知事は述べた。「1100万人のカリフォルニア州民が、このWUIに住んでいます。免責額は上昇し、保険料も上がっています、そして単純に保険を更新できない場合も出てきているのです。なぜなら保険会社はもうこれ以上被害をカバーすることができないからです」。

州知事はまた、最初の州予算を発表した際には、火災対策計画に関する他の手段(個別の家の防火工事に対する補助金支給)に関する議論で忙しくしていた。ここで語られたコンペティションは、その意味で納税者のお金を節約する便利な方法だ。そしてもし成功すれば、それはまた、世界の他の多くの火災の発生しやすい地域のための解決策を生み出す可能性もあるだろう。

画像クレジット: Vibro1 (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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