ドイツ下院が無人運転車の公道走行にゴーサイン、2022年までに全国で

ドイツでは2022年までに無人運転車の公道走行を可能にする法案が採択され、企業が同国内でロボタクシーや配送サービスを大規模に展開する道筋が示された。同国では現在、自律走行テストが認められているが、今回の法案により、人間の安全管理者が運転席にいないドライバーレスカーの運行が可能になる。

現地時間5月20日、ドイツの下院である連邦議会(Bundestag)で可決されたこの法案は、特にレベル4の自律性を持つ車両を対象としている。レベル4の自律性とは、SAE(Society of Automobile Engineers、自動車技術者協会)が定めた指定基準で、一定の条件や環境下でコンピュータがすべての運転を行うことを意味する。ドイツでは、これらの車両は地理的なエリアに限定される。

「将来的には、自律走行車は定常的に運行される公共の道路交通の指定された運転エリアにおいて、物理的に存在するドライバーなしで全国的に走行できるようになるべきである」と法案には書かれている。「これらの技術の可能性を引き出し、社会が参加できるようにするために、連邦政府は、対応するシステムを実使用環境に導入するためのさらなるステップが必要であると考えている」とも。

この法案はまだ、上院(連邦参議院、Bundesrat)を通過しなければならない。この法案には、ドイツの道路で自動運転車が最初に使用される可能性のある用途として、公共交通機関、ビジネスや供給のための移動、物流、従業員の交通手段となる会社のシャトルバス、医療センターや老人ホーム間の移動などが含まれている。

企業がドイツで商用の無人運転車を運行するには、賠償責任保険の加入や、自律走行を遠隔操作で停止できるようにするなど、さまざまなルールを遵守する必要がある。

すでにドイツでテストを行っている企業は、欧州最大の経済規模を持つ同国で優位に立てるかもしれない。例えばArgo AI(アルゴAI)は、ミュンヘン空港のイノベーションセンター「LabCampus」で自律走行車のテストを行ってきた。2020年6月にはバイエルン州の州都である同都市に欧州本部を開設し、2021年夏にはフォルクスワーゲンと共同で試験サイトを開設し、自動運転対応EVバン「VW ID.Buzz」のテストを行う予定だ。また、インテルの子会社であるMobileye(モービルアイ)も、ドイツでAVのテストを行っている

米国のいくつかの州や他の国では、テストや潜在的な商業展開に関する規制がある。先週、中国のロボタクシー企業であるPony.ai(ポニーエーアイ)は、カリフォルニア州で無人運転車のテスト許可を得た8番目の企業となった。Nuro(ニューロ)は同州の公道で商業運転ができる展開許可を得ている唯一の企業だ。一方中国でも、Alibaba(アリババ)が出資するAutoXなどの企業が公道でのドライバーレスフリートのテストを行っている。ドイツの法案はテストを超えて、通常の交通に無人運転を統合する方向に進んでいる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ドイツ自律運転

画像クレジット:Volkswagen Commercial Vehicles

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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