Ecosiaが検索による広告収益をグリーンエネルギーに投資

非営利的な検索エンジンであるEcosia(エコシア)は、ユーザーの検索結果に対して得られる広告収入の一部を、再生可能エネルギー分野のスタートアップ企業に提供することを始めた。

これは、Ecosiaが気候変動に注力するスタートアップ企業を支援するために、2021年立ち上げた3億5千万ユーロ(約456億円)の「WorldFund(ワールドファンド)」に追加されるものだ。

Ecosiaは、検索による広告収益で植林のための資金を寄付する活動も続けている(この活動は、Ecosiaの活動として最もよく知られている)。しかし、ベルリンを拠点とするこの検索エンジンは、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされたエネルギー危機を受け、グリーンエネルギーへの投資に「継続的に取り組む」ことにしたと語っている。

その最初の投資対象はドイツに焦点を当てている。特にロシアからのガス購入に依存しているドイツは、その経済がウクライナ危機の影響を大きく受けていることを意味する。

この戦争はすでに、世界に化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させる新たな原動力を生み出している。気候危機に経済危機が重なったことで、再生可能エネルギーへの需要が急増する可能性がある。

しかし、化石燃料の利権者たちは、グリーンエネルギーへの急速な移行を阻止するため、すぐに反論を展開し、西側諸国が石油やガスの利用を進め、地球上の生命をより早く焼き尽くしてしまうように、ロビー活動を行っている。つまり、投資家が再生可能エネルギーに小切手を切ることに急ぐ理由には事欠かないというわけだ。

Ecosiaは、スタートアップ企業や自然エネルギーの取り組みに資金を提供するため、まずは2700万ユーロ(約35億円)を用意したという。その初期の投資の対象となるのは、ベルリンのスタートアップ企業であるZolar(ゾーラー)の供給ネットワークだ。Zolarは太陽光発電システムの設置を希望する顧客と、地域の計画・設置事業者を結びつけるプラットフォームで、ドイツ中の家庭へグリーンエネルギーを普及させることに貢献している。

Ecosiaは、Zolarの地域ソーラー販売ネットワークを通じて、小型ソーラーシステムにすでに2000万ユーロ(約26億円)を投資したと述べている。同時に、ドイツ全域でその他の再生可能エネルギープロジェクトにも投資を行っているという。

「現時点では、我々はドイツ全域の再生可能エネルギープロジェクトを支援しています。再生可能エネルギーへのさらなる投資は、Ecosiaが地域自然エネルギープロジェクトや起業家からの提案を評価した上で、他の国でも行われる可能性があります」と、広報担当者は筆者に語った。

Ecosiaのグリーンエネルギー投資の目標は、より多くの企業が再生可能エネルギーに投資することを促し、化石燃料を地中に埋めたままにしておくことがかつてないほど急務となっている今、再生可能エネルギーへの移行を加速させることであると、広報担当者は付け加えた。

Ecosiaの広報担当者は「再生可能エネルギーへの投資を、気候変動に留まらない規模に拡大したいと考え、助言を求めている企業や、欧州の化石燃料への依存度を下げるという意味で変化をもたらすグリーンエネルギーのアイデアを持つ起業家やコミュニティのプロジェクトリーダーは、当社のエネルギーチームに連絡してください」と述べ、最高執行責任者のWolfgang Oels(ウルフガング・オールズ)氏がこの取り組みを指揮していることを強調した。

Ecosiaは、検索による広告収入の投資先をさらに多様化し、将来的には再生可能農業も視野に入れることを示唆している。ただし、現時点では、グリーンエネルギープロジェクトに重点を置いていることは変わらない。

植林と再生可能エネルギーへの投資をどのように分配するかという質問に対して、Ecosiaは、エネルギー資金は応募者の能力次第であるため、正式な分配は行わない、つまり収益の分配は毎月ケースバイケースで決定されると答えた。

広報担当者によれば、Ecosiaは月次の財務報告書で「いつ、どのように」投資を行うか、利益の分配を公表するという(これは従来からの植林への寄付も同じだ)。

幅広い気候変動技術に注力し、資金調達を希望するスタートアップ企業は、Ecosiaの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏がベンチャー・パートナーを務めるWorldFundに売り込むことをお勧めしたい。これまでWorldFundは、植物由来ステーキをてがけるスタートアップ企業のJuicy Marbles(ジューシー・マーブルズ)や、植林のためのフィンテック企業であるTreeCard(ツリーカード)、カカオを使わないチョコレート代替品を作るQoa(コア)などに出資してきた。

画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドイツがカスペルスキーの利用を控えるよう警告、ロシアの侵攻で「相当程度」のサイバーリスク

ドイツ連邦情報セキュリティ局(BSI)は、ロシアによるウクライナでの戦争が続く中、カスペルスキー・アンチウイルスソフトウェアがサイバースパイに利用されたり、サイバー攻撃を仕掛ける恐れがあるとして、さまざまな組織に対して警告を発した。

当局はカスペルスキーの使用を明確に禁止したわけではないが、ドイツのさまざまな組織に対し、モスクワに本社を置く同社製の製品を、ロシア以外のベンダーの代替ソフトウェアに変えるよう促した。また、ロシアのウクライナにおける軍事・情報活動や、その欧州、NATO、ドイツへの脅威は「IT攻撃が成功するリスクが相当程度ある」ことを意味していると警鐘を鳴らしている。

「ロシアのITメーカーは、自ら攻撃的な作戦を実行したり、意に反して標的とするシステムへの攻撃を強いられたり、それとは知らずにサイバー作戦の犠牲者としてスパイされたり、その会社の顧客に対する攻撃の道具として悪用される可能性がある」とBSIは声明で述べた。また、カスペルスキーなどのアンチウイルスソフトはシステムに深くアクセスするため、そのメーカーは自社のサーバーへの接続を暗号化し、検証不可能な状態で恒久的に維持するはずだと説明した。「セキュリティに特別な関心を持つ企業や当局、重要なインフラの運営者は特に危険にさらされている」とも述べている。

BSIは、攻撃が成功した場合、消費者が「最後の標的」になる可能性が高いものの「巻き添え」被害や波及的に被害者になる可能性もあると付け加えた。

BSIはこの警告を「起こりうる危険に対する認識を高めることのみが目的」だとしたが、すでにドイツの組織、例えばサッカークラブのEintracht Frankfurt(アイントラハト・フランクフルト)などが、カスペルスキーとの関係を断つに至っている。「私たちはカスペルスキーの経営陣に対し、スポンサー契約を直ちに終了することを通知しました」とクラブの広報担当社であるAxel Hellmann(アクセル・ヘルマン)氏はプレスリリースで述べた。「我々はこの展開を非常に残念に思っています」。

イタリアのコンピュータセキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)も、カスペルスキーについて明確には言及していないが、ロシア企業やロシアとつながりのある企業から提供されているテクノロジーを緊急にリスク評価するようさまざまな組織に呼びかけている

カスペルスキーは、BSIの決定は、同社製品の技術的な評価に基づくものではなく、政治的な理由に基づくものだと考えていると述べた。

カスペルスキーの広報担当者であるFrancesco Tius(フランチェスコ・ティウス)氏はTechCrunchに対し「私たちは、パートナーや顧客に対して、製品の品質と完全性を保証し続けるとともに、BSIの決定について明らかにし、同社や他の規制当局の懸念に対応するための方法を模索するつもりです」と述べている。「カスペルスキーは民間のグローバル・サイバーセキュリティ企業であり、民間企業として、ロシアやその他の政府とは関係がありません」。

「私たちは、平和的な対話が紛争を解決する唯一の可能な手段であると信じています。戦争は誰にとっても良いものではありません」と同社は付け加えた。

この声明は、同社のCEOであるEugene Kaspersky(ユージン・カスペルスキー)氏の同様のコメントに続くものだ。同氏は2022年3月初め「歩み寄り」につながる交渉を歓迎するとツイートし、怒りの反応を引き起こした。ロシアでは最近、ウクライナにおけるロシア政府の軍事作戦を「戦争」または「侵略」と呼ぶことをジャーナリストに禁じる法律が施行されたが、これがロシアに拠点を置く企業に適用されるかどうかは不明だ。

カスペルスキーとロシアとのつながりは以前から知られているが、長い間論争の種となってきた。トランプ政権は2017年、同社とロシア政府とのつながりが疑われることを懸念して、政府機関がカスペルスキーのソフトウェアを使用することを禁止した。翌年には欧州議会が、同社とロシア情報機関とのつながりが疑われることから、同社のソフトウェアを「悪質」と分類する決議を採択した

画像クレジット:Andreas Rentz / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

インテル、2.2兆円投じてドイツに半導体工場を建設

Intel(インテル)は今後10年間で欧州に最大800億ユーロ(約10兆3600億円)を投資する一環として、ドイツに半導体工場を建設する計画を明らかにした。ザクセン・アンハルト州の州都マグデブルクに建設する施設の初期費用は170億ユーロ(約2兆2020億円)だ。

「メガサイト」と呼ばれるこの施設は、実際には2つの工場で構成される。欧州委員会の承認が得られればIntelは直ちに企画を開始し、2023年前半には建設が開始される。同社が「シリコン・ジャンクション」と呼ぶこの工場での生産開始は2027年が見込まれている。このため、この工場がすぐに世界的なチップ不足を補う助けになることはない。

同社によると、この2つの工場では同社最高級のオングストローム世代のトランジスタ技術を使ったチップが製造される。工場建設期間中に建設従事者7000人の雇用、3000人の常用雇用、そしてパートナーやサプライヤー全体でさらに数千人の雇用を創出する見込みだ。

この他にも、Intelはアイルランドのレイクスリップにある工場の拡張に120億ユーロ(約1兆5550億円)を投資する予定だ。製造スペースが2倍になり、ファウンドリーサービスも拡大される。同社はまた、イタリアに最大45億ユーロ(5830億円)を投じて組立・梱包施設を建設することについても協議している。

Intelは、フランスのプラトー・ド・サクレー近郊に欧州の研究開発拠点を建設する計画だ。それにより、1000人の雇用を創出し、そのうち450人は2024年末までに募集が始まる。同社は、欧州の主要ファウンドリ設計センターもフランスに設置することを目指している。さらに、ポーランドとスペインにも投資を行う予定だ。

この計画は「欧州におけるIntelの生産能力の大幅な拡大により、グローバルの半導体サプライチェーンのバランスをとることを中心に据えている」と同社は話す。欧州連合は2月、将来のチップ不足を防ぎ、アジアで製造される部品への依存度を下げることを目的とした490億ドル(約5兆7970億円)の取り組みを発表した。

「EU半導体法は、民間企業と政府が協力して半導体分野における欧州の地位を飛躍的に向上させる力を与えます。この幅広い取り組みにより、欧州の研究開発のイノベーションが促進され、世界中の顧客とパートナーに利益をもたらす最先端の製造業がこの地域にもたらされます」とIntelのCEO、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)は述べた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Intel

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(文:Kris Holt、翻訳:Nariko Mizoguchi

チップ不足対策でBoschが約340億円を追加投資、半導体の生産拡大へ

Bosch(ボッシュ)は、現在進行中のチップ不足に対応するため、以前から表明していた半導体生産への投資を拡大する。同社は2021年、2022年に4億7300万ドル(約545億円)を投資すると発表したが、さらに2億9600万ドル(約340億円)を新たな製造設備に投資する。

2021年の資本のほとんどは、ドレスデンにある同社の新しい300ミリウェハー製造施設に充てられ、12月に生産を開始したシュトゥットガルト近郊のロイトリンゲンには約5700万ドル(約65億円)が振り向けられた。今回の新たな資金はほぼロイトリンゲンに充てられ、2025年までに新しい生産スペースと計4万4000平方メートルの近代的なクリーンルームを建設する予定だ。この動きは、自動車市場と家電市場の両方で半導体とMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)センサーの需要が拡大していることに対応するものだ。

Boschの取締役会メンバーでMobility Solutions事業部門会長のMarkus Heyn(マルクス・ハイン)氏は「Boschはすでに自動車用チップのトップメーカーです。そして、この地位をさらに強固なものにしていくつもりです」と述べた。

(クリーンルームは、空気中に浮遊する粒子、温度、照明、騒音、気圧などの環境要因を厳密に制御できるよう特別に建設される密閉された場所だ。Boschの半導体は、他の多くの半導体と同様、炭化ケイ素でできているため、製造プロセスには絶対的な清澄性が求められる。シリコンは砂の中に含まれており、製造に使用する前に精製する必要がある。この工程は非常に精密で、ほんのわずかな塵でもまずいタイミングでチップに付着すると、完全にダメになってしまう)

Boschの取締役会会長Stefan Hartung(シュテファン・ハートゥング)博士は「当社はロイトリンゲンにおける半導体の製造能力を計画的に拡大しています」と声明で述べた。「新たな投資は、当社の競争力を強化するだけでなく、顧客にも利益をもたらし、半導体のサプライチェーンにおける危機を克服する一助となるでしょう」。

ロイトリンゲンのウエハー工場では、6インチと8インチのウエハーを生産する予定だ。6インチウエハーは現在、8インチや12インチほど使われていないが、このプロセスにより、LEDやセンサーなどの半導体製品の生産コストを削減することができる。2019年から特に8インチのウエハーが不足しており、これらは主にセンサーやMCU、無線通信チップといったものに使われている。ロイトリンゲンの拡張は、自動車や消費者部門でのMEMs(微小電子機械システム)や、炭化ケイ素のパワー半導体の需要増に応えるものだとBoschは話す。

同社のドレスデン工場では、CPU、ロジックIC、メモリーなどの高性能製品の製造に使用される12インチシリコンチップをより多く生産する予定だ。

「コネクティビティと組み合わせたAI手法により、製造における継続的なデータ駆動型の改善を実現し、それによってより良いチップを生産しています」とハイン氏は述べた。「これには、欠陥の自動分類を可能にするソフトウェアの開発が含まれます。また、BoschはAIを利用してマテリアルフローを強化しています。高度な自動化により、ロイトリンゲンのこの最先端の製造環境は、工場の未来とそこで働く人々の雇用を守ることになるでしょう」。

Boschはまた、既存の電力供給施設を拡張し、追加のメディア供給システム用の建物を建設する計画だ。新しい生産エリアは2025年の操業開始が見込まれている。

画像クレジット:Robert Bosch GmbH

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブティックホテルテックプラットフォームNUMAがポストパンデミックでのノマドな労働力ニーズに応える約51.9億円調達

米国を拠点とするSonderは、テクノロジーを駆使したホスピタリティを提供する企業だ。同社は5億2960万ドル(約611億8500万円)を調達した。リモートワークにより人口の移動が圧倒的に多くなったポストパンデミックな世界で、このグローバルでノマドな労働力ニーズに応えるため、同様の事業者が資金調達を行っている。

私たちがNUMA Group(NUMAグループ、当時の社名はCosi)を取りあげたのは、2019年に同社がブティックホテルに代わる「フルスタック」のホスピタリティを提供するために500万ユーロ(約6億5800万円)を調達したときだった。その後、2000万ユーロ(約26億3400万円)を調達したときにも取り上げた。

今回、NUMA GroupはDN Capital Group(DNキャピタル・グループ)(以前はAuto1、HomeToGo、Shazamも支援していた)が主導するラウンドで成長資本として4500万ドル(約51億9800万円)を追加調達した。この投資の共同リードはHeadline(旧eventures)である。また、Cherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)、Soravia(ソラヴィア)、Kreos Capital(クレオス・キャピタル)、TruVenturo(トゥルーベンチュロ)、Scope Hanson(スコープ・ハンソン)が参加している。

NUMAはベルリン、ミュンヘン、ローマ、ミラノ、マドリッド、バルセロナ、ウィーンで約2500室のブティックホテルを提供。投資家、不動産所有者、デベロッパー、ホテル経営者と提携し、テクノロジーを駆使した部屋を構築している。このプラットフォームは、ビジネスプロセスの自動化、インテリジェントな価格設定、稼働率の向上を通じて、ホテル経営者の利益を増大させるように設計されている。ドイツに本拠を置くNUMAグループは、2021年にスペイン、イタリア、オーストリア、チェコ共和国に進出した。

NUMAグループのCEO、共同創業者であるChristian Gaiser(クリスチャン・ガイザー)は「私たちの明確な目標は、NUMAをヨーロッパのまったく新しいホテルの時代における、圧倒的なテクノロジーと創造的なソリューションのプロバイダーとして確立することです。NUMAは、パンデミックを利用して、ビジネスモデルの回復力を証明しました。NUMAのコンセプトと独自の技術を使って、新型コロナにもかかわらず500%の収益増と85%の予約占有率を達成したのです」と述べている。

NUMAがSonderと大きく異なる点は、宿泊客から見て、NUMAはより幅広い層を対象としていること(Sonderはより高い価格帯にフォーカス)だ。さらに「NUMA go」という「技術フランチャイズ」ソリューションを開始し、売上の一定割合を条件に、NUMAの技術スタックをサードパーティのホテル経営者に提供していることだ。

DN Capital Groupの創設者兼マネージングパートナーであるNenad Marovac(ネナド・マロヴァチ)氏は「我々はNUMAの戦略、業績そして非常に厳しい市場環境下での一貫した拡大に非常に感銘を受けています。NUMAを支えるチームは、新型コロナにもかかわらず、一貫して高い稼働率と部屋の持続的な収益性を達成しています。NUMAのビジネスモデルは、不動産パートナーやオペレーターにとって魅力的なリスクリワードプロファイルを提供し、そして最も重要なことは、現代の旅行者にまったく新しい旅行体験を提供することです」と述べている。

画像クレジット:NUMA Group

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ドイツの金融スーパーアプリVivid Moneyが評価額約1020億円で130億円調達、欧州全域で展開へ

50万人の顧客を持つベルリン発のチャレンジャーバンクVivid Money(ビビッドマネー)は、基本的な当座預金と資金管理のサービスに加え、株式や暗号資産投資も扱う金融ワンストップショップの「スーパーアプリ」として有名になった。そしていま、同社はプラットフォームにサービスを追加し、欧州全域で事業を展開しようと、1億ユーロ(約130億円)を調達した。同ラウンドはGreenoaks Capitalがリードし、Ribbit Capitalと新規投資家のソフトバンク・ビジョンファンド2が参加した。

今回の資金調達でのVividの評価額は7億7500万ユーロ(約1020億円)だ。参考までに、この数字は同社が6000万ユーロ(約79億円)を調達した2021年4月の前ラウンド時の評価額(約473億円)の2倍以上だ。また、この間にユーザー数は5倍、売上は25倍になったという。Vividはプラットフォームへの預け入れ総額や取引件数など詳細については公表していないが、Vividの共同創業者であるAlexander Emeshev(アレクサンダー・エメシェフ)氏は、2022年中にユーザー100万人達成を目標としている、と述べた。

Vividは現在、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアの4つの市場で事業を展開しており、2022年中に新たに5つの市場に進出し、2023年末までに欧州全域で利用できるようにする計画だ。新商品としては、保険商品の展開が初期段階にあり、エメシェフ氏によれば、2022年後半に初のクレジット商品を導入する予定だ(Vividは現在、ユーザーにVisaデビットカードを提供している)。

2020年にスタートしたVividは「COVIDネイティブ」のスタートアップと言えるかもしれない。モバイルファーストのサービスは、従来の銀行や投資サービスからすでに遠ざかっていただけでなく、パンデミックのために自宅で過ごす時間が増え、金融面の管理方法を再考していた30代のユーザーに訴えるものだった。

他の多くのネオバンクと同様、Vividの基本となるフリーバンキングは、他のプロバイダー(Vividの場合は、ドイツの組み込み型金融の大手Solarisbank)のインフラの上に構築されている。顧客が目的に応じて資金を最大15個の「ポケット」に分けることができ、ポケット間の移動も簡単にできるなど、よりカスタマイズされた資金管理サービスやその他のパーソナリゼーションサービスを加えている。

こうした基幹サービスとともに、暗号資産やETF(上場投資信託)などの新しい取引形態の金融サービスの波も押し寄せてきており、Vividはこれらも取り込むつもりだ。

Vivid Moneyのもう1人の共同創業者であるArtem Iamanov(アルテム・アイアムノフ)氏はインタビューで「当社のビジョンは、投資と貯蓄の巨大市場であるヨーロッパ大陸をターゲットにすることでした」と語った。「我々は、分散型金融や他の種類の代替投資アプローチがブームとなっていて、それらが従来型の銀行の世界とあまりよくつながっていないことを知っていました」。

そのつながりのなさは、理解という点でだけでなく、消費者の金融生活全体が伝統的なプラットフォームに基づいているときに、新しいサービスに足を踏み入れる方法という点でもそうだった。

Vividのソリューションは、ユーザーが既存のフィアット口座を使って簡単に株式や通貨について学び、その後投資できるような一連のサービスを作ることだった。例えば、同社は現在50の暗号資産と3000の株式やETFを選択できるポータルを提供し、分散型金融の分野に慣れておらず、さまざまなことを試しているかもしれないユーザーにアピールするように設計されている(これらの新しい投資ビークルの中にはSPACもあり、Vividは欧州で一般消費者がこれらのビークルに投資できる数少ないプラットフォームの1つだ)。

「古いものと新しいものの間に大きなギャップがあることがわかったので、この2つの世界の間で交わる商品にユーザーがアクセスできるようなスーパーアプリを作ることにチャンスを見出しました」とアイアムノフ氏は話した。

Vividのプラットフォームでの投資は無料で、ユーザーが米国株に投資する場合など、為替レートやその他の手数料でVividは利益を得る仕組みになっている。また「Prime」(Amazonはどう思っているのだろう)として販売するサブスクリプションを設け、月額9.90ユーロ(約1300円)を払えば、ユーザーはそうした手数料を払わなくてもいいようになっている。

チャレンジャーバンクがひしめく市場で、Sequoiaの支援を受けたネオブローカーのTrade Republicなど、Vividと非常に近い競合相手もいるが、Vividの出資者は同社の牽引力と、新しい消費者投資家にアピールするオールインワンで簡単なアプローチにより、同社が事業を拡大するにつれ、ユーザーと利用が増えるだろうと考えている。

「Vivid Moneyはわずか1年余りで、すでに欧州で最も愛されている消費者向けバンキングプラットフォームの1つを構築し、ユーザーは金融生活全体を1つのアプリで管理できるようになりました。2021年投資して以来、Vivid Moneyの新製品開発のペースの速さを目にして感激しており、Vivid Moneyは既存ユーザーを喜ばせ、新規顧客を引き付け、プラットフォームの価値提案を深化させています」とGreenoaksのパートナー、Patrick Backhouse(パトリック・バックハウス)氏は声明文で述べた。「我々は消費者金融における革命のまだ初期段階にいると考えており、事業を拡大し続けるVividとのパートナーシップをさらに深化させることをうれしく思っています」。

画像クレジット:Vivid Money

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

フロントラインワーカーのためのチャット&人事アプリFlipがユーザー数100万人突破で約34.5億円を調達

共同創業者兼製品責任者のGiacomo Kenner(ジャコモ・ケナー)氏、CMOのAnn Kathrin Stärkel(アン・カトリン・スターケル)氏、創業者兼CEOのBenedikt Ilg(ベネディクトイ・ルグ)氏、CFOのGeorg Renz氏(画像クレジット:Flip)

世界の労働人口の8割以上約27億人はコンピューターの前で日々を過ごしていないため、テクノロジーに関しても格差が激しく、彼らをユーザーとして対象としたIT投資は1%程度と言われている。それが、スマートフォンやアプリの台頭で急速に変化しており、米国時間2月2日、その流れを受けてビジネスが好調なスタートアップの1社が、このチャンスに飛びつくべく、資金調達を発表している。

フロントラインで働く人々が互いにチャットしたり、マネジメントチームから連絡を受けたり、シフトの入れ替えなどの人事活動を行うためのコミュニケーションアプリを作っているFlip(フリップ)は、3000万ドル(約34億5200万円)を調達したそうだ。ドイツのシュトゥットガルトに拠点を置き、主にドイツ語圏のDACH地域(ドイツ・オーストリア・スイス)で利用されているこのスタートアップは、この資金を利用して、まずは英国をはじめとする新しい市場に進出する予定だと、CEO兼創業者のBenedikt Ilg(ベネディクト・イルグ)氏は述べている。

Notion Ventures(ノーション・ベンチャーズ)とベルリンのファンドHV Capital(HVキャピタル)が共同でこのラウンドをリードし、これまでの出資者であるCavalry Ventures(キャバルリー・ベンチャーズ)とLEA Partners(LEAパートナーズ)、そしてVolkswagen(フォルクスワーゲン)会長Matthias Müller(マティアス・ミューラー)氏をはじめとする多くの個人出資者が参加している。

Meta(メタ)のWorkplace、Microsoft(マイクロソフト)のTeamsCrew(現在はSquareが所有)、Blink(ブリンク)Yoobic(ヨービック)When I Work(ウェン・アイ・ワーク)Workstream(ワークストリーム)など、世界の労働者の同じ分野、そしてコミュニケーションに関する同じユースケースを対象としたアプリが市場に多数存在している。実際、2月2日、Snapshift(スナップシフト)という、主に人事側に焦点を当てたフロントラインの仕事アプリも資金調達を発表したばかりだ。

しかし、混戦のように見えるこの分野には、3つのことがいえる。第一に、この市場は十分に大きく、断片的であるため、長期的にいくつかの強力なプレイヤーが混在する可能性があるということ。第二に、この市場はまだかなり新しいので、各プレイヤーが進化や革新を遂げる可能性はまだたくさんあるということ(イルグ氏は、FlipのアプリがGDPRの規則に厳格に準拠していることが、他の企業がGDPRに準拠していると主張するも、実際には準拠していない際に、同社がビジネスを獲得するのに役立っていると述べている)。また、かなり基本的な部分でも、同社はユーザーインターフェースや操作性だけでなく、アプリのサイズ、携帯電話上で占有する容量、使用するために必要な帯域幅など、アプリを使いやすくしている。

「私はFlipを始める前にPorsche(ポルシェ)で製造の仕事をしていたので、マネジメントとのコミュニケーション不足など、その気持ちはよくわかります」とイルグ氏はいう。「私たちは、画面数も少なく、ダウンロードして使用することに関して、この分野で最もシンプルなアプリケーションです。これが、エンドユーザーのために私たちが作って提供したい製品の精神です」。と語る。

そして三つ目は、成功のためにはクリティカルマスが重要だとすれば、Flipは実際に前面に躍り出ているということだ。

McDonald’s(マクドナルド)、Rossmann(ロスマン)、Edeka(エデカ)、Magna(マグナ)、Mahle(マーレ)など、現在までに200社、約100万人のユーザーを獲得している。パンデミックにより、最前線で働く人たちが突然、人々の意識の中心に現れた瞬間、Flipの収益は急上昇し、2021年は6倍になったとイルグ氏は語った(このスタートアップは、実際の収益や評価額を公表していない)。

この分野を追っている人は、先々週、WorkplaceがMcDonald’sを顧客として発表することを望んでいたものの、それを控えていたという話を書いたことに気づいたかもしれない。FlipのMcDonald’sとの契約人数は、現在約6万人。McDonald’sはすでにFlipと公の場で協働していることを考えると、Workplaceとの契約がどうなるかは興味深いところだ。いずれにせよ、この案件がいかに大きな意味を持つかは明白である。

今日のアプリは、主に雇用主が、日中動き回っている、通常は1つの場所で働くことのない、より広範囲の従業員とコミュニケーションをとるために使用されている。また、従業員同士も、主に生産性向上のために、シフト交換や給与明細の確認など、コミュニケーションをとるためにアプリを使うが、仕事に直接関連する機能を実行するために使うわけではない。この分野は、Yoobicのようなライバルが機能を構築している分野であり、イルグ氏は、Flipもその可能性を検討し始めていると述べた。

Notion VenturesのJos White(ヨス・ホワイト)氏は「Flipは、デスクを持たない社員1人ひとりが、自社のコミュニケーションプロセスに真に参加する機会を提供します。このような社員を積極的に取り込むことには、大きな可能性があります。Flipが英語圏の市場で拡大する際に、我々の専門知識と経験でサポートできることを楽しみにしています」と声明で述べている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

サーバーレスのデータ基盤ツールで非構造化データセットを解決する独Tiloがプレシード調達

一般的に企業内で使用されるデータセットは、ほとんどの場合さまざまなソースから、さまざまな非構造化形式で提供されている。それらを結びつけることは、非常に大きな頭痛の種になり得る。しかしそれができれば、特に金融分野では、不正行為の検知やKYC/AMLチェックなど、さまざまなメリットがある。これは特に金融機関が直面する問題だが、新型コロナウイルスの接触者追跡調査や一般的なビジネスインテリジェンス分野でも役に立つ可能性がある。

現時点で使用されている主なプラットフォームは、Neo4j、Senzing、またはAWSのNeptuneなどだ。あるいは、企業はElasticsearch(エラスティックサーチ)を使って独自のソリューションを構築しようとしている。だが、解決すべき大きな問題であることに変わりはない。

大企業からスピンアウトして理論を検証してきたベルリンの新しいスタートアップが、この難しい問題を解決しようとしている。

Tiloのデータ基盤ツール「TiloRes」は、サーバーレスでありながら、ほぼリアルタイムで大規模なデータマッチングを可能にすることで、企業が異なるソースやフォーマットのデータポイントをマッチングさせるのに役立つとしている。

Tiloは今回、欧州のVCであるPeak Capitalが64万ユーロ(約8300万円)を出資してリードしたプレシードラウンドで、120万ユーロ(約1億5500万円)のプレシード資金を調達した。今回の資金調達には、ベルリンを拠点とするTiny VC(Philipp Moehring、フィリップ・モエリング氏)、First Momentum Ventures、Enduring Venturesの他、Algoliaの創業者やContentfulの元CMOなどのエンジェル投資家が参加している。

Peak Capitalの投資先には、グローバルオークションマーケットプレイスのCatawiki、ヘッドレスコンテンツ管理システムのGraphCMS、オムニチャネルコミュニケーションプラットフォームのTrengoなどがある。

Tilo は、KYC/AML用のアプリケーションに加えて、新型コロナの接触者追跡調査に携わるすべての組織に、同社のソリューションを無料で提供する予定だ。

2021年11月に設立されたTiloは、企業やスタートアップとともにパイロットプロジェクトを開始した。Tiloのビジネスモデルは、企業がTiloResで処理するデータ量に応じてライセンス料を徴収するというもの。サーバーレスであるため、使用量に応じてコストが変動し、サーバーベースのソリューションよりも安価に利用できる。

Gartner(ガートナー)によると、Tiloが挑戦する市場は大きく、650億ドル(約7兆4740億円)の規模があると言われている。

TiloのSteven Renwick(スティーブン・レンウィック)CEOはこう述べている。「当社の最大の強みは、データがどれだけ増えても、エンティティがどれだけ複雑になっても、データの検索、照合、評価(例:オンライン決済プロセスにおける不正行為のチェック)がほぼリアルタイムで行われることです。これは、ほぼ常にリアルタイムの応答速度が求められる現代のニーズにとって重要なことです」。

Tiloの創業チームであるCEOのレンウィック氏、CTOのHendrik Nehnes(ヘンドリック・ネネス)氏、CDOのStefan Berkner(ステファン・ベルクナー)氏は、以前はドイツの消費者信用調査機関であるRegis24の技術チームだった。しかし、Regis24は彼らのソリューションをスピンアウトさせ、このスタートアップに戦略的に出資することに合意した。

PeakのDACH地域(ドイツ・オーストリア・スイスのドイツ語圏)責任者であるMadeline Lawrence(マデリン・ローレンス)氏は次のようにコメントしている。「正直なところ、最初は Tiloが何を解決しようとしているのか分かりませんでした。そして、私たち自身がデータマッチングに苦労していることに気づきました。CRMの重複やスペルの違いが私たちの頭痛の種になっているとしたら、さらにリスクが高く、ニーズがリアルタイムで、問題となるデータの規模が桁違いに大きい場合の苦痛を想像してみてください」。

画像クレジット:Tilo Team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

産業用ロボットのノーコードプログラミングを実現する独Wandelbotsが新たに約95.7億円調達

ドイツのドレスデンを拠点とするWandelbotsは、2017年にDisrupt Berlinのステージに登場して以来、数年の間に健全な額を調達してきた。ノーコードのロボットソフトウェア企業である同社は2018年には680万ドル(約7億7000万円)を調達し、コロナ禍が製造業を一気にスローダウンさせたことで自動化への期待が高まっていた2020年6月には、3000万ドル(約34億2000万円)を調達した。

中央ヨーロッパ時間1月25日、同社は8400万ドル(約95億7000万円)のシリーズCを調達したことを発表し、これにより累計資金調達額は1億ドル(約113億9000万円)を軽く超えた。今回のラウンドはInsight Partnersがリードし、83North、Microsoft(マイクロソフト)、Next47、Paua、Atlantic Labs、EQTなどの既存の投資家が参加している。

Wandelbotsのミッションは一見シンプルなもので、多くの企業がこの分野での解決を目指している。ロボットのソフトウェアレイヤーは、工場でロボットを導入する際の参入障壁をどうしたら下げられるのか。具体的には、多くの外部サポートや多額の資金、ロボットのコーディングノウハウを必要とせずに、企業がロボット軍団を実装するにはどうすればよいのか。同社のソリューションは「TracePen」と呼ばれるインタラクティブなティーチングシステムで、このツールを使い人間のインストラクターが模倣すべき動作をデモンストレーションし、ロボットを訓練する。その後、ソフトウェア上で動作を微調整することができ、コーディングは不要だ。

「Wandelbotsのミッションが現実のものとなったことを大変誇りに思います」と、共同設立者兼CEOのChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏はリリースで述べている。「当社のプラットフォームは、人間中心のロボットソリューションを業界で加速させるのに役立っていくことでしょう」。

画像クレジット:Wandelbots

今回の資金調達は、同社がロボットティーチングソフトウェアの開発者コミュニティの構築に取り組んでいる中で実施された。具体的には、開発者がWandelbotsプラットフォーム上で独自のティーチングアプリケーションを作成できるようにすることを目指している。Wandelbotsは現在、BMWやVWなどの顧客にロボットを提供しているUniversal RobotsやYaskawaを含む、より幅広いシステムとの相互運用性の実現にも取り組んでいるという。

またWandelbotsは、追加の雇用を行い、米国やアジアなどの市場にグローバルな事業を拡大する予定だ。

画像クレジット:Wandelbots

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

中小企業にクレジットカードを提供する支出管理プラットフォーム「Moss」が約97.8億円調達

ベルリンのMossが今週初めに、8600万ドル(約97億8000万円)のシリーズBを発表した。同社は中小企業にクレジットカードを提供して、支出管理が容易にできるようにする。

このラウンドによりMossの評価額は5億7300万ドル(約651億3000万円)に達した。Tiger Global ManagementがこのシリーズBをリードし、A-Starが参加した。合わせて同社の調達額は総額で1億5000万ドル(約170万5000円)近くとなった。

Mossは、支出管理のプラットフォームだということができる。ヨーロッパの競合他社は、SpendeskPleoSoldoなどだ。Mossの強みは、デビットカードでなくクレジットカードを提供していることだ。取引は各決済の数秒後にMossのダッシュボードに表示される。

カード本体だけでなく、従業員はオンライン決済のためのバーチャルカードを作ることができる。何かを買うたびに、Mossの顧客はすべての支出に0.4%の割引がある。

これなら、小さな会社でも1枚のコーポレートカードですべての経費を共有する必要がない。チームリーダーは、従業員ごとに予算を設定し、より簡単に経費を把握することができる。

従業員自身にとっても、ヨーロッパではコーポレートカードはそれほど一般的ではない。Mossに切り替えることで、従業員の経費を自己負担する必要がなくなる。Mossのカードで決済し、レシートを添付すればいい。また、カード決済ができないレストランでは、現金での経費精算もMossで行うことができる。

カード決済以外にも、すべての請求書をMossアカウントで一元管理することで、Mossに頼ることができる。Mossのユーザーは、承認ルールを設定し、ビジネス銀行口座の支払いリストをエクスポートすることができる。

最後に、Mossは、ドイツ市場で人気の会計ソフトであるDatevと統合しているため、会計業務をスピードアップすることができる。今後、このスタートアップは、製品をさらにモジュール化する予定だ。すべてを必要としないのであれば、支出管理スタック全体を使用する必要はないだろう。

Mossは、全体で25万件の取引を処理し、2万枚のカードを発行している。製品はドイツとオランダで提供されている。同社は現在、英国への進出を計画している。

画像クレジット:Moss

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

スマートホームエナジースタートアップの独Tadoが約588億円の評価額でSPAC上場を計画

サーモスタットを専門とし、最近ではロードシフトテクノロジーに基づく柔軟な「使用時間帯別」エネルギー料金体系に移行したドイツのスマートホームスタートアップtado(タド)は現地時間1月17日、企業としての次なるステップを発表した。SPAC(特別買収目的会社)との取引による株式公開だ。

持続可能な技術に特化したドイツのSPAC企業GFJ ESG Acquisitionは、tadoと合併して新会社をフランクフルト証券取引所に上場させると発表した。GFJとtadoは現在、PIPEs(私募増資)に取り組んでおり、完了すればtadoの評価額は4億5000万ユーロ(約588億円)になると予想される。新会社は引き続きtadoとして取引される。

tadoの広報担当者は、予定している上場での調達額や、上場時期についても2022年前半になりそうだということ以外は明らかにしないと述べた。

今回の動きは、tadoにとって2つの大きな進展があった直後のものだ。同社は1月11日、aWATTar(そう、これは社名の呼び方だ……)を買収し、家庭内のエネルギー消費ハードウェアから管理ソフトウェアへと事業を拡大した。このソフトウェアは顧客のエネルギー使用方法と、エネルギーソースの変動(太陽光や風力などの再生可能エネルギーや、より従来型のチャネルも含む)に応じた価格変動に基づくエネルギー消費とコストを管理できるようにするものだ。

また、5月には4600万ドル(約52億円)を調達した。当時、同社はこれが上場前の最後のラウンドになるだろうと述べていたが、それが今、現実のものとなっている。同社はこれまでにAmazon、Siemens、Telefonicaといった豪華な投資家陣から総額1億5900万ドル(約182億円)弱の資金を調達した。PitchBookのデータによると、そうしたプライベートなラウンド時の評価額は2億5500万ドル(約292億円)で、上場時に見込まれる時価総額4億5000万ドルをかなり下回っていた。

今回の合併は、株式公開する大規模なグリーンテックスタートアップとしては欧州初のケースとなるため注目すべきものだ。tadoの大きな目標は、電力網から消費者の家庭まで、エンド・ツー・エンドのシステムでエネルギー使用を管理するサービスを構築することだ。同社はこれまで2回方向転換した。最初はスマートサーモスタットのメーカーとしてスタートし、約200万のデバイスを販売してきた。その後、tadoはエネルギー料金体系を多様化し、使用状況を管理することで、ビッグデータ、予測分析、再生可能エネルギーとエネルギーハードウェアシステムという広範かつ非常に断片的な市場の活用に基づく幅広いビジネスへと発展してきた。

同社は現在、200万台以上のスマートサーモスタットを販売し、エネルギー管理技術によって20カ国にまたがる約40万のビルや家庭をつなげ、7ギガワット以上のエネルギー容量を管理していると話す。OEM900社が提供する約1万8000のシステムと連携しており、同社の負荷分散技術を使用する顧客は年間暖房費を平均22%節約できる、としている。

気候変動への懸念がますます高まり、そして消費者が温室効果ガスの排出を削減するためのサービスをより簡単に、より手頃な価格で利用できるようになるにつれ、グリーンテックやクリーンテックの企業にとって絶好の機会が出現している。今回の上場は、そのような企業の1つが、さらなる成長を目指して株式公開に踏み切るだけの十分な牽引力を感じていることを明確に示している。

tadoのCEOであるToon Bouten(トゥーン・ボウテン)氏は「tadoのチーム全体が GFJと提携することを非常に誇りに思っています」と声明で述べている。「我々は同じ信念を持ち、環境技術への情熱を共有しています。そして、顧客のコスト削減とエコロジカルフットプリントの抑制に共同で貢献することを決意しました。より持続可能なエネルギーの未来を創造するためのすばらしい位置につけています」。

この取引が完了すると、ボウテン氏は代表を退き(現職はオフィスソリューションプロバイダーRoomの社長と記載されている)、Oliver Kaltner(オリバー・カルトナー)氏がCEOに就任する。そしてChristian Deilmann(クリスチャン・デイルマン)氏がCPO、Johannes Schwarz(ヨハネス・シュワルツ)氏がCTOに就く予定だ。Emanuel Eibach(エマニュエル・アイバッハ)氏は引き続きCFOを務める。Gisbert Rühl(ギスバート・リュール)氏は監査役会会長に就任する。また、Josef Brunner(ジョセフ・ブルナー)氏、Petr Míkovec(ピョートル・ミコヴェック)氏、ボウテン氏、Maximilian Mayer(マキシミリアン・メイヤー)氏が監査役に就く。

GFJのCEOであるGisbert Rühl(ギスベルト・リュール)氏は「GFJとtadoはともに、気候変動との戦いにスマートな方法で挑むことを決意しています。tadoはすでにグリーンテック企業のニューウェーブの精神を受け継ぐマーケットリーダーです。EUのエネルギー消費の約21%は、住宅の冷暖房に使用されています。EUとドイツが、2050年までに世界で初めて経済をクライメート・ニュートラルなものにするという約束を果たしたいのであれば、住宅分野の脱炭素化に代わるものはありません」と述べた。

tadoは上場企業として市場に対して新たなレベルの透明性を獲得することになり、広く捉えるとグリーンテック業界全体にとってもプラスだ。今のところ、同社は3年後の2025年までに年5億ユーロ(約653億円)超の収益を上げるようになると予想している。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

サイバーセキュリティの最も重要な原因となっているヒューマンエラーに対処する独SoSafe

私たちがこの数年間で学んだように「ヒューマンエラー」を原因とするサイバーセキュリティの侵害は、企業にとって最も対策が難しいものである。調査によると、サイバー攻撃の約85%は人的要因に由来しているという。そのため、2021年790万ドル(約9億円)の資金を調達した英国のCybsafe(サイブセイフ)など、このような落ち度を解消するために設立されたスタートアップ企業が急増している。人間の行動への対応は、明らかにサイバー分野で最もホットな新しい領域の1つだ。

最近この分野で勢力を拡大しているのが、ケルンに本拠を置くSoSafe(ソーセイフ)だ。サイバーセキュリティの意識向上とテストを行うこのプラットフォームは今回、成長投資ファンドのHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導するシリーズBラウンドで、7300万ドル(約83億5000万円)の資金を調達した。

このラウンドには、既存投資家のActon Capital(アクトン・キャピタル)とGlobal Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)に加え、SAP Hybris(SAPハイブリス)の創業者でCelonis(セロニス)のアドバイザリーボードメンバーであるCarsten Thoma(カーステン・トーマ)氏、La Famiglia(ラ・ファミグリア)とAdjust(アジャスト)の創業者であるChristian Henschel(クリスチャン・ヘンシェル)氏が参加した。

SoSafeが競合するのは、2021年に上場したKnowbe4(ノウビフォー)や、これまでに5800万ドル(約66億円)を調達しているCofense(コフェンス)などのプラットフォームだ。

SoSafeによれば、同社はサイバーセキュリティにユーザー中心のアプローチを採り、行動科学から得られる洞察を利用してユーザーを正しく、より安全な方向に誘導し、ゲーム化された方法を用いてエンドユーザーにサイバー攻撃では何に注意すべきかを教えるという。

現在、SoSafeのプラットフォームはAldi(アウディ)、Ceconomy AG(セコノミ)、Taylor Wessing(テイラー・ウェッシン)、Vattenfall(ヴァッテンフォール)、Valtech(ヴァルテック)など、1500社以上の顧客に利用されている。

SoSafeの共同設立者でマネージングディレクターを務めるNiklas Hellemann(ニクラス・ヘレマン)博士は次のように述べている。「セキュリティ意識とヒューマンリスク管理において、既存のパラダイムに挑戦する当社のプラットフォームは、膨大な数の顧客に採用され、驚異的な成長を遂げています」。

今回のラウンドで主導投資家の役割を果たしたHighland Europeは、これまでMalwarebytes(マルウェアバイツ)、Cobalt(コバルト)、ActiveFence(アクティブフェンス)などのセキュリティ企業を支援してきた。

Highland EuropeのパートナーであるGajan Rajanathan(ガジャン・ラジャナサン)氏は、次のように述べている。「SoSafeの創業者たちは、信頼性の高いサイバーセキュリティ意識向上および試験プラットフォームを構築しました。これは行動分析とヒューマンリスクの点数化によって支えられ、サイバーセキュリティにおける最も重要な脅威領域、つまり人間によるセキュリティの穴を持続的に保護するものです。同社は、短期間で驚異的な勢いを経験し、主要なソフトウェアのスケールアップ企業の1つとして急速に注目を集めています」。

画像クレジット:SoSafe

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

コラボで作ったオーディオクリップをソーシャルメディアビジネスにつなげたいBeams、先行きは不明瞭?

ソーシャルオーディオにさらなる追い風ともいえるのだろうか。ベルリンを拠点とし、2019年に設立されたソーシャルオーディオスタートアップであるBeams(ビームズ)は「オーディオベースのソーシャルメディア」と銘打って、小さなひと口サイズのバラバラなオーディオ録音を共有して視聴してもらうためのプラットフォームを構築している。同社はこのたびのシードラウンドを300万ドル(約3億4000万円)で完了。前回のラウンドで獲得した300万ドルと合わせて合計600万ドル(約6億8000万円)を資金調達した。

Beamsの4人の共同創業者(共同CEO)のうち、Alan Sternberg(アラン・スターンバーグ)とRobert Kilian(ロバート・キリアン)の2人は、今、さらに資金を調達する理由を次のように説明する。「私たちは、2020年末に300万ドルを調達しました。テスト段階では、投資家から非常に高い関心と注目を集めていました。そこで、初夏の頃、The Venture City(ザベンチャーシティー)とKal Vepuri(カル・ベプリ)という2人の戦略的投資家を新たに迎え入れることにしました。そして総額600万ドルのシード資金を獲得することができたのです」。

Crunchbase(クランチベース)のデータを見ると、Beamsの、初回のシードラウンドおよびプレシードにおける投資家は、Mangrove Capital Partners(マングローブキャピタルパートナーズ)とRedalpine(レダルパイン)だったことがわかる。

Beamsの創業チームには、Soundcloud(サウンドクラウド)、Spotify(スポティファイ)、N26(エヌトゥエンティフォー)の元社員が名を連ね、同社のPRによると「人々が音声を軸につながる理由を深く理解している」面々だという。

Beamsの大きな目的は「人々が集まり、さまざまなトレンドや関心事について多様な意見を共有できる」プラットフォームを構築することだ(同じヨーロッパ発のAnyone(エニワン、アドバイスに焦点を当てている)Wisdom(ウィズダム)など、さまざまなソーシャルオーディオスタートアップも同様のことをいっていた)。

Beamsのユーザーは、関心事ごとに分けられたグループに参加し、(それぞれのユーザーのタイミングで)トピックベースのスレッドを聞いたり、クリップしたりすることができる。アート、政治、ファッション、グルメ、音楽など、トピックは何でも良い。

Beamsのトピックはまさになんでもござれで、全体的にはかなりランダムな感じがする。視覚でいえば、塗料を飛び散らせたスプラッシュペイントといったところだろうか。

Beamsのスローガンは「Real people, real voices(本物の人、本当の声)」。ラジオをチューニングしてトーク番組を聞く(あるいはClubhouseTwitterのスペースに参加してフォロワーや他の人のおしゃべりを聞く)ことに取って代わるアプリベースの手段について考え出されたスローガンだ。

しかし、ソーシャルオーディオのノイズの中から自分が聴きたいものを見つけることは、本当に難しい。

Beamsのオーディオクリップは90秒が上限だが、録音はもっと短くても構わない(スレッドが構築されると、アプリが音の断片[サウンドスニペット]をつなげてくれる)。つまり、ある程度短いことで手早く聴けるということになる。

90秒未満でも長いという場合は、アプリのボタンで再生速度を最大2倍まで上げることができるので、もっと短く音声を楽しむことができる(0.75倍までのスロー再生も可能)。

Beamsのアプリを見るとコンテンツの作り手がかなり不足していることがわかる。例えば、トップページの特集スレッドの中には1つ、2つのレスポンスしかないものもある。さらにもう少し見てみると、さまざまなスレッドに同じような顔ぶれが投稿していて、その中にはBeamsのスタッフがいることも確認できた。

本来あるべきコミュニティの形成はまだ始まったばかりのようだ。

Beamsによると、当初からのユーザーは、文化的なテーマや過去の出来事についてのストーリーや思い出を投稿する若者、60秒のインタビューを他の人と共有するプロのオーディオコンテンツクリエイター、フォームを使って写真に写っている人の声を伝える写真家、外部で行われたイベントを記録する市民ジャーナリストなど、実に「幅広い」ユーザーで構成されているという。

アプリで確認できるグループやトピックの多くは、例えば「過去に受けた最高のアドバイス」「世界の朝食」といった、コンテンツの生成を促進するためのわかりやすい種(たね)であるように思われる。また「オープンマイク」というラベルの付いたグループも同様で、女性の「UberStories」や「TinderStories」といった特定のテーマのグループやトピックで、ユーザーにストーリーの共有を促している。

メンバー数が最も多かったグループ(~1000人)は、ポッドキャストのアイデアやポッドキャストプロジェクトへの協力を募るオープンピッチだった。

大まかにいえば、メンバー数が非常に少なく、よりテーマを絞ったニッチなグループが多い(例えば、特定の地域の問題を明らかにすることを目的とした「ミネアポリスの警察改革について」といったグループ、あるいは「9.11から20年」のように特定の視点や経験をナレーションで表現するグループ、旅行や料理のヒントとなる「ラスベガスのビーガン向けベストスポット」などのグループが挙げられる)。しかし、なぜこのようなコンテンツをテキストではなくオーディオで提供する必要があるのか、という点は十分に検討する必要がある。

おもしろいと思ったグループの1つ「Young, Black & Fly」(メンバー数59人)は「若い黒人クリエイターのレンズを通して、アート、映画、音楽についてすべての人に向けて語るマイクロポッドキャスト」と称してさまざまなメディアのクリエイターにひと口サイズのインタビューをしている。

一方、NFTについて、あたかも義務であるかのように毎日投稿されるニュースグループ(メンバー数18人)はあまりおもしろいとは思わなかった。

Beamsの短い音声フォーマットでは、グループのホストと招待されたゲストとの間で一問一答形式のインタビューを行うことができる。1つの(長い)インタビューが、見つけやすい、共有しやすいチャンクに分解されることになるのだが、そうすることでポッドキャストやラジオ番組を視聴するよりも夢中になれないという欠点が生じる。

一問一答に近い形式の再現を目的としたオープングループでは、積極的なキュレーションは行っていないので、気が向いたら誰でも口をはさむ(オーディオクリップを投稿する)ことができる。その結果、リスナーの視点から見たスレッドは、内容や品質が均一ではないこともあり得る。

全体的に、Beamsはまだ実験段階にあるように感じられる。

ひと口サイズの「マイクロポッド」は、ラジオ放送世代よりも後の、注意力が続かない世代には向いているのかもしれないが、まだ不透明だ。どちらかというとソーシャルオーディオのノイズを増やしているようにも思える。

Beamsの共同創業者は、アプリのユーザー数を質問され「4万人以上のユニークユーザーが5000以上のグループに参加している」と回答している。ということは、おそらくアクティブユーザーはもっと少ないだろう(グループの運営にはBeamsのスタッフも積極的に関与している)。とはいえ、Beamsは2021年5月にベータ版がリリースされたばかりだ。

ソーシャルメディアの手法として、なぜ尺の短いオーディオに注目したのか?という問いに対し、スターンバーグ氏とキリアン氏は次のように話す。「クリエイターとリスナーの両方の視点から、短尺のオーディオスペースにはイノベーションが必要です」。

「現在ユーザーが利用できる方法で良いオーディオコンテンツを作るには、非常に高いハードルがあります。ハードウェアも必要ですし、話すためには十分な専門知識も必要で、一般向けではありません。一般の人がオーディオコンテンツを作るには、あまりにも多くの障害があります」。

「また、リスナー側にとっても簡単ではありません。例えば、ポッドキャストやライブオーディオセッションが自分にとって役に立つか、おもしろいか、自分の時間を費やす価値があるかどうかを知るには、それを聴くしかありません。聴いてみてどうなるかわからないし「おもしろいところ」にはなかなかたどり着けないし、コンテンツを作っている人を良く知っていて信頼していない限り、聴いてみるのも簡単ではないのです」。

「私たちは、このような状況を打破する革新的なソリューションを構築したいと考えています。皆が簡単に録音したり、他のユーザーの話を聴いたりできるソリューションです」。

とはいえ、純粋に「聴く価値のあるもの」を探し出すには、明らかに「まだまだ」だろう。

90秒ごとに分割された音声(つまり、何回も最初の挨拶と冒頭のセリフを聴かなければならない)と、人の声を2倍速にするボタンは、すばらしいオーディオ音声の提供とは非常にかけ離れている。

これは、多くのコンテンツがスキップされてもやむを得ないと考えていることを意味しているようなものだ。リスナーが退屈な部分を聴かないで済むようにするためのツールなのに、その過程で(音声コンテンツを募集するとか、感想を話すだけとか、品質が考慮されていないような録音など)その場を埋めるためだけのオーディオを生み出してしまうのであれば、全体的なアプローチとしては逆効果のようにも思える(あるいは、Beamsがまだ上手い方法を見つけられていないだけかもしれないが……コミュニティの成長と成熟には時間がかかるものだから。)

Beamsの共同CEOは、現在のオーディオプラットフォームには「人々が直感的につながる方法」が欠けているとも考えていて「(Beams以外に)トピックベースの双方向型のオーディオプラットフォームは存在しない」と主張する。

彼らは、Beamsの目標は「ユーザーが自分の考えをさまざまな方法で簡単に記録し、グループやトピックに分けて共有できる」ツールを構築することであると話し、オーディオを構造化するという目的を強調している。

また、彼らは自分たちが構築しようとしているのは「音楽ストリーミングサービスのように、ユーザーの声をボイススレッドの一部にするための拡張オーディオプレイヤー」であるとも説明する。将来的には音声の書き起こし機能を追加し、Beamsの音声記録を他のソーシャルネットワークにエクスポートして利用できるようにすることも計画しているという。

ボイススレッドを中心に、他の形式のツールを追加することも予定しているそうだ。

オーディオの共有と視聴のための「シンプルで包括的な」ツールを構築することに注力すると同時に、スターンバーグ氏とキリアン氏は(Beamsよりも)閉鎖的な競合他社と比較してもっとオープンにすることで、競争の激しい業界で差別化を図ることも目的としていると話す。

「他のオーディオプラットフォームの多くは、そのアプリの中だけ、あるいはログインしたサービスの中だけですべてを完結させていますが、私たちは、クローズド(閉じた)エコシステムでユーザーとユーザーがつながることを強要したくありません」「私たちはBeamsを、単なるソーシャルメディアネットワークではなく、オーディオソリューションを構築するためのプラットフォームだと考えています。Beamsはウェブ上でも利用可能でオープンです。ログインしなくてもBeamsアプリを持っていなくても利用できます」。

「Beamsの目的は、ユーザーには路上で声を集めて共有する方法を、ジャーナリストやメディアにはストーリーを簡単に埋め込んで共有する方法を提供することです。友人同士なら、WhatsApp、Telegram、Signalなどの自分が好きなアプリで声を共有できますね」。

収益性はどうだろうか。Beamsの共同CEOたちは、まだ収益化のことは考えていないようだ。

「私たちは、コーポラティブな短尺オーディオのためのプラットフォームとコミュニティの構築を目指しています。さまざまなユーザーグループが私たちの製品をどのように使用しているかを注意深く観察して経験を積み、将来的にはコミュニティとBeamsの双方に収益をもたらすことが可能な有意義な方法を導入できると考えています」。

モデレーション機能(投稿やコメントをチェック・評価して不適切な投稿を除外する仕組み)については、彼らは次のように話す。「モデレーションは大きな課題ですが、オーディオコンテンツが録音されていること(と書き起こしのテキスト)があれば、コミュニティを守るためのサービスを構築できます」。

画像クレジット:ChaiyonS021 / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

IPOは中止になったが、Babbelの語学学習サービスは急成長中

ベルリンを拠点とする語学学習サービスのBabbel(バベル)は、2021年9月下旬にフランクフルト証券取引所でIPOを行う予定だった。しかし、IPOのほんの数日前に、上場は中止された。当時、世界の株式市場を非常に神経質にした中国「恒大集団」の債務危機の状況を嫌ったためだ。新しいIPOの日付はまだ発表されていいないが、BabbelのCEOであるArne Schepker(アーネ・シェプカー)氏が私にいうように、同社は引き続き市場を観察している。

しかしIPOの中止は誰にとっても予想外だった。「取り組んでいたチームにとってはがっかりするできごとでした。長く熱心に働いていたからです。私たちは本当によくやっていました」とシェプカー氏は語った。「私たちは予定をこなし、正しい軌道に乗り、100人以上の関心の高い投資家に出会い、すばらしいフィードバックを得ていたのです、その最中に恒大集団の状況が明らかになり、IPO市場のほとんどが止まってしまいました。進むべきか、退くべきか。私たちは、その市場に参入すべきか否かという非常に意識的な決断に直面したのです」。

シェプカー氏は、Babbelが十分な資金を持っていて、銀行に十分な現金を保有していることに加え、必要ならば製品への投資や買収を続けるための他の資金調達の選択肢があることから、同社が正しい決断を下したと確信している。

画像クレジット: Babbel

同社の最も急成長しているビジネスの1つは、サービスのアプリベースの語学学習ツールを強化する「ライブ」クラスだ。2021年初めにリリースされたBabbel Live(バベル・ライブ)は、2021年の後半には上半期と比較してサブスクリプションでは300%、収益では400%増加した。数万人の学習者を抱えるBabbel Liveは、毎月1万5000のクラスを提供しているが、シェプカー氏によれば、学習者の約25%が、ライブプラットフォームを導入ポイントとしており、残りの75%がアプリから使い始めているという。

Babbel Liveと同社のB2B Babbel for Business(バベル・フォー・ビジネス)サービスは、現在、同社の収益の9%を占めている。また、ビジネス全体も好調で、11月の請求可能な売上高は2020年から30%増加して2000万ドル(約22億8000万円)を超えている。

シェプカー氏によれば、そのことと、質の高い製品で定評があることが重なり、同社は優秀な教師を採用できるのだという。「私たちはイノベーションのフロンティアを押し広げ、人間の知性と人工知能を、常に最大限に活用しようとしています。このように、私たちは完全に人間依存でもなく、完全にテクノロジー依存でもないために、それが私たちのライブ教室の教師の方々にとって魅力的なのだと思います」と彼はいう。

画像クレジット:Babbel

同社のB2B側をみてみると、Babbelは11月には5000人の新規企業学習者を登録し、現在1000社を超える企業と協力している。Babbelがこちらのビジネスを構築するのにはある程度の時間がかかっている、このビジネスは長い間ドイツでしか利用できず、最近イタリアに拡大したばかりだ。すぐに他のヨーロッパ市場、そして米国にも拡大することが計画されている。シェプカー氏は、企業の語学学習は語学学習市場全体の約3分の1を占めているため、これは同社にとってかなりの成長の機会であると述べている。

今後のことを見るなら、Babbelチームは、さまざまなプラットフォーム間でより良い統合を行う手段を具体的に検討している。これにより、Babbel Liveの教師は、例えばクラスとクラスの間で生徒がアプリで何を学んだかを確認できる。Babbelのポッドキャスト、アプリ内ゲーム、その他の導入ポイントに加えて、同社はすでに言語学習ツールの非常に豊富なエコシステムを提供している。現在の問題は、それらすべてをよりまとまりのあるプラットフォームにするにはどのようにすればよいかということだ。

「ユーザーの方々は独自の学習方法のエコシステムをつなぎ合わせる傾向がありますが、私はその状況をクリエイティブな混沌と呼んでいます。なぜなら私たちはそれを実際に行う手法を学んではいませんし、実際に統合もされていないからです」とシェプカー氏は述べている。「例えば異なる学習方法は、私が教室に足を踏み入れたときに、私がアプリで何をしていたかを知って活用することはできません。それは、学習者にとっても教師にとっても、そして語学学習会社としての私たちにとっても、エコシステムの中に見出すことができる付加価値なのです。私たちが学習者のエコシステムをまとめてあげることで、学習の旅を実際に進めて行くことができるのです」。

画像クレジット:Babbel

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(文: Frederic Lardinois、翻訳:sako)

難聴ケアを身近なヘッドフォンやテレビで、Mimiが聴覚ウェルネスプラットフォームのボリュームを上げる

TechCrunch Battlefield NY 2014の最終選考に残ったMimi Hearing Technologiesは、シリーズBラウンドで2500万ドル(約28億5000万円)を調達し、聴覚の健康というミッションを世界中の耳に囁き続けている。同社は最近、Skullcandy(スカルキャンディー)、Cleer(クレール)、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)との一連の注目すべきパートナーシップを発表し、MIG CapitalATHOSからの新たな資金注入により、さらに前進しようとしている。

関連記事:オーディオを「パーソナライズ」するMimi、Skullcandyなどの本技術搭載ヘッドフォンを徹底検証

Mimiの創業者の1人で、同社の研究開発を率いるNick Clark(ニック・クラーク)氏は、しばらく前に私にこう語った。「聴覚障害だけでなく、より幅広いことに対応できるソフトウェアベースのソリューションの可能性は大いにあります。ユーザーの聴力の違いによって、より多くの人々に役立つ微妙なことを始められます」。

Mimiは、毎月約5万人が聴力検査をするのに使う、最も人気のある家庭用聴力検査アプリの1つだ。同社は、同じ技術をSDKとしてヘッドフォンメーカーに提供した。それにより、同アプリはユーザーの聴覚プロファイルを利用して、聴力に合わせてカスタマイズされた音声出力を実現できる。つまり、難聴と思われる部分を補うため、音量を上げなくてもよく聞こえるようにすることが可能なのだ。これにより、さらなる難聴を防ぐことができるという理論だ。

「例えばSkullcandyのヘッドフォンを購入し、アプリをダウンロードすると、そこで自分のプロフィールを作成することができます」と、Mimiの創設者兼CEOであるPhilipp Skribanowitz(フィリップ・スクリバノヴィッツ)氏は説明する。「このプロフィールは、他のパートナーとも互換性があり、他でも使うことができます。Philips(フィリップス)のテレビでのテストも開発しましたので、その場合ソファーに座ってテレビでテストできます」。

今回の資金は、同社の技術へのさらなる投資、特にヘッドフォンやテレビとの統合を通じた提供の拡大に充てられる。また、米国とアジアでの販売・マーケティング業務の拡大も強化する予定だ。

「シリーズBコンソーシアムの主要投資家であるMIG、ATHOS、Salviaは、2020年、NASDAQに上場しているドイツのバイオテック企業であり、Pfizer(ファイザー)と共同で最初の新型コロナウイルスワクチンを開発し、現在約700億ドル(約7兆9840億円)の評価を受けているBioNTech(バイオンテック)の設立投資家として国際的に注目されました」と、MimiのMoritz Bratzke(モーリッツ・ブラッツケ)CFOは指摘する。「彼らのMimiへの投資は、ドイツのベンチャーキャピタル環境の深さと幅だけでなく、Mimiのビジョンの重要性と多大な商業的可能性を示すもう1つの証といえます」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

欧州で急速に拡大、電動キックボード大手の独TierがWind Mobilityのイタリア子会社を買収

ドイツ・ベルリン拠点のeスクーター(電動キックボード)会社でヨーロッパ全域で急速に拡大しているTier(ティア)は、Wind Mobility(ウィンド・モビリティ)のイタリア子会社、Vento Mobility(ベント・モビリティ)を買収した。

Tierは2021年11月、ドイツの自転車シェアリングプラットフォームNextbikeを買収したばかりであり、サービスの多様化を図り、マイクロモビリティ帝国の足場をさらに固めようとしている。創業以来Tierは製品戦略、デザイン、経営、エンジニアリング、試験、品質管理、教育、サポート、スタッフ支援などのデジタルサービスを提供するMakery(メーカリー)や、バッテリー交換のスタートアップ、Pushme(プッシュミー)も買収している。

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電動キックスクーター独TierがNextbikeを買収、マイクロモビリティ業界統一を予見させる大型買収
ロシアの大手Yandexがシェア型eスクーターWindのテルアビブ事業を買収、イスラエルでの事業を拡大

一方、Windの側を見ると、最近イスラエルの事業をロシアのテック大手Yandex(ヤンデックス)に売却しており、避けられない業界統合にWindが徐々に屈服していると見ることもできる。同社はこれまでに計7200万ドル(約81億8000万円)を調達しており、最後の調達ラウンドは2019年のシリーズAだった。ちなみに、Tierは10月にシリーズDラウンドの一部として2億ドル(約227億4000万円)を調達し、調達総額を6億4700万ドル(約735億8000万円)とした。

Windは今後の戦略に関するTechCrunchの追加質問に答えなかった。

米国時間12月14日、Tierの最初の電動キックボードがバリとパレルモで利用できるようになり、今後数日数週間のうちにイタリアの他の都市も続く予定だ。Tierはすでに18カ国165都市で運用中で、同社の電動キックボードは組み込みヘルメット、ハンドルバーとリアウィングの方向指示器、大型前輪ホイールとトリプル・ブレーキなどを備えている。

Windはイタリアの11都市で4500台の電動キックボードを展開していた。Tierによると、同社はWindの車両を置き換えるのではなく、自社の電動キックボードを投入するつもりだと語ったが、既存の車両をどうするかについての質問には答えなかった。Tierは、Windの現地スタッフを引き継ぐことは明言した。

画像クレジット:Tier Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

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今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

プジョーやフィアットを傘下に持つStellantisがEV電池材料確保のためリチウム供給契約を締結

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とフランスの自動車メーカーGroupe PSA(グループPSA)が折半出資で合併して誕生したグローバル企業Stellantis(ステランティス)は、リチウム生産者と拘束力のある契約を締結した。今回の合意は、EVの需要が高まる中、自動車メーカーとサプライヤーの間で相次ぎ行われている取引の1つだ。

Vulcan Energy Resourcesは、ドイツのアッパーラインヴァレー(上部ライン渓谷)にあるブラインプロジェクトからバッテリーグレードの水酸化リチウムを生産する。一般的に、リチウムは岩石を採掘して生産されるか、塩水鉱床から抽出される。どちらも環境面で問題があるが、Vulcanのサイトでは、再生可能な地熱エネルギーを利用してリチウムを抽出する。

また、このプロジェクトでは、使用済みのブラインを閉ループサイクルで再注入するため、生産滓のような残留物は発生しない。ドイツのプロジェクトは、南米などで行われている他のブラインプロジェクトに比べ水や土地の使用量が少ないため、二酸化炭素排出量が少なく、運用コストも低く抑えられる可能性があると、ドイツ・オーストラリアを拠点とする同社はウェブサイトで述べている。

この5年間の供給契約に基づき、Vulcanは2026年からドイツで抽出したリチウムをStellantisに送ることになる。契約期間中、Vulcanは8万1千トンから9万9千トンの水酸化リチウムを自動車メーカーに供給する。両社はこの取引の財務条件を明らかにしていないが、抽出サイトでの商業運転の開始と製品の適格性の両方を条件としている。

今回の契約は、Stellantisが7月に発表した、今後4年間で300億ユーロ(355億ドル、約3兆8480億円)をEVと新しいソフトウェアに充てる徹底的な電動化戦略の一環だ。同社は2025年までに130GWh、2030年までに北米と欧州の5つの工場で約260GWhのバッテリーを製造することを目標としている。

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これは、世界の自動車メーカー各社が、EVバッテリーの主要鉱物であるリチウムのような有限の原材料を確保しようとしていることを示す最新の兆候だ。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はカリフォルニア州のリチウム抽出プロジェクトに同様の投資を行っており、Tesla(テスラ)はニッケルなどの鉱物について独自の供給契約を結んでいる

一方、Renault(ルノー)は先週、欧州産リチウムを最大3万2千トン供給する契約をVulcanと締結した。

画像クレジット:Stellantis

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ドイツの次期政権は石炭火力廃止を2030年に前倒し、連立政権樹立のための妥協に懸念も

ドイツは、最新の気候変動対策の一環として、従来の計画より8年早い2030年までに石炭の使用を廃止することを計画している。同年、ドイツでは電力の80%を再生可能エネルギーで賄うことを目標としている。BBCによると、ドイツ社会民主党のOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)党首は、緑の党、自由民主党との3党連立政権の下で、前副首相がドイツを統治することになる協定の一部として、現地時間11月24日にこの計画を発表した。

9月26日に行われたドイツ総選挙では、緑の党が連邦議会で118議席を獲得し、過去最高の結果となった。ショルツ氏は、緑の党のリーダーであるAnnalena Baerbock(アンナレーナ・ベーアボック)氏を外務大臣に起用する見込みだ。さらに、緑の党の共同党首であるRobert Habeck(ロベルト・ハーベック)が副首相に就任し、国のエネルギー転換を監督する機会を得ると思われる。

注目すべきは、連立政権がより積極的な排出削減目標を設定しなかったことだ。同国は、2030年までに1990年比で65%の削減を目指すとしている。非営利団体Climate Action Trackerの試算によると、パリ協定で打ち出された摂氏1.5度の目標を達成するためには、ドイツは2020年代の終わりまでに、温室効果ガス排出量を少なくとも70%削減する必要があるという。

さらに、社会民主党との合意にあたり、緑の党は大きな妥協をした。Bloombergによると、石炭と再生可能エネルギーの間の移行を容易にするために、天然ガスを使用するとのこと。評論家たちは、連立政権はEVの導入を促進するためにもっと努力すべきだったと発言している。同国政府は、2030年までに1500万台のEVをドイツの道路で走らせるということしか計画していない。生物学者でNGOのCampact代表であるChristoph Bautz(クリストフ・バウツ)氏は、Clean Energy Wireに次のように述べている。「これは進歩のための連合には見えません。気候変動運動は、真の意味での気候変動政府にするために、連立政権に働きかけ続ける必要があります」。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:John W Banagan / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

EU最高裁顧問がドイツの大規模データ保持法は違法と指摘

国民のデータを(曖昧かつ包括的な「セキュリティ」目的のために)保持したい欧州加盟国政府の欲求と、無差別な大規模監視はEU法の基本原則(プロポーショナリティー、プライバシー尊重など)と相容れないとする主張を繰り返し、基本的権利の擁護を続けるEUの最高司法機関である欧州司法裁判所(CJEU)との戦いは、大規模データ保持に関する国内法令に対する辛辣な法的批判を再度呼び込んだ。

今回矢面に立たされたのはドイツのデータ保持法で、CJEUは、ISP(インターネット・サービス提供者)のSpaceNet(スペースネット)とTelekom Deutchland(テレコム・ドイチュラント)が提起した顧客の通信トラフィックデータを保持する義務に異議を唱える複数の訴訟に続いて裁定する。

判決はまだ出ていないが、現地時間11月18日、CJEU顧問から影響力のある意見として、トラフィックおよび位置データの概略的で無差別な保持は、例外的(国家安全に対する脅威に関連するもの)にのみ認められるものであり、データは永続的に保持されてはならないという見解が示された。

EU司法裁判所のManuel Campos Sánchez-Bordona(マヌエル・カンボス・サンチェス-ボルドナ)法務官の意見を発表したプレスリリースで裁判所は、同法務官は「言及されたどの論点に対する答えも、すでに同裁判所の判例法に含まれているか、そこから容易に推測できると考えています」と述べ、ドイツ法の「極めて広範囲のトラフィックおよび位置データを対象とする」「概略的で無差別な保持義務」は、データを一括収集するものであり、対象を絞った方法(特定の国家安全保障目的など)ではないことから、保管に課せられた制限時間内にEU法と合致させることはできない、とする司法官の見解を明確に提示した。

同司法官は、無差別な一括収集は個人データの漏洩あるいは不正アクセスなど「深刻なリスク」を生むと指摘している。そして、市民のプライベートな家族生活と個人データ保護の基本的権利に対する「重大な干渉」をもたらすと繰り返した。

この見解に法的拘束力はないものの、CJEUの裁定はアドバイザーに合わせられる傾向にある。ただし、この訴訟の最終裁決が下されるのはまだ数カ月先のことだ。

CJEUは、類似の事例を1年前に裁定している。複数のデジタル権利団体が、英国およびフランス法に基づいて行われた国の大規模データ収集および保持に対して異議を申し立てた訴訟で、当時裁判所は限定的なデータ収集および一時的な保持のみが許されるという裁定を下した。

(しかしPoliticoによると、その後フランスは判決の回避方法を探っている。同紙は去る3月に、政府は最高裁判所に裁定に従わないよう要求したと報じた。)

2014年の画期的判決でCJEUは、圏内でデータ保持規則を調和させることを目的とした2006年のEU司令を却下し、この制度は市民の権利に対する過度の介入を構成すると裁定した。それなら加盟国はこれまでにそのメッセージを受け取っているはずだと思うだろう。

しかし、この法的衝突が一段落する見込みはなさそうだ。とりわけ、各国政府の間で汎EUデータ保持法を復活させようとする新たな動きがあることを示す漏洩した討議資料Netzpolitik(ネッツポリティック)が入手し、この夏に報道してたことを踏まえると。

画像クレジット:Vicente Méndez / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook