Workbounceの「GoogleとSlackの融合」B2B営業チーム向けツール、Index Venturesから約3.1億円を調達

Workbounceの創業者たち(画像クレジット:Workbounce)

商用製品の販売は昨今かなり複雑なプロセスになっており、パンデミックはそれをさらにややこしくした。営業チームは、特にやりとりの多くがバーチャルであるハイブリッドな世界では、自社製品への信頼を築くことの難しさに阻まれがちだ。Highspot、Seismic、Showpadのようなレガシーセールスツールは、異なる時代に作られたということもある。

英国を拠点とするWorkbounce(ワークバウンス)は、複雑な製品に関する膨大な量のコンテンツを検索できるようにし、営業担当者が案件を獲得するために必要な情報を見つけられるようにすることが解決策になると考えている。これは、プラットフォームに依存せず、Googleドライブ、Slack(スラック)、Notion(ノーション)などのツールに接続することで実現される。同社は、この製品を営業チーム向けの「Google meets Slack(グーグルとスラックの融合)」と呼んでいる。

このたび同社は、Index Venturesとエンジェル投資家のグループから270万ドル(約3億1300万円)の初期段階の資金を調達した。この資金調達はタイムリーなものだ。Crunchbaseによると、セールスイネーブルメントツールへの投資は過去5年間で22倍に成長しており、2017年の2100万ドル(約24億3300万円)から2021年には4億7700万ドル(約552億6500万円)に増加している。

Rowan Bailey(ローワン・ベイリー)氏とAdam Smith(アダム・スミス)氏(2021年3月にWorkdayが7億ドル / 約811億円で買収した従業員フィードバック企業Peakonの最初の採用者の1人)によって2021年初めに設立されたWorkbounceは、営業チームが使用するすべての異なるナレッジハブへの単一のエントリポイントとして機能するという。

共同創業者兼CEOのスミス氏は声明でこう述べている。「企業が営業やカスタマーサービスチームを通じて顧客と1対1でエンゲージする方法は変化しており、それは顧客の期待の高まりと、我々の働き方のシフトの両方が原因です。次世代のB2B関係は、単に製品やサービスを販売するだけでなく、ソリューションに向けたコラボレーションが重要になるでしょう」。

Workbounceは、そのリモートファーストの構造は、ポストパンデミックの世界のために構築されているという。

「Workbounceは、営業ナレッジにアクセスし、B2Bの顧客関係を改善するための主要なツールになる可能性を秘めています」とIndex Venturesのパートナー、Hannah Seal(ハンナ・シール)氏は付け加えた。「職場が変化するにつれ、適切な情報を適切なタイミングで見つけることがますます困難になっています。Workbounceはこの問題を解決し、営業チームが顧客とエンゲージし、取引を成立させることを支援します」。

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Den Nakano)

ブティックホテルテックプラットフォームNUMAがポストパンデミックでのノマドな労働力ニーズに応える約51.9億円調達

米国を拠点とするSonderは、テクノロジーを駆使したホスピタリティを提供する企業だ。同社は5億2960万ドル(約611億8500万円)を調達した。リモートワークにより人口の移動が圧倒的に多くなったポストパンデミックな世界で、このグローバルでノマドな労働力ニーズに応えるため、同様の事業者が資金調達を行っている。

私たちがNUMA Group(NUMAグループ、当時の社名はCosi)を取りあげたのは、2019年に同社がブティックホテルに代わる「フルスタック」のホスピタリティを提供するために500万ユーロ(約6億5800万円)を調達したときだった。その後、2000万ユーロ(約26億3400万円)を調達したときにも取り上げた。

今回、NUMA GroupはDN Capital Group(DNキャピタル・グループ)(以前はAuto1、HomeToGo、Shazamも支援していた)が主導するラウンドで成長資本として4500万ドル(約51億9800万円)を追加調達した。この投資の共同リードはHeadline(旧eventures)である。また、Cherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)、Soravia(ソラヴィア)、Kreos Capital(クレオス・キャピタル)、TruVenturo(トゥルーベンチュロ)、Scope Hanson(スコープ・ハンソン)が参加している。

NUMAはベルリン、ミュンヘン、ローマ、ミラノ、マドリッド、バルセロナ、ウィーンで約2500室のブティックホテルを提供。投資家、不動産所有者、デベロッパー、ホテル経営者と提携し、テクノロジーを駆使した部屋を構築している。このプラットフォームは、ビジネスプロセスの自動化、インテリジェントな価格設定、稼働率の向上を通じて、ホテル経営者の利益を増大させるように設計されている。ドイツに本拠を置くNUMAグループは、2021年にスペイン、イタリア、オーストリア、チェコ共和国に進出した。

NUMAグループのCEO、共同創業者であるChristian Gaiser(クリスチャン・ガイザー)は「私たちの明確な目標は、NUMAをヨーロッパのまったく新しいホテルの時代における、圧倒的なテクノロジーと創造的なソリューションのプロバイダーとして確立することです。NUMAは、パンデミックを利用して、ビジネスモデルの回復力を証明しました。NUMAのコンセプトと独自の技術を使って、新型コロナにもかかわらず500%の収益増と85%の予約占有率を達成したのです」と述べている。

NUMAがSonderと大きく異なる点は、宿泊客から見て、NUMAはより幅広い層を対象としていること(Sonderはより高い価格帯にフォーカス)だ。さらに「NUMA go」という「技術フランチャイズ」ソリューションを開始し、売上の一定割合を条件に、NUMAの技術スタックをサードパーティのホテル経営者に提供していることだ。

DN Capital Groupの創設者兼マネージングパートナーであるNenad Marovac(ネナド・マロヴァチ)氏は「我々はNUMAの戦略、業績そして非常に厳しい市場環境下での一貫した拡大に非常に感銘を受けています。NUMAを支えるチームは、新型コロナにもかかわらず、一貫して高い稼働率と部屋の持続的な収益性を達成しています。NUMAのビジネスモデルは、不動産パートナーやオペレーターにとって魅力的なリスクリワードプロファイルを提供し、そして最も重要なことは、現代の旅行者にまったく新しい旅行体験を提供することです」と述べている。

画像クレジット:NUMA Group

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

すべてのスタートアップの脳内にある2021年の大問題

私にとって、そしてすべてのスタートアップの頭の中にある2021年最大の問題は、世界的パンデミックのような大異変が、ポストパンデミックのイノベーションの中でどのように起きるかだ。おそらく今は、「あ、なるほど!」の瞬間が企業へと具現化するところを見るにはまだ早い段階にいると私は思う。そして、パンデミックが我々の意識に与える真の影響は、事態が収拾し、振り返ることのできる時期がくるまでわからない。

しかし、それが見ていて興味をそそられるものであることは間違いない。2020年、イノベーターとインベスター(投資家)は、黙って立ち尽くし、社会の亀裂や破壊やがれきを目撃することを余儀なくされた。それは屈辱的な年であり、テック業界のほとんどが、室内やどこか遠くやひとりぼっちで費した1年だった。

これまでに私が気づいたリアクションの1つは、必ずしも新しくないが新たな重みをともなったもの、それは摩擦を減らすことに焦点を当てたイノベーションの急増だ。たとえば 「Building in Public」(公開の場でスタートアップを作っていく)やベンチャーキャピタルの切り離しが増えている傾向。あるいは、リモートワークがコミュニケーションを可能にするためのものから、受動的・能動的なコラボレーションを可能にするものへと変わったこと。それどころか、Y Combinator方式を採用して、運営者を投資家に変えるのを支援したり、社員のサイドビジネスをフルタイムの会社に変えるのを支援する人達さえ目にした。

こうしたムーブメントは新型コロナウイルス(COVID-19)のせいで始まったわけではないが、いずれにもパンデミック規模の巨大な注意マークがついている。

これを些細で、取るに足りない動きだと片付けるのは簡単だ。しかし、同僚のDanny Crichton(ダニー・クライトン)記者が指摘した(未訳記事)ように、「時としてベンチャーキャピタルやスタートアップにとって最も重要な変化は、行動を起こすための最後の摩擦を減らすことだ」。

摩擦を減らす、は2021年に向けて我々全員に必要な合言葉のように思える。

イノベーションがもっと多様な人々の集まりから生まれることを、私はずっと願っている。それが女子学生向けのハッカー・ハウスであれ学生と非営利団体をつなぐ学生の立ち上げたサービスであれ。だから新年を迎えるにあたり、どうかみなさんには楽観的になってほしい。

2020年のテック業界は、人々に疲弊と絶望を残したわけではない。人々にエネルギーと万全の準備を与えたのだ。

Qualtricsに2度目の魔法は働くのか?

SAP(サップ)が、Qualtrics(クアルトリクス)が2020年7月にスピンアウトすると発表したとき、本誌のEquityポッドキャストチームはマイクに飛びつき(未訳記事)、一体なぜなのかと思いを巡らせた。数カ月後の現在、新たなS-1書類が提出され状況が見えてきた。Alex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)記者はユタ州拠点ユニコーン(未訳記事)の数字を分析し、これがQualtircsにとって2度目の申請であることを指摘した。

2度目の申請は、Qualtricsが今回こそ上場するため必要な魔力なのか?みなさんには、アレックスによる企業価値と財務状況の分析(未訳記事)を見て自身で判断してほしい。

マイアミとSubstackとClubhouse

もし、1つの小見出に並んだこの3つの単語があなたにあるリアクションを起こさせようとしているなら、Danny Crichton(ダニー・クライトン)記者は何かいいたいことがあるようだ。先週彼はテック関係者の新しいものへの不信感について記事を書き、Substackの伝統的ジャーナリズムに置き換わる未来と、Clubhouseのソーシャルメディア破壊装置としての未来が予想通り批判の的になっていることを指摘した。

即時の成功に対する皮相的な見方は2020年のスタートアップ界における奇妙な力学の1つだ。スタートアップというものに対して、1人か2人のファウンダーと数人の従業員がどうにかして初日から完璧なプロダクトを作り、問題になりそうなことは事前に解決してしまうという期待がある。おそらくそういうスタートアップは世に広まるのが早すぎただけであり、早期のプロダクトを理解する人たちは、プロダクトの進化を理解しないもっと多くの大衆に呑み込まれていくのだろう。

ダニーの主張は、そういう会社には彼ら自身まだ上っ面もなでていないビジョンを遂行する猶予をもう少し与えようというものだ。スタート時点ですべてを正しく行なっていないという理由で、会社を切り捨てることが成長を阻害するという意見に私は同意する。悲観的になるのは簡単だが、あえて楽観主義者になるのも悪くない。

フロリダ州マイアミ中心部からビスケーン湾のブリッケル地区を臨むビル街の輪郭。ブリッケルは米国最大級の金融街であると同時に多くの高層住宅とタワーマンションが立ち並ぶ

いくつか良いニュースも

屈辱的な時間と楽観主義といえば、本誌のSarah Perez(サラ・ペリッツ)記者がEarlyBirdについて先日、記事を書いた。家族や友達が子供に投資をプレゼントできるアプリだ。

かつてYello.coのVPで、現在EarlyBirdのCOOを務めるCaleb Frankel(カレブ・フランケル)氏が彼らの初期のひらめきについて説明した。

「かわいらしい姪が生まれた数年前に経験した問題からすべては始まりました。私は姪っ子に首ったけで、馬鹿馬鹿しいぬいぐるみに数百ドル(数万円)も使いました。かなりゴミのような贈り物にです」と話す。

画像クレジット:oxygen / Getty Images

関連記事
女子大学生のための「ハッカーハウス」がない、だから学生自身が作ったWomxn Ignite
新型コロナに苦しむ人を救う開発者の卵が作ったDevelop for Goodが学生と非営利団体を繋ぐ
EarlyBirdは子ども将来のために家族が投資できるアプリ
中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表
NSO used real people’s location data to pitch its contact-tracing tech, researchers say
インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復
日本から来たネコの尻尾つきロボット枕「Qoobo」を使ってみた

カテゴリー:その他
タグ:ポストパンデミック

画像クレジット:MirageC / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook