Swarmが初心者でも扱えるIoT用衛星通信デバイスのキットを発売、約5.5万円

衛星通信事業会社Swarm(スワーム)の新製品は、誰でもメッセージングやモノのインターネット(IoT)のためのデバイスを作ることができるというもので、通信網から離れても接続を維持したいハイカーや、天気を把握したいホビーストなどに最適だ。

このSwarm Eval Kit(スワーム・エヴァル・キット)は、同社の主力モデムデバイスであるSwarm Tile(スワーム・タイル)、VHFアンテナ、小型ソーラーパネル、三脚、FeatherS2(フェザーS2)開発ボード、Adafruit(エイダフルーツ)製OLEDなどがセットになったオールインワン製品だ。キット全体の重さは2.6キログラムで、価格は499ドル(約5万4700円)。このパッケージを見ると、技術的な知識がないと扱いが難しいように感じるかもしれない。しかし、SwarmのCEOであるSara Spangelo(サラ・スパンジェロ)氏は「まったくの初心者から、より知識を持った上級者まで、ユーザーフレンドリーな設計になっています」と、TechCrunchの取材に語っている。

この製品を「評価キット(evaluation kit)と名付けたたのは、完成品ではないからという非常に意図的なものです」と、スパンジェロ氏は説明する。「この製品は、2種類の異なるグループに向けたものです。1つ目のグループは、地球上のどこにいても、低コストでメッセージングを行いたい人たち。第2のグループは、機械いじりが好きな人や趣味を楽しむ人、そして教育分野に携わる人々です」。

CEOで共同創業者のサラ・スパンジェロ氏(画像クレジット:Swarm)

Swarmにとっては、2021年初めに主力製品であるSwarm Tileの商業化を開始して以来、これが2番目のコンシューマー向け製品となる。Swarm Tileは、いくつかの異なるコンポーネントで構成されたSwarmのエコシステムの重要な一部である。Tileはさまざまなものに組み込むことができるモデムのようなもので、顧客はこれを使って、同社の衛星ネットワークおよび地上局ネットワークに接続する。Tileは最大限の互換性を持つように設計されているため、Swarmは海運、物流、農業などさまざまな分野の顧客にサービスを提供している。

「Swarmのすばらしさの1つは、私たちがインフラであるということです」と、スパンジェロ氏はいう。「私たちが携帯電話の電波塔のようなものなので、誰もがあらゆる分野で利用することができます」と語ったスパンジェロ氏は、土壌水分センサーやトラック運送業界で貴重な荷物の追跡にTileを使用している顧客などの事例を挙げた。

Swarmのビジネスモデルの大きな特徴は、低価格であることだ。Swarm Tileの価格は119ドル(約1万3000円)、接続サービスは機器1台につき月額5ドル(約550円)で利用できる。スパンジェロ氏によれば、それは小型デバイスや衛星の技術革新のお陰だけでなく、特にSwarmのような小規模な衛星開発企業にとっては、打ち上げ費用の経済性が向上したことも大きいという。また、同社は直販も行っているため、それが間接経費の削減にもつながっている。

Swarmの創設者であるスパンジェロ氏は、NASAのジェット推進研究所やGoogle(グーグル)のドローン配送プロジェクト「Wing(ウイング)」に参加していたパイロットで、航空宇宙工学の博士号を持つ。彼女がTechCrunchに語った話によると、Swarmはスパンジェロ氏と、高高度気球のプラットフォームを製造するAether Industries(エーテル・インダストリー)という会社を設立した経歴を持つ共同創業者のBen Longmier(ベン・ロングマイヤー)氏との間で、趣味的なプロジェクトとして始まったそうだ。

「そこで(私たちは)旧来の通信業者が現在行っているのと同じような速度で通信できることがわかったのです」と、スパンジェロ氏はいう。そして彼女は「コネクティビティは多くの注目を集めていました」と付け加え、Project Loon(プロジェクト・ルーン)のような取り組みが多くの資金を集めていたことに言及した。しかし、このような複数年にわたるプロジェクトの規模と張り合おうとするのではなく、彼女たちは小規模に取り組むことに決めたのだ。

設立から4年半で、Swarmは120基のサンドイッチサイズの衛星によるネットワークを地球低軌道に投入し、従業員も32人に増えた。同社はTileを使用する顧客の開拓にも力を注いできた。Eval Kitは、Swarmのサービスに顧客を呼び込むための新たな手段になると期待されている。

スパンジェロ氏は、このキットについて「色々なことをして遊ぶのが好きな、初心者と専門家の間にいるすべての人たちのためのものです。そして、ただ遊ぶだけではなく、遊ぶことでイノベーションやアイデアが生まれ、それが世界に展開されていくのです」と語った。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:SwarmIoT人工衛星通信

画像クレジット:Swarm

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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