今ある人工知能に取り組む企業の分類

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編集部記Shivon Zilisは、Crunch Networkのコントリビューターである。Shivon ZilisはBloomberg Betaの投資家である。

私はここ数年、人工知能の分野に注目してきた。何百人もの起業家、研究者、投資家と機械がどのように私たちの生活を賢くするかについて話をした。

以前私が人工知能関連企業の状況を共有したところ、人工知能の企業をどう捉えているのかと多くの人に尋ねられるようになった。彼らも多かれ少なかれ同じことに関心があるようだ。(1997年にはこのような雰囲気で「ドットコム」の話をしていたのかもしれない。)

多くの人はこの技術が世に解き放たれた時には、人はどのように関わるべきなのかを知りたいようだ。この記事では、人工知能企業が採用している手法だけでなく、市場との関わりについても考察したい。

各分野の企業と市場への参入の違いについて説明するのに、私はそれぞれのカテゴリーに自分にとって分かりやすい愛称を付けていて。最終的に便利であることが判明したので、それについても少し詳しく記した。あなたが自分の会社を説明する際、何か愛称が必要になった時の参考になるかもしれない。

以下のカテゴリーは厳密なものではない。人工知能は複雑な分野だ。しかし、このフレームワークは私たちのファンド(良い結果が出すことが予想される会社に投資している)で、人工知能企業について深く考察し、彼らと関わる上で役立っている。

広範なデータセットを収集する「パノプティコン」

人工知能はコンピューターが分析するデータから始まる。私が「パノプティコン」と呼ぶタイプの企業は、重要な新規のデータセットを大量に揃える企業だ。確立したビジネスは自然とグローバル展開する傾向がある。Planet Labsのような企業を表すのに「グローバル」という言葉はぴったりだ。彼らは、物理的に地球の軌道に衛星を飛ばしている。一方でPremiseのような企業の場合「グローバル」の意味は比喩的なもになる。彼らは多くの国からデータをクラウドソースで収集している。

これらの新しいデータセットを多く集めることで、私たちはこれまで答えを出すのに苦戦していた課題に対して、自動で答えを得ることができるようになる。この分野に参入するには巨大な障壁がある。重要なデータセットを世界規模で収集するのは大変困難だからだ。

人工知能の分野はとても活発だ。

しかし、彼らは他に安価で代わりとなるような「十分に良い」データセットはないかと問う必要があるだろう。データライセンスビジネスは、コモディティ化するリスクにあるからだ。この分野を目指す企業は「十分に良い」ような代わりとなるデータを集めることができたり、しようとする他社がいないこと、そして自社のデータセットとエンドユーザーを活用するための知的なレイヤーを得ることができるかを検討すべきだろう。

この領域の企業例:Planet Labs、Premise、Diffbotなど。

「レーザー」は特定のデータセットを収集する

私が「レーザー」と呼ぶ企業も新しいデータセットを構築しているが、それらのデータはニッチで、特定の業界の課題解決のためにレーザーのように的を絞って活動している。この分野で成功している企業はデータセット以上のものを提供している。彼らは自社でアルゴリズムとユーザーインターフェイスを保有している。彼らはより対象を絞った初期ユーザーの獲得することに注力していて、カスタマーを獲得するためにはデータ以上の価値を彼らに提供しなければならない。

彼らのプロダクトはユーザーの特定の課題に対して瞬時に答えを出す。例えば「どのくらい作物に水を与えるべきか?」や「どの申込者がローンの適格者か?」などだ。このカテゴリーから数百という数多くの企業が生まれるだろう。何故なら、彼らはビジネスの価値をすぐに生み出せるからだ。

このテクノロジーで初めて多くの業界は意思決定をデータドリブンな方法で行うことができるようになる。世界を良い方向に進める力は強力だ。すでにこのテクノロジーは、世界の食糧事情を効率的にする助けになり、医療診断を改善し、自然保護プロジェクトを推進し、貸付を行えなかった人にそのアクセスを提供した。

しかしこの分野の企業が成功するには、何か一つ課題を解決する「必殺(良い意味で)」のユースケースが必要で、ユーザーの仕事を増やすのではなく、シンプルにする解決法を提案しなければならない。

この領域の企業例: Tule Technologies, Enlitic、InVenture、Conservation Metrics、Red Bird、Mavrx、Watson Healthなど。

データを金塊に変えることを約束する「アルケミスト」

この領域の企業のピッチは分かりやすいものだろう。「あなたのデータを見せてください。金塊にして返します。」彼らは自社のデータセットを構築するのではなく、重厚なアルゴリズムを持ってカスタマーのデータを磨き、知見を得る。彼らはさらに3種類に分けられる。

  1. セルスサービス型APIベースのソリューション
  2. カスタマーの既存のスタック上で解析するサービス・プロバイダー
  3. 自社のハードウェアに最適化したスタックによるフルスタックのソリューション

アルケミストは様々なデータ型を横断的に見るため、早くから強力な人工知能を活用できるようになるかもしれない。彼らがハンズオンでカスタマーの課題解決を行うなら(コンサルティングサービスと共に行う場合など)、彼らは信頼の置けるパートナーになるだろう。

「あなたのデータを見せてください。金塊にして返します。」

しかし、気をつけるべきこともある。この業界は誕生したばかりだ。APIベースのアプローチを採用している企業は、まだ小さいユーザーベースの中でしか収益を得ることができず、スケールの問題に直面するかもしれない。多くのセルフサービス型の企業は、その壁を避けるためによりハンズオン型のモデルへと移行している。(また、人に重きを置くコンサルティングサービスもスケールするのが難しい場合もある。)

この領域の企業例:Nervana Systems、Context Relevant、IBM Watson、Metamind、AlchemyAPI(IBM Watsonが買収)、 Skymind、Lucid.ai、Citrineなど。

特定のデータ型から新しいユースケースを作り出す「ゲートウェイ」

この領域の企業は、法人がこれまで分析の難しかったデータ型から知見を得ることを可能にする。例えば、画像、音声、動画、ゲノム情報などだ。彼らは、自社でデータを収集するのではなく、クライアントのデータやサードパーティーのデータプロバイダーと協力する傾向にある。アルケミストはどちらかというと様々なデータの種類やユースケースにまたがって分析を行うが、ゲートウェイは専門的である。

ここで最も期待できることは、真に新しい知見が得られることだ。法人はこれまでもこのようなデータを保有していたが、保存していなかったり、それらの情報を経済的に解析することができなかった。それらの「失われた」データを今後は活用することができる。

それでも「それが何?」問題には気をつけた方が良いだろう。情報から新たな知見を抽出する方法を手に入れたからといってそれが価値のあるものであるとは限らない。解くべき課題の解決を目指していた企業が、手段という魔法に惑わされるところを何回か見てきた。彼らは資金調達で苦戦することになる。

この領域の企業例: Clarifai、Gridspace、Orbital Insight、Descartes Labs、Deep Genomics、Atomwiseなど。

ワークフローを遅滞なく改善する「魔法の杖」

彼らは仕事を効果的にするSaaSツールだ。データから知見を抽出するだけでなく、そこで得た知見を毎日のワークフローにスムーズに統合する方法を提供する。人工知能によるアシスタントはまるで「魔法」のように感じる新たなレベルを創出する。彼らは、レーザーと似ていて、ユーザーの特定の課題解決を助けるインターフェイスを持っている。しかし、彼らは自社でゼロから新しいデータセットを作るのではなく、ユーザーや法人のデータを必要とする傾向にある。

例えば、Textioは人材採用の募集要項の改善点を提案するテキストエディターだ。タイプしながら改善点を解析する。Textioを使用すると、人工知能アルゴリズムによる丁寧な提案によって完成度の低い求人情報を数分で格段に良くすることができる。

このようなツールに依存するリスクは、人が専門性を失うということだろう。

私はこれから5年の間に様々なユースケースでこのようなツールを使用することになるだろうと考えている。分野が限定されたデータを基にコーディングされた提案によりユーザーを瞬時に専門家に変えるようなものだ。彼らは知識を集約し、誰にも気づかれずにプロダクトに埋め込むことができる。この領域が加速し、魔法の杖が増えることに期待したい。

このようなツールに依存するリスクは、人が専門性を失うということだろう。(オートパイロット機能が飛行士の重要なスキルを低減するのと同じリスクだ。)そのリスクを回避するには、プロダクトを製作する側が、ユーザーの知識を置き換えるのではなく、強化できるようなUIを作ることだ。(例えばユーザーに提案するプロセスでユーザーを教育したり、ダブルブラインドのインターフェイスを採用することが考えられる。)

この領域の企業例: Textio、RelateIQ (Salesforceが買収)、InboxVudu、Sigopt 、The Gridなど。

物理世界で自立システムを構築する「ナビゲーター」

人工知能は、自動運転車、ドローン、倉庫や農場、高齢者介護などで手伝うロボットのような自立システムを実現するのに大きな役割を担っている。このカテゴリーには現在、アーリーステージの企業とGoogle、Apple、Uber、Amazonといった大手の確立した企業が混ざって存在している。

このテクノロジーは私たちに交通や物流を一から考え直す力を与える。特に頑強な物理インフラが整っていない新興市場の国に関係するだろう。また、これまで人間には危険だった作業もこのテクノロジーで行うことができる。

このようなテクノロジーの開発に本腰を入れる前に、企業は大量の資金を調達でき、最も需要の多い分野での最高峰の能力を持つ人を採用できるかどうかを検討した方が良いだろう。この領域の課題を解決するためには、ハードウェア、ロボティクス、映像、音響といった多様な分野の専門家が必要となる。また、厳しい法規制というハードルも超えなければならない(自動運転車の法規制など)。

この領域の企業例: Blue River Technologies、Airware、Clearpath Robotics、Kiva Systems (Amazonが買収)、3DR、Skycatch、Cruise Automation、Googleの自動運転車グループ、Uber、Apple、Teslaなど。

仮想タスクを手伝うサイボーグやボットを作る「エージェント」

人工知能を最も効果的に使うには、人の知能と組み合わせることが良い場合もある。サイボーグとボットはタスクを実行する手伝いをするという意味では似ているが、違いはサイボーグは人に似せているということだ。(裏では人の知能と機械学習を組み合わせている。名前があり、実際に人が関わるのと同じように人と関わろうとする。)一方でボットは人間ではなく、人がガイダンスを提供することで指示に従って行動することができる。

人工知能を最も効果的に使うには、人の知能と組み合わせることが良い場合もある。

サイボーグは複雑なタスクを実行することができる場合が多いだろう。例えば、リアルタイムのチャットでカスタマーサービスを行うことや、メールでミーティングをスケジューリングしたりすることだ。(Clara LabsのClaraや x.aiのAmyのように)ボットは基本的な調査、オンライン決済を実行したり、タスクを滞りなく管理するための手伝いを提供する(Howdyのようなプロジェクト管理ボットなど)。

どちらの場合も、人と機械の良い部分を合わせている。コンピューターはタスクの中の通信が必要なつまらない作業を行い、人は意思決定やクリエイティブな作業を行って互いにやりとりをする。

サイボーグベースの企業の多くはマニュアル的なサービスとして始まっているが、テクノロジーが成熟するほど機械が主導するようになるだろう。人が機械への移行を早期に受け入れられるかどうかがリスクとして捉えることができる。サイボーグでもボットでも、私たちが重要なデータ(カレンダー、メール、書類、クレジットカードなどの情報)を機械を預けるようになるほどプライバシーとセキュリティーは今後も重要な懸念材料となる。

この領域の企業例: Clara、x.ai、Facebook M、Digital Genius、KasistoとHowdyなど。

抜群に賢い「パイオニア」

いくつかの人工知能の企業は、学術的なプロジェクトとして始まっている。専門分野での経験がある何年もある教授や大学院生のチームが何か市場に出せるものを発見した時、彼ら(あるいは大学)は企業に転身する。

このようなチームは解決するのが不可能に思える課題に取り組んでいるだろう。

そのように集まったチームはマーケット戦略としても良い。何故なら、この分野で8年から10年もの経験がある人はほんの少数だからだ。彼らの知見は非常に価値が高く、多少ビジネスモデルを磨き上げる必要があったとしても、チームの構成だけで投資するリスクを負っても良いと考える投資家もいるだろう。

直近考えられる人工知能のユースケース以外にも非常に重要な解決すべき課題も多くある。このようなチームは解決するのが不可能に思える課題に取り組んでいるだろう。彼らはその問題を潜在的に解くことができる数少ない人たちなのだ!

このアプローチは、本当に追究したい課題に取り掛かっているなら素晴らしい仕事を成し遂げることができるだろう。しかし、連帯するためだけに人が集まっている組織やアクハイヤー目的の場合だとチームの団結が難しくなる。また、彼らの長期的な目標を理解する投資家も必要だ。

この領域の企業例:DeepMind (acquired by Google), DNN Research (Googleが買収)、Numenta、Vicarious、NNaiSense、Curious AIなど。

人工知能はとても活発な分野だということが分かったと思う。市場には一つのカテゴリーにあてはまらない企業もあるだろう。ただ、私が見てきた中ではこれらのカテゴリーにあてはまる企業が多いと言える。

次の明確な質問は、これらの中で最も投資家を惹きつけるカテゴリーがどれかということだろう。個別のスタートアップはその性質上、はっきりと断定することはできない。そして多くの人は人工知能の分野の成長に期待していて、どのカテゴリーにしても楽観的な見方の度合いが多少違うくらいだと言えるだろう。個人的には特に「レーザー」と「魔法の杖」のカテゴリーに注目している。何故なら、これらは今すぐにでも新しいデータ型から次の行動につなげることのできる知見を導き出し、十分に浸透したSaaSのテクニックを有効活用することができるからだ。

それにはついてはまた書きたいと思う。乞うご期待。

開示情報: Bloomberg Beta はDiffbot、Tule Technologies、Mavrx、Gridspace、Orbital Insight、Textio、Howdyや記事には登場していない人工知能企業にも投資をしている。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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