VRの利点は一体何か?VRはまだ誕生したばかりであり、この命題の答えは今のところ異世界での体験で人生を良くするといった曖昧なものだ。「格別な没入感」を約束するこのテクノロジーが一般に受け入れられ、メインストリームのものになるかはまだ分からない。
現段階でVRを使ったコンテンツにはいくつかのゲームがあるが、ニッチな層にしか訴求できていない(VRを動かすのにプロ仕様の機材が必要だからだ)。他には、実験的なものや教育コンテンツに近いものもある。 バーチャルツアーや医療セラピー、あるいは他者の目線で物事を体験することにより共感を呼び起こすコンテンツなどだ。この分野には、もう一つ別の用途がありそうだ。VRで落ち着いた場所を訪れ、毎日のマインドフルネスを実践するというものだ。
アメリカのデジタルヘルス企業Provata Healthは現実から離れる媒体とするテクノロジーを活用し、瞑想指導を試みている1社だ。Provata Healthは今回、VR用のiOSアプリをローンチした。
モバイルVRヘッドセットを着用してアプリを起動すると、ビーチや滝の近くに座っているかのような360度の落ち着いた環境が現れる。そこで瞑想の指導を受けることができる(iPhone用のVRヘッドセットを持っていなくても、Provataのアプリ単体で瞑想指導を受けることも可能だ。画面に同じ風景が表示され、スワイプして周りを見ることができる)。
また、このアプリはApple Watchといったヘルス情報をトラックするウェアラブルと連携可能で、例えば心拍数の変化などから瞑想セッションの効果を確認することができる。あるいは瞑想に時間を使うことで睡眠にどのような影響があるかを知ることが可能だ。フィットネス用のウェアラブルを持っていない場合は、瞑想の前後にスマホのカメラで心拍数を測ることができると同社は言う。
マインドフルネス分野のアプリやデジタルサービスは増えている。例えば、Headspace、Calm、Simple Habitなどだ。AppleもWatchウェアラブルにBreatheというリラクゼーションアプリを搭載している。
Provataはこれ以外にもデジタルヘルスサービスを展開している。従業員に健康的な活動を勧めたい雇用主を経由して従業員向けの健康指導プログラムを販売している。Provataにとって今回のVRアプリは、初のコンシューマー向けのマインドフルネスを促進するサービスだ。CEOのAlex Goldbergは、「デジタルヘルスで新たなカテゴリーを切り開きたいと考えています。仮想空間での予防ケアという分野です」と話す。
TechCrunchに「瞑想の指導セッションは自社で制作しています」とGoldbergは話す。「瞑想を始める時、瞑想をするのに最適な状態にするため、ユーザー自身が周囲を見渡してリラックスし、心を落ち着けられる場所を選びます。私たちはユーザーが没入的な環境に訪れるたびに異なる位置を試してほしいと考えています。瞑想セッションによっては、周囲の環境も関係してくるからです」。
GoldbergはProvataがすでに提供するウェルネスプログラムには運動を促進したり、食事の栄養バランスを向上させるコンテンツがあり、それらはNIHやCDCが出資する臨床試験を通過しているという。ただ、現時点でこの新しいVR瞑想アプリは、他の多くのVRカテゴリーのサービス同様、効果は検証されていない。
「ピアレビュー研究を行う予定です。アプリで瞑想の前後の心拍数をトラックするといった瞑想のバイオフィードバックを得られる機能の実装ができ、準備ができました」とGoldbergは言う。「心拍数の推移の比較やユーザーのストレスや抑うつスコアなどを調査します」。
「私たちのデジタルヘルスプログラムのピアレビュー研究(Healthy Team Healthy U)は、参加者のメンタルヘルスと身体の健康の両方に良い影響があることが証明された最初のデジタルヘルスプログラムです。このプログラムで抑うつとストレスを減らすことができる理由の1つは、プログラムにメンタルヘルス向上の一環として瞑想を取り入れ、参加者に提供したためです。プログラムを受ける前、特に仕事のストレスが高く検出された参加者のストレスと抑うつスコア(7段階のリッカート尺度を使用)が低減していることが研究結果から分かりました。
「Provata VRは瞑想指導の認知を広め、活用を促促進し、より多くの人に良い効果をもたらすことができると考えています」。
ストレスと対抗するために自分の心に集中し、自己認識を高めたり、落ち着いたりするためにVRヘッドセットで人工的に平穏を得るということに関しては議論の余地があるかもしれない。誰にとってもVR瞑想が最適な方法ということでもないだろう。しかし、補助なしで日常生活から考えを離すことに苦労している人にとってこのVRアプリは、ストレスを減らすアクティビティを行うための手段にはなるかもしれない。
このアプリの瞑想時間は「意図的に短く」しているとGoldbergは言う。2分、5分、10分の瞑想時間が選べる。理由はVRであまりに長い時間過ごすことを防ぐためという(気分の悪さ、あるいは私個人の場合には眼の疲れといった体調に悪影響を及ぼす可能性もあるためだ)。また、数多くの研究で毎日の瞑想時間が数分だったとしても効果があることが示されているとGoldbergは主張する。
「精神的に悪影響があったという報告はまだありません。高品質な4K動画も役立っているのかもしれません」と彼は言う。
アプリは無料でダウンロードできるが、いくつかのコンテンツは有料だ。サブスクリプションサービスも提供している。月額3.99ドルか年間35.99ドルで、多くの「日常から離れた風景」の中で瞑想を楽しむことができる。
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(翻訳:Nozomi Okuma /Website)